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東京大学の原子炉の設置について


 原子力委員会は、東京大学の原子炉の設置に関する許可の基準の適合について、内閣総理大臣から、昭和43年8月21日付けで諮問を受けた。
 安全性および技術的能力については、同年8月22日付け原子炉安全専門審査会に審査を指示し、同年12月4日付け、内田審査会長から、安全性および技術的能力は確保し得る旨、原子力委員会委員長に報告がなされた。
 原子力委員会は、安全性のほか、平和利用、計画的開発利用、経理的能力等についても審査を行ない、その結果、許可の基準に適合する旨、同年12月5日付け内閣総理大臣あて次のとおり答申した。


東京大学の原子炉の設置について(答申)

43 原委第324号
昭和43年12月5日

内閣総理大臣  殿

原子力委員会委員長


 東京大学の原子炉の設置について(答申)

 昭和43年8月21日付け43原第4336号(昭和43年11月28日付け43原第5887号をもって一部訂正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

東京大学の原子炉の設置に関し、同大学が提出した設置承認申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に規定する許可の基準に適合しているものと認める。
 なお、上記許可の基準の適合に関する意見は、別紙のとおりである。



 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律案24条第1項各号に規定する許可の基準の適合に関する意見

(平和利用)
1 本原子炉は、一般研究および教育訓練のために用いられるものであって、平和の目的以外に利用されるおそれがないものと認める。

(計画的遂行)
2 本原子炉の設置は、「原子力開発利用長期計画」に定める方針にのっとっており、原子力の研究開発活動の基盤を作る上に十分な意義を有するものと考えられるので、本原子炉の設置がわが国の原子力開発および利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれはないものと認める。

(経理的基礎)
3 本原子炉の設置に必要な資金については、全額国費でまかなわれるが、昭和43年度予算において、既に一部の建設費の支出が認められており、本原子炉の設置に要する資金の見積り内容からみて、必要な資金の調達は可能と考えられるので、原子炉の設置をするために必要な経理的基礎があるものと認める。

(技術的能力)
4 別添の原子炉安全専門審査会の審査結果のとおり、この原子炉を設置し、その運転を適確に遂行するに足りる技術的能力があるものと認める。

(災害防止)
5 別添の原子炉安全専門審査会の審査結果のとおり、本原子炉の設置は、核燃料物質、核燃料物質によって汚染された物又は原子炉による災害の防止上支障がないものと認める。

東京大学の原子炉の設置に係る安全性について

昭和43年12月4日
原子炉安全専門審査会


昭和43年12月4日

原子力委員会委員長
木内 四郎 殿

原子炉安全専門審査会
会長 内田 秀雄

 東京大学の原子炉の設置に係る安全性について



 本審査会は、昭和43年8月22日付け43原委第195号(昭和43年11月28日付け43原委第317号をもって一部訂正)をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。


Ⅰ 審査結果

 東京大学の原子炉の設置に関し、同大学が提出した「東京大学高速中性子源炉の原子炉設置承認申請書」(昭和43年8月15日付け申請および昭和43年11月20日付け一部訂正)に基づいて審査した結果、同施設の設置に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

Ⅱ 審査内容

1. 設置計画の概要
 本施設は、日本原子力研究所東海研究所敷地内に 約14,850m2の地上権を設定し、設置されるものである。立地条件および施設の概要は、次のとおりである。

1.1 立地条件
 敷地は、標高約10mで、本原子炉施設は東側の鹿島灘から約800m、日本原子力研究所計算センター、北門詰所および放射線線医学総合研究所東海支所のほぼ中間に位置している。
 本施設が設置される茨城県東海地区には既に10基の原子炉施設が設置されており、敷地および周辺環境の状況、敷地付近の地質、海象、気象、水理および地震記録からみた立地条件は、本施設においても既設原子炉施設の場合と変ることはない。本施設の支持地盤は、ボーリングによる地質調査の結果、十分な地耐力を有するものであることが確認されている。

1.2 原子炉施設
 本原子炉は、熱出力2kWの高濃縮ウラン空気冷却高速中性子源炉である。
 炉心集合体は、燃料、反射体、制御材からなる炉心部と鉛、重コンクリート遮蔽および制御材駆動装置を組み合わせた構造である。この炉心集合体は、補機室内にある動力源によって炉心集合体移動用通路を水平に移動し、運転に際しては、実験の目的に従い、重コンクリート遮蔽体内の2つの炉心位置または、中速中性子柱内炉心位置に固定される。
 燃料は、円柱形をした、高濃縮ウラン(93w/o)の中核燃料と、その周囲にある中空円柱形をした劣化ウランのブランケット燃料および制御材燃料により構成され、各々ステンレス鋼で被覆される。中核燃料の中心には、半径方向に、タンタルで囲まれたグローリーホールが設けられる。
 制御材は劣化ウランからなり、ブランケット部に挿入されるもので、制御材駆動モーターによって、水平軸方向に駆動される。
 冷却系は、冷却材として、冷却空気を用い、出口において吸引する。冷却空気はフィルターにかけられた後、可撓性のホスを経て、中核燃料とブランケット燃料の間を通り、炉心を冷却する。続いて、再びフィルターを通った後、炉室等からの換気系による排気とともに、高さ20mの排気筒から空中へ放出される。
 原子炉格納施設は、直方体(30×20×12m)の鉄筋コンクリート構造で、充分な強度と遮蔽能力を持ち、内部は負圧に保たれる。
 液体廃棄物は、貯留槽に一時貯留された後、放射性物質の濃度に応じ、日本原子力研究所東海研究所構内の排水路へ流されるか、または、同研究所の廃棄物処理場で処理される。
 固体廃棄物も同研究所の廃棄物処理場で処理される。
 そのほか、放射線管理施設が設けられる。

2 安全設計および安全対策

2.1 核熱設計および動特性
 本原子炉は、炉心集合体が重コンクリート遮蔽体内の運転位置にある場合には0.9%Δk/kの過剰反応度を、中速中性子柱内の運転位置にある場合には1.1%Δk/kの過剰反応度を持つが、原子炉を運転するにあたっては、シム棒1を所定の位置に機械的に固定することおよび、実験用挿入物の等価反応度を制限することにより、炉心集合体がどの運転位置にあっても、挿入されうる過剰反応度が0.7%Δk/kを越えないようにするので即発臨界になる可能性はない。
 定格出力時における全中性子束分布は、中核燃料中心で8×1011n/cm2・sec、ブランケット燃料中央で3×1011n/cm2・sec、反射体中央で7×1010n/cm2・secである。
 熱設計については、燃料の最高温度が相変化点を越えず、かつ被覆の最高温度が被覆の強度を損なわないように設計されており、強度上の問題はない。すなわち定格出力運転において、燃料の最高温度は276℃で、相変化温度の662℃よりはるかに低く、また被覆の最高温度は210℃である。
 本原子炉は、ドップラー効果による反応度係数が正であるが、中核燃料の熱膨脹効果による反応
度係数がはるかに大きいので、全体の反応度に対する温度系数は負となり、したがって反応度外乱に対する自己制御性が十分発揮される。
 なお、核熱設計および動特性についての計画値は、各国の高速中性子源炉における実験結果から判断して、十分信頼性があるものと考えられる。

2.2 燃料
(1)中核燃料およびブランケット燃料
 中核燃料は、93w/o濃縮の金属ウランからできており、直径12.4cm、厚さ4cmの直円柱形燃料要素A、B、C、を3つ同一軸上に水平に並べた構造である。A、B、Cの各々は、厚さ0.5mmのステンレス鋼で被覆されている。中央の燃料要素Bには直径方向水平にタンタルで被覆された内径1.8cmのグローリホールが設けられ、また、温度測定用の直径0.5cmの穴が中心近くまであけられる。
 ブランケット燃料は、約0.2w/oの劣化金属ウランからできており内径13.2cm、外径33.2cm、長さ31.5cmの中空直円柱形で、内側は0.5mm、外側は5mmのステンレス鋼で被覆されている。なお、中核燃料は、ブランケット燃料の内側にはめ込まれた支持リブと押えバネによって支持される。
 中核燃料の熱膨脹対策としては、半径方向の熱膨脹はブランケット燃料と中核燃料の間の冷却空気間隙によって逃がし、軸方向の膨脹はバネによって逃がすようになっている。
 反応度係数に対する熱膨脹効果は、中核燃料の体積が1%増加すると反応度は0.25%Δk/k減少し、平均反応度温度係数は-1.25×10-5Δk/k/℃である。

(2)燃料装荷および燃料取扱い
 中核燃料の濃縮ウラン装荷量の決定にあたっては、臨界近接等の手順をあらかじめ定め、慎重におこなうこととしており、これにより、一層の安全の確保がはかられる。
 装荷量の決定後、中核燃料要素Cの残部空隙には劣化ウランが補填され、被覆は溶接密封される。
 本原子炉の年間積算出力は最大4,800kWhであり、本原子炉の寿命中は燃料交換を要しない。したがって特別な燃料取扱い装置は設けられない。また、燃料貯蔵施設は初期の燃料装荷時の一時的なものであるが浸水等に対して十分な安全対策が講じられる。

2.3 炉心集合体駆動装置
 炉心集合体は、55×55×500cmの直方体で厚さ1cmのステンレス鋼で覆われており、重量は約8トンである。
 炉心集合体移動用通路は内部断面57×57cm長さ約22mで、厚さ4cmの鉄製枠で囲まれ、さらに通路底面には、厚さ1cmの焼入研磨した鋼片がはめ込まれており、ベアリング機構により、炉心集合体が円滑に移動できるよう考慮されている。
 炉心集合体の駆動は、それに結びつけられたローラーチェーンを補機室にある減速モーターで回転させることにより行なわれる。各停止位置への停止は、リミット・スイッチにより行ない、さらにクランプ装置で微調整を行なって、定位置へ固定する。また、この固定が地震等による外力によって、はずれないよう、減速モーターの回転を機械的にロックできる装置が設けられる。

2.4 計測および制御系
(1)核計装
 起動系、対数出力系、線形出力安全系、各々2チャンネルで、計6チャンネルの中性子計測装置から構成される。各チャンネルは電源喪失等に対しフェイルセーフな設計であり、また、各チャンネル間不一致で警報信号が出る。対数出力系と線形出力安全系の4チャンネルにより20utof4回路を構成し、設定レベルによりスクラム信号を出す、起動系は反射体中におかれ、各々の設定レベルによりスクラム信号を出す。

(2)プロセス計装
 温度、流量および圧力について測定装置があり、温度については、4箇所、6系統、流量については4箇所4系統、圧力については、3箇所3系統の測定が行なわれ、安全上必要なデータが十分得られるようになっている。

(3)安全保護設備
 スクラム、警報およびインターロックの各種系統からなり、原子炉の起動と運転の安全性を十分確保できるよう設計される。またバイパスの設置についても安全上の配慮が十分なされる。各系統は各々電源喪失等に対しフェイルセーフな設計になっている。

(4)反応度制御系
 制御系は、安全ブロック1本(等価反応度4%Δk/k)、安全棒2本(各々同0.6Δk/k)、シム棒1、1本(同0.8%Δk/k)、シム棒2、1本(0.4%Δk/k)および調整棒1本(同0.3%Δk/k)からなる。
 シム棒1は、炉心が各運転位置のどこにあっても、原子炉の持つ過剰反応度が0.3%Δk/k以上にならないよう、あらかじめ機械的に固定することとしており、原子炉の起動および運転時における制御能力は炉心の運転位置の如何を問わず確保される。
 反応度変化率については、各種インターロック系統によって制御材2本以上の同時挿入はできず、過度の反応度変化がおこらないようになっている。
 制御材駆動設備は、炉心集合体内に設けられ制御材は、減速モーターによって駆動される。
 スクラム動作は、安全ブロックおよび安全棒をバネ力に抗して保持している保持電磁石電源を遮断することによって行なわれる。また、バネの破損はリミットスイッチにより、起動前点検で検出できる。
 後備炉停止系として、炉心集合体駆動装置があてられ、必要時には、炉心集合体駆動モーターのロックをはずして炉心集合体を重コンクリート遮蔽体や、中速中性子柱から遠ざけ、反応度を減少させて、炉の運転を停止させることができる。
 中央制御室には、原子炉施設の運転に必要なすべての計測装置が設備され、緊急時における措置が迅速に実施されうるよう配慮される。

2.5 原子炉冷却系
 本原子炉の冷却方式は空気冷却、強制吸出方式であり、炉心部で発生する熱を除去するのに十分な冷却能力を有するとともに冷却系内の放射性物質が炉室内に漏洩されない構造である。また、炉心集合体の移動に伴い、可撓性ホースによって、冷却材配管口をつなぎ変えるが、その接続の良否は、インターロック条件になっており安全が確保される。

2.6 放射線管理
(1)放射線遮蔽
 放射線遮蔽は、従業者の作業時間に応じ、その被曝線量が現行法現に規定された許容量を十分下まわるように設計される。
 定格出力運転を行なう場合の炉室内における最大放射線量率は、炉心集合体が重コンクリート遮蔽体内にある時で、0.56mrem/hとなる。
 一方炉心集合体が中速中性子柱内にある時は、炉室内の放射線量が大きく、従業者は、炉室内に立ち入らないことになっている。この場合、炉室外の放射線量率は、炉室建屋壁外表面で最大0.1mrem/h、建屋壁から10mの地点で、最大0.01mrem/hとなり、本原子炉施設の遮蔽能力は十分ある。なお、炉室扉の開閉はインターロック条件として安全保護回路に組み入れられる。

(2)排気の放出管理
 本原子炉施設からの排気は、冷却空気および炉室と附属施設からの気体廃棄物からなり、前者は高性能フィルターおよび活性炭フィルター 後者は高性能フィルターを通し、ともに排気筒から放出される。排気筒から放出される排気中放射性物質の濃度は、ガスモニターおよびダス トモニタによって監視され、その濃度に応じて吸排気口のダンパーを調整することにより、放出放射性物質の濃度を排気筒出口において許容 濃度以下に保つことになる。

(3)放射線被曝管理
 建屋内には、3ヶ所にエリアモニタが設置され、常時、高速中性子、熱中性子およびγ線の線量の監視を行なう。
 また、個人被曝管理として、管理区域へ立ち入る場合は、各種フィルムバッヂやポケットチェンバーを着用するとともに、各種サーベイメータを携帯する。
 建屋外の監視については、日本原子力研究所東海研究所所属のエリアモニタで行ない、定期的な試料採取測定も行なう。上記研究所との間には協定を結ぶことにより、合理的な放射線監視を実施する。

2.7 その他原子炉の附属施設および主要な実験施設
 附属施設としては、非常電源設備と防火設備が設けられ、安全対策上、十分な能力を持っている。また、主要な実験施設として中性子発生装置(P・N・S)とパイルオシレータがあるが、装置の使用等に対して、必要な安全対策がなされることになっている。

2.8 耐震上の考慮
 本原子炉施設は、安全上の重要度に応じてそれぞれ、次の耐震設計が行なわれる。

第1類 炉心集合体、重コンクリート遮蔽体、中速中性子柱、炉心集合体移動用通路および補機室
     ………水平0.6G、重直0.3G
第2類 原子炉実験室、廃棄物処理施設
     ………水平0.3G、重直0.15G
第3類 その他の施設および装置
     ………水平0.2G

 また、第1類の施設については動的な検討を行なって地震により機能が損なわれないことを確認することになっている。


3.平常時の被曝評価
 本原子炉の運転に伴う外部放射線による敷地外の一般公衆に対する被曝については、年間積算出力が小さく、かつ安全対策の節で述べたとおり、放射線遮蔽に対する考慮がなされているので、全く問題にならない。
 排気による影響については、冷却空気中に含まれるA41による被曝が考えられるが、その放出濃度は、許容濃度に比べて十分低く問題ない。
 さらに従事者の実験等に伴う被曝について検討したが、施設の状況、個人被曝管理体制から判断して許容被曝線量を越えないものと認められる。


4.各種事故の検討

4.1反応度事故
(1)起動事故
 原子炉起動時に、運転員の誤操作または機器の誤動作により制御棒が連続的に挿入された場合には、正の反応度の添加に伴い原子炉出力は 増大するが、定格出力の120%で、出力過大スクラムが作動し、以降、中性子束レベルは急激に減少する。この場合、燃料の相変化および燃料被覆の破損はおこらない。

(2)定格出力運転中制御棒挿入事故
 原子炉の出力運転時に運転員の誤操作または機器の誤動作により、制御棒が連続的に挿入された場合には、正の反応度の添加に伴い、原子炉出力は増大するが、起動事故と同様に出力過大スクラムにより原子炉は停止される。この場合も、燃料の相変化、および燃料被覆の破損は起らない。

4.2 機械的事故
(1)冷却系停止事故
 原子炉の出力運転時に冷却系が停止した場合には、炉心温度過大、冷却空気流量過小、冷却空気圧過小、冷却空気パイプ接続不良のいずれかのスクラム信号により、原子炉は停止する。
 この場合においては、炉心の最高温度はほとんど上昇することなく、問題は生じない。

(2)電源喪失事故
 電源喪失に対しては、全機器が安全側に作動するので、支障はない。

4.3 その他の事故
 地震、火災等その他の事故についても検討を行なったが、原子炉への支障はないよう、十分な対策がなされている。

5 災害評価
 本原子炉は前述のとおり、種々の安全対策が講じられており、かつ、各種事故に対しても、検討の結果、安全を確保しうるものと認めるが、さらに、最大想定事故として起動時における反応度挿入事故、すなわち、機器の誤動作等によりシム棒2と調整棒の2本が挿入され、なおかつスクラム系が動作しない場合を想定し、次の仮定を用いて事故の評価を行なった。

1 事故発生時の出力は1W。
2 制御棒の反応度挿入速度は1.99×10-40Δk/k/sec、同時かつ完全挿入である。
3 挿入される反応度は0.7%Δk/k。

 その結果、出力は事故発生後約45秒で、最高290kWに達するが、その後は炉心の熱膨脹による負の反応度が効いて次第に下がる。燃料最高温度は約95秒後に約810℃に達するが、その後640℃に落ちつく。
 この場合、燃料最高温度はウランの融点1132℃より低く、燃料が溶融することはない。
 また、被覆材であるステンレス鋼とウランが合金をつくる可能性があるが、ウランの拡散速度およびU-FeとU-Crの共晶合金の融点等を解析した結果は、被覆が破損する可能性は少ない。
 被覆が破損しても、燃焼度が小さいため、燃料内部に蓄積される核分裂生成物は少なく、たとえ、その全量が放出されたとしても排気筒から100mの敷地境界における全身被曝線量は約1×10-2rem成人甲状腺被曝線量は約4mremであり、一般公衆に対するめやす線量に比べて十分小さい。
 なお、上記の計算に用いた条件は次のとおりである。

① 被覆材の破損までに、原子炉は、2kWの出力で10年間連続運転されている。
② 放出される核分裂生成物の量は、希ガス100%、ハロゲン100%である。
③ 核分裂生成物は高さ20mの排気筒から放出される。
④ 風速は2m。気象条件は英国気象庁方式Aである。

6 技術的能力
 本原子炉の設計にあたって、申請者は、海外の同型の原子炉に関する調査検討を詳細に行なうと共に他機関の人も交えた、各分野の専門家からなる委員会をつくり、設計作業をすすめてきた。また、それら専門家および、その設計作業に従事した者は建設製作にあたっても十分な技術指導能力を持つと考えられる。
 本原子炉の運転にあたっては、予定された運転従事者は、国内既存の原子炉において十分に訓練され、適切な人員配置が行われる。
 これらの点から、申請者は本原子炉を設置するために必要な技術的能力および運転を的確に遂行するに足りる技術的能力があると認める。


Ⅲ 審査経過
 本審査は、昭和43年8月26日、第62回審査会において、次の委員からなる第41部会を設置した。

高島 洋一(部会長) 東京工業大学
浜田 達二      理化学研究所
弘田 実弥      日本原子力研究所

 同部会は本原子炉施設の安全性について、次表にあるよう調査審議を行なってきたが、昭和43年11月28日の部会において部会報告書を決定し、同年12月4日第65回審査会において本報告書を決定した。


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