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昭和51年度原子力開発利用基本計画の決定について


昭和51年3月19日
原子力委員会

 昭和51年度原子力開発利用基本計画を別紙のとおり定める。

 なお、本基本計画は、昭和51年度予算及び関連法案の成立を前提として定めるものである。

(別紙)

昭和51年度原子力開発利用基本計画

 Ⅰ 基本方針

(1) 今日、世界各国は、エネルギー資源に恵まれてない国々はもとより、豊富に包蔵する国々においても、エネルギー消費の節約を図りつつ、エネルギー供給構造の改善、新エネルギーの開発等エネルギー面での自立の確保を目指して努力を傾注している。

 我が国は、エネルギーの供給構造が極めて脆弱であり、近い将来においてエネルギーの自給を図ることは不可能であるが、エネルギーの節約を図りつつ、供給源の多様化を進め、石油への依存度を低減することが必要である。このためには、現在実用化されつつある新エネルギーであり、経済性及び燃料の輸送・備蓄の有利さなどのメリットを備えている原子力の開発利用が最も適切な方策である。

 我が国は、かねてから原子力の開発利用を計画的に推進してきたが、昨年末、総合エネルギー対策閣僚会議は、「総合エネルギー政策の基本方向」において、準国産エネルギーとして原子力の開発の推進を図ることとしている。

 他方、このような情勢の進展にもかかわらず、原子力の開発利用に対しては原子力施設の安全性などについて、国民の間に依然として不安感が存在し、原子力発電所の立地難に典型的に見られるように原子力の開発利用が円滑に進まない状況にある。

 今後、このような状況を打開し、原子力に対する期待に応えていくためには、原子力の安全確保に万全を期しつつ、広く国民の理解と協力のもとに官民の総力を結集してその開発利用の進展を積極的に図っていくことが何よりも緊要である。

 原子力開発利用をとりまくこのような情勢の変化に鑑み、原子力開発利用に関する長期計画の改訂を行う。

(2) 原子力の開発利用につき、国民の理解と協力を得るためには、エネルギーの安定確保のための原子力開発の必要性について国民の理解を得るとともに、原子力の安全性についての国民の不安感を解消することが何よりも必要である。

 原子力の開発利用については、放射能を安全に管理することによって、はじめてその正しい発展が期待されるという観点に立ち、我が国は、厳重な規制と管理を実施し、安全性の確保に万全を期してきたところである。

 しかしながら、前述のような国民の不安を解消するとともに、原子力発電規模の増大、施設の大型化、集中化などの新しい情勢の展開に対応するためには、原子力発電所の安全な運転実績を集積しつつ安全対策を一層強化する必要がある。

 このため、昭和51年1月、科学技術庁に原子力安全局を設置し、安全確保に関する責任体制の明確化を図ったが、さらに原子力発電所をはじめとし再処理施設等核燃料サイクル全般、及びアイソトープ事業所等の原子力施設の整合性のとれた総合的な安全対策の確立、強化を図る。また、これに必要な安全規制行政体制の拡充を進めるとともに、関係省庁間の緊密な連繋のもとに安全規制を強化する。

 また、安全研究については、軽水炉及び新型動力炉の工学的安全研究をはじめ放射性廃棄物の処理処分、放射線の生物への影響、環境放射能等の調査研究を強力に推進する。とりわけ、軽水炉については、安全余裕度を実証的データにより確認するための大規模な安全実証研究及びより安全性を高めるための改良研究を進める。

 原子力開発利用の円滑な推進を図るためには、このような安全対策の充実をふまえ、原子力についての調査、広報活動、地元との対話、開発利益の還元等、国民の理解と協力を得ることが必要であり、このための諸施策を強化する。

(3) 原子力発電が将来の安定したエネルギー供給源となり、輸入石油に代替する地位を確立するためには、経済的で、かつ、我が国の自主性を確保できるような核燃料サイクルの確立を図ることが必要である。

 このため、ウラン資源の確保に必要な積極的な施策を講じる。濃縮ウランの確保については米国などからの供給を確保するとともに、国内においてもウラン濃縮技術の開発を進める。

 また、使用済核燃料の再処理については、動力炉・核燃料開発事業団の再処理工場の試運転を進め、その安全性を十分確認する。さらに将来の再処理需要に対応するため、今後の再処理工場建設計画等につき検討する。

 さらに新型動力炉開発についても、長期的な核燃料サイクルの確立の展望に立って、その開発計画の推進を図る。

 また、放射性廃棄物の処理処分に関して、低レベル廃棄物については、試験的海洋処分の準備等を行い、高レベル廃棄物については、処理処分技術等の調査、研究を行う。

(4) 原子力の研究開発は、長期的かつ総合的視野のもとに基礎研究から開発にわたる各分野で調和をとりつつ効率的かつ重点的に進めることが必要である。

 我が国における原子力開発は、諸外国に比し遅れて着手されたこともあって、海外からの技術導入を中心として利用が促進されてきているが、より一層将来に向かって発展するためには、官民一体となって積極的に軽水炉の安全研究及び信頼性向上のための実証試験、新型動力炉開発、遠心分離法によるウラン濃縮技術開発、核融合研究開発、原子力船の開発等の自主開発プロジェクトの推進を図っていかなければならない。

 とくに人類の未来を担う究極のエネルギー源として期待される核融合については、臨界プラズマ条件の達成を目指す第二段階の研究開発を進め、昭和51年度から、日本原子力研究所において臨界プラズマ試験装置の建設に着手する。

 また、原子力第一船「むつ」については、日本原子力船開発事業団において遮蔽改修の準備及び安全性の点検等を行う。

 製鉄への利用を中心とした多目的高温ガス炉については、日本原子力研究所において研究開発を引き続き進める。

 基礎研究は新しい技術開発の芽ばえとなるものであり、大学における研究に加えて、日本原子力研究所、理化学研究所等の特殊法人、放射線医学総合研究所、電子技術総合研究所、その他国立研究機関等の研究を更に充実させることとし、また民間に対する試験研究の委託を引き続き行う。

 また、保障措置技術に関する試験研究及び核物質防護措置用の機器についての研究開発を行う。

 以上の研究開発の推進に当たっては、安全研究をはじめとし、国際協力を一層積極的に推進する。

(5) 昭和51年度の原子力開発利用については、以上の基本方針に立って、第Ⅱ章に述べる具体的施策を推進する。

 Ⅱ 計画の大綱

  1. 原子力開発利用に関する長期計画の改訂

 今後原子力開発利用を円滑に推進するためには、安全確保及び環境安全対策をより強力に推進する必要があるとともに、原子力発電の実用化の進展に備えて、これと整合のとれた核燃料サイクルの早期確立のため基盤整備が急務となっている。更に長期的な核燃料資源の供給等の展望に立って、新型動力炉、核融合等の実用化を目指した研究開発を推進する必要がある。

 かかる観点から、国際的動向をも勘案しつつ、長期的展望に立った整合性ある総合的な長期計画の改訂を行う。

  2. 安全対策

(1) 安全規制等

 原子力開発利用の進展に伴い、原子力の安全対策に万全を期すことが国民的要請となっている。このような原子力をとりまく状況に鑑み、昭和51年1月、科学技術庁に原子力安全局を設置し、安全確保に関する責任体制の明確化が図られた。原子力の安全性を真に確保していくためには、今後とも不断の努力と経験を積み重ねていくことが重要である。

 このような認識のもとに、安全規制体制の一層の強化拡充に努める。原子力利用の中枢を占める原子力発電については、各種安全基準の整備をさらに進めるとともに国際的な安全基準作成計画に参加する。また原子力発電所の建設、運転経験を反映し、併せて安全研究等の成果を取り入れ、信頼性の向上に努める。

 また、ウラン濃縮、核燃料の加工、使用済核燃料等の輸送、使用済核燃料の再処理、プルトニウムの利用、放射性廃棄物の処理処分等核燃料サイクル全般にわたって総合的安全規制体制の整備、強化を図る。

 更に、これら各施設の安全規制の強化に加え、原子力施設周辺の生活環境における放射線モニタリング及び施設内に働く従業員に対する放射線被ばく管理の充実を図る。

 これらの安全確保のための諸施策を通じ、国民の理解と協力を得ていくことが重要である。

(2) 軽水型原子力発電施設の工学的安全研究等

 軽水型原子力発電施設に関する工学的安全研究については、日本原子力研究所を中心として、国立試験研究機関及び民間等の協力のもとに、総合的、計画的に実施する。とくに、日本原子力研究所においては、一次冷却材喪失事故時の緊急炉心冷却装置の効果に関する実験及び原子炉安全性研究炉を用いた反応度事故下の燃料の安全性確認実験を継続して実施するとともに、燃料安全研究、構造安全研究、耐震研究等を実施する。

 また実用原子炉燃料を試験、検査するホット・ラボの建設を引き続き行うなど、原子炉安全研究の強化拡充を図る。

 他方、国際協力による安全研究を推進するために、ロフト計画、PBF計画、マルビッケン計画、インターランプ計画、ハルデン計画等の二国間、多国間協力に積極的に参加する。

 なお、電源開発促進対策特別会計による実証試験として、格納容器スプレー効果実証試験、蒸気発生器信頼性実証試験等を実施する。

 また工学的安全研究に加えて、原子力の安全性について、その社会的側面も含めた総合的な調査を行う。

(3) 放射性廃棄物の処理処分対策

 原子力発電所、再処理施設等の原子力施設から発生する放射性廃棄物については、環境への放出量の低減化を図るため、放射性希ガスの除去技術等の技術開発を一層推進する。また低レベルの放射性廃棄物については、今後発生量の増加が予想されており、これに対応し一層の減量に努めるとともに最終的処分方法として海洋処分及び陸地処分を組み合せて実施することとし、このための体制整備等を進める。なお海洋処分については昭和52年頃から、試験的海洋処分に着手し、本格処分の見通しを得る予定であり、昭和51年度はこのための準備をすすめる。併せて、陸地処分についても保管施設等の基準整備を進める。

 また、高レベルの放射性廃棄物については、国際協力を積極的に推進し、動力炉・核燃料開発事業団、日本原子力研究所等において、固化処理、工学貯蔵に関する研究開発を実施する。

(4) 放射線による人体の障害防止に関する調査研究

 放射線による人体の障害防止の調査研究については、放射線医学総合研究所を中心に、国立試験研究機関において総合的計画的に実施するほか、民間に委託して進める。

 放射線医学総合研究所においては、低レベル放射線の人体に及ぼす影響に関する研究として、放射線による晩発障害及び遺伝障害並びに内部被曝の障害評価に関する調査研究を強力に推進する。

 国立試験研究機関においては、低レベル放射線による突然変異の検出法に関する研究、植物における突然変異の誘発と回復に関する研究等を実施する。

(5) 環境放射線に関する調査研究

 放射線医学総合研究所その他の国立試験研究機関、日本原子力研究所、地方公共団体試験研究機関等により、環境放射線モニタリング及び公衆の被ばく線量評価に関する調査研究並びに一般環境、食品及び人体内の放射能に挙動と水準の調査を行う。

  3. 原子力発電施設等の立地円滑化

 原子力発電施設等の立地円滑化のため、「発電用施設周辺地域設備法」、「電源開発促進税法」及び「電源開発促進対策特別会計法」のいわゆる電源三法により、原子力発電施設等の周辺住民の福祉の向上に必要な公共用施設の建設を進めることにより、開発利益の地元還元を図るとともに、施設周辺の環境放射能の監視、温排水の影響調査、原子力に関する広報事業、また原子力発電施設の安全性及び信頼性の実証試験等を行う。

  4. 核燃料サイクル確立のための諸施策

(1) 核燃料確保対策

(イ) 核原料物質の探鉱開発

 海外ウラン資源の開発については、動力炉・核燃料開発事業団がアフリカ諸国、カナダ、オーストラリア等の有望地区において引き続き鉱床調査を行うとともに、ニジェール等において海外機関との協力による共同調査を実施する。

 また、金属鉱業事業団が成功払い融資等の助成措置を講じることにより、民間の海外探鉱開発活動を促進する。

 国内探鉱については、動力炉・核燃料開発事業団が、東濃地区の月吉鉱床の精密試錐を行うとともに、東濃周辺の有望地区の探鉱を進めまた、北陸地域、北上地域、琵琶湖周辺地区において、大規模低品位鉱床の探鉱を行う。

 さらに、ウラン資源開発のための試験研究については、動力炉・核燃料開発事業団が、人形峠鉱業所におけるUFまでの製錬転換試験を行うほか鉱石処理試験施設の建設等を行う。また、リン鉱石中及び海水中のウラン等低濃度ウラン資源の回収技術等に関する研究を進める。

(ロ) 濃縮ウランの確保

 ウラン濃縮の研究開発は、昭和47年8月の原子力委員会の「ウラン濃縮技術の研究開発に関する基本方針」に基づき、遠心分離法については、昭和60年までにわが国において国際競争力のあるウラン濃縮工場を稼動させることを目標に、動力炉・核燃料開発事業団が中心となり、第一次カスケード試験施設及び第二次カスケード試験施設による運転試験を行うほか、遠心分離機の開発、安全工学研究、量産技術開発、寿命試験等所要の研究開発を進める。

 更に、ウラン濃縮パイロットプラントの詳細設計を行うとともに、ウラン濃縮に関する諸問題についてチェック アンド レヴューを行い、今後のウラン濃縮研究開発の方針を策定する。

 また、レーザー法によるウラン濃縮の研究を昭和51年度より日本原子力研究所において進める。

 一方、国際共同濃縮事業計画の参加については、引き続き米国を中心に、欧州諸国、豪州等の計画について検討を行う。

(ハ) その他

 プルトニウムの軽水炉利用に関する研究については、動力炉、核燃料開発事業団においてプルトニウム燃料の照射試験等を実施するとともに民間に委託して解析評価等を行う。

 また、日本原子力研究所において、プルトニウム軽水炉利用に関し炉物理等の基礎研究を実施するとともに材料試験炉等を使用し、燃料、材料の照射試験を主体とした研究を実施する。

(2) 使用済核燃料の再処理

 核燃料の有効利用のためには、核燃料サイクル確立の鍵となる国内再処理体制の確立が肝要である。この観点に立ち、昭和52年度操業開始を目途に動力炉・核燃料開発事業団の東海再処理工場の試運転を進める。

 昭和51年度においては、天然ウラン及び劣化ウランを使うウラン試験を引き続き行い、その後、実際の使用済燃料を使うホット試験を行って工場の性能及び安全性を十分確認し、操業開始に備える。一方、廃棄物処理処分等所要の研究開発を行う。

 また、将来の再処理需要に対応するため、今後の再処理工場建設計画の具体化を進めるとともに、当分の間の国内再処理能力を上回る再処理需要に対する海外再処理委託等経過的な対応策の確立を図る。

  5. 新型炉等の開発に関する諸施策

(1) 新型動力炉の開発

 高速増殖炉及び新型転換炉については、「動力炉開発業務に関する基本方針」及び「同第2次基本計画」に基づき、動力炉・核燃料開発事業団を中心に以下の研究開発を推進する。

 なお、これら研究開発の効率的な推進を図るため、日本原子力研究所、民間等の協力を得るとともに、海外との技術協力を推進する。

 (イ) 高速増殖炉

 高速増殖炉については、実験炉の総合機能試験を進め、昭和51年に臨界に至らせる。又、原型炉については設計究を進めるとともに、原型炉に関する炉体構造、燃料材料、安全性、蒸気発生器等の研究開発を行う。

 さらに、原型炉建設の準備を進める。

 (ロ) 新型転換炉

 新型転換炉については、昭和52年臨界を目標に原型炉の建設を進めるとともに、燃料材料、部品機器、安全性等の研究開発を行う。

 (ハ) 共通事業

 動力炉開発に共通な施設として、プルトニウム燃料施設を整備し、プルトニウム燃料の生産等を行う。また、廃棄物処理施設の建設等を進める。

 さらに、高レベル放射性物質処理技術開発施設の建設に着手する。

(2) 核融合に関する研究開発

 核融合の研究開発については、原子力委員会の「第二段階核融合研究開発基本計画」に基づき、日本原子力研究所を中心として理化学研究所、電子技術総合研究所、金属材料技術研究所等において総合的に推進するほか、民間に委託して進める。

 日本原子力研究所においては、第二段階研究開発の主装置である臨界プラズマ試験装置(JT-60)に関し、主要コンポーネントの試作開発等を完了する。この成果をふまえて、臨界プラズマ試験装置用トロイダルコイルの製作に着手する。また、中間ベータ値トーラス装置(JFT-2)、高安定化磁場試験装置(JFT-2a)による研究等を行う。また、非円形断面トーラス試験装置(JT-4)のコンポーネントの技術評価を行う。さらに長期的観点から核融合動力実験炉等の開発に備え、核融合炉心工学技術及び核融合炉工学技術に関する研究を実施する。

 理化学研究所、電子技術総合研究所、金属材料技術研究所等においては、それぞれ診断技術の研究等、高ベータ・プラズマの研究及び材料に関する研究を行う。

(3) 原子力船「むつ」の開発

 日本原子力船開発事業団において、原子力船「むつ」の遮蔽改修に必要な遮蔽実験を実施し、その成果等をもとに、遮蔽改修のための基本設計を行う。また、「むつ」の安全性を確認するため原子炉プラント機器の点検、設計の再評価等を行う。

  6. 関連重要施策

(1) 保障措置体制の整備

 国内保障措置体制の整備充実を図るとともに、保障措置技術に関する試験研究を日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団で行うほか、民間に委託して進める。これにともない国際原子力機関による保障措置については、その簡素化及び合理化に努める。

 また、核兵器不拡散条約下の保障措置についても国内制度との関連等を考慮し、我が国の原子力平和利用の進展を阻害することのないよう検討を進める。

 さらに、核物質の防護措置(フィジカル・プロテクション)について研究開発を進めるとともに、我が国の国情に即した体制の検討に努める。

(2) 基礎研究の充実

 日本原子力研究所、理化学研究所及び国立試験研究機関においては、我が国独自の創意による技術開発を進めるにあたって、その基盤となる基礎研究を大学における研究とも密接な連けいのもとに推進する。また、これらの研究のため日本原子力研究所の施設の共同利用等を前年度に引き続き積極的に行う。

 さらに、理化学研究所においては、重イオンを用いて物理、化学、生物学、材料試験等多分野の研究を推進するため、重イオン科学用加速器の建設を引き続き進める。

 また、日本原子力研究所に20MVタンデム型重イオン加速器を53年度完成を目途にその建設を引き続き進める等、物理、化学等基礎研究の充実を図る。

(3) 原子炉の多目的利用の研究開発

 日本原子力研究所において、多目的高温ガス炉実験炉の調整設計、高温伝熱流動、耐熱材料、燃料などに関する研究開発を行う。

(4) 放射線の利用

 日本原子力研究所、理化学研究所、放射線医学総合研究所、その他の国立試験研究機関等において工業、医学、農業等の各分野におけるラジオ・アイソトープ、加速器等の利用技術の研究を推進する。

 とくに、放射線医学総合研究所においては、引き続き、医用サイクロトロンを用いたガンの治療研究等、医学的利用に関する研究を行う。

 また、食品照射については、「食品照射研究開発基本計画」に基づき原子力特定総合研究として推進する。

 さらに、放射線化学の研究については、日本原子力研究所高崎研究所を中心に推進する。

(5) 調査・広報活動の強化

 原子力発電等原子力の平和利用に対する国民の理解と協力を得るため、関係諸機関の協力のもとに、テレビ、出版物等による広報活動、講演会及び各種セミナーの開催、関係各界代表等による意見交換、資料の公開等を引き続き行うとともに、広く国民の意見を聴するためのモニター活動を開始する。

 また、内外における原子力関係資料の収集、分析を中心とした調査、海外原子力事情の実施調査、国内の原子力開発利用に関する動態調査等を前年度に引き続き行う。

(6) 国際協力の推進

 海外との技術研究協力については、新型動力炉の開発、核融合の研究開発、原子炉の安全研究、使用済核燃料の再処理技術、放射性廃棄物処理処分、保障措置技術等の各分野に関し、米国、英国、フランス、カナダ、オーストラリア、西独、スウェーデン、ソ連等との二国間協力を通じて行う。

 また、濃縮ウラン、天然ウラン等の供給確保については、既存の各原子力協力協定に基づいて、引き続きその安定確保に努める。

 さらに、原子力平和利用の各分野にわたり、国際原子力機関、OECD・IEA、OECD・NEA等の国際機関の活動に積極的に参加する。

 発展途上国に対する技術援助については、適切な協力に努める。

(7) 科学技術者の養成訓練

 原子力関係科学技術者を海外に留学生として派遣し、その資質向上に努める。また、日本原子力研究所、放射線医学総合研究所等において原子力関係科学技術者の養成訓練を行うとともに、各大学及び民間においても、原子力関係講座及び実験施設を更に充実し、関係科学技術者の教育、訓練を行うことを期待する。

  7. 予算及び人員

 昭和51年度における原子力開発利用を推進するために必要な原子力予算及び人員は次表のとおりである。

昭和51年度原子力予算政府原案総表

1. 一般会計予算

2. 電源開発促進対策特別会計予算

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