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核融合研究開発懇談会報告


昭和49年7月26日
原子力委員会核融合研究開発懇談会

まえがき

 原子力委員会は、昭和43年7月核融合研究開発の重要性に鑑み将来における制御熱核融合反応の実現を明確な目標として、昭和44年度から昭和49年度までの第一段階の研究開発を原子力特定総合研究に指定し、日本原子力研究所、理化学研究所および工業技術院電子技術総合研究所が相互に有機的連繋を計りつつ研究開発を推進してきた。
 この研究開発により、これまで着実な成果が挙げられ特に主計画であるトカマク型装置の研究開発においては、世界の研究開発水準に比肩し得るまでの顕著な成果が得られた。一方名古屋大学プラズマ研究所および各大学は過去十余年にわたって研究開発基盤の育成、充実に努めいくつかの世界的水準の研究成果を挙げ、さらに人材養成の面からも多大の貢献をした。また、民間企業も関連設備、機器の開発に努め、第一段階研究開発の円滑な推進を側面より支援した。
 これら関係者の多大の熱意と努力により、いまやわが国は臨界プラズマの達成を明確な目標とする研究開発を実施できる段階を迎え、将来における核融合動力実験炉の実現を想定し得る段階に達した。原子力委員会は、これらの諸情勢を勘案し、今後の核融合研究開発の推進方策の決定に資するため、昭和48年5月本懇談会を設置し、(1)今後の核融合研究開発計画について、および(2)研究開発体制について、審議を進めてきた。今後の核融合研究開発計画については、本懇談会は技術分科会を設置し、核融合炉の実現を直接目ざした大規模装置による研究開発およびこれに係る広範な関連技術の開発を中心とした長期的観点からの研究開発の進め方および第二段階核融合研究開発計画について検討を進め、昭和48年11月30日同分科会より報告を受けた。
 長期的観点からの研究開発の進め方については、昭和50年代中頃に臨界プラズマ試験装置を完成させ、昭和60年頃に実験炉炉心モックアップ試験を実施するための実験炉炉心モックアップ試験装置の建設を、昭和60年代中頃に核融合動力実験炉の建設をそれぞれ目途として研究開発を進める必要があるとしている。
 更に、核融合動力原型炉については昭和70年頃に、核融合動力実証炉については今世紀末ないし来世紀初頭に建設することを目途とするのが妥当であるとしている。
 また昭和50年度より開始される第二段階核融合研究開発計画については現時点において臨界プラズマ試験装置として最善とみられるトカマク型装置により核融合動力炉を目ざした臨界プラズマの達成をはかるための研究開発を実施することが必要であるとしている。
 本懇談会はこれらの計画が妥当であるものとして了承し、本報告をもとに、今後の研究開発の推進方策、研究開発体制等について審議を進めてきたが、ここに結論を得たので報告する。

懇談会構成員(順不同)

(1)構成員審査委員
座長 井上五郎
芦原義重
有沢広巳
加藤乙三郎
木川田一隆
岸田純之助
駒井健一郎
向坂正男
提佳辰
土光敏夫
林雄二郎
伏見康治
星野敏雄
松根宗一
向坊隆
宗像英二
山本賢三
木田宏
太田暢人1)
松本敬信2)
成田寿治3)
田宮茂文4)
牟田口道夫5)
生田豊朗6)
原子力委員会委員長代理
関西電力(株)取締役会長
総合エネルギー調査会総合部会長
電気事業連合会会長
東京電力(株)取締役会長
(株)朝日新聞社論説委員
(株)日立製作所取締役会長
(財)日本エネルギー経済研究所所長
(株)日本経済新聞社論説委員
東京芝浦電気(株)取締役会長
(財)末来工学研究所長
日本学術会議副会長
理化学研究所理事長
(社)日本原子力産業会議顧問
東京大学教授
日本原子力研究所理事長
日本原子力研究所理事
文部省学術国際局長
前通商産業省工業技術院長
通商産業省工業技術院長
元原子力局長
元原子力局長
前原子力局長
原子力局長

(2)原子力委員
武藤俊之助7)
稲葉秀三8)
松井明
田島英三9)
山田太三郎
宮島龍興10)
1)、3)、7)
2)、8)
4)
5)
6)
9)
10)
第1回
第2回から
第2回
第3回、第4回
第5回
第4回まで
第3回から

懇談会開催日
昭和48年6月19日
昭和48年11月30日
昭和49年4月23日
昭和49年6月3日
昭和49年6月28日
昭和49年7月26日
第1回会合
第2回会合
第3回会合
第4回会合
第5回会合
第6回会合

1 研究開発の意義について

 きれいで安定供給の可能なエネルギー源の確保は、われわれ人類が今後存続していくための不可欠の要件である。
 現在、世界のエネルギー資源の大宗は、石油を代表とする化石燃料が占めているが、長期的にみるとこれらの資源は有限であり、さきに今後、世界的にエネルギー需要の大幅な増大が予測される等エネルギー資源問題は、ますます緊迫した問題に発展するものと考えられる。
 これに伴い地球に偏在するこれら化石燃料の国際的な需給構造は極めて流動的になるものと判断される。
現在、わが国は一次エネルギーの約85%を海外資源に依存しており、これらの大部分は石油を中心とする化石燃料であるが、このような諸情勢を洞察するとわが国がこれらの化石燃料を将来にわたって安定に確保することは著しく困難であると考えられ、今や量的質的に充分保証された新しいエネルギー源を確保することが今後、わが国における安定した国民生活を営む上の必須な要件となってきている。
 これに応えうる新しい有望なエネルギー源の一つとして原子力の利用がある。
 ここ当分の間は在来型原子炉による原子力発電があり、また、長期的には高速増殖炉が期待でき、そして遠い将来にわたっては人類の夢である核融合がある。
核融合は、その燃料資源が実質的に無尽蔵に存在し、かつ燃料資源の地域偏在性がないこと、また放射性廃棄物の問題については定常的な処理の問題がないこと。等、数多くの特長を有しており人類究極のエネルギー源として強く期待されているものである。
 核融合動力炉の実現した段階において、わが国は現在山積しているエネルギー資源確保の困難を払拭し、エネルギー資源の海外依存からの脱却、環境保全性の高いエネルギーの安定供給等が可能となる、これは国民生活の福祉向上に寄与するところ著しく大であり、社会経済の発展を図る上でも重大な意義があるものと判断する。さらにこの開発の意義は単に国家的な利益の域にとどまらずその恵沢を全人類が享受しうるところにある。かかる意義を充分認識し、わが国は21世紀初頭の核融合動力炉実現を目指して、国力を挙げ、英知を尽くして、核融合研究開発を強力に推進することが必要である。

2 研究開発の現状について

 核融合の研究開発は、過去10年以上の間、高温プラズマを安定に閉じ込め得る磁気容器の探索にその重点が置かれていた。しかし世界の趨勢は昭和44年頃から新しい局面を迎えており、とくにトカマク型を中心とする低または中間ベータ・トーラス系装置は今後プラズマ加熱法の技術開発やベータ値を高めるなどの改良発展により臨界プラズマ達成の見通しを立てうる段階にまで達している。
 このような状況にあって米国、ソ連およびユーラトム(欧州原子力共同体)において次の段階の大型のトカマク型装置について建設または計画が進められている。これらのうち、臨界プラズマ条件をやや下回る条
件を目標とした規模のものとして、米国、プリンストン大学のPLT、およびソ連、クルチヤトフ原子力研究所のT-10の建設がすでに開始され、昭和50年頃に完成し昭和51~52年には実験結果が公表されるものとみられ、臨界プラズマ達成のため有力な資料が得られるものと期待されている。トカマク型装置による臨界プラズマ条件の達成を目途とする計画としては、米国のORMAK-F/Bx、ソ連のT-20、ユーラトムのJETなどの装置があり、現在これらの設計ないし検討が行なわれている。
 また、低または中間ベータ・トーラス系装置としてトカマク型装置と同様に将来性を嘱望されているステラレータ・ヘリオトロン等の非軸対称生装置についてはわが国およびソ連、西欧諸国において実験が行なわれている。この非軸対称性装置は定常出力炉になり得る可能性があるなどの優れた特長がある。
 一方、高ベータ・プラズマは、閉じ込め磁場のエネルギー利用率が極めて高いなどいくつかの長所を持っており、その代表ともいえるチータ・ピンチ装置は各国において大型化、トーラス化が図られている。
 また、磁気鏡型、カスプ型等の開放系磁気容器についても新しい観点から研究がひき続き進められている。
 以上の磁気容器によるものとは別の方向として核融合を目的としてレーザ等によるプラズマの慣性閉じ込め方法の研究開発が最近急速に注目されるようになり、わが国および米国、ソ連、西欧諸国において推進されている。レーザによるものについても、すでに核融合反応が観測され今後の発展が期待されている。
 このような世界の研究開発のすう勢をみると現時点においては、核融合研究開発の重点はトカマク型装置に置かれており、これに次いでステラレータ型装置等の非軸対称性装置、高ベータ・プラズマ装置、磁気鏡型装置、レーザ核融合等についても幅広く研究開発が進められている。

3 推進方策について

 前章で述べたごとく内外の核融合研究開発の状況は、低または中間ベータ・トーラス系装置として将来を嘱望されているトカマク、ステラレータ等の各装置による研究、高ベータ・プラズマの研究およびレーザを利用しての核融合反応の追求が行なわれている。
 このような内外の研究開発を勘案すると今後わが国としては、これら可能性のある方式による研究開発を総合的に推進していく必要があるがとくに核融合動力炉の実現のための最捷路として、最善とみられる型式の装置により、臨界プラズマの達成を図り、その成果および内外における研究成果を見極めつつ核融合動力炉を直接目指した研究開発を強く推進する必要がある。この核融合動力炉を直接目指した研究開発は大規模装置による研究開発およびこれに係る広範な関連技術の開発を必要とするもので、国家的プロジェクトとして推進すべきものであり、これは科学技術庁関係原子力研究開発機関が主軸となって国立試験研究機関とともに実施することが妥当である。
 一方、究極の核融合動力炉実現の可能性を考慮すると種々の方式による核融合実現の可能性を探求し、その実証の見通しを得るための基礎的、先駆的な研究開発および体系化のための広範な基礎研究を推進することが極めて重要であり、これらの研究については、名古屋大学プラズマ研究所をはじめとする各大学等が中心となって行なう必要がある。
 これら両者は、相補的研究開発であり、広く人的、知的交流が活発に行なわれることを期待するとともに緊密な連けいのもとにわが国として実質上一元的に推進する必要がある。この観点から研究開発を推進、評価し、内外の動向、研究情報の把握等を行なうとともに関係機関の緊密な連絡を促進するための組織を原子力委員会に設置し、わが国の核融合研究開発の推進に万全を期す必要がある。
 また、研究開発の巨大さにかんがみ、大型装置の製作等を通じ、民間企業の積極的な協力を要望する必要がある。
 また、人類の究極的なエネルギー源である核融合動力炉の早期実現を目指し、人類福祉に貢献するためには、各国と相携えて研究開発を進めることが効果的であり、必要である。
 核融合研究開発の分野においては、従前より情報および人的な交流を通じ密接な国際協力が行なわれてきたがわが国における第二段階以降の急速な研究開発の進展を期待するとき一層積極的に海外諸国と国際協力を行ないつつ研究開発を進めることが必要である。

4 長期的観点からの研究開発の進め方について

 内外における現在の研究開発の進展をみるに核融合動力炉実現の時期は今世紀末ないし来世紀初頭になると予想されている。このような世界の趨勢を勘案し、わが国の核融合研究開発を長期的に展望すれば、まず核融合動力炉実現の鍵である臨界プラズマ条件の達成
に重点を置いて研究開発を実施し、この成果を踏まえて、次に示す各段階ごとに研究目標を設定し、それに従って研究開発を推進することが必要である。
 なお、これらの研究開発は、未踏の技術的問題を多々含むものであり紆余曲折も予想されるので内外における科学技術の進展とその成果を充分考慮し、社会的要請の変化に対処して適宜見直しを行ないつつ弾力的に推進する必要がある。

(1)臨界プラズマ試験装置

 臨界プラズマ条件を実現させ、核融合炉心としての有用性を実証することを目的とする臨界プラズマ試験装置を昭和50年代中頃に完成させ、これにより臨界プラズマ条件を達成するための研究開発を進める必要がある。

(2)実験炉炉心モックァップ試験装置

 実用規模の大容積炉心プラズマの発生、制御技術の開発のため、昭和60年頃に実験炉炉心モックアップ試験を実施することを目途として、実験炉炉心モックアップ試験装置の研究開発を進める必要がある。

(3)核融合動力実験炉

 定常的出力の発生、制御等の試験により、核融合動力炉の実証を行なうことを目的として、核融合動力実験炉を昭和60年代中頃に建設することを目途として研究開発を進める必要がある。

(4)核融合動力原型炉

 発電設備としての総合的機能試験等を目的とする核融合原型炉は、昭和70年頃に建設することを目途とするのが妥当である。

(5)核融合動力実証炉

 発電設備としての総合的評価を行なうことを目的とする核融合動力実証炉は、今世紀末ないし来世紀初頭に建設することを目途とするのが妥当である。

5 第二段階核融合研究開発計画について

(1)研究開発の目標

 第二段階における研究開発は今世紀末ないし来世紀初頭の核融合動力炉の実現を目途とし、その前提となる臨界プラズマ条件の達成を目指した研究に最重点を置き、さらに長期的観点から第三段階以降に予定される実験炉炉心モックアップ試験装置、核融合動力実験炉の開発等核融合動力炉の実現に必要な核融合炉心工学技術、核融合炉工学技術について研究に長期間を要するものおよび基盤的技術に重点を置いて研究開発を行ない、実験炉炉心モックアップ試験装置以降の研究に反映されることを目標として研究開発を推進する必要がある。
 また、第一段階の研究成果、すなわち、JFT-2による数百万度台における高温プラズマの安定な閉じ込め、閉じ込め時間に関する比例法則等の知見と、それを得るに至った技術的経験ならびに内外における研究開発状況とを総合的に考察した結果、現時点において臨界プラズマ試験装置としてトカマク型装置を選定することが適切である。
 この第二段階の研究開発期間は、主装置である臨界プラズマ試験装置による実験開始の予定時期、すなわち昭和54年度までとすることが妥当であると考える。

(2)研究開発の内容

 核融合研究開発の第二段階においては、核融合炉心プラズマ技術、核融合炉心工学技術および核融合炉工学技術における研究開発目標を達成するため以下の研究開発を実施する必要がある。

(ⅰ)核融合炉心プラズマ技術の研究開発

① 臨界プラズマ試験装置に関する研究開発
 臨界プラズマ条件、温度数千万度~1億度程度、プラズマ密度を閉じ込め時間の積2~6×1013cm-3秒程度を目標とした臨界プラズマ試験装置の設計、製作、実験および解析ならびに臨界プラズマ条件達成に必須な計算機実験、加熱技術、不純物対策、診断技術等に関する研究開発を行なう。

② 中間ベータ値トーラス装置(JFT-2)に関する研究開発
 JFT-2によりプラズマのエネルギー・バランス、安定性等の解明を目的とする実験研究を行なったあと、同装置により高エネルギー中性粒子入射加熱技術の研究開発を行なう。

③ 非円形断面トーラス磁場装置に関する研究開発
 プラズマの安定化等に及ぼす非円形断面の効果およびプラズマの不純物の除去を目的としたダイバータ効果について知見を得るため、高安定化磁場試験装置(JFT-2a)に引き続き非円形断面
トーラス試験装置によりプラズマ温度一千万度程度を対象とする研究開発を行なう。

④ 高ベータ・プラズマに関する研究開発
 高ベータ・プラズマの挙動を解明するため、トカマク型装置等の低または中間ベータ・トーラス系装置と対照的、相補的な高ベータ・トーラス系装置により、プラズマ温度一千万度までを対象として研究開発を進める。

(ⅱ)核融合炉心工学技術および核融合炉工学技術の研究開発

① 核融合炉心工学技術の研究開発
 実験炉炉心モックアップ試験装置以降の研究開発に備え、実験炉炉心モックアップ試験のための準備的研究を実施するとともに動的真空技術に関する研究を実施する。

② 核融合炉工学技術の研究開発
 核融合動力実験炉を目指し、核融合炉のシステム解析、炉物理に関する研究、材料の照射損傷等に関する研究、材料の共存性に関する研究、トリチウムの生産、回収に関する研究、伝熱流動に関する研究、安全性に関する研究および核データの整備を行なう。

6 研究開発体制について

 既に述べたとおり、今後推進すべき研究開発は、その規模において第一段階研究開発を飛躍的に拡大した研究開発である。
 今後、所期の研究成果を達成していくためには、国の総力を結集し、一層、研究の加速推進を図る必要があり、この観点から本研究開発を国のプロジェクトとして積極的に推進する必要がある。すなわち、今後の主要計画であるトカマク型装置に関する研究開発および核融合炉心工学・炉工学技術の中核的な研究開発を原子力特別研究開発計画(国のプロジェクト)として推進する必要がある。
 この研究開発計画は、わが国でも有数の巨大な計画であり、この研究開発の効果的な推進を図るためには、充分なる資金と広く関係各界から多数の優秀な人材を確保し、これらを有機的に活用し得る新しい研究開発実施機関、すなわち具体的には特殊法人核融合研究所(仮称)を設立することが必要である。
 この核融合研究所においては、国のプロジェクトとして推進する研究開発を進め、核融合動力炉実現のための中心的、総括的役割を果たすことが必要である。
この核融合研究所の設立にあたっては、研究開発の遂行に際してより弾力的な運営が行なえること、日本原子力研究所をはじめとする既存関係研究開発機関、大学、民間企業等との活発な交流、緊密な協力関係を確保し得ること、優れた研究者が進んでこの研究開発に参画し、効率的に成果を達成できるような研究環境が得られることなど条件整備について充分考慮する必要がある。
 わが国としては、早急にこの核融合研究所を設立する必要があるが、一方、第二段階研究開発は既に述べたごとくトカマク型装置による臨界プラズマ条件の達成を目途とした研究開発が中心であり、この段階における研究成果は、核融合炉実現の鍵を握るもので、核融合研究開発途上最も緊急を要する重要な段階である。したがって第一段階から第二段階へと円滑に移行させることが所期の目標を達成させる上において必須の要件であり核融合研究所設立に際して研究開発計画遂行に断層を生ぜしめないよう配慮しなければならない。
 このような諸要素を考慮して、核融合研究所の設立は、昭和51年度を目途とし、可及的速やかに設立準備組織を設置する必要がある。
 なお、核融合研究所が設立されるまでの間の研究開発業務については、現在トカマク型装置により顕著な成果を挙げている日本原子力研究所において、当面研究開発を実施し、これらの成果を円滑に核融合研究所へ移行させることが適切である。
 また、これまで進めてきた高ベータの研究、関連技術の研究等については、当面それぞれの担当機関がひきつづき研究開発を実施することとし、日本原子力研究所をはじめとするこれら研究開発機関の核融合研究所設立に伴うその後の具体的な研究開発の進め方については、早急に検討を行なうものとする。

7 研究開発基盤の拡充について

(1)人材の養成
 核融合研究開発の遂行にあたっては、豊かな創造力を持ち、かつ大型のプロジェクト的研究に取組む意欲と感覚を備えた優秀な人材を広く確保する必要がある。
 このためには、若い人材を組織的に養成してゆくことが極めて肝要である。この人材養成に関しては研究開発実施機関がこれを実施するとともに、現在大学の人材養成に果たす役割の重要性からみて、大学にも期待し、これに必要な教育および研究体制に適切な施策が講じられることを切望する。

(2)長期的観点から期待される先駆的な研究開発

 第5章で述べたとおり第二段階研究開発計画においては現時点において臨界プラズマ条件の達成に最善と考えられる型の装置を選択的、集中的にとり上げ研究開発を鋭意推進することを意図している。
 しかし、核融合研究開発の現段階における内外の情勢および自主開発の立場から究極の核融合炉実現の可能性を考慮すると、体系化のための基礎研究およびステラレータ、レーザ等他の方式による核融合プラズマの生成、制御の可能性を広く追求しておくことならびに核融合炉工学分野における基礎的、先駆的研究は極めて重要であり、これらの研究開発については、名古屋大学プラズマ研究所および各大学等において積極的に推進する必要がある。
 また、研究の一部については、民間企業への委託等を活用して全体的な研究開発基盤の拡充を図る必要がある。


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