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放射線障害防止に関し最近講じた主要施策の大要



1 取扱事業所の総点検の実施

(1)本年5日20日付け大臣名文書により、放射性同位元素等を取り扱う全事業所に対して、総点検を実施させ、問題点を改善させるとともに、その結果を報告させた。
 この各事業所からの報告をとりまとめ、8日30日発表した。また、関係省庁に提供し行政運営の参考に供した。

(2)総点検結果の報告において問題点の改善が十分でないと認められる事業所等に対して、8月~9月に、労働、厚生、文部、科学技術の各省庁が分担して立入検査・指導を行なった。

(3)全取扱事業所に対し9月27日付け原子力局長名文書をもって、総点検で把握した問題点の改善を重ねて要請するとともに、変更許可等については問題点の改善を確認して行なう旨を通知し、その後の許認可、届出受理においては当該事業所につきこの確認をしたうえで許認可等を行なっている。

2 放射線障害防止対策要綱の策定・実施

(1)前記総点検の結果等を踏まえて、「放射線障害防止対策要綱」を策定し、8日30日閣議において森山大臣から関係各省庁の協力を要請するとともに、同日これを発表した。同時に森山国務大臣談話が出された。

(2)その後、同対策要綱に基づいて、放射線障害防止法の許認可等(年間約5,000件)の厳正な審査、立入検査(年間約400事業所)の効果的な実施等行政運営の改善に努めるとともに、後記諸施策を推進している。

3 関係監督官庁の連携協力体制の確立、推進

(1)放射線障害防止関係省庁連絡会議の設置

 本年5日16日関係省庁と「放射線障害防止関係省庁連絡会議」を設置し、放射線障害防止に係る諸対策について連絡協議を行ない、関係行政の円滑かつ効率的な運営を図っている(当初4省庁。 現在9省庁)。

(2)立入検査等の連携協力実施

 前記総点検結果の改善不十分事業所に対する各省庁の立入検査等の分担実施のほか、8月~9月、全国の病院・診療所に対する厚生省(都道府県)の医療監視、民間の放射線取扱事業所に対する労働省(労働基準監督署)の一斉監督(約1,200事業所)、大学に対する文部省の指導等が行なわれ、当庁では放射線障害防止法上特に問題のあると思われる事業所について重点的に立入検査を行なった。

(3)関係行政職員等の研修

 関係省庁において、都道府県医療監視員の研修(10日1日、厚生省)、大学の放射線担当者の研修(11日6日、文部省)等が行われ、当庁からも担当官を派遣し、指導を行なった。

4 事業所・業界の安全活動の組織的推進

(1)国立事業所に係る「各省庁放射線障害防止対策連絡会議」の設置

 国立事業所の放射線安全管理の徹底につき、人事院主催により、7月29日、17省庁をもって「各省庁放射線障害防止対策連絡会議」を設置した。

(2)民間事業所に係る「放射線障害防止中央協議会」の設置

イ 8月30日、森山大臣が放射線取扱いに関係のある業界団体(28団体)の代表を招き、自主的安全活動の推進及びその中核組織としての協議会の設置を要請した。

ロ これを受けて、関係業界団体において準備を進めた結果、10月29日、関係業界団体26団体を構成員として「放射線障害防止中央協議会」が設立され、自主的安全活動を開始した。

(3)都道府県レベルの放射線障害防止協議会の設置 都道府県レベルにおいては、労働省(都道府県労働基準局)の指導により、各都道府県別の放射線障害防止協議会の設置が進められている。

5 特別措置

(1)非破壊検査事業会社に対する一斉立入検査の実施

イ 先般判明した非破壊検査関係の事故等にかんがみ、5月28日から6月1日にかけて、全国の非破壊検査事業会社20社に対し一斉立入検査を実施し、所要の改善措置を行なわせた。

ロ 非破壊検査に使用する線源ホルダーについて、製造会社を指導して危険物であることが第三者でも容易に見分けられるよう、線源ホルダーに「放射能」「キケン」の文字を刻印させた。(なお、この標識については、これを規則化すべく現在労働省令の改正の準備が進められている。)

(2)病院、大学についての特別措置

イ 7月4日厚生省医務局長に対し原子力局長名文書をもつて、医療機関における放射性同位元素の取扱いに関する監督指導の徹底を要請した。
これを受けて厚生省では、7月9日各部道府県知事に対し診療用放射線の安全管理の徹底について医務局長名文書で通知した。各都道府県では、8月~9月病院・診療所の医療監視を実施した。

ロ 6月22日文部省学術国際局長に対し原子力局長名文書をもって、大学全般における放射線安全管理の徹底について監督指導を要請した。
これを受けて、文部省では、9月7日全国の国公私立大学長に対し放射線管理体制を整備するよう、学術国際局長名文書で通知した。また、同省では、11月国公私立大学の放射線関係者に対する研修を実施した。

6 放射線障害防止に関する教育、広報

(1)原子力の日(10月26日)の関連行事の一環として、放射線障害防止に関するポスター(1万部)及びパンフレット(2万部)を作成し、放射性同位元素等を取り扱う全事業所(約3,200所)及び関係官公庁等に配布し、安全に関す認識の高揚、
安全管理の徹底を図った。

(2)前記厚生省、文部省等の研修のほか、民間団体の放射線取扱主任者の会議その他の機会を活用して、放射線安全管理の徹底等につき指導、教育に努めている。

7 発生した諸事故に関する行政措置の実施

 最近発生ないし判明した次の諸事案につき、それぞれ立入検査その他所要の行政措置をとり、原因の究明、安全管理の改善徹底等を行なわせた。

① 日本非破壊検査(株)年少者被曝等事件
② 日本工業検査(株)年少者被曝事件
③ 東京大学教養学部助教授衣服汚染外出事件
④ 東北大学理学部原子核理学研究施設被曝事件
⑤ 放射線医学総合研究所サイクロトロン被曝事件
⑥ 国立高崎病院226Ra管紛失事件
⑦ 医療法人橋本会橋本病院60Co管紛失事件
⑧ 非破壊検査(株)(関電美浜発電所)192Ir盗難事件
⑨ 順天堂大学附属病院ドーズ・メーターRaの内蔵事件

8 放射線取扱主任者試験の実施

 本年度の放射線取扱主任者試験を8月28日~30日に東京と大阪で実施した(受験申込者数11,216人)。
現在、採点整理等合否決定の事務を進めている。

9 法制等の検討

(1)放射線障害防止法の施行体制等の検討

 本年7月1日設置された「原子力法令制度審議室」と連携して、放射線障害防止法の施行体制、技術基準その他の規制内容等について、基本的な検討を開始した。
 なお、放射線審議会基本部会においてICRP勧告の検討を進めており、これまでにPub.9,15を検討し、今後Pub.12,7,10,10A等を検討していくこととしている。

(2)安全輸送基準の検討

 放射性物質の安全輸送問題について、IAEAの基準を取り入れるべく、原子力委員会の「放射性物質安全輸送専門部会」において検討を行っている。なお、輸送容器の安全性について日本アイソトープ協会に研究を委託している。

(3)盗難防止対策の検討等
 去る8月の非破壊検査(株)の関西電力(株)美浜発電所における192Irの盗難・恐喝事件の発生等にかんがみ、放射性同位元素の盗難防止対策について、放射線障害防止関係省庁連絡会議(警察庁を含む。)の場を活用して検討を行なっていくこととしている。
 なお、震災対策についても、国土庁の総合対策の一環として、当課において検討を開始した。

 

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