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Ⅱ 主な事業



 1 高速増殖炉および新型転換炉の研究開発

 高速増殖炉については、実験炉の建設をすすめるとともに、実験炉および原型炉に関する炉物理、炉工学、核燃料、材料、安全性等の研究開発および原型炉の設計研究を行なう。

 また、原型炉の建設に関する諸準備をすすめる。

 新型転換炉については、ひきつづき原型炉の建設をすすめるとともに、各種の研究開発を推進する。

 これら高速増殖炉および新型転換炉については、動力炉・核燃料開発事業団が、日本原子力研究所、国立試験研究機関、大学、民間等の協力のもとにその研究開発を推進する。

 2 核燃料に関する対策

(1)濃縮ウランの確保

 遠心分離法によるウラン濃縮技術の研究開発については、新たに国のプロジェクトに指定することとし、動力炉・核燃料開発事業団を中心として、遠心分離機の高性能化および標準化のための試験、ならびにシステム開発のためのカスケード試験等を強力に推進する。

 ガス拡散法によるウラン濃縮技術の研究開発については、日本原子力研究所を中心として、高性能隔膜の開発、拡散筒ユニット試験等の基礎的研究を継続する。

 また、国際共同濃縮事業計画への参加についての諸問題を解明し、わが国の方針決定に資するために必要な調査を民間に委託して行なう。

(2)海外ウラン資源の調査探鉱

 海外ウラン資源の調査探鉱については、ウラン資源確保の重要性にかんがみ、民間による海外ウラン資源の探鉱開発に対する助成を行なうとともに、動力炉・核燃料開発事業団による海外調査業務を強化する。

(3)使用済燃料再処理施設の建設

 再処理施設については、主要な施設の建設を完了させ、コールドテストを開始するとともに、周辺海域についての所要の調査および放射性廃棄物放出低減化のための研究開発を行なう。

 3 原子力船「むつ」の開発

 原子力船「むつ」については、日本原子力船開発事業団により、実験航海を行ない、その安全性および性能を確認するとともに出入港の経験を得る。

 また、定係港施設を整備し、運営する。

 4 安全対策および環境保全対策の強化

(1)原子力施設の安全確保および放射線障害の防止

 原子力利用の進展に対処して、原子力施設の保安に万全を期する。

 また、原子炉の安全審査機能の一層の充実を行なうため体制整備を図るとともに、環境保全の問題について検討を行なうため行政機構の強化拡充を図ることとし、あわせて原子力施設の多数立地する地帯については、国の専門職員(原子力連絡調整官)を配置する。

(2)安全対策および環境保全に関する研究開発等

 原子力施設の安全性研究については、日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団および国立試験研究機関において実施するとともに民間企業に委託し、総合的、計画的に実施する。

 とくに、日本原子力研究所においては、事故現象の解明を中心として1次冷却材喪失事故実験、安全評価コードの開発等を行なうとともに、反応度事故実験装置の建設をすすめる。さらに委託費により安全基準、供用中検査など事故防止に関する研究を強力に推進する。

 放射性廃棄物の処理処分の研究開発については、日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団、国立試験研究機関等において総合的、計画的に実施するとともに、民間企業に委託して行なう。

 また放射性固体廃棄物の試験的海洋処分にそなえての海洋調査および陸上処分の可能性検討のための陸上調査を引き続き推進する。

 放射線障害の防止に関する研究については、放射線医学総合研究所等において、とくに低レベル放射線の人体等に及ぼす影響に関する調査研究を新たに開始することをはじめとして、その研究活動を強化する。

 放射能調査研究については、放射性降下物等環境放射能の実態を把握するための調査研究および原子力軍艦の寄港に伴う放射能調査を実施する。

 5 原子力知識の普及啓発

 広く一般国民に原子力に関する正しい知識の普及を図ることにより、原子力の平和利用に対する国民の理解を深め、原子力開発利用を一層円滑に推進するため、テレビ、映画、出版物等による広報活動、講演会および各種セミナーの開催などの普及啓発活動を積極的に推進する。

 さらに原子力施設の地元住民に対して重点的に普及啓発活動を行なうため、地方における普及事業に対する助成を行なう。

 これらの業務の円滑な推進を図るため、行政機構の強化拡充を図る。

 6 原子力地帯整備の推進

 国が行なう公共事業の一環として、東海、大洗地区における道路の整備事業等を引き続き推進するとともに原子力発電所等の立地の円滑化を図るため、広く原子力施設地帯の道路整備等の公共事業の促進、関係地方公共団体の負担軽減等に関し必要な法的措置を講ずる。

 7 原子力特定総合研究の推進

 昭和48年度においては、引き続きつぎに掲げる核融合の研究開発、食品照射の研究開発を推進するとともに、新たに原子力施設の安全性研究、放射性廃棄物の処理処分の研究開発、低レベル放射線の人体等に及ぼす影響に関する調査研究をそれぞれとりあげ、強力に推進する。

(1)核融合の研究開発

 核融合については、将来における制御熱核融合反応の実現を目標として、まず第一段階の研究開発を日本原子力研究所、理化学研究所および電子技術総合研究所が、大学、民間企業等の協力のもとに推進する。

 日本原子力研究所においては中間ベータ・トーラス磁場装置を用いた実験を推進するとともに高安定化磁場実験装置の製作を開始する。また理化学研究所においてはプラズマの診断技術等の関連技術の開発を、電子技術総合研究所においては高ベータ・プラズマの実験を引き続き行なう。

(2)食品照射の研究開発

 食品照射については、その実用化の見通しを得ることを目標として、国立試験研究機関、日本原子力研究所、理化学研究所等が協力してその研究開発を推進するとともに、日本原子力研究所において食品照射の共同利用施設の建設整備を行なう。

 8 原子炉の研究開発

 在来型炉については、その国産化を促進するために、日本原子力研究所において、動力試験炉の高出力運転(90MW)を行なうほか、材料試験炉により各種燃料、材料の本格的照射を実施するとともに、材料試験炉ループのひとつとして高温における燃料、材料の照射試験のため、ガスループ(OGL-1)を設置する等関連諸施設の整備を行なう。

 さらにプルトニウムの利用については、日本原子力研究所、動力炉・核燃料開発事業団等において、研究開発をすすめる。

 また、製鉄への利用を中心とした多目的高温ガス炉については、日本原子力研究所を中心として、実験炉の設計研究、伝熱流動試験、核燃料、耐熱材等の研究開発を行なう。

 9 放射線の利用

 日本原子力研究所においては、引き続き放射線化学関係の研究をすすめるとともに、ラジオアイソトープの生産および利用開発の充実を図るほか、国立試験研究機関、理化学研究所、民間企業等において、放射線化学をはじめ、医学、工業、農業等の各分野における放射線利用に関する研究を促進する。

 また、速中性子線によるがん治療研究については、放射線医学総合研究所において、医用サイクロトロンの建設を完了する。

 10 保障措置関連施策の強化

 今後の保障措置業務の増大に対処するとともに、その合理化に資するため、保障措置技術の開発、国内保障措置制度の充実等所要の措置を講ずる。

 11 国際協力の推進

 二国間原子力協力協定に基づく日米、日仏、日豪原子力会議の開催等によりこれら諸国との協力を推進するほか、国際原子力機関およびOECD原子力機関を通しての多国間協力ならびにその他の海外諸国との二国間協力を推進し、科学技術者の交流、情報の交換、国際的共同事業等をすすめる。

 12 海外原子力事情の調査

 原子力に関する海外事情を迅速かつ的確に把握し、国の原子力政策に資するため、米国、欧州等における原子力事情の調査を民間に委託して行なう。

 13 人材の養成

 日本原子力研究所の原子炉研修所およびラジオアイソトープ研修所ならびに放射線医学総合研究所養成訓練部における原子力関係科学技術者の養成訓練を強化するとともに、引き続き海外に留学生を派遣する。

 14 行政機構の整備、拡充

(1)原子炉安全審査室の設置

 原子炉安全審査業務の増大に対処し、安全審査体制の強化をはかるため原子炉安全審査室を設置する。

(2)環境保全課の設置

 環境放射能、温排水等原子力開発利用に伴って発生する環境問題について対処し得るよう、放射能課を改組し、環境保全課を設置する。

(3)人員の充足

 原子炉施設の安全審査機能を強化するとともに、環境保全対策の強化、原子力連絡調整官の常駐(福井県における専門職員の増員および福島県における専門職員の新規常駐)、および保障措置業務の増大に対処するため所要の人員の充足を図る。

 これらのための職員の必要増員は、10名である。
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