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IAEA 6月理事会報告



 1967年IAEA 6月理事会は、6月13日から16日までの4日間ウィーンのIAEA本部において開催された。以下議題をおってその概要を報告する。

 なお、議長は、ポーランドのW.Billigが務めた。

 議題1 第11回総会仮議題。 可決。

 議題2 技術援助。
 IAEA技術援助供与運営のための指導原理及び一般運営規則にしたがい、事務局長は、理事会に対し、1966年度にIAEAにより行われた技術援助について報告書を提出して再検討を要請した。

 1966年度に行われた技術援助は、専門家及び客員教授201名の派遣、金額にして422,000ドルの機器供与、および、499名に対するフェローシップ供与であり、総額にして2,453,000ドルに達した。

 審議の結果、事務局長から提出されたドキュメントに多少の修正を加え、総会に提出することに決定した。

 議題3 1966年度会計。
 事務局長及び外部会計検査員によるIAEA総会提出のための1966年度会計報告案を承認、総会へ提出する。

 議題4 総会に対する1966-67年度理事会年次報告。
 事務局長から提出された同報告案は採択され、1966年7月1日から1967年6月30日までをカバーした同報告書が総会に提出される。

 議題5 1968年度予算案。
 理事会は、総会に対し、1968年度IAEA予算として、総額12,879,500ドル(1967年度のそれより980,000ドル増)を勧告することに決定した。

 そのうち、10,163,500ドルは加盟国の分担金により、200万ドルは注意拠出金により、残り716,000ドルは雑収入によりまかなわれる。この総予算は1967年度のそれの8.2%増に相当する。

 経常予算としては10,477,000ドルが承認された。主な増額項目は、IAEAの新事業であるINIS(国際原子力情報システム-仮訳)のほか計算機計画、保障措置、FAO/IAEA会同部の経費などである。

 IAEA職員の増員については、新事業であるINISのパイロット・プロジェクト、計算機サービスの拡充、保障措置査察部拡充などのための79名が事務局原案であったが、行政予算委員会において60余名に削減され、理事会では、同委員会勧告の線に沿い総会の承認を求めることになった。

 なお、国際連合行政問題諮問委員会が行った調査では、IAEAの職員増加率は1961-66年間を通じ、全国連機関中第二位の低率を示していることが事務局長から説明された。

 トリエステ国際理論物理センターの予算は1967年度のそれと同額に抑えられた。

 つまり、IAEAは、同センターの財政に関し、15万ドルを負担する。

 そのうち、フェローシップに充当される35,000ドルは事業予算から、残高115,000ドルは経常予算から支出される。

 IAEAの研究所については、行政予算委員会で削除されたモナコ海洋研究所に対する11,000ドルの増額分が復活した。

 INISについては、1968年度からパイロットプロジェクトを開始することには大多数の国が賛成し、事務局原案である98,000ドルが計上される。

 なお、同予算は、INISに入る情報の規準化及び磁気記録に関し、IAEAに入るデータと2、3の先進国により提供されるデータを用いての試験運営に当てられる。

 そのために専門職員3名、一般サービス職員9名、合計12名が新規に採用される。

 保障措置査察部の人員増加について、フランスが態度保留を表明したほかは、ソ連が保障措置に関する特別委員会を国連18委員会のメンバーで設置することを提案するなど主頭をはずれ、特に賛否の表明はなかった。

 なお、我国は、ソ連の提案に対し、特別委員会設置については検討の余地があるが、構成メンバーを国連18委員会のメンバーに限定することには反対である旨述べた。

 なお、1968年度は、経常予算の13項目として予備費が付け加えられ、130,000ドルが計上された。

 議題6 IAEA事業年次報告。

 議題7 IAEAと政府間機関との関係。
1. 1967年度第11回総会に12の政府間機関ならびにその他の1機関からオブザーバーとして参加招聘することに決定した。

2. 1968年度第12回総会についても、IAEAの憲章上の目的にしたがい、原子力平和利用に携わる他の機関に対し招聘を行う権限を理事会に与えるよう総会に要請することを決定した。

 議題8 1967-68年度理事国指定。
 藩章6条A-1項にしたがい、理事会は、1967-68年度理事国として、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、フランス、インド、日本、南アフリカ、ソ連、連合王国、米国の10ヵ国、同じく6条A-2項にしたがい、原料物質生産国のうちから自動的にチェコスロバキア及びポルトガルを、また技術援助国としてノールウェイを指定した。

 本議題審議中、チュニジア、ガーナ、インドネシアから、原料物質生産国についての疑義に基ずく憲章改正の問題に関し発言があった。

 議題9 新加盟申請。
 本理事会においては、新加盟の申請はなされなかった。

 議題10 トリエステ国際理論物理センター。
 理事会は、同センターに関するIAEA及びイタリア政府間の協定案を可決し、事務局長に対し、同協定に署名することを認可した。

 IAEAは、同センターの予算のうち15万ドルを負担する。なお、イタリア政府が25万ドル、ユネスコ及びフォード財団が残りタの資金を負担することになる。

 議題11 ラテンアメリカ核兵器禁止条約。
 本議題に関し、議長から、事務局長が用意した同条約に関するメモランダムは、単なる情報としては理事会に提出したものであり、その時点においては何ら決定を要求するものではない旨説明がなされた後、メキシコから発言があり、同条約13条に関し、同国政府は、本年9月1日、批准のため、同条約書を議会に提出し、批准後直ちに、同条約14条にしたがい、保障措置協定についてIAEAと交渉に入る意向である旨表明した。そして、事務局長に対し、メキシコ・IAEA間保障措置協定案を作成するよう要請し、理事会が同協定案を承認すれば、その条文は同条約当事国が保障措置協定についての交渉を開始する際に、モデル協定として利用し得る旨述べた。ソ連、ポーランドおよび西側諸国が、同条約及びメキシコが取ろうとしている措置を歓迎する旨述べた。

 議題12 保障措置。
(a)二国間協定の申請
1. インドネシア/米国協力に関する保障措置管理のへの移管を承認した。

2. IAEA・南アフリカ・米国間保障措置移管協定の延長を承認した。
(b)査察員人事。
 事務局長は、査察員人事について理事会の承認を求めた。

 我国は、査察員選出は技術的能力に基づいて行われるべきであるが、一方査察員の国籍の地域的分布も考慮に入れなければならない旨述べた。その趣旨に対し、他の理事国および事務局側は賛意を示した。

 事務局長の要請は承認され、一般目的の査察員として、米国、ソ連から各2名、アルゼンチン、オーストラリア、チェコスロバキア、フランス、ハンガリー、インド、アラブ連合、連合王国、ユーゴスラピアから各1名、合計13名の査察員が承認された。

 その他、再処理施設査察等の特殊目的のために、アルゼンチン、オーストリア、ポーランド、連合王国から各2名、ベルギー、デンマーク、ドイツ連邦共和国、イスラエル、日本、オランダ、ニュージーランド、スウェーデン、アラブ連合、ソ連から各1名ずつ、合計18名の査察員が承認された。

(c)IAEA保障措置制度の燃料加工(processing and fabricating)施設への適用手続き。
 米国は、IAEA保障措置制度の燃料加工施設への適用手続き作製のため、ワーキンググループを設置し、同グループに、その勧告を1968年2月理事会に提出するよう要請し、また、加盟国に対し、同グループにおける審議のため、各国の見解を事務局長宛提出するよう要請する決議案を提出した。

 米国は、先ず、決議案の標題に関し“processing and fabricating”を定義すること、および適当な標題に変えることを提案した。

 インドは、ワーキンググループのメンバーに非理事国を加えることを提案し、ドイツは、加盟国が所有している燃料加工施設について、事務局は資料を持っているか否か質問した。

 審議の結果、米国の決議案は可決され、事務局は、当該施設の一覧表を作製する旨述べた。
 議題13 IAEA事業再検討。
 理事会は総会の要請に基づき、低開発国援助の増大を計る方送を見出すため、事業の再検討委員会を組織し、加盟国から寄せられたコメントに基づき勧告案を作製した。理事会は、同勧告案を承認し、第11回総会に報告する。

 議題14 国際連合総会の決議案2150(ⅩⅩⅠ)に関する措置。
 米国から、国連の財政検討Ad hoc委員会の勧告を尊重し、同勧告を、憲章改正を行わずに可及的早急に全面実施に移すこと、および、事務局長に対し、国連調整グループとの協議、および共同会計監査室の設置運営に参加するよう要請し、更にその協議の進捗状況を理事会に報告するよう要請する決議案が提出され、同決議実は可決された。

 議題15 1969~70年度事業及び1969年度予算概要の審議手続き。
 事務局長は、カナダの提案に基づき、12月の全体委員会あるいは遅くとも1月初めに審議し得るよう主要事業計画及び予算の変更の概要を作製することを提案しており、同提案は行政予算委員会で受諾されていた。理事会は行政予算委員会の本件に関する勧告を承認した。

 議題16 原子炉計画。
 本理事会には、ベトナム、フランス、コンゴ、スペインの4ヵ国からそれぞれの原子炉計画が提出され、承認を求められた。特に、フランスから提案された低温照射ループの摂受国として、事務局がイスラエルを選んだことについて、ソ連をはじめ多くの国が批難して、事務局の再検討を要求したため、採決に付された。

 その結果、再検討の必要性について、賛成8、反対14、保留1で否決され、四つの原子炉計画は総て承認されるに至った。

 議題17 一般職員(GS及びMOS)の供与改正。

 議題18 1967年経常予算項目間流用。
 経常予算の第8項(俸給と賃金)及び第9項(職員の共通費用)に対し、他の項目での節減分を流用することを承認した。

 議題19 事務局長定期報告。

 議題20 IAEA永久的事務局。
 オーストリア政府は、IAEA事務局の永久的建物をウィーンのドナウパークに建設し、年間1オーストリアシリングで99年間貸与することを申し出ていたが、本理事会は満場一致で、その申し出を受諾した。

 議題21 次期の理事会開催予定。
 9月22日(金)午後3:00に開催することに決った。

 議題22 核燃料供給。
 ルーマニアによる核燃料の要請を承認し、必要な手続きをとることに決定した。
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