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(株)日立製作所中央研究所王禅寺支所の
原子炉(臨界実験装置)の設置変更について


43原委第292号
昭和43年11月7日

 内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

株式会社日立製作所中央研究所王禅寺支所の原子炉
(臨界実験装置)の設置変更について(答申)


 昭和43年8月22日付け43原第4356号(昭和43年10月19日付け43原第5199号をもって一部訂正)をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 株式会社日立製作所取締役社長駒井健一郎から昭和43年8月20日付けで提出のあった原子炉設置変更許可申請書は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に規定する基準に適合しているものと認める。

 なお、同条同項第4号の基準の適合に関する原子炉安全専門審査会の審査結果は、別添のとおりである。

(株)日立製作所中央研究所王禅寺支所の
原子炉の設置変更に係る安全性について


原子炉安全専門審査会報告
昭和43年11月6日


 
 原子力委員会委員長
  鍋島 直紹 殿

原子炉安全専門審査会
会長 向坊  隆

株式会社日立製作所中央研究所王禅寺支所の原子炉の設置変更に係る安全性について


 当審査会は、昭和43年8月22日付け43原委第198号(昭和43年10月19日付け43原委第270号をもって一部訂正)をもって審査を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

  Ⅰ 審査結果

 株式会社日立製作所中央研究所王禅寺支所の原子炉の設置変更に係る安全性に関し、同社が提出した「原子炉設置変更許可申請書」(昭和43年8月20日付け申請および昭和43年10月16日付け一部訂正)に基づき審査した結果、本原子炉の設置変更に係る安全性は十分確保し得るものと認める。

  Ⅱ 審査内容

1. 変更計画の概要
 本件に係る変更は、従来の燃料体に新たに煉炭型燃料体を追加するものである。

 この煉炭型燃料体は、UO2焼結体で、構造は直径5.5cm、厚さ1cmの円板形状のものに19個の内孔(直径0.8cmのもの)を設けたものであり、燃料体を34枚重ねにして1煉炭型燃料要素として使用される。

2. 安全対策
 今回の変更に関しては、次のような安全対策が講じられており、安全上支障ないものと認める。
(イ)炉心構造
 煉炭型燃料体を使用する場合の炉心は、従来の棒状燃料要素を周囲に配置してドライバー領域とし、中央部に煉炭型燃料要素を六角状に7個配置した構造となる。

 煉炭型燃料要素は、煉炭型燃料体を34枚重ねにしたものに、上下にスペーサーを入れ全長52cmとするもので、既設上下管板により支えられ、横板れなどを防止している。

 炉心の構造は、超過反応度によって制限され、すべての場合における炉心構造に対して、最大超過反応度2%△k/kに制限される。

(ロ)棟炭型燃料要素
 煉炭型燃料要素は、内部冷却管に、空気、軽水、軽水-重水混合物を入れ実験を行なうが、浸水事故が起こらないような構造としている。
3. 平常時の被ばく評価
 煉炭型燃料体を用いた実験を含めて、実験の頻度、燃料管理、燃料取替などの作業内容はほとんど変らず、過去の運転実績も勘案すると作業者に対して最大の場合でも年間の被ばく線量は1rem程度にとどまる。

 また、周辺の公衆に対する放射線被ばくの影響についても従来の場合とほとんど変りなく、敷地外の一般公衆の受ける被ばく線量は許容被ばく線量より十分に小さい。

4. 事故評価
 煉炭型燃料体を使用する場合の炉心の出力配分は、ドライバー領域約90%、煉炭型燃料体領域約10%であり、今回の変更においても、すでに行なわれた解析と同じ仮定によって解析を行なっても支障がないと判断されるので、次のような仮定を用いて、水位連続上昇事故を最大想定事故として解析した。
(イ)水位制御型の原子炉であることから、臨界状態にある原子炉に何らかの理由によって軽水が注入され、0.3cm/secで水位が連続上昇する。この間スクラムしない。

(ロ)作業者が事故現象を感知し、ダンプバルブを開き、原子炉を停止するまでの所要時間を15secとする。
 上記により解析すると、この間の出力積分は約120MW・secとなり、従来の最大想定事故における値200MW・secより十分小さく、燃料は溶融しない。

 また、煉炭型燃料要素が本原子炉に使用される場合の特有の問題として
(イ)冷却管内の水沸騰に伴う圧力上昇による燃料破損事故
(ロ)沸騰による水蒸気喪失後の冷却管中への軽水の再注入による反応度事故

の発生をあげ、これらについて検討した結果、上記による燃料破損、および反応度事故の可能性はないと考えられる。

 以上の結果、線量が最大になるのは、炉室建屋外では、建屋壁より約20mの地点であって、その値は約1.9remとなり、また敷地外では、最高約60mremとなる。

 したがって、本変更に係る本原子炉は敷地外の一般公衆に対して安全と認める。

  Ⅲ 審査経過

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