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「原子力の安全確保に関する当面の施策について」(原子力安全局)について


昭和51年3月23日
原子力委員会了承

 原子力委員会は、原子力の安全確保の重要性と、これに対する国民の要請にかんがみ、かねてより原子力安全に関する行政体制の充実を強く望んでいたところであるが、先般、科学技術庁に原子力安全局が設置されたのに伴い、同局からその安全確保に関する当面の施策について意見を聴取した。その結果、別紙のとおり示されたが、当面、これらを踏まえて、安全確保のための施策の一層の推進に努める必要があると考える。

 なお、長期的な観点に立脚した総合的な安全確保に関する施策については、関係省庁等における検討をも含めて、原子力開発利用長期計画等に反映させ、その確立に努めるものとする。


(別紙)

原子力の安全確保に関する当面の施策について

昭和51年3月15日
科学技術庁原子力安全局

 原子力開発利用の進展に伴い、近年、原子力の安全対策に万全を期することが、国民的要請となっている。このような原子力をとりまく情勢に対応して、本年1月科学技術庁に原子力安全局が設置され、安全確保に関する責任体制の明確化が図られたところである。今後とも、原子力の安全性を確保していくためには、安全確保に対する不断の努力と経験を積み重ね、それを通じて国民の理解と信頼を得ていくことが重要であり、当面、次に掲げる原子力安全対策を重点的に推進するものとする。

 第一に、原子力の安全確保に関する各種施策を有機的に結びつけ整合性のとれた総合的安全規制政策を推進するものとする。

 このため、
(1) 原子力委員会における安全会議の充実と相俟って、安全確保に関する総合的な施策を企画、立案する機能の強化を図ること、

(2) 積極的に放射線審議会に諮ることにより、最新の知見に基づいた各種基準等の整備を進めること、など所要の施策を講ずる。

 第二に、原子力利用の中枢を占める原子力発電所をはじめとする原子炉施設について、その安全確保を図るとともに信頼性の向上に努めるものとする。

 このため、
(1) 原子炉施設に関する各種の安全基準の整備を促進するとともに国際安全基準の策定に積極的な協力を図ること、また、安全研究、安全実証試験等を推進すること、
(2) 関係省庁と連携して、原子炉施設の運転経験等を十分安全規制に反映させるよう努めること、
(3) 原子炉施設の安全規制を一層充実させるため、行政機能の強化を図ること、

などの施策を講ずる。

 第三に、原子炉施設のみならず、ウラン濃縮、核燃料の加工、使用済燃料の再処理、プルトニウムの利用、放射性廃棄物の処理処分等の核燃料サイクル全般に関しても、安全確保に万全を期するものとする。

 このため、
(1) 原子力委員会に「核燃料安全専門審査会」が設置されるのと相俟って、再処理施設、プルトニウム施設、輸送物等の安全規制を総合的・体系的に実施することとし、また、このための行政機能の強化を図ること、
(2) 再処理施設、使用済燃料等の輸送等に関する安全研究を推進すること、
(3) 核燃料サイクルの各段階から発生する放射性廃棄物について、これを安全に処理処分するための方策を確立し、これを推進すること、
(4) 核物質防護及び保障措置を適正に実施すること、

 などの施策を講ずる。

 第四に、これら原子力施設の運転にともなう、周辺住民の生活環境における施射能の監視及び施設内に働く従業員に対する放射線管理に万全を期するものとする。

 このため、
(1) 原子力施設からの環境への放射性廃棄物の放出の低減化を推進すること、
(2) 環境放射線モニタリングに関して、基本的な考え方をより明確にするとともに、これに基づく体制の整備を図り、とくに環境影響評価に関する情報の管理を充実させ、その影響評価を円滑に行いうるよう努めること、なお、分析、測定に関する体制についてもその整備に努めること、
(3) 原子力施設内における従業員に対する放射線管理体制の一層の充実を図ること、

など所要の施策を講ずる。


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