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関西電力株式会社美浜発電所の原子炉の
設置変更(2号原子炉施設の変更)について(答申)


45原委第104号
昭和45年4月23日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

関西電力株式会社美浜発電所の原子炉の
設置変更(2号原子炉施設の変更)について (答申)

 昭和45年3月4日付け45原第1162号で諮問のあった標記の件について、下記の通り答申する。

 標記に係る許可の申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準に適合しているものと認める。
 なお、各号の基準適合に関する意見は、別紙のとおりである。


別紙
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に掲げる許可の基準の適合に関する意見

1 本変更は第1号から第3号に掲げる許可の基準に適合しているものと認める。

2 第4号の規定については、別添の原子炉安全専門審査会の審査結果のとおり、本変更は核燃料物質、核燃料物質によって汚染された物または原子炉による災害の防止上支障ないものと認める。



関西電力株式会社美浜発電所原子炉の設置変更
(2号原子炉施設の変更)に係る安全性について

昭和45年4月21日
原子炉安全専門審査会

原子力委員会
委員長 西田 信一 殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄


関西電力株式会社美浜発電所の原子炉の設置変更
(2号原子炉施設の変更)に係る安全性について

 当審査会は、昭和45年3月5日付け45原委第53号をもって審査の結果を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。


Ⅰ 審査結果

 関西電力株式会社美浜発電所原子炉の設置変更に関し、同社が提出した「美浜発電所原子炉施設変更許可申請書(2号原子炉施設の変更)」(昭和45年2月28日付け申請)に基づいて審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。



Ⅱ 変更事項

 本変更は、美浜発電所2号炉の施設を変更しようとするもので、変更事項の概要は次の通りである。

1 原子炉補助施設

(1)高圧注入ポンプを約159m3/h/台×2台(従来約68m3/h/台×3台)にすること。

(2)低圧注入ポンプ(余熱除去ポンプ)の容量を約454m3/h/台(従来約660m3/h/台)にすること。(台数は変更なし)


2 使用済燃料貯蔵設備
 設備容量を7/3炉心相当分(従来4/3炉心)にすること。


3 計測制御施設

(1)原子炉停止回路の信号に「加圧器水位高」を追加すること。

(2)補助保護回路に次の信号を追加すること。

イ 安全注入設備の作動回路
 2次系蒸気圧力の低下信号あるいは格納容器の圧力高信号
ロ 制御棒引抜阻止インタロックの条件
 1次冷却材可変温度高

4 放射性廃棄物処理施設
 液体廃棄物の蒸発濃縮器を約3.4m3/h×1台、約0.5m3/h×1台(従来約1.7m3/h×1台、約0.5m3/h×1台)にすること。


5 原子炉格納施設
 原子炉格納容器空気再循環設備の循環送風機の容量を約84,000m3/h/台(従来約109,000m3/h/台)とすること。(台数は変更なし)



Ⅲ 審査内容

1 安全設計および安全対策
 本変更は以下に述べるように、従来の原子炉施設の安全設計および安全対策を大きく変更するものではなく、十分な安全性を有するものであると認める。

1-1 原子炉補助施設
 今回の変更により、高圧注入ポンプは3台から2台となったが、容量は従来の2倍以上に増大し、事故時には少なくとも1台が作動するようにされており、しかも配管系統は独立の2系統となり、信頼度の向上がはかられているので安全上支障はない。
 また低圧注入ポンプ(余熱除去ポンプ)は詳細設計に伴い、容量を変更しようとするものであり、本変更によって重大事故時(1次冷却材喪失事故時)に原子炉容器内水位の回復状況にわずかの変更がもたらされるが、安全上支障はない。

1-2 使用済燃料貯蔵設備
 本変更も詳細設計に伴う容量の変更であって、使用済燃料の貯蔵能力の増加をはかるものであり、安全上支障はない。

1-3 計測制御施設
 本変更は原子炉保護設備として、従来講ぜられていた原子炉スクラム条件、安全注入設備の作動条件および制御棒クラスタ引抜阻止インタロック条件にそれぞれさらに作動信号の追加を行なうものであり、安全上支障はない。

1-4 放射性廃棄物処理施設
 本変更は液体廃棄物処理系における蒸発濃縮器の容量を増加するもので、安全上支障はない。

1-5 原子炉格納施設
 本変更により、空気再循環設備の循環送風機の容量は低下するが、この容量変更によっても、通常運転時の格納容器内空気温度は所定温度内に保持され、また、事故時の格納容器内圧の経時変化は変更前と比べほとんど差がない。ただし、本変更により、事故時に空気再循環設備フイルターを通過する空気量が減少する。そのため、放射性よう素の除去量が減り、格納容器からの漏洩量が多くなるが、被ばく線量は従来の値を大きく上廻るものではなく、安全上の支障はない。


2 平常時の被ばく評価
 本変更により平常運転時における被ばく評価は、従来のものと何ら変更はない。


3 災害評価
 本変更により、従来の「原子炉立地審査指針」に基づいて重大事故及び仮想事故を想定して行なわれた災害評価は若干変更されるが、その結果は次の通りで、立地審査指針に十分適合しているものと認める。

3-1 重大事故
 本変更により、重大事故としては1次冷却材喪失事故に変更がもたらされるが、解析の仮定を従来通りとして評価を行なうと、大気中に放出される核分裂生成物は、放射性よう素約2Ci(Ⅰ-131換算、以下同様)、希ガス約2,560Ci(0.5MeV換算以下同様)となる。敷地外で線量が最大となるのは敷地境界(原子炉中心から約700m)であって、その地点における線量は、甲状腺(小児)に対して約0.12rem全身に対して約0.19remとなる。
 上記重大事故時の被ばく線量は立地指針にめやす線量として示されている甲状腺(小児)150rem全身25remより十分小さい。

3-2 仮想事故
 本変更により、仮想事故としては、重大事故と同様1次冷却材喪失事故に変更がもたらされるが、解析の仮定を従来通りとして評価を行なうと、大気中に放出される核分裂生成物は放射性よう素が約97Ci、希ガスが約128,000Ciとなる。敷地外で線量が最大となるのは、敷地境界(原子炉中心から約700m)であって、その地点の線量は、甲状腺(成人)に対して約5.7rem全身に対して約12.3remとなる。
 上記仮想事故時の被ばく線量は、立地指針にめやす線量として示されている甲状腺(成人)300remおよび全身25remより十分小さい。なお、本変更による全身被ばく線量の積算値は、2.4万人remで従来と変らず、国民遺伝線量の見地から定めためやす線量の200万人remより十分小さい。



Ⅳ 審査経過

 本審査会は昭和45年3月11日第78回審査会において、次の委員からなる第62部会を設置した。

植田 辰洋(部会長) 東京大学
江藤 秀雄 放射線医学総合研究所
都甲 泰正 東京大学

 同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行ない、昭和45年4月15日の部会において部会報告書を決定し、昭和45年4月21日第79回審査会において本報告書を決定した。



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