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防災業務計画



 災害対策基本法が昭和36年11月に、国土ならびに国民の生命、身体および財産に災害から保護するための必要な体制の確立、責任所在の明確化など災害防止の基本を定め、総合的かつ計画的な防災行政の整備および推進をはかり、災害時における社会秩序の維持と公共の福祉の確保に資することを目的として制定、公布された。

 不測の事態による原子炉等原子力施設からの放射性物質の大量放出にともなう放射線災害に対する緊急時対策については、すでに昭和33年ごろから原子力局において検討が進められていたが、昭和37年7月に至り、災害対策基本法第2条の規定により政令で定める災害の原因として放射性物質の大量放出が加えられた。

 このため原子局においては、同法の規定にしたがい、防災業務計画について、災害時における対策遂行の体制、地域防災計画との関係、災害予防、災害応急対策、災害復旧等について検討し、このたび科学技術庁防災業務計画を次のとおり策定した。

科学技術庁防災業務計画

昭和42年6月28日

第1章 総則

1 目的等
(1)本計画は、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第36条第1項の規定に基づき、科学技術庁の所掌事務について、防災に関し必要な体制を確立するとともに、防災に関してとるべき措置および地域防災計画の基準となるべき事項を定め、防災行政事務の総合的かつ計画的な遂行に資することを目的とする。

(2)(1)の目的を達成するため、本計画においては、科学技術庁の所掌事務に関し、当面災害対策基本法施行令(昭和37年政令第288号)第1条に規定する放射性物質の大量の放出に関する防災対策について定める。

(3)現在、大量の放射性物質を取り扱う原子力施設については、核原料物質、燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)等の原子力関係法令に基づき、周辺環境の安全を確保するため原子力関係施設の立地および必要な安全防護施設の設置等について規制が行なわれており、万一原子力施設に事故が発生した場合にも、周辺の公衆に影響を及ぼすことがないよう措置されている。

 しかし、さらに、防災対策上いかなる場合にも対処できるよう万全の対策を樹立しておくことがきわめて重要であるので、本計画を作成するものである。
2 実施の基本方針
 本計画の実施にあたっては、防災関係行政機関および地方公共団体の行なう防災活動との間の緊密な連絡調整を図り、防災業務が総合的かつ有機的に実施されるよう努めるものとする。

 また、本計画は、今後の科学技術の進展に伴い、その研究成果等をとり入れ、必要に応じて修正を行なうものとする。

第2章 科学技術庁災害対策本部

1 科学技術庁災害対策本部の設置
 科学技術庁長官は、放射性物質の大量放出による災害(以下「災害」という。)が発生し、または災害が発生するおそれがある場合において、当該災害に係る防災に関し必要があると認めるときは、科学技術庁災害対策本部(以下「災害対策本部」という。)を組織するものとする。

2 災害対策本部の構成
 災害対策本部の構成は、次のとおりとする。
 本部長  科学技術庁長官
 副本部長  事務次官
 幹事  官房長
 原子力局長
 部員  総務課長
 政策謀長
 原子炉開発課長
 核燃料課長
 原子炉規制課長
 政射線安全課長
 放射能課長
 原子力開発機関監理官
 水戸原子力事務所長

3 災害対策本部の業務
 災害対策本部は、当該災害に関し、次の業務を行なう。
(1)法令またはこの計画の定めるところにより各部局が実施する災害応急対策に関する事務の総合調整および連絡に関すること。

(2)災害に関する情報の集収および伝達に関する事務を総括すること。

(3)その他災害応急対策の円滑な実施を図るために必要な事項
4 会議の招集
 本部長は、必要に応じ、災害対策本部の会議を招集する。

5 庶務
 災害対策本部の庶務は、原子力局放射能課において処理する。

第3章 防災に関し科学技術庁のとるべき措置

第1節 災害予防
 科学技術庁長官は、災害を未然に防止し、また、災害発生時に災害の拡大を防止するため、施設周辺における環境条件のは握、防災上必要な教育、訓練等について、次の措置を構じるものとする。
1 環境条件のは握
 一般環境について放射能水準の調査を行なうとともに、施設周辺の平常時における放射水準、人口構成、人口分布等災害対策上必要な事項の調査について地方公共団体等に対し指導を行なう。

2 防災上必要な研究
 関係機関と協力して、災害の予防に関する科学的な研究を行ない、その成果を利用して災害予防対策の効果的な実施を図る。

3 防災上必要な教育および訓練
 放射性物質による災害の特殊性にかんがみ、これに関する知識の周知徹底を図るために必要な教育および緊急時に対処するための訓練の実施について、地方公共団体等に対し指導を行なう。

4 関係施設および器材の整備
 施設周辺においては、それぞれ環境に応じ、防災活動上必要な気象観測設備、放射線測定器等の設備および器材が適切に整備されるよう地方公共団体等に対し指導を行なう。

5 専門家の派遣計画の作成
 災害時における災害対策に関する専門家の派遣について、計画を作成する。

6 実施要領の作成
 防災活動の円滑な実施を図るため、次に掲げる事項について、適切な要領を作成するよう地方公共団体等に対し指導する。
(1)災害時において、指針とする線量
(2)災害時における放射能測定方法
(3)災害時における災害の程度の予測方法
(4)災害時において、放射線障害を受けたものおよびそのおそれのあるもの(以下「被曝者」という)に対する診断および処置
(5)災害時における予報および警報の伝達、警告ならびに広報活動の方法
(6)その他防災活動の円滑な実施を図るため必要な事項
第2節 災害応急対策
 科学技術庁長官は、災害が発生し、または発生するおそれがある場合において、災害の発生を防止し、または災害の拡大を防止するため、次の応急対策を講じるものとする。
1 災害状況のは握および伝達
 災害に関する情報を収集し、災害状況を迅速、的確には握するとともに、必要に応じ関係諸機関に伝達する。

2 専門家の派遣
 災害応急対策上必要があると認めた場合は、災害対策に関する専門家を当該被災地に派遣する。

3 都道府県知事、市町村長、原子力事業者等への指示等
 災害応急対策上必要と認めた場合は、都道府県知事、市町村長、原子力事業者等に対し、必要な応急処置をとることを要請し、または指示する。

第4章 地域防災計画の作成の基準

 地域防災計画は、次に掲げる事項につき、地域的特殊性を十分考慮して作成するものとする。

第1節 災害予防
1 防災に関する組織の整備
 地方防災会議に関し、地域防災計画、防災体制の整備等災害に対する予防措置を常時講じるための部会等の設置に関すること。

2 教育および訓練の実施
 放射線障害についての教育および災害の発生に対処するための訓練に関すること。

3 放射能水準調査に関する組織および器材の整備
 平常時および災害時における施設周辺の放射能水準調査のための組織および器材の整備ならびにその調査の実施に関すること。

4 通信、連絡網の整備
 災害に関する情報の収集および伝達の組織および手順に関すること。

5 環境条件のは握
 災害の発生に際して、被災範囲を迅速に予測し、的確な応急対策の樹立に資するための気象、海象等の地域的自然条件および人口構成、人口分布等の地域的な社会条件に関する資料の整備に関すること。

6 その他災害予防に必要な事項

第2節 災害応急対策
1 災害対策本部の設置
 事故の発生した施設の属する市町村または都道府県に、災害が及び、または及ぶおそれがある場合における当該都道府県の災害対策本部の設置に関すること。

2 災害状況のは握および伝達
 災害に関する情報の収集および伝達に関すること。

3 放射性物質による汚染状況の調査
 放射性物質による汚染状況の調査の実施に関すること。

4 被曝者の救出ならびに一般住民の退避および立入制限
 退避等の基準は、放射線審議会が定める指標線量およびその適用の方針に基づき、当該地域の実情に応じて定めるものとすること。

5 放射線障害を受けた者に対する診断および処理
 放射線障害を受けた者に対する診断および処置を行なうための医師および医療機関の確保に関すること。

6 汚染飲食物の摂取制限等
 政射性物質により汚染した飲食物の摂取の禁止およびその制限等に関すること。

7 緊急輸送および必要物資の調達
 緊急輸送に関する関係輸送機関への協力要請および必要物資の調達に関すること。

8 その他災害応急対策に必要な事項

第3節 災害復旧
1 放射性物質の除去
 放射性物質の除去に関すること。

2 制限措置の解除
 一般住民の退避および立入制限の解除その他の制限措置の解除に関すること。

3 その他災害復旧に必要な事項
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