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動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの原子炉
(高速実験炉)の設置変更について(答申)



46原委第89号
昭和46年3月25日


     内閣総理大臣  殿

原子力委員会委員長


動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの原子炉(高速実験炉)の
設置変更について(答申)


 昭和45年11月19日付け45原第7570号(昭和46年3月16日付け46原第1876号で一部訂正)で諮問のあった標記の件について、下記のとおり答申する。


 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準に、適合しているものと認める。
 なお、本設置変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は別添の通りである。




動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの原子炉
(高速実験炉)の設置変更に係る安全性について


昭和46年3月17日
原子炉安全専門審査会


    原子力委員会
      委員長 西田 信一 殿

原子炉安全専門審査会  
会長 内田 秀雄


動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの原子炉
(高速実験炉)の設置変更に係る安全性について


 昭和45年11月19日付け45原委第440号(昭和46年3月16日付け46原委第81号をもって一部訂正)をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

Ⅰ 審査結果


 動力炉・核燃料開発事業団大洗工学センターの原子炉(高速実験炉)の設置変更に関し同事業団が提出した「原子炉設置変更許可申請書(高速実験炉原子炉施設の変更)」〔昭和45年11月16日付け45動燃(高速)056をもって申請(昭和46年3月13日付け45動燃(高速)075をもって一部訂正)〕に基づいて審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

Ⅱ 変更事項


 本変更は大洗工学センターの原子炉施設(高速実験炉)を変更しようとするもので、変更事項は次のとおりである。

 1. 原子炉の運転上および地震時のスクラム動作の見地から制御棒(6本)を安全棒(4本)と調整棒(2本)に分け(変更前、安全棒調整棒各3本)さらに、上部および下部案内管、燃料集合体頂部に若干の変更を加えたものである。安全棒は、スクラム時に原子炉停止のためのスクラム装置として、調整棒は原子炉停止のための一斉挿入装置および通常の原子炉出力調整装置として使用する。(変更前6本全部スクラム)

 2. 反応度制御能力を安全棒4本で0.056△K/K以上、調整棒2本で0.028△K/K以上とする。(変更前、6本で0.066△K/K以上)

 3. 制御棒の通常挿入引抜速度を13cm/min以下とする。(変更前22cm/min以下)

 4. 制御棒の通常引抜時の反応度付加率最大を0.00015△K/Ksec以下とする。(変更前0.0001△K/K/sec以下)

 5. トランスファロータの燃料貯蔵機能を廃止する。(変更前40本の貯蔵能力あり)

 6. 燃料貯蔵設備の貯蔵能力を新燃料貯蔵室は約70本(変更前約120本)、使用済燃料貯蔵設備は約200本(変更前約400本)とする。
 
 7. 2次ナトリウム系の配管等の材質を低合金鋼とする。(変更前ステンレス鋼)

Ⅲ 審査内容

1 変更1.2について

 変更後の調整棒は上部案内管内径を144mm(変更前94mm)、下部案内管と調整棒の間隙を1mm(変更前5mm)とし、変更後の安全棒は上部案内管内径を調整棒と同様に144mm(変更前94mm)としている。
 また変更後の燃料集合体は頂部に厚さ約1mmのスペーサ・パッドを取付け、間隙を1.2mmとしている。

1.1 耐震設計
 今回の変更は耐震設計上の制御棒挿入の余裕を十分に考慮したもので設計地震時の安全棒、調整棒の頂部最大許容変位がいずれも33.0mmなのに対し、それぞれの最大変位は、15.5mm、27.1mmであり十分挿入可能なように設計される。

1.2 制御設備の停止能力
 出力運転中に最も反応度効果の大きい安全棒1本が挿入できない場合でも他の3本の安全棒のみで、原子炉を高温停止(250℃)させることが可能なように設計され、この時の未臨界度は0.018△K/K以上となる。
 また安全棒3本と調整棒2本を挿入することにより原子炉を低温停止(100℃)させることも可能なように設計される。

1.3 出力変動
 出力運転中の冷却材の流れによる制御棒の振動にともなう原子炉出力の変動は、調整棒と下部案内管の間隙を1mmとすることにより、アラーム設定点(104%出力)以下となるよう設計される。

2 変更3.4について

 変更後の反応度付加率最大0.00015△k/k/sec以下は制御棒反応度価値の変更にともなうもので起動事故および出力運転時制御棒引抜事故について検討した結果は、以下のとおりである。

2.1 起動事故
 運転員の誤操作または機器の誤動作により臨界未満の状態にある炉心から制御棒を連続的に引抜いた場合、起動領域および中間領域のスクラムが働かなかったとしても、原子炉出力は約23.5秒後に、出力領域のスクラム設定点に達し、スクラムする。この時の放出エネルギー量は約74MWsec、燃料最高温度は約820℃、被覆材および冷却材の最高温度は、それぞれ約440℃および約430℃で燃料溶融はもちろん燃料被覆の破損、冷却材の沸騰は起らない。

2.2 出力運転時制御棒引抜事故
 原子炉を100%出力で運転している際に、炉心に完全に挿入されている制御棒1本を連続的に引抜いた場合、「中性子束高」信号によりスクラムする。この時の温度上昇は燃料最高温度点で約130℃、被覆材および冷却材については、それぞれ約12℃および11℃で燃料が破損したり、ナトリウムが沸騰することはない。

3 変更5.6について


 変更後のトランスファロータを収納するケーシング内の雰囲気はアルゴンガスとなったが、中継する使用済燃料は2本なのでその崩壊熱はガスにより十分除去される。
 ケーシングはトランスファロータ室に対して僅かに正圧になっており、ケーシング内に空気が洩れる恐れのないように設計される。変更後の新燃料貯蔵室の貯蔵能力約70本は平常運転時における1回の最大燃料交換本数(炉心燃料およびブランケット燃料)を十分満足している。
また変更後の使用済燃料貯蔵設備の貯蔵能力約200本は使用済燃料の必要冷却期間6ケ月の間に取出される最大燃料交換本数(炉心燃料およびブランケット燃料)を十分貯蔵する能力を有する。

4 変更7について

 今回の変更は、主として主冷却系についての最近の原子力配管設計の考え方をもとに詳細な設計検討を行なった結果によるものであり、熱膨張係数のより小さい低合金鋼を2次系に使用することにより主冷却系の応力を許容値内に納める設計となっている。
 ナトリウム冷却系に使用する低合金鋼の材質については、脱炭等による機械強度の変化、熱応力の特性、腐食等について十分な検討を行なったが、運転中の2次系ナトリウム温度はいかなる場合にも470℃を越えないことになっている。
 また更に2次主冷却系破断事故を検討した結果、事故発生後約1分で原子炉容器入口冷却材温度高により調整棒が一斉挿入され、炉心出口温度は最大約6℃上昇するに止まり、燃料温度の上昇は認められない。

Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和45年12月2日に開かれた第87回審査会において次の委員からなる第74部会を設置した。

審査委員

三島 良績(部会長) 東京大学
青木 成文 東京工業大学
安藤 良夫 東京大学
大崎 順彦 建築研究所
都甲 泰正 東京大学
弘田 実弥 日本原子力研究所

 同部会は、昭和45年12月25日第1回会合を開き、審査を開始した。
 以後、部会および審査会において審査を行なってきたが、昭和46年3月16日の部会において部会報告を決定し、同年3月17日第89回審査会において本報告を決定した。


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