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日本原子力発電(株)敦賀発電所の
原子炉の設置変更について



 原子力委員会は、昭和43年10月28日付けをもって、日本原子力発電(株)から申請のあった同社敦賀発電所の原子炉施設の設置変更に関する、原子炉等規制法に定める設置変更許可の基準の適合について、内閣総理大臣から昭和43年10月30日付けで諮問を受けた。
 以来、変更に係る安全性について、原子炉安全専門審査会に審査を行なうよう指示し、昭和44年1月29日付けで同審査会長から安全性は確保しうる旨の報告があり、更に委員会において審査を行なった結果基準に適合すると認められたので同年1月30日付けで内閣総理大臣あて答申した。 変更の内容および答申は次のとおりである。

〔変更の内容〕
 原子炉冷却系統に高圧注水系1系統を新設する等。




日本原子力発電株式会社敦賀発電所の原子炉の設置変更について(答申)

44原委第30号  
昭和44年1月30日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

 日本原子力発電株式会社敦賀発電所の原子炉の設置変更について(答申)

 昭和43年10月30日付け43原第5476号(昭和44年1月13日付け44原102号をもって一部訂正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 日本原子力発電株式会社敦賀発電所の原子炉の設置変更に関し、同社が提出した変更の許可申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に規定する許可の基準に適合しているものと認める。
 なお、本設置変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は、次のとおりである。




日本原子力発電株式会社敦賀発電所の
原子炉施設の設置変更に係る安全性について

昭和44年1月29日
原子炉安全専門審査会

昭和44年1月29日    

原子力委員会
委員長 木内 四郎 殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

 日本原子力発電株式会社敦賀発電所原子炉施設の設置変更に係る安全性について
 当審査会は、昭和43年10月31日付け43原委第281号(昭和44年1月13日付け44原委第14号をもって一部訂正)をもって審査の結果を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。


Ⅰ 審査結果

 日本原子力発電株式会社敦賀発電所原子炉施設の設置変更に関し、同社が提出した「敦賀発電所原子炉設置変更許可申請書」昭和43年10月28日付け申請、昭和44年1月10日付け一部訂正)に基づいて審査した結果、同原子炉施設の設置変更に係る安全性は、十分確保しうるものと認める。


Ⅱ 変更事項

 本変更に係る施設の変更事項は、次のとおりである。

1 原子炉冷却系統

(1) 安全弁及び逃がし弁の容量をそれぞれ3180T/hr及び1090T/hr(従来2800T/hr及び590T/hrとする。

(2) 給水止め弁を逆止弁とする。

(3) 炉心スプレイ系流量を436,000kg/hr/系統(ポンプ1台作動)従来530,000kg/hr/系統(ポンプ2台作動)とする。

(4) 高圧注水系1系統(流量572,500kg/hr)を新設する。本系統は、ディーゼルエンジン駆動ポンプにより、復水貯蔵タンクの水を給水配管を経て炉心に注入し、外部電源喪失時にも支障を来さないよう配慮されている。なお、この系は発電所運転開始後における最初の定期検査時又は燃料取替時までには運転可能となるように設備される。

2 計測制御系統

(1) 原子炉スクラム条件に次の項目が加えられる。
 イ.中性子計装動作不能(中間領域及び出力領域)
 ロ.高負荷時におけるタービントリップまたは負荷急減。

(2) 補助保護機能として次の項目が加えられる。
イ.炉内水位異常低下信号による主蒸気隔離弁閉鎖と炉心スプレイ系、高圧注水系の起動

ロ.ドライウェル内圧高の信号による格納容器冷却系、炉心スプレイ系、高圧注水系の起動

ハ.炉内水位異常低下、ドライウェル内圧高及び高圧注水系不動作の同時信号による主蒸気系逃がし弁の作動
(3) ポイズンカーテンの個数を約140(従来約120)とする。

3 放射性廃棄物の廃棄施設

 液体廃棄物の廃棄施設のフィルタ2基に予備として1基を追加する。

4 原子炉格納施設

 格納容器冷却系の熱交換器2基1系統を1基1系統に変更する。この場合、伝熱容量の変更はない。

5 その他原子炉の付属施設

(1) 非常用ディーゼル発電機を2台(従来1台)とする。

(2) 所内用及び中性子モニタ用蓄電池をそれぞれ2組(従来それぞれ1組)とする。

Ⅲ 審査内容

1 安全設計及び安全対策

 本変更により原子炉の核・熱設計に変更はなく次のような安全設計及び安全対策が追加されることになっており、変更に係る原子炉施設は十分な安全性を有するものであると認める。

(1) 逃がし弁容量の増加
 高圧注水系が設備されるまでの間の運転において1次系配管の中小破断時における炉心スプレイ系の作動を早めるため、逃がし弁容量が増加される。

(2) 炉心スプレイ系ポンプ流量の増加
 炉心スプレイ系1系統当り1台のポンプ作動により、冷却材喪失事故時に燃料被覆の破損及び、ジルコニウム水反応を防止できるようにポンプ流量が増加される。

(3) 高圧注水系の新設
 1次系配管の中小破断時に燃料の溶融を防止するため、572,500kg/hrの流量で炉心内に冷却水を注入する高圧注水系が設けられる。

(4) 安全保護回路の追加
 イ.従来のスクラム条件のほか、中性子計装動作不能及び高負荷時におけるタービントリップ又は負荷急減の場合にも原子炉はスクラムされる。
 ロ.補助保護機能に、従来の機能のほか、炉内水位異常低下、又はドライウェル内圧高の信号による高圧注水系の作動が追加され、さらに炉内水位異常低下、ドライウェル内圧高及び高圧注水系不動作の3つの同時信号による主蒸気系逃がし弁の作動が追加される。

(5) 非常用電源設備の増設
 外部電源喪失時に所内電源の多重性をもたせるために、ディーゼル発電機及び蓄電池がそれぞれ増設される。

2 災害許価

 変更に係る本原子炉について各種事故を検討したが、今回の変更は安全対策の追加に係るものであり原子炉の安全性について新たな問題を生じることはない。
 また災害評価については、本原子炉の設置に際し行なった審査における評価の内容と変わることはなく、周辺公衆に対し障害を与えることはない。なお、高圧注水系の新設により、従来の事故解析の内容に変更があるのは原子炉容器に接続されている各種配管の中小破断の場合で、その結果は次のとおりである。

(1) 高圧注水系が作動する場合
 上記中小破断事故により冷却材の漏出があった場合、原子炉容器水位低又は、ドライウェル内圧高により炉はスクラムされる。高圧注水系は、上記信号を受けて35秒以内に定格流量の冷水を炉内に注入し、炉内圧力が15.8kg/cm2gに達すると炉心スプレイ系が作動する。本施設においては中小破断事故の場合、破断面積74.3cm2のとき燃料被覆の温度は、最高となるが、溶融には至らない。

(2) 高圧注水系が作動しない場合
 上記、中小破断事故時、高圧注水系が作動しなかった場合には、炉内水位異状低下、ドライウェル内圧高及び高圧注水系不動作の同時信号により、逃がし弁が作動して、炉内圧力を急速に低下させ、炉心スプレイ系が作動する。破断面積74.3cm2のとき、燃料被覆の温度は、最高となるが、溶融には至らない。

Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和43年11月6日第64回審査会において次の委員からなる第47部会を設置した。

内田 秀雄(部会長)東京大学
川崎 正之     日本原子力研究所
都甲 泰正     東京大学
牧野 直文     日本原子力研究所

 なお、昭和43年12月4日第65回審査会において内田部会長が審査会長に選出されたため、以後次の委員により審査を行なった。

川崎 正之(部会長)日本原子力研究所
都甲 泰正     東京大学
牧野 直文     日本原子力研究所

 同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行ない、次表のとおり審査を行ない、昭和44年1月13日の部会において部会報告書を決定し、昭和44年1月29日第67回審査会において本報告書を決定した。


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