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日本原子力研究所東海研究所の核燃料物質の
使用施設等(再処理試験施設)の変更について


43原委第338号
昭和43年12月12日

科学技術庁長官 殿

原子力委員会委員長

 日本原子力研究所東海研究所の核燃料物質の使用施設等(再処理試験施設)の変更に係る安全性について(答申)
 昭和43年10月23日付け43原第5367号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 日本原子力研究所理事長宗像英二から昭和43年10月21日付け43原研第483号をもって申請のあった核燃料物質の使用施設等の変更に係る安全性は、別添の再処理施設安全審査専門部会の審査結果のとおり、十分確保しうるものと認める。


日本原子力研究所東海研究所の核燃料物質の使用施設等
(再処理試験施設)の変更に係る安全性について

再処理施設安全審査専門部会報告書
昭和43年12月9日

原子力委員会
委員長 木内 四郎 殿

再処理施設安全審査専門部会
部会長 高島 洋

日本原子力研究所東海研究所の核燃料物質の使用施設等
(再処理試験施設)の変更に係る安全性について

 当専門部会は、昭和43年10月24日付け43原委第278号をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。


Ⅰ 審査結果

 日本原子力研究所東海研究所の核燃料物質の使用施設等(再処理試験施設)の変更に関し、同研究所が提出した「核燃料物質の使用の変更の許可申請について(再処理試験施設)」(昭和43年10月21日付け)に基づいて審査した結果、本再処理試験施設の変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。


Ⅱ 審査内容

1 変更計画の概要

 日本原子力研究所は、再処理試験施設における核燃料物質の使用の許可(昭和43年2月25日付け43原第661号)に基づいて2回の再処理試験(以下「前回試験」という。)を行なってきたが、今回131Ⅰの挙動をより広範囲に把握するため、およびプルトニウム精製抽出工程の試験時間を延長するため、施設等の一部を変更し、再処理試験(以下「今回試験」という。)を行なおうとするものである。
 今回試験における変更の概要は次のとおりである。

(1)使用済燃料の特性および処理量
 今回試験において用いられる使用済燃料は、冷却期間80日以上(前回試験では、120日以上)のものであり、処理量は全量で200kg(U)(前回試験では1ランあたり400kg(U)、全量で3,000kg(U))である。
 なお、試験予定期間は、昭和43年12月10日から44年3月31日までである。

(2)施設
 プルトニウム精製濃縮関係装置が次のように変更される。

(i)ミキサセトラの運転時間延長に伴い、第2ミキサセトラからのプルトニウム水溶液の受槽の容量が不足するので、イオン交換塔からの廃 液受槽を配管変更のうえ転用する。
(ii)廃液受槽の転用により、イオン交換塔からの廃液を直接廃液操作室の廃液受槽へ導くよう配管変更を行なう。

(3)工程
 プルトニウム精製濃縮工程が次のように変更される。

(i)第1ミキサセトラに送られるプルトニウム水溶液は、蒸発濃縮を行なわない。
(ii)イオン交換塔からの廃液は、直接、廃液操作室の廃液受槽へ送られ、ここでプルトニウムが50mg/l以下であることを確認する。
(iii)今回試験では、約6g/lのプルトニウム精製溶液約12l(前回試験では約15g/lのもの約15l)が得られる。


2 安全対策

 前回試験において講じられた種々の安全対策の妥当性については、同試験の実施によってすでに確認されている。
 今回試験の変更に関連する安全対策、特にしゃへい設計、工程管理、臨界管理および放射線管理については、安全上問題は認められない。
 さらに、今回試験の実施にあたっては、前回試験の経験を生かして十分な管理体制をとることとしているので、今回試験に係る安全性は確保しうるものと認められる。

3 平常運転時の被ばく評価

 平常運転時における被ばく評価は次のとおりであり、従事者および周辺公衆に対して放射線障害を及ぼす恐れはないものと認められる。

(1)従事者の被ばく
 工程内の最大インベントリーは4.5バッチ(前回試験では8.5バッチ。ただし、いずれも溶解槽残部0.5バッチを見込む。)であり、その放射能は最大、全β8.26×104Ci、全γ4.53×104Ci(前回試験では全β1.56×105Ci、全γ7.56×104Ci)となる。この数値および前回試験の放射線管理の経験からみて、今回試験における従事者の被ばくは、法令で定める許容被ばく線量より十分低くおさえられると認められる。

(2)周辺公衆の被ばく
 使用済燃料の冷却期間短縮に伴う気体廃棄物中の放射性の希ガスおよびヨウ素の増加による周辺公衆の被ばくについて評価する。
 気体廃棄物の大気中への拡散について、前回試験と同様の手法および実際の操業予定に即した気象条件を用いて解析したところ、敷地境界である排気筒から風下160mにおける地点で、被ばく線量が最大となる。その値は、試験期間中(約4ヶ月)全身に対して0.02mrem、皮ふに対して0.6mrem、成人甲状腺に対して33mrem、小児甲状腺に対して130mremとなる。以上の結果は、法令に定められた周辺監視区域外の許容被ばく線量および国際的に認められた許容被ばく線量を下回っている。

4 各種事故の検討

 今回試験において変更される施設等について再検討を行なったが、オフガス系の故障、火災爆発事故、臨界事故等については、前回試験と同様にいずれも適切な対策が講じられており、変更に係る本施設の安全性は十分確保されるものと認められる。

5 災害評価

 施設外に影響を及ぼす事故を想定し、次のように災害評価を行なっているが、その仮定および評価は妥当なものと認められる。

(1)最大想定事故
 前回試験についての評価と同様、オフガス系のアルカリスクラバーの故障または誤操作によって、最も燃焼度の高い1バッチ50kg(U)の使用済燃料に含まれる放射性の希ガスおよびヨウ素の全量が、高さ30mの排気筒を通じて大気中に放出される場合を最大想定事故と仮定しており、この時放出される放射能は、131Ⅰが3.4Ci、129Ⅰが 0.044mCi、85Krが21Ci、131mXeが0.8Ci、133Xeが0.28Ciである。

(2)被ばく評価
 前回試験に対する被ばく評価と同様の手法および条件を用いて評価すると、放射性物質の濃度は、敷地境界(160m)で最大となる。
 その濃度では、放出された131Iによる内部被ばくは、最も近い敷地境界である本施設の南々東の境界において小児に対して1.3rem、希ガスによる外部被ばくは、同地点で全身0.069mrem、皮ふ0.37mremとなり、これらの値は、原子力施設の事故時のめやす線量、たとえば、「原子炉立地審査指針」における重大事故のめやす線量、甲状腺被ばく小児150rem、外部被ばく25remと比べて十分小さい値である。

6 技術的能力

 日本原子力研究所は、本施設により、すでに2回のホット試験を実施しており、湿式再処理に関する経験を有している。今回試験については、前回試験とほとんど同一の組織および従事者によって行なうことになっており、本施設の運転および管理に係る必要な技術的能力を有するものと認められる。


Ⅲ 審査経過

 本審査部会は、昭和43年10月25日第20回部会において原研再処理試験施設審査グループ(昭和42年10月24日第15回部会において設置したCグループ)において本件を審査することとした。

(Cグループ委員)
伊沢 正実(座長)放射線医学総合研究所
坂上 治郎    お茶の水女子大学
高島 洋一    東京工業大学
清瀬 量平    東京大学

 同グループは次表のように審査を行ない、昭和43年11月30日の会合においてグループ報告書を決定し12月9日第21回部会において本報告書を決定した。


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