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京都大学原子炉実験所の原子炉の設置変更
(臨界実験装置の変更)について(答申)




50原委第236号
昭和50年6月3日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

 京都大学原子炉実験所の原子炉の設置変更(臨界実験装置の変更)について(答申)

 昭和50年3月18日付け50原第2050号(昭和50年5月22日付け50原第4496号で一部補正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。



1 標記に係る承認の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる承認の基準のうち第1号、第2号および第3号については適合しているものと認める。

2 上記承認の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。


(別添)

昭和50年5月23日

原子力委員会
委員長 佐々木義武 殿

                             原子炉安全専門審査会
                                              会長 内田 秀雄

 京都大学原子炉実験所の原子炉の設置変更(臨界実験装置の変更)に係る安全性について
 当審査会は、昭和50年3月18日付け50原委第112号(昭和50年5月22日付け50原委第233号をもって一部補正)をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。


Ⅰ 審査結果

 京都大学原子炉実験所の原子炉の設置変更(臨界実験装置の変更)に関し、同大学が提出した「京都大学原子炉実験所の原子炉設置変更承認申請書(臨界実験装置の変更)」(昭和50年3月10日付けで申請、昭和50年5月15日付けで一部補正)に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。


Ⅱ 変更内容

1 反射材の種類に関する事項

 高中性子束原子炉の研究開発のため、軽水減速炉心の反射材の種類に重水を追加する。重水はタンクに封入し、そのタンクを軽水減速架台の格子板に固定して使用する。

2 燃料体に関する事項

 燃料要素及び燃料集合体に関する事項を次のように変更する。

2.1 燃料要素

 軽水減速炉心用の燃料要素1枚当りに含まれるU量を、従来の「約10g」から10gより少い燃料要素も使えるように「約10g以下」と変更する。

2.2 燃料集合体

 軽水減速炉心用の燃料要素支持フレームに、燃料要素が全体としてほぼ円筒形に配置できるようにするため、円筒状燃料要素支持フレームを追加する。

3 計測制御系統施設に関する事項

安全保護回路の種類及び制御材の構造に関する事項を次のように変更する。

3.1 安全保護回路の種類

 安全保護回路に重水タンクの水位が低いとき、低水位の警報及び炉心タンクへの給水を停止するインターロックを追加する。

3.2 制御材の構造

 軽水減速炉心用の制御材に、従来のほぼ矩形断面をもつものに、さらに円形、楕円形、三角形、円環、楕円環の断面をもつものを追加する。

4 敷地に関する事項

 敷地を購入したので敷地面積を増加する。


Ⅲ 審査内容

 本変更を行っても、以下のような安全設計、安全対策等を行うことになっており、変更後も十分安全性は確保しうるものと認める。

1 反射材に重水の追加

 重水を封入する重水タンクは、アルミニウムの溶接構造で重水の漏洩及び重水への軽水の混入を防止するため、十分な気密性を有する設計とする。重水タンクを軽水減速架台の炉心タンクに設置するときは、浮上などを防止するため、格子板に機械的に固定することとなっている。
 さらに、重水タンク内の重水水位が一定水位より低いときは、警報を発する回路及び炉心タンクへの軽水の給水を停止するインターロックを設けることになっている。
 減速材の軽水中に重水が混入した場合及び反射材の重水中に軽水が混入した場合について、実効増倍率を解析した結果、どちらの場合にも実効増倍率は減少する。
 また、重水タンクは形状の異なるものを数個製作し、高中性子束炉の炉物理実験を数段階にわけて行い、その各段階ごとに安全性を確認しながら進めることになっている。

2 燃料要素のU量の変更

 U量の少い燃料要素は、中性子束の高くなる部分の燃料要素の出力密度を押えるために使用するもので、従来の燃料要素に比べ、U-Al合金中のU含有量が少くなるだけで、その他の材料、寸法、製造方法などは変更されない。
 なお、燃料要素の誤装荷を防ぐため、燃料要素に刻印などを行い識別できるようにすることとなっている。

3 燃料要素支持フレームの追加

 円筒状燃料要素支持フレームの材料、格子板への設置の方法、燃料要素をはめこむ溝及び溝のピッチは従来の標準型燃料要素支持フレームと変更はない。
 また、円筒状燃料要素支持フレームを使用する場合でも、核的制限値に変更はない。

4 制御材の構造の追加

 制御材の断面形状以外の中性子吸収体材質、中性子吸収体の長さ、スクラム時の制御材落下時間、反応度印加率、制御棒の反応度抑制効果などは変更されない。
 なお、本変更によっても、最大過剰反応度及び反応度制御能力には変更がないので、従来の事故評価を変更する必要はない。
 また、敷地面積が増加しても、周辺監視区域及び敷地境界までの最短距離に変更はないので、平常運転時及び事故時の被曝評価を変更する必要はない。


Ⅳ 審査経過


 本審査会は、昭和50年3月24日の第135回審査会において、次の委員からなる第117部会を設置した。

 (審査委員)
  弘田 実弥(部会長)  日本原子力研究所
  望月 恵一           動力炉・核燃料開発事業団

 (調査委員)
  石川 迪夫         日本原子力研究所

 当部会は、同年4月10日に第1回会合を開催して以来、審査を行ってきたが、同年5月14日の部会において部会報告書を決定し、本審査会はこれを受け、同年.5月23日の第137回審査会において本報告書を決定した。
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