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ウラン資源確保対策懇談会報告書



昭和46年6月25日
原子力委員会


まえがき


 原子力発電の急速な進展に伴い、ウラン資源確保の重要性がますます高まってきている。
 この実情にかんがみ、原子力委員会は、わが国の将来におけるウラン資源の安定的な確保を図るため、当懇談会を設け、海外ウラン資源の確保策について2カ月有余にわたり審議を重ね、その結論を得たのでここに報告する。

ウラン資源確保対策懇談会構成員

座長 有沢 広己 原子力委員
北川 一栄    〃
武藤俊之助    〃
松井  明    〃
武田 栄一    〃
山田太三郎    〃
新井 友蔵 海外ウラン資源開発(株)社長
堀口  渡 三菱金属鉱業(株)常務取締役
菊地 秀夫 三井鉱山(株)常務取締役
大木  恒 海外鉱物資源開発(株)取締役
田中直治郎 東京電力(株)取締役副社長
斉藤 義雄 関西電力(株)常務取締役
荘村 義雄 電気事業連合会副会長
松根 宗一 日本原子力産業会議副会長
土屋  清 総合政策研究会理事長
石丸 忠富 日本輸出入銀行理事
田島 敏弘 日本興業銀行取締役
沖田  守 海外経済協力基金理事
小林 貞雄 石油開発公団理事
井上 五郎 動力炉・核燃料開発事業団理事長
平塚 保明 金属鉱物探鉱促進事業団理事長
本田 早苗(旧) 通商産業省鉱山石炭局長
荘   清(新)      〃
梅沢 邦臣(旧) 科学技術庁原子力局長
成田 寿治(新)      〃
(順不同)


1 基本的な考え方

 原子力発電の急速な進展に伴い、わが国のウランの需要は著しく増大し、ウランは将来のわが国のエネルギー供給源として重要な地位を占める見通しである。
 しかし、わが国はウラン資源に乏しく、その大部分を海外に依存せざるをえないため、長期的な観点に立った安定的な確保策を今から講じていくことが肝要である。
 このため、海外ウランの長期購入契約等を引き続き促進するとともに長期的には所要量の1/3程度を確保することを目途として海外開発を行なうことが必要である。
 海外探鉱開発については、基礎調査開始から生産に至るまで長期にわたる期間(約10年間)と多額の資金(47~56年度の間に探鉱に要する資金は約500億円と推算される)を必要とし、かつ、大きなリスクを伴うため、これの円滑な推進を図るためには、国として基礎的な調査活動をさらに強化拡充するとともに探鉱開発事業に対して十分な国家資金を確保する等一段と強力な促進策を講ずる必要がある。
 また、民間においては、ウランの流通面の特殊性を考慮し、ウラン資源の確保策を有効ならしめるための体制を確立することを期待する。

2 海外探鉱開発促進策の強化

 海外における探鉱開発の促進を図るため、以下の施策を強力に講ずる必要がある。

(1)国による調査の強化等
 動力炉・核燃料開発事業団を活用して次の方策を推進する。

①海外情報の収集活動を一層強化拡充するとともに海外のプロジェクトに対して広汎に接触しこの結果得られる資料、情報を民間企業に提供することによって民間企業の調査探鉱活動の促進を図る。

②わが国民間企業の未進出地域において有望地区には探査権を設定するとともに調査を行ない企業探鉱への見通しを得る段階までの間に民間に引き継ぐ。

③わが国民間企業および相手国の事情等により民間企業が探鉱を行なわない場合であって国として必要と認める場合には探鉱を行なう。

(2)民間企業に対する助成強化

①海外調査に係る国の補助
 金属鉱物探鉱促進事業団は民間企業のプロジェクトについて企業探鉱以前の調査を行なうにあたり、その費用の一部を当該民間企業に負担させることとしているが、この負担率の引下げ(例えば25%)を行なうとともに補助対象の選定基準を抜本的に緩和する。

②探鉱資金に係る融資
 探鉱資金については、現在、金属鉱物探鉱促進事業団および海外経済協力基金に融資制度があるが、民間企業の探鉱段階におけるリスクの軽減を図るため、探鉱資金に係る融資について融資比率の引上げ(例えば所要資金の75%)成功払い方式の導入等を行なう。

③開発資金に係る融資
 日本輸出入銀行、海外経済協力基金等を活用して開発資金に関する長期低利融資を行なうとともにその融資比率について特段の優遇を図る。
 また、民間企業の海外鉱山への資本参加に要する資金について長期低利融資の確保を図る。

④開発資金に係る債務保証
 民間企業の鉱山開発に必要な資金の円滑な調達に資するため、金属鉱物探鉱促進事業団の債務保証制度を活用することとし、その保証基金の確保を図る。

(3)国家資金の確保

 以上の施策を実施し、今後わが国の海外におけるウラン資源探鉱開発を飛躍的に拡大するため、長期的かつ機動的に投入しうる資金の確保を図る。

3 長期購入契約等による安定確保

 海外探鉱開発を積極的に進めることはもとよりであるが、わが国の必要とする大量のウランを確保するためには、引き続き民間において海外のウラン生産業者との間に、長期、短期購入契約を進めることが必要である。

4 施策を進めるに当って留意すべき事項

 上述の海外ウラン資源開発方策を進めるため、当該資源国に対する経済協力に意を用いるほか、今後の海外ウラン資源確保の進展状況に応じ、開発される鉱山の安定操業策等について、検討を加える必要があろう。


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