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住友原子力工業株式会社原子炉
(臨界実験装置)の設置変更について


昭和43年11月7日
43原委第290号

昭和43年11月7日

 内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

住友原子力工業株式会社の原子炉(臨界実験装置)の設置変更について(答申)

 昭和43年8月22日付け43原第4353号(昭和43年11月1日付け43原第5483号をもって一部訂正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 住友原子力工業株式会社取締役社長平塚正俊から昭和43年8月17日付けで提出のあった原子炉施設設置変更許可申請書は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法梓第24条第1項各号に規定する基準に適合しているものと認める。

住友原子力工業(株)原子炉(臨界実験装置)の
設置変更に係る安全性について


原子炉安全専門審査会報告
昭和43年11月6日

 原子力委員会
  委員長 鍋島 直紹 殿

原子炉安全専門審査会
会長 向坊  隆


住友原子力工業株式会社原子炉(臨界実験装置)の設置変更に係る安全性について

 当審査会は、昭和43年8月22日付け43原委第199号(昭和43年11月1日付け43原委第288号をもって一部訂正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので、報告します。

 Ⅰ 審査結果

 住友原子力工業株式会社原子炉(臨界実験装置)の設置変更に係る安全性に関し、同社が提出した「原子炉(臨界実験装置)設置変更許可申請書」(昭和43年8月17日付け申請及び昭和43年10月28日付け一部訂正)に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

 Ⅱ 変更事項

1. 原子炉の型式
(1)低濃縮酸化ウラン軽水減速非均質単領域タンク型または(2)低濃縮酸化ウラン重水減速一低濃縮酸化ウラン軽水減速非均質2領域タンク型または(3)低濃縮酸化ウラン酸化プルトニウム混合重水減速一低濃縮酸化ウラン軽水減速非均質2領域タンク型とする。(従来は(1)または(2))
2. 燃料
 クラスタ部分の燃料要素は
(1)UO2燃料
(2)0.5w/O PuO2-UO2 混合燃料
(3)1.0w/O PuO2-UO2 混合燃料
 とする。(従来は(1))

  Ⅲ 審査内容

1. 安全対策
 今回の変更に伴い、次のような安全対策が講じられることになっており、十分な安全性を有するものであると認める。

(1)PuO2-UO2混合燃料は、密封の状態で使用し、燃料ペレットの詰替え、プルトニウム汚染の可能性のあるフォイル類の放射化量の測定等は、動力炉・核燃料開発事業団東海事業所プルトニウム燃料研究室内にて行なう。

(2)PuO2-UO2混合燃料の取扱いおよび運搬には、取扱用燃料ケースおよび運搬用燃料ケースを用い、万一、機械的衝撃等が加わった場合でも、それを吸収することにより、燃料が損傷しないよう考慮される。

(3)PuO2-UO2混合燃料の取扱いは必ず2名以上で行なって、取扱時の事故の可能性を小さくするとともに、作業者の個人被はく線量を小さくする。

(4)燃料取扱い時に、万一、容器を取り落した場合には、事故現場をサーベイメーターおよびスミヤ法により検査する一方、直ちに動力炉・核燃料開発事業団に専門家の派遣を要請して、現場の除染、破損の恐れのある燃料等の処分を依頼する等の体制を取ることとする。

2. 平常時の被ばく評価
 実験従事者がクラスター燃料、フォイル類等を取り扱うときに被ばくすることが考えられる。

 この場合、実験は2チーム(チーム2~4名)が交代で行ない、年間実験回数は約50回であり、現在まで行なってきたウラン2領域実験装置での実験結果を参考にすると、1人当りの年間被ばく線量は400mrem以下と推定される。

 また、年間予定積算熱出力は10kWhであり、この場合の年間最大被ばく線量は敷地境界で約1.3mremであるので、敷地外の一般公衆の受ける被ばく線量は、許容被はく線量より十分小さい。

3. 事故評価
 変更に係る本原子炉において発生する可能性のある事故として、制御棒連続引き抜き、減速材水位上昇、Pu燃料取扱時における燃料の破損、模擬ボイドの脱落または破損、燃料棒の誤装荷等の場合について検討した結果、それぞれ適切な対策が講じられており、変更に係る本原子炉の安全性は十分確保されているものと認める。

 さらに、最大想定事故として、制御棒連続引抜き事故すなわち運転員の誤操作または機器の誤動作により粗調整棒1組および微調整棒1本が同時に連続的に引き抜かれる場合を想定し、次の仮定を用いて線量を計算している。

(1)反応度附加率は、0.02%△k/k/secとする。
(2)核計装によるすべてのスクラムが動作しない。
(3)炉周期スクラム信号発生から15sec後に運転員が制御室に設けられた空気弁を動作させ2sec後にダンプバルブが全開するものとする。

 解析の結果、放出エネルギーは約15MW・Secであり、燃料被覆最高温度上昇は60℃であり、燃料および燃料被覆材の溶融、破損には至らず、炉室建屋外での被ばく線量は最大40mrem程度であり、また敷地境界では0.6mremである。

 したがって、本原子炉は、敷地外の一般公衆に対して安全と認められる。

  Ⅳ 審議経過

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