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日本原子力研究所東海研究所の原子炉
(軽水臨界実験装置)の設置変更について



 原子力委員会は、日本原子力研究所原子炉の設置変更に関する許可の基準の適合について、内閣総理大臣から昭和43年11月28日付けで諮問を受けた。
 安全性については、原子炉安全専門審査会に審査を指示し、12月23日に審査会長から安全性は確保し得る旨、原子力委員会に報告がなされた。
 原子力委員会としては、許可の基準に適合する旨、12月26日付けで内閣総理大臣あて次のとおり答申した。

内閣総理大臣  殿

原子力委員会委員長

日本原子力研究所東海研究所原子炉(軽水臨界実験装置)の設置変更について(答申)

 昭和43年11月28日付け43原第5864号(昭和43年12月21日付け43原第6300号をもって一部訂正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 日本原子力研究所東海研究所原子炉施設(軽水臨界実験装置)の変更に関し、同研究所が提出した変更の許可申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に規定する許可の基準に適合しているものと認める。
 なお、安全性に関する原子炉安全専門審査会の報告は、別添のとおりである。


日本原子力研究所東海研究所原子炉施設
(軽水臨界実験装置)の変更に係る安全性について

昭和43年12月23日
原子炉安全専門審査会


昭和43年12月23日

原子力委員会
委員長 木内 四郎 殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

日本原子力研究所東海研究所原子炉施設(軽水臨界実験装置)の変更に係る安全性について

 当審査会は、昭和43年11月28日付け43原委第315号(昭和43年12月21日付け43原委第346号をもって訂正)をもって、審査の結果を求められた標記の件について、結論を得たので報告します。


Ⅰ 審査結果

 日本原子力研究所原子炉施設(軽水臨界実験装置)の変更に係る安全性に関し、同研究所が提出した「東海研究所原子炉設置変更許可申請書」(昭和43年11月20日付け申請および昭和43年12月20日付け一部訂正)に基づき審査した結果、本原子炉の変更に係る安全性は、十分確保し得るものと認める。


Ⅱ 変更事項

 実験用燃料要素として使用する天然ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料のプルトニウム量を約34g/要素(従来は約25g/要素)とする。


Ⅲ 審査内容

(1) 安全設計および安全対策

 本変更に係る原子炉施設は、次のような安全設計および安全対策が講じられることになっており、十分な安全性を有するものであると認める。

(イ)炉心構成
 炉心は、燃料要素、燃料支持板、格子板、格子板支持枠、制御安全要素等により構成され、従来のものと炉心構造の変化はなく、本変更による実験用燃料要素以外は、すべて既設の施設が使用される。
 本変更に係る燃料は、9本の燃料要素を3×3格子に組んだものであり、この外周に配置される約300本、濃縮度2.6%の在来UO2燃料とともに、2領域炉心として使用される。

(ロ)燃料
 本変更に係る実験用燃料要素は、PUO2239Puの同位体比約90%)と UO2(天然ウラン)の粉末混合酸化物が長さ約160cmのジルカロイース製の被覆管(肉厚約0.7mm)に振動充填されるものであり、両端は溶接によって密封され、内圧、外圧に対して気密にすることにしている。

(ハ) 燃料の管理および取扱い
 本変更に係る燃料要素には、他の燃料要素とともに、刻印、色別等が施され、種類の異なる燃料を混用しても、判別管理上支障なく行なわれるようにされている。
 燃料要素の取扱いに際して、燃料要素を取り落すことはないと考えられるが、万一の落下を考慮しても安全上十分な対策がなされることになっている。なお、本燃料要素を使用する前後にはαサーベイを行ない、α放射能の漏洩がないことを確認することにしている。

(ニ)核特性
 本変更に係る燃料要素を使用して行なう実験は、炉心中央部に3×3格子に本実験用燃料要素を組み、その外周に濃縮度2.6%のUO2燃料要素を配置して行なうものであるが、炉心反応度は、従来同様、その最大値は0.4%ΔK/Kを超えないように制限されている。
 また、本原子炉では、すでに3×3格子に
よるPuO2、UO2燃料要素(プルトニウム量約25g/要素)を使用しての実験経験を有しており、この実験結果からも正確な臨界量が推定されており、本変更に係る燃料要素の炉心装荷に伴う安全性は十分に確認されている。


(2)平常時の被ばく評価

 前項で述べた通り、本変更に係る燃料要素は、厳格な品質管理のもとに製作されるので、運転時にプルトニウムの漏洩による内部被ばくの生ずるおそれはないと考えられ、また、原子炉の運転または燃料取扱いに伴う外部被ばく線量は、従来と同程度であると考えられる。
 したがって、一般公衆および従事者の受ける被ばく線量は許容値を十分下回るものと認められる。

(3)事故評価

 本変更に関しては、燃料要素以外にとくに施設に変更はなく、またその操作方法にも変更はない。
 本変更に係る原子炉において、各種事故の検討をした結果、運転特性、安全保護系などに関連する事故に対して安全性は確保し得ると認める。また、最大想定事故としては従来と同様、炉心タンク水位上昇に伴う反応度事故を想定したが、その結果は、放出エネルギーは約21MWsecとなり、燃料温度の上昇は最高120deg程度にとどまり、燃料被覆の破損には至らない。また、このような事故時において、線量が最大となるのは、従来同様、炉室建屋近傍であって、その値は約0.23remである。
 したがって、変更に係る本原子炉は敷地外の一般公衆に対して安全であると認められる。


Ⅳ 審査経過

 本審査会は昭和43年12月4日第65回審査会において次の委員よりなる第50部会を設置した。

 三島 良績(部会長)東京大学
 竹越 尹      電気試験所
 渡辺 博信     放射線医学総合研究所 

 審査会および部会においては、次表のような審査を行なってきたが、昭和43年12月23日の部会において部会報告書を決定し、引きつづき同日開催の第66回審査会において本報告書を決定した。


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