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日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更(JPDRの原子炉施設の変更)に係る安全性について


原子炉安全専門審査会
昭和47年8月21日
原子力委員会
会長 中曾根康弘 殿
                             原子炉安全専門審査会
                                              会長 内田 秀雄

 日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更(JPDRの原子炉施設の変更)に係る安全性について
 昭和47年5月11日付け47原委第173号(昭和47年7月19日付け47原委第283号および同年8月19日付け47原委第821号をもって一部訂正)をもって審査を求められる標記の件について結論を得たので報告します。

Ⅰ 審査結果

 日本原子力研究所東海研究所の原子炉の設置変更(JPDRの原子炉施設の変更に関し、同研究所が提出した「東海研究所原子炉設置変更許可申請書(試験研究用原子力発電所(JPDR)の原子炉施設の変更)」(昭和47年4月26日付け47原研05第8号をもって申請、昭和47年7月17日付け原研05第15号および昭和47年8月18日付け原研05第19号をもって一部訂正)に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

Ⅱ 変更の内容

 1 燃料最高線出力密度を定格出力時で約0.394KW/cmとする。
 2 主蒸気系に4個の自動逃し弁(1個当りの容量16t/hr以上)を設ける。

Ⅲ 審査内容

 1 本変更は、冷却材喪失事故時の燃料の被覆材の健全性により安全裕度を増すため行なうものである。

 2 本変更に係る冷却材喪失事故時の非常用炉心冷却設備による炉心冷却効果について検討した結果冷却材喪失事故時の燃料被覆材の最高温度およびジルコニウム・水反応の割合はひかえめな熱伝達系数の採用および燃料被覆管の内外両面酸化を考慮してもそれぞれ1,093℃、0.3%以下となる。
 このときの燃料被覆管の酸化の程度は、少く燃料被覆管の脆化により炉心冷却が損われることもない。
 なお、今回の最高線出力密度の変更に関し、運転中の線出力密度については、定期的に確認することになっており、とくにピーキング係数のきびしくなる燃焼の初期および末期においても最高線出力密度約0.394KW/cmをこえないことを確認することにしている。

 3 したがって、本変更は、冷却材喪失事故時の前提条件を変えるものでないので本変更に係る原子炉施設の冷却材喪失事故時の敷地周辺の公衆に対する被ばくは変更前と変らず、安全性は、十分確保しうるものと認める。

 4 なお、本変更に係る冷却材喪失事故時の燃料被覆管の最高温度およびジルコニウム・水反応の割合の計算に用いた仮定および計算結果は、次のとおりである。

(1)大破断事故解析
  ① 仮   定
    ア 非常用炉心冷却設備のうち炉心スプレイポンプ1台のみが冷却に寄与する。
    イ 燃料最高線出力密度は、約0.394KW/cm(定格出力時)とする。
    ウ ジルコニウム・水反応の反応熱は被覆管の外面酸化および内外両面酸化の
             2つの場合を考慮する。
    エ 熱伝達係数は次の値とする。
       破断後燃料棒のドライアウト開始まで
                                  10,000Btu/hrft゚F
             ドライアウト開始後2秒間        断  熱
            その後のドライアウト期間
                                  80~24Btu/hrft2゚F
             ドライアウト後スプレイ定格稼動開始まで
                                                    断  熱
             スプレイ定格稼動開始後燃料棒ぬれまで
                                 1.5~3.2Btu/hrft2゚F
             燃料ぬれ後             25Btu/hrft2゚F

  ② 計算結果
 被覆材が最高温度となるのは、再循環ポンプ吸入側(ポンプのダウンカマー側)の内径14インチ配管が完全破断したときで、内外両面酸化の場合で1,093℃となり、その時のジルコニウム・水反応量は被覆材全量に対して0.3%以下である。
 その時の燃料被覆材の酸化の程度は少く十分な健全性を有するものと考えられる。

(2)中小破断事故解析
  ① 仮 定
    ア 非常用炉心冷却設備のうち非常用給水ポンプ1台、非常用復水器1系統、
             炉心スプレイポンプ1台および自動逃し弁3個が冷却に寄与する。
    イ 燃料最高線出力密度およびジルコニウム、水反応熱に関する仮定は大破断
            事故に同じ。
    ウ 熱伝達係数は次の値とする。
      破断後ポンプのコーストダウン期間(30秒間)
                                           10,000Btu/hrft2゚F
      その後ピーキング係数が最大であるノードの燃料棒中心が露出するまで
                                               200Btu/hrft2゚F
      燃料露出後スプレイ定格稼働開始まで断熱スプレイ定格稼働開始後再冠水まで
                                         1.5~3.2Btu/brft2゚F
      再冠水後              25    〃   

  ② 計算結果
 中小破断事故時の燃料被覆材最高温度は大破断事故時の燃料被覆材最高温度より低く、(たとえば破断面積0.05ft2(47cm2)の場合に1.004℃となり)、燃料被覆材は十分な健全性を有するものと考えられる。
 
Ⅵ 審査経過

 本審査会は、昭和47年5月12日第101回審査会において、次の委員からなる第88部会を設置した。

 審査委員 青木成文(部会長)  東京工業大学
        竹越  尹            動力炉・核燃料開発事業団
        西脇一郎             宇都宮大学
 調査委員 大久保忠恒          東京大学

 同部会は通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行ない昭和47年5月19日第1回会合を開き以後審査会および部会において審査を行なってきたが、昭和47年8月16日の部会において部会報告書を決定し、同年8月21日の第104回審査会において本報告書を決定した。
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