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動力炉・核燃料開発事業団敦賀事業所の原子炉
  (新型転換炉原型炉)の設置変更について(答申)



47原委第42号
昭和47年2月17日
内閣総理大臣 殿
 
原子力委員会委員長

動力炉・核燃料開発事業団敦賀事業所の原子炉 (新型転換炉原型炉)の設置変更について(答申)
 昭和46年8月12日付け46原第5766号(昭和47年2月4日付け47原第643号で一部訂正)で間諮のあった標記の件について、下記のとおり答申する。


 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準に、適合しているものと認める。
なお、本変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は、別添のとおりである。


動力炉・核燃料開発事業団敦賀事業所の原子炉
(新型転換炉原型炉)の設置変更に係る安全性について


昭和47年2月4日
原子炉安全専門審査会

原子力委員会
委員長 木内 四郎  殿

                          原子炉安全専門審査会
                                     会長 内 田 委 雄

  動力炉・核燃料開発事業団敦賀事業所の原子炉(新型転換炉原型炉)の設置変更に係る安全性について

  昭和46年8月12日付け46原委第304号(昭和47年2月4日付47原委第34号をもって一部訂正)をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

  Ⅰ 審査結果
 動力炉・核燃料開発事業団敦賀事業所の原子炉(新型転換炉原型炉)の設置変更に関し同事業団が提出した「新型転換炉原型炉原子炉設置変更許可申請書」〔昭和46年8月9日付け46動燃(新型)18をもって申請(昭和47年1月14日付け46動燃(新型)39をもって一部訂正)〕に基づいて審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

 Ⅱ 変更事項
  本変更は敦賀事業所の原子炉施設(新型転換炉原型炉)を変更しようとするもので、変更事項は次のとおりである。

   1.排気筒の位置を炉心から230mとし、排気筒の高さを55mとする。(変更前、排気筒位置 200m、排気筒高さ45m)

   2.プルトニウム富化天然ウラン燃料を約96体(初装荷炉心プルトニウム量的0.1t)とする。(変更前、6体〔初装荷炉心プルトニウム量的5kg〕)

   3.1次冷却系ループ数を2ループとする。(変更前、4ループ)

   4.原子炉格納容器の設計圧力を約1.3kg/cm2g)とする。(変更前、1.5kg/cm2g)

   5.タービンバイパス系のバイパス容量を220t/hrとする。(変更前、860t/hr)

   6.主蒸気系に逃し安全弁(全容量的660t/hr)を設ける。(変更前、安全弁および逃し弁〔容量それぞれ440t/hr、430t/hr〕)

   7.1次冷却系の最高使用圧力および温度をそれぞれ約82kg/cm2g,約296℃とする。(変更前、最高使用圧力約89kg/cm2g、最高使用温度約300℃)

   8.1次冷却系再循環流量を7,600t/hrとする。(変更前9,700t/hr)

   9.炉心ボイド率を約37%とする。(変更前約28%)

   10.原子炉冷却材浄化系の系統容量を約60t/hrとする。(変更前110t/hr)

   11.重水系の重水貯槽の容量を約75m3/基とし、重水循環ボンプの台数および容量をそれぞれ3(うち1は予備)および約750m3/hr/台とする。(変更前重水貯槽容量約90m3/基、重水循環ボンプ台数12〔うち2は予備〕、同容量約150m3/hr/台)

   12.非常用冷却設備のうち高圧注水系の流量を約90t/hr/系統とし、急速注水系の蓄圧器の容量を約12m3/基とする。(変更前高圧注水系流量約120t/hr/系統、急速注水系蓄圧器容量約10m3/基)

   13.平衡炉心における最大過剰反応度を約0.09⊿Kとする。また制御棒の個数を約49とし、これにともない初装荷炉心初期のボロン10の濃度を約11ppm、制御棒の反応度制御容量を平衡炉心において約0.12⊿kとする。(変更前平衡炉心における最大過剰反応度約0.1⊿k、制御棒個数約53、初装荷炉心初期のボロン10濃度約10ppm、平衡炉心における制御棒反応度制御容量約0.13⊿K)

   14.中間領域中性子束検出器のチャンネル数を約6とする。(変更前約8)

   15.原子炉格納容器空気再循環系のうち送風機の台数および容量をそれぞれ2、1.3×105Nm3/hr/台とし、よう素フィルターのよう素除去効率を約95%(ただし湿度80%以下において)とする。(変更前送風機台数4〔うち2は予備〕、同容量約1×105Nm3/hr/ 台)

   16.非常用電源設備のディーゼル発電機容量を約4,000KW/台とする。 (変更前約5,600KW/台)

   17.固体廃棄物処理設備のうち、使用済樹脂貯蔵タンクおよびフィルタスラッジ貯蔵タンクの容量を発生する廃棄物量の約3年分とする。(変更前約5年分)

 Ⅲ 審査内容

〔1〕 安全設計に関する評価

   1.変更について
   排気筒の炉心からの距離およびその標高の変更は詳細実測の結果から行なうものであり、被ばく評価に係る居住可能区域境界からの距離および放出の有効高さは変わない。

   2.変更2について                                         
  変更後の炉心構成は、炉心中央領域に、混合比(PuO2/PuO2+UO2)約0.75W/Oのプルトニウム富化天然ウラン燃料約96体を、その周辺領域には、ウラン235濃縮度約1.5W/Oの二酸化ウラン燃料約128体を装荷したものである。核特性上の重要因子である燃料体温度係数、冷却機ボイド係数および出力係数のうちボイド係数については本変更によりさらに負側の値となる燃料体温度係数および出力係数については、負の値で変更前とほとんど変らない。
  なお、本変更により炉心の実効余剰増倍率、最高線出力密度、最小限界熱流束比(MCHFR)等の核的熱的制限値は変らない。
  また、特にプルトニウム富化天然ウラン燃料については、燃料受入時、炉心装荷時等において安全上問題のないよう取扱われる配慮がなされている。

   3.変更3について
    変更2によりボイド係数がさらに負側の値となることに伴なって1次冷却材喪失事故等において投入される反応度が負になる(+1.0%⊿K/Kから-0.1%⊿K/Kとなる)ため1次冷却系ループ数を4ループから2ループとするものである。
起動事故、出力運転中制御俸引抜き事故等の反応度事故については、前記2で述べたように出力係数が変更後もほとんど変らないので事故の評価は変更前とほとんど変らない。
 本変更に係る災害評価は〔2〕に記すとおりである。

  4.変更4について
    変更3による1次冷却材喪失事故時における原子炉格納容器の最高圧力は0.9kg/cm2gであり、本変更後の原子炉格納容器の設計圧力約1.3kg/cm2gは、余裕を見込んだ値となっている。

  5.変更5、6、7について
    変更5は、タービンバイパス容量を定格主蒸気流量の約24%とするものであり、タービントリップ時においては、原子炉をスクラムすることとしている。
 変更6は、安全弁の種類を先駆弁付き逃し安全弁とし、その容量を定格主蒸気流量の約73%とするものである。
   変更5および変更6を考慮して、出力運転中のタービントリップ時の解析の結果1次系の最高圧力および温度はそれぞれ84kg/cm2g、291℃でありいずれも変更7より定まる1次系の許容圧力および温度(90.2kg/cm2gおよび302℃)を十分下回っている。
 なお、タービンバイパス弁不作動とした場合の同上の解析でも1次系の最高圧力および温度(85.3kg/cm2gおよび293℃)は本変更による許容圧力および温度を越えない。

  6.変更8、9について
   本変更は、動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターにおける実規模の28本模擬燃料集合体を用いたバーンアウト熱流束実験の結果より得られたバーンアウト熱流束に対する実験式により、MCHFRの再評価を行い、本変更後もMCHFRは100%出力時1.9(120%過出力時1.5)を確保できるよう再循環流量およびボイド率を定めたものである。また冷却材流量喪失事故時のMCHFRは1.5を下回ることはない。
  なお、前記2で述べたように出力係数に対する冷却材ボイド係数の寄与は軽水炉に比べ、極めて小さいので本変更により核的特性はほとんど変らない。

  7.変更10について
   本変更は、軽水炉の実績に合わせて原子炉冷却材浄化系の系統容量を定格主蒸気流量の約6%とするものである。なお、変更に係る災害評価は〔2〕に記すとおりである。

   8.変更11について
  重水循環ポンプの台数および容量の変更は、大容量重水循環ポンプの製作が可能となったためであり変更前後において重水循環ポンプの全容量は変らない。
 主として新重水を受入れる重水貯槽の容量は全重水循環量の110%とするものであり、本変更後も十分な容量をもっている。

  9.変更12について
  高圧注水系の流量変更は、高圧注水系による蒸気ドラムへの注水方式を、直接注水方式から、軽水炉の炉心スプレイ等で用いられている噴霧注水方式に変更し、蒸気ドラム圧力の低減効果を増大させたことによるものである。なお、高圧注水系の圧力低減効果については大洗工学センターの安全性研究実験により確認されることになっている。
  また急速注水系の変更については、1次冷却系の最大破断事故の解析結果すなわち1次冷却系のループ数の変更にともなうループ当りの保有水量の増加(約2倍)、最大口径配管の破断面積の増加(約1.5倍)による圧力降下、および蓄圧器による再冠水速度の減少を考慮して蓄圧器容量を増加したものである。
  変更後の冷却材喪失事故時の燃料被覆最高温度は約1,130℃(変更前約1,080℃)であり、ジルコニウム一水反応は1/2炉心内の燃料被覆ジルコニウムの約0.04%(変更前は1/4炉心内の燃料被覆ジルコニウムの約0.04%)にとどまる。

   10.変更13について
   平衡炉心における最大過剰反応度の変更は、平衡炉心において出力分布の平担化の制御に必要な反応度が詳細計算の結果0.03⊿Kから0.02⊿Kに変ったため行なうものである。
  また、制御棒個数の変更は約53本の制御棒のうち炉心周辺部の4本を削減し、これに伴い周辺制御棒の配置を変更するものである。
  制御棒本数の変更による反応度制御容量の減少分(約0.01⊿K)は、初期炉心における液体ポインズン濃度を約1ppm増加させて補償している。なお本変更後の停止余裕および最大反応度の制御棒価値はそれぞれ0.03⊿K、0.01⊿Kであり変更前と変わらない。

   11.変更14について
   本原子炉は重水減速炉であり、制御棒の不均一引抜きに伴なう出力分布のひずみは、軽水炉ほど極端でない。したがって、本変更は、引抜いた制御棒に最も近い各チャンネル(2チャンネル)の検出器が1つずつバイパスされているとした起動事故の解析結果から6個の中間領域中性子検出器で十分その機能を果せることが判明したため行なうものである。

   12.変更15について
  原子炉格納容器空気再循環系の再循環流量の変更については、平常時に必要な量の100%(50%×2系統)、事故時に格納容器スプレイ系の作動を考慮した場合の必要量の200%(100%×2系統)としたものである。
  なお、平常運転時において再循環送風機が故障した場合には、原子炉出力低下等の措置を取ることとなっているので安全上問題はない。
  また、空気再循環系のよう素フィルターについては、そのよう素除去効率を軽水炉に合わせて、事故評価の際に考慮することにしたものである。
  変更後の災害評価は〔2〕に記すとおりである。

   13.変更16について
   上記変更11、12、15および負荷投入のシーケンスの詳細検討にともない非常用電源として必要な全負荷が減少したため本変更を行なうものである。

   14.変更17について
  本変更は、廃棄物固化装置の完全な遠隔操作化に伴ない、放射能の減衰が少くても処理が可能となったため行なうものであり、処理後のドラム缶は、1年分以上の容量を持つ固体廃棄物置場に貯蔵する。
  なお、固体廃棄物置場については増設用の用地(約10年分)を確保している。

〔2〕災害評価

 上記変更による災害評価は下記のとおりである。なお上記変更後も平常時の被ばく評価は変らず、また、災害評価のうち、ガス減衰タンク破損事故の評価も変らない。さらに今回の変更でプルトニウム富化天然ウラン燃料の装荷本数が増加したので原子炉施設に搬入後、敷地内での取扱中の落下事故についても災害評価を行なったがその結果安全上支障がないものと認める。

 2.1冷却材喪失事故
  変更3(ループ数の減少)に伴ない事故時に格納容器内に放出される放射性物質の量は2倍になるが、よう素についてはよう素フィルターによる除去効率を有機よう素70%、無機よう素90%として計算すると、大気中に放出される放射性物資の量は重大事故では全よう素が約4.5Ci(よう素-131換算、以下同様)希ガスが約820Ci(γ線エネルギー0.5MeV相当、以下同様)また仮想事故では、全よう素が約970Ci希ガスが約102,000Ciとなる。
 居住可能区域で被ばく線量が最大となるのは、居住可能区域境界(原子炉から南南東約1,100m)であって、その地点における被ばく線量は重大事故では甲状腺(小児)に対して0.29remおよび全身に対してγ線約0.04rem(β線約0.001rem)また仮想事故では、甲状腺(成人)に対して約13remおよび全身に対してγ線約2rem(β線0.3rem)である。また仮想事故による全身被ばく線量の積算値は約3万人remとなる。

 2.2 主蒸気管破断事故
  上記変更3(ループ数の減少)に基づく主蒸気隔離弁個数(8から4へ)の減少に伴ない隔離弁からの蒸気漏洩率を原子炉一次冷却系蒸気相体積の70%/dayとしたこと(変更前60%/day)、また変更10(原子炉冷却材浄化系容量の減少)ならびに今回新たにタービン建屋内での無機よう素のプレート・アウトおよびフォール・アウトを軽水炉にあわせて50%としたことにより、大気中に放出される放射性物質の量は、内部被ばくに関するものとして全よう素が重大事故では約39Ci、仮想事故では約145Ci、外部被ばくに関するものとしてハロゲンが重大事故では約189Ci、仮想事故では290Ci、また希ガスが重大事故では約4,900Ci、仮想事故では約4,920Ciとなる。
 居住可能区域で被ばく線量が最大となるのは居住可能区域境界(原子炉から南南東約1,100m)であってその地点における被ばく線量は重大事故では甲状腺(小児)に対し約11rem全身に対してγ線約0.015rem(β線約0.089rem)、仮想事故では甲状腺(成人)に対して約9rem全身に対してγ線約0.017rem(β線約0.09rem)である。
 また仮想事故における全身被ばく線量の積算値は、冷却材喪失事故の場合の積算値に比べて十分小さい。

 2.3「原子炉立地審査指針」への適合性
 上記各種重大事故および仮想事故時の被ばく線量は「原子炉立地審査指針」にめやす線量として示されている値〔重大事故に対し甲状腺(小児)150rem全身25rem、仮想事故に対し甲状腺(成人)300remおよび全身25rem〕に比べ十分小さい。
 また全身被ばく線量の積算値も国民遺伝線量の見地から示されているめやす線量(200万人rem)より十分小さい。

Ⅳ 審査経過

 本審査会は昭和46年8月17日に開かれた第94回審査会において次の委員からなる第82部会を設置した。

    審査委員
三島 良績(部会長) 東京大学
青木 成文 東京工業大学
安藤 良夫               東京大学
植田 辰洋(昭和46年12月24日まで) 東京大学
大崎 順彦           東京大学
村主  進            日本原子力研究所
都甲 泰正           東京大学
浜田 達二           理化学研究所
弘田 実弥           日本原子力研究所
富永 一郎           日本原子力研究所
渡辺 博信           放射線医学総合研究所調査委員
飯田国広(昭和47年1月 10日より審査委員) 東京大学
西脇一郎(昭和47年1月10日より審査委員) 宇都宮大学

 同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行ない、昭和46年9月22日第1回会合を開き、Aグループ(原子炉・機器関係)およびBグループ(放射線管理関係)を設置して、審査を開始した。
  以後、部会および審査会において審査を行なってきたが、昭和47年1月17日の部会において部会報告を決定し、同年2月4日第99回審査会において本報告書を決定した。
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