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関西電力株式会社高浜発電所の原子炉の設置変更
(1号及び2号原子炉施設の変更)について(答申)




50原委第164号
昭和50年4月25日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

 関西電力株式会社高浜発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)について(答申)

 昭和50年3月18日付け50原第2044号で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。



① 標記に係る許可の申請は、核原料物資、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第26条第4項において準用する第24条第1項各号に掲げる許可の基準のうち第1号、第2号および第3号については適合しているものと認める。

② 上記許可の基準第4号については、原子炉安全専門審査会による安全性に関する審査結果報告は別添のとおりであり、適合しているものと認める。

  (別添)
    昭和50年4月15日
原子力委員会
委員長 佐々木義武 殿

                              原子炉安全専門審査会
                                              会長 内田 秀雄

 関西電力株式会社高浜発電所の原子炉の設置変更(1号及び2号原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和50年3月18日付け50原委第111号を以って審査を求められた標記の件について結論を得たので報告します。


Ⅰ 審査結果

 関西電力株式会社高浜発電所の原子炉の設置変更に関し、同社の提出した「高浜発電所原子炉設置変更許可申請書(1号及び2号原子炉施設の変更)」(昭和50年3月10日付け申請)に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。


Ⅱ 変更内容

1)原子炉からの放射性廃棄物の廃棄施設の設備として、廃樹脂貯蔵タンク(4台、容量15m3/台、1、2号炉共用)を増設して廃樹脂の貯蔵能力を増大する。

2)発電所敷地面積を約2,300,000m2に変更する。


Ⅲ 審査内容

1)廃樹脂貯蔵タンクの増設について

 本変更に係る廃樹脂貯蔵タンクを収納する廃樹脂貯蔵室は、2号炉西側台地部(標高17m)の地点に鉄筋コンクリート造りとし、その基礎は岩盤にて固着され、廃樹脂貯蔵タンクと共に重要度分類Bクラスの耐震設計とされる。
 各タンクは鉄筋コンクリート壁でそれぞれ分離して配置され、廃樹脂貯蔵室周囲のコンクリート壁は十分なしゃへい効果を有する厚さとされる。
 廃樹脂貯蔵室内には、プロセスモニタおよびエリアモニタを設け、廃樹脂貯蔵室内の空気および排気中の放射性ガスおよび塵埃の放射能ならびに廃樹脂貯蔵室内の空間線量率を測定し、この測定結果を中央制御室で連続記録するとともに警報設定値を越えた場合には警報を発するように設計される。
 廃樹脂貯蔵室内は、タンク内包物が万一系外に漏洩した場合でもこれが廃樹脂貯蔵室外に漏出しないように床および壁下部には貫通孔を設けないような構造とされる。
 廃樹脂貯蔵室内の空気の換気は、排気を排気フィルタユニットでろ過した後、排気口から放出するようにされ、この建屋内で万一空気汚染が生じた場合には汚染空気を建屋内で再循療させて放射性物質の施設外への放出ができるだけ少なくなるように設計される。
 廃樹滑貯蔵タンクは、先行炉の廃樹脂の発生実績等からみて、既設の廃樹脂タンク(容量8.5m3/台、2台)と合せると廃樹脂は約5年程度貯蔵能力に増大される。
 廃樹脂貯蔵タンク増設にかかる本変更は、以上のような措置、対策がとられることとしているのでその安全性は十分に確保し得るものと認める。

2)発電所敷地面積の変更について

 本変更によって原子炉施設の敷地面積は、変更前に比較して約200,000m2減少し約2,300,000m2となる。
 これに伴ない敷地境界までの最短距離はそれぞれ1号炉においては炉心から南々東方向約740m、2号炉においては北々東方向約760mとなる。この敷地境界の変更によっても平常時の被ばく線量は変らず、また「原子炉立地審査指針」に基づく重大事故および仮想事故の被ばく線量は変更前とほとんど変らず、被ばく線量が最大となる地点は前記最短距離の敷地境界であり、被ばく線量は次のような数値となる。

(1) 重大事故
   1号炉 甲状腺被ばく線量(小児)約35rem 全身線量約0.19rem
   2号炉 甲状線被ばく線量(小児)約34rem 全身線量約0.18rem

(2)仮想事故
   1号炉 甲状腺被ばく線量(成人)約40rem 全身線量約4.7rem
   2号炉 甲状腺被ばく線量(成人)約38rem 全身線量約4.1rem

 上記の線量は、「原子炉立地審査指針」に示されている非居住区域および低人口地帯に対する目やす線量を十分下まわっており、本変更によって安全性が損われることはない。


Ⅳ 審査経過


 本審査会は、昭和50年3月24日第135回審査会および昭和50年4月15日第136回審査会において審査を行った結果、本報告書を決定した。
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