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核燃料サイクルの確立のための方策について


昭和51年3月12日
原子力委員会

1. 原子力発電の推進に際しては、これを支える基盤の整備を図る必要があるが、特に原子力発電システムとして整合性のとれた核燃料サイクルの確立については、そのための方針を早急に明らかにし、これに基づき具体的方策を講ずる必要がある。

2. 核燃料サイクルの確立については、ウラン資源の確保から放射性廃棄物の処理・処分に至る各段階において次の各事項に十分配慮した多面的検討を行い調和のとれた施策を講ずる必要がある。

① 核燃料サイクルの各段階において、バランスのとれた事業の具体化を図ること。

② 各種施設の安全性を確保し、もってこれら施設が将来にわたり地域住民に受け入れられるよう努めること。

③ 保障措置及びフィジカル・プロテクションのための対策を確立すること。

④ 核燃料サイクル確立に関する政府及び民間の責任の分担を明確にし、これに基づき所要資金を確保すること。

⑤ 国際協力により情報交換等に努めること。

3.現在、この分野に関して実施されている調査・検討としては、

①  原子力委員会に設置されている「新型動力炉開発専門部会」における新型動力炉の導入に関連した軽水炉の核燃料サイクルの整合性ある確立を図るための検討
② 原子力委員会の委託による核燃料サイクルに関する調査
③ 資源エネルギー庁の「核燃料研究委員会」における、核燃料サイクルに係る産業育成の観点からの調査・検討

などがあるが、本件の重要性と緊急性に鑑み、別添の通り原子力委員会の「国際濃縮計画懇談会」を改組して「核燃料サイクル問題懇談会」とし、同懇談会において、これらの調査・検討の成果をも踏まえつつ、核燃料サイクル確立に関する基本方策の策定のための審議を行うこととする。


(別添)

核燃料サイクル問題懇談会に開催について

1. 開催目的

 本懇談会は核燃料サイクルの確立のための重要事項を審議し、もって我が国における具体的施策の確立とその推進に資することを目的とする。

2. 審議事項

 核燃料サイクル確立のための施策の現状(別紙1参照)を踏まえ、核燃料サイクル全般にわたる重要事項について審議する。(別紙2参照)

3. 構成員

 本懇談会は担当原子力委員、学識経験者及び関係行政機関の職員をもって構成する。

4. その他

(1) 本懇談会に幹事若干名による幹事会を設け、懇談会の審議に必要な調査を行う。

(2) 本懇談会に関する事務は原子力局核燃料課において行う。

別紙1

核燃料サイクル確立のための施策の現状

1. ウラン資源

(1) 動燃事業団における海外調査の実施
(2) 民間のウラン探鉱会社への投融資

2. ウラン濃縮

(1) 国のプロジェクトとしての遠心分離法の研究開発
(2) 国際濃縮計画への参加の方策の検討

3. 加工

(1) 加工事業者に対する指導(規制、推進等)

4. 再処理

(1) 動燃再処理工場の建設と運転の推進
(2) 第2再処理工場建設のための検討
(3) 海外委託の検討、指導

5. プルトニウム

(1) 動燃における新型動力炉に用いるための研究開発
(2) 照射試験等軽水炉へのリサイクルのための研究開発
(3) フィジカル・プロテクション・システムの確立

6. 廃棄物

(1) 低レベル廃棄物の海洋処分計画等の推進
(2) 原研、動燃等における高レベル廃棄物処理・処分のための研究開発
(3) 処理・処分の国際共同研究プロジェクトへの参加

7. 輸送

(1) 輸送基準に関する専門部会報告の法制化の検討
(2) 輸送容器の安全研究
(3) 輸送に関する安全規制体制の整備

別紙2

審議事項

1. ウラン資源

(1) 開発輸入の推進策
(2) 供給源の多様化方策
(3) 備蓄及び融通方策

2. ウラン濃縮

(1) 国産技術開発及び事業化方策
(2) 国際共同事業への参加方策等
(3) 備蓄及び融通方策

3. 加工

(1) プルトニウム燃料加工体制の確立

4. 再処理

(1) 国内再処理のストラテジー
(2) 再処理海外委託に係る事項
(3) 地域核燃料サイクルセンター構想の検討
(4) 再処理技術開発等

5. プルトニウム

(1) 熱中性子炉への利用方策
(2) 海外からの持帰り問題
(3) 需給バランス及び貯蔵

6. 廃棄物

(1) 放射性廃棄物の処理・処分体制の確立
(低レベル廃棄物の処理・処分体制、中・高レベル廃棄物の処理・処分技術開発と最終処分方法)

7. 輸送

(1) 輸送体制の整備

8. 全般的事項

(1) 関係法令の改正を含む核燃料サイクルに係る基本方針
(2) 安全性の確保策及びパブリック・アクセプタンス
(3) 保障措置及びフィジカル・プロテクションの実施体制の整備
(4) 資金及び人材の確保策
(5) 国際協力の推進策

核燃料サイクル問題懇談会構成員

担当原子力委員
芦原義重 関西電力株式会社会長
石原周夫 前日本開発銀行総裁
一本松珠 日本原子力発電株式会社会長、日本原子力産業会議副会長、濃縮・再処理準備会会長
正親見一 電気事業連合会副会長
清成  動力炉・核燃料開発事業団理事長
駒井健一郎 核物質管理センター会長
左合正雄 東京都立大学教授
高島洋一 東京工業大学教授
田中直治郎 東京電力株式会社副社長
田宮茂文 濃縮・再処理準備会顧問
長谷川周重 日本化学工業協会会長
平塚保明 金属鉱業事業団理事長
藤波恒雄 原子力工学試験センター理事長
 電力中央研究所常務理事
松根宗一 経済団体連合会エネルギー対策委員会委員長
三島良績 東京大学教授
宗像英二 日本原子力研究所理事長
両角良彦 電源開発株式会社総裁
山田太三郎 前原子力委員
山本 寛 東京大学教授
吉山博吉 日本電機工業会会長
大川美雄 外務省国際連合局長
井上 力 通商産業省資源エネルギー庁長官官房審議官
中村四郎 運輸省大臣官房審議官
伊原義徳 科学技術庁原子力安全局長
山野正登 科学技術庁原子力局長

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