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東京電力(株)福島発電所の原子炉
(1号炉)の設置変更について



 原子力委員会は、東京電力株式会社福島原子力発電所の原子炉の設置変更に関する許可の基準の適合について、内閣総理大臣から昭和43年11月28日付けで諮問を受けた。
 安全性については、原子炉安全専門審査会に審査を指示し、昭和44年1月29日に審査会長から安全性は確保し得る旨、原子力委員会に報告がなされた。
 原子力委員会としては、許可の基準に適合する旨、1月30日付けで内閣総理大臣あて次のとおり答申した。




東京電力株式会社福島原子力発電所の原子炉(1号炉)の設置変更について(答申)

原委第31号    
昭和44年1月30日

内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

東京電力株式会社福島原子力発電所の原子炉(1号炉)の設置変更について(答申)

昭和43年11月28日付け43原第5857号(昭和44年1月28日付け44原第233号をもって一部訂正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 東京電力株式会社福島原子力発電所の原子炉(1号炉)の設置変更に関し、同社が提出した変更の許可申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に規定する許可の基準に適合しているものと認める。
 なお、本設置変更に係る安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は、次のとおりである。




東京電力株式会社福島原子力発電所原子炉の設置変更
(1号原子炉施設の変更)に係る安全性について

昭和44年1月29日   
原子炉安全専門審査会

昭和44年1月29日    

原子力委員会
委員長 木内 四郎 殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

 東京電力株式会社福島原子力発電所原子炉の設置変更
(1号原子炉施設の変更)に係る安全性について

  当審査会は、昭和43年11月28日付け43原委第313号(昭和44年1月28日付け44原委第27号をもって一部訂正)をもって審査の結果を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。


Ⅰ 審査結果

 東京電力株式会社福島原子力発電所原子炉の設置変更に関し、同社が提出した「福島原子力発電所原子炉設置変更許可申請書(1号原子炉施設の変更)」(昭和43年11月19日付け申請、昭和44年1月20日付け一部訂正)に基づいて審査した結果、本原子炉施設の変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。


Ⅱ 変更事項

 本変更は、福島原子力発電所の1号炉の施設を変更しようとするもので、変更事項は次のとおりである。

(1) 非常用冷却設備(従来は、非常用復水器及び炉心スプレイ系それぞれ2系統)に、高圧注水系1系統(流量680T/hr)を追加すること。

Ⅲ 審査内容

1 安全設計及び安全対策
 本変更によって原子炉施設の核熱設計に変更はなく、また、従来講じられている安全設計及び安全対策に加え、高圧注水系が追加されることとなるので本変更に係る原子炉施設は十分な安全性を有するものであると認める。
 本高圧注水系は、1次系配管の小破断に際しては単独で、中破断に際しては炉心スプレイ系と連携して、燃料の過熱溶融を防止するための系統であって、原子炉水位異常低信号等により、タービン駆動ポンプを起動し、復水貯蔵タンク又はサプレッションプールの水を給水配管を経て炉心に注入する。
 なお、この系統は、外部電源を必要とせずタービンは、主蒸気管のドライウエル内側の隔離弁上流から抽出された高圧蒸気にって駆動する。
 また高圧注水系機器の耐震設計は、Aクラスを適用することにしている。

2 災害評価
 変更係る本原子炉について各種事故を検討したが、本変更は、安全対策の追加に係るものであり、原子炉の安全性について新たな問題が生ずることはない。また、災害評価については、本原子炉の設置の際の審査における評価の内容と変わることはなく、周辺の公衆に対し障害を与えることはないと認める。
 なお、高圧注水系の追加により、従来の事故解析の内容に変更があるのは、原子炉容器に接続されている各種配管の中小破断の場合である。すなわち中小破断に際しては、ドライウエル圧力高又は、原子炉水位低信号により原子炉はスクラムされ、続いて原子炉水位異状低又はドライウエル圧力高の信号から約30秒で高圧注水系が動作して原子炉への注水が行なわれ原子炉圧力が21kg/cm2gまで低下すると炉心スプレイ系が動作する。
 また高圧注水系が不動作の場合には、バックアップとして、原子炉水位異状低、ドライウエル圧力高及び高圧注水系不動作の同時信号により、自動逃し弁が作動し、原子炉圧力を低下させて炉心スプレイ系が作動する。
 この事故によって、いずれの割合にも燃料被覆の破損には至らない。


Ⅳ 審査経過

 本審査会は、昭和43年12月4日第65回審査会において、次の委員からなる第48部会を設置した。

川崎 正之(部会長)日本原子力研究所
大山 彰      東京大学
高島 洋一     東京工業大学
竹越 尹      電気試験所
牧野 直文     日本原子力研究所
三島 良績     東京大学

 同部会は、通商産業省原子力発電技術顧問会と合同で審査を行ない、昭和44年1月25日の部会において部会報告書を決定し、昭和44年1月29日第67回審査会において本報告書を決定した。


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