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関西電力株式会社美浜発電所の原子炉の設置変更(1号、2号及び3号原子炉施設の変更)について(答申)


51原委第184号
昭和51年3月2日

内閣総理大臣殿
原子力委員会委員長

 昭和51年1月14日付け51原第48号(昭和51年2月14日付け51安第1133号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。

① 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号及び第3号については適合しているものと認める。

② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。


(別添)

昭和51年2月16日
原子力委員会
 委員長 佐々木義武 殿
原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄
 関西電力株式会社美浜発電所の原子炉の設置変更(1号、2号及び3号原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和51年1月20日付け51原委第86号(昭和51年2月14日付け51原委第180号をもって一部補正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告する。

 Ⅰ. 審査結果

 関西電力株式会社美浜発電所の原子炉の設置変更(1号、2号及び3号原子炉施設の変更)に関し、同社が提出した「美浜発電所原子炉設置変更許可申請書(昭和51年1月7日付け申請、昭和51年2月10日付け一部補正)」に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。

 Ⅱ. 変更内容

  1. 概要

 この変更は、液状又は、水分を多量に含む固体廃棄物を減容固化するアスファルト固化装置(以下、固化装置という。)及び可燃性雑固体廃棄物と廃油を焼却減容する雑固体焼却設備(以下、焼却設備という。)を、2号炉と3号炉のほぼ中間に設けられる団体廃棄物処理建屋(以下、処理建屋という。)に、設けるものである。又、暗渠を処理建屋と各原子炉補助建屋の間に設け、その内部に放射性廃棄物を相互に移送する配管を設けるものである。

 なお、固化装置と焼却設備は1号炉、2号炉及び3号炉で共用される。

  2. 固化装置

 固化装置は、固形化蒸発缶、熱媒加熱器、アスファルト貯蔵タンク、廃液供給タンク、ドラム缶用回転テーブル等で構成される。

 固形化蒸発缶には、ステンレス鋼製の立型遠心薄膜蒸発缶が使用され、処理能力は水分蒸発量で約200㎏/hである。

 固化される濃縮廃液は、廃液供給タンクで必要に応じ前処理され、固形化蒸発缶でアスファルトと混合、熱媒で加熱して水分を蒸発分離した後、ドラム缶に注入し冷却されて固化体となる。

 固形化蒸発缶で濃縮廃液から分離された蒸気は、復水器で復水となり有機物を分離した後、3号炉の液体廃棄物処理設備に送り処理される。分離された有機物は焼却設備で焼却される。復水器及び廃液供給タンク等の排ガスはエアフィルタ、高性能エアフィルタ及びよう素フィルタで処理された後、放射性物質濃度を監視しながら3号炉の原子炉補助建屋放射性区域排気設備に送られ、3号炉の原子炉補助建屋排気筒から排出される。

 なお、既設のセメント固化装置も必要に応じ使用される。

  3. 焼却設備

 焼却設備は、焼却炉、焼却排ガス処理装置、焼却灰処理装置等で構成される。

 焼却炉は、耐火構造で自燃式であり、処理能力は可燃性雑固体廃棄物では約50㎏/h、廃油では約35㎏/hである。起動時の焼却炉加熱のためプロパンガス燃焼式の加熱用空気供給器が設けられ、可能性雑固体廃棄物は自動投入装置で焼却炉に間けつ投入され、廃油はバーナから焼却炉内に散布される。

 焼却排ガス処理装置には、1次、2次のセラミックフィルタ及び高性能フィルタが各2系統設けられ、うち各1系統は予備とされる。セラミックフィルタの差圧は監視され、異常が検出されると予備に切換えられる。セラミックフィルタは、焼却排ガスの処理のほか、1次セラミックフィルタでは、焼却排ガス中の未燃分の2次燃焼も目的としている。

 焼却設備の除染係数は、系統全体で105以上となるように設計される。

 焼却設備の構造材は、不燃性材料を使用し、焼却設備の外表面温度が70℃以下になるように設計される。

 焼却排ガス処理装置で処理された焼却排ガスは、放射性物質濃度を監視しながら焼却炉排気筒から排出される。焼却灰の処理は、焼却炉、1次及び2次セラミックフィルタの下部のグローブボックスに圧着したドラム缶に受けるように設計され、使用済および破損セラミックフィルタは、クラッシャにより粉砕し、焼却灰と同様に処理するように設計される。

 なお、可燃性雑固体廃棄物及び廃油は、焼却前に約60日程度一時的に貯蔵される。

  4. 処理建屋

 処理建屋は、地下1階、地上3階建の鉄筋コンクリート造であり、処理建屋には、地上高約25mの2本の排気筒が設けられ、1本は主に処理建屋換気の排気、他の1本は焼却炉排気筒として使用される。

 処理建屋には、処理建屋の換気を行う固体廃棄物処理建屋換気設備が設けられ、換気の排気はエアフィルタタ及び高性能エアフィルタで処理した後、放射性物質濃度を監視しながら排気筒から排出される。

 放射性物質を扱う機器室は、機器から放射性物質が漏洩しても、機器室外に漏洩しないように設計される。

 処理建屋には、制御室が設けられ、固化装置及び焼却設備の運転は、制御室で遠隔操作により行えるように設計される。

 暗渠は、鉄筋コンクリート造で、暗渠内の配管の点検保守が行えるように設計される。

 暗渠内の放射性物質を含む可能性のある配管はすべて溶接接合とされるが、暗渠は、万一配管から放射性物質が漏洩しても、暗渠外に漏洩しないように設計される。

 処理建屋内の床ドレン、機器ドレン及び暗渠内の床ドレンはそれぞれのピットに回収できるように設計され、回収されたドレンは3号炉の液体廃棄物処理設備に送り、処理される。

 Ⅲ 審査内容

  1. 固化装置

 固化装置では、アスファルトへの引火防止のため、熱媒の温度はアスファルトの引火点より十分低い230℃を上限として電気ヒータで制御され、アスファルトの貯蔵、供給系は全て蒸気で加熱される。この系統の電気設備は、全て防爆型のものが使用される。

 固化装置の設けられる部屋で防火上必要な所は防火壁、防火扉、換気系の温度感知式ダンパ等によって、部屋全体を隔離できるように設計されるほか、防火上必要な所に火災感知器、水噴霧設備、炭酸ガス消火設備、消火栓設備等が設けられる。

 又、Ⅱ-2固化装置の項で述べた固化装置による放射性廃棄物処理の方法は妥当であり、固化装置の安全性は確保されるものと判断する。

  2. 焼却設備

 焼却設備は、系統内の温度を計測し、異常に高くなった場合には、被焼却物の供給を自動停止する。

 焼却設備は、焼却排ガスが系統外に漏洩するのを防ぐため、系統内で最も負圧の低い焼却炉内で50~100㎜Aqの負圧となるように設計される。

 被焼却物及び燃焼用空気の供給は、焼却炉内圧力が設定値より高くなると自動停止され、さらに、焼却炉内圧力の異常上昇に対しては、逃し安全弁が設けられる。

 又、Ⅱ-3焼却設備の項で述べた焼却設備による放射性廃棄物の処理方法は妥当であり、焼却設備の安全性は確保されるものと判断する。

  3. 処理建屋

 処理建屋は、耐震設計重要度分類Bクラスで、暗渠、機器、配管系も安全上の重要度に従ってB及びCの2クラスに分類され、それぞれに応じて耐震設計が行われる。

 遮蔽は、関係各場所への立入頻度、滞在時間等を考慮した上で従業員の放射線被曝が十分管理でき、かつ実用可能な限り低くなるように設計される。

 又、暗渠の遮蔽は、暗渠内配管で濃縮廃液移送時でも、暗渠外部では常時接近可能なように設計されるので、処理建屋等の安全性は確保されるものと判断する。

  4. 放射線管理等

 処理建屋及び暗渠は管理区域とされ、この管理区域専用の出入管理室及び汚染管理設備が処理建屋に設けられ、出入管理が行われる。

 固化装置と焼却設備の各プロセスモニタ及び処理建屋内に設けられるエリヤモニタは、処理建屋内制御室で自動記録、指示及び警報を行うとともに、処理建屋内出入管理室及び3号炉の中央制御室に警報を発するように設計される。

 固化装置で発生する廃棄物のうち復水は3号炉の液体廃棄物処理設備に送られ処理されるので、環境に排出されるのは主に復水器排ガス中のよう素-131であるが、廃液受入タンクでの貯留、よう素フィルタでの除去等を考慮すると、その放出量は無視できる程少ない。

 焼却設備の除染係数は、系統全体で105以上と見込まれるので、焼却炉排気筒から放出される粒子状放射性物質を含む気体廃気物は無視できる程少ない。

 焼却炉排気筒から放出される放射性物質は、このほかに、可能性雑固体廃棄物に含まれる放射性物質のうち、放射性よう素が焼却の過程において揮発し、気体となって放出される可能性があるが、過去の可能性雑固体廃棄物中の放射能量及び核種構成、焼却管理等を考慮すると、その放出量は無視できる程少ない。

 Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和51年1月23日第144回審査会において審査を開始し、昭和51年2月16日第145回審査会において審査を行い、本報告書を決定した。


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