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放射線審議会の動き

Ⅱ 放射線障害防止の技術的基準について(諮問)


昭和42年1月7日

 放射線審議会会長殿

通商産業大臣

放射線障害防止の技術的基準について(諮問)

 自発光安全標識板工業標準(別紙)を制定するにあたり、放射線障害防止の技術的基準の項について、放射線障害防止の技術的基準に関する法律(昭和33年5月21日法律第162号)第6条の規定に基づき諮問いたします。

日本工業規格(案)   JLS

Z0000-1967

自発光安全標識板
Self-Luminous Safety Signs

1. 通用範囲
 この規格は、工場、鉱山、学校、病院、劇場、百貨店、ホテルなどの事業場、トンネル、地下道、車両、船舶、航空機などにおいて使用する自発光安全標識板について規定する。

 ここにいう自発光安全標識板(以下標識坂という。)は昼間または明るい場所においては、JISZ9107(安全標識板)の安全標識板JISM7001(鉱山保安警標)の保安警標などの諸標識として役立ち、夜間または停電などの場合に、自ら発光することによって災害防止に役立つことを目的としたものである。

2. 種類
 標識板の種類は表1のとおりとし、その意匠はJIS Z9107およびJIS M7001に準ずるものとする。
表 1

3. 材料
 標識板の材料にはつぎのものを用い、いずれも良質で耐久性のあるものを選ばなければならない。
(1)基板および透明板
 基板および透明板は合成樹脂製とし、きず、ひび、よごれなどがなく表面が平滑なものとする。

(2)色材
 標識板に用いる自発光材料以外の色材は、JIS Z9107(安全標識板)に規定する塗料またはJIS Z9108(ケイ光安全標識板)に規定するケイ光性色材を用いるものとする。

(3)自発光材料
 標識板に用いる自発光材料は、硫化亜鉛系などのケイ光粉末の表面に放射性物質を定着し、その放射線によってケイ光粉末を刺激して常時発光するものとする。

 ただし、発光刺激に用いる放射性物質は透過力の弱いβ線のみを放射するプロメチウム147またはトリチウムを用いるものとする。

 備考
 自発光材料の特性による注意すべき事項をつぎに掲げる。
(1)自発光材料には、人体に障害を与えるα線またはγ線を放射する放射性物質を用いてはならない。

(2)自発光材料の発光は、明るい所では見えないが、暗い所において認められるものであるから自発光材料を用いる部分は簡単な文字、ふち、矢印などの図形とすることがのぞましい。

(3)自発光材料は直射日光によって黒化し易いので、直射日光の当らぬ箇所に掲示すること。

4.外観および構造
 標識板は、白色の基板と、透明板の間に自発光材料を用いた標識面を密封したものであって有害放射線が外部に漏洩することなくまた基板と透明板がはく離することがあってはならない。

5. 寸法
 標識板の寸法はJIS Z9107およびJIS M7001による。

6. 輝度および放射性物質の数量
 標識板の自発光部分の暗視輝度および放射性物質の数量は、表2のとおりとおりとする。

表 2

 備考(1)(2)(3)に規定する標識板であって発光面が常時100lX以上に照明されているものでは、停電の場合にその残光が利用できるのでその暗視輝度の下限は0.01cd/m2とする。

7. 試験方法

7.1 輝度試験
 適当な視覚光度計を用いて輝度測定を行なう。

 標識板は暗所に3時間以上外光をしゃ断しておいたのち測定する。

 測定は3回以上行ないその平均値を用いるものとする。
備考
1. 輝度標準面は選択性のない拡散反射面または拡散透過面を色温度2048°Kの白色タングステン電球により照射したものであること。

2. 測定者には健常眼の者を選ぶこと。

3. 測定中は常に暗順応に近い状態に保たせる。

 このため測定者は暗室へはいってから30分以上たったのち、測定しなければならない。

4. 肉眼の代わりに、国際的に採択された暗順応比視感度曲線に相似な分光感度をもつ物理眼を用いてもよい。
7.2 放射線試験
(1)標識板の表面をつぎの放射性表面汚染計のいずれかにより放射線を測定する。

(2)標識板の表面をJIS Z4504(ふきとり式放射性表面汚染測定方法)により放射線汚染を測定する。

  JIS Z4303 比例計数管式放射性表面汚染計
  JIS Z4304 シンチレーション式放射性表面汚染計
  JIS Z4305 電離箱式放射性表面汚染計
  JIS Z4306 ガイガ・ミューラー計数管式放射性表面汚染計

7.3 耐衝撃試験
 標識板を1mの高さから、コンクリート床に任意な向きで100回自由落下させ、ひび、われ、はがれを生ずるかどうかを調べる。

7.4 耐水試験
 標識板を清水に常温で24時間浸してから取り出し、基板と透明板の間に水が浸入しているかどうかを調べる。

7.5 耐塩水試験
 標識板を、約20℃の5%の食塩水に24時間浸したのち、取り出し、基板と透明板の間に塩水が浸入しているかどうかを調べる。

7.6 耐酸試験
 標識板を、3%硫酸に24時間浸漬したのち取り出し、基板と透明板の間に液が浸入したり、標識板の表面に、変化がないかどうかを調べる。

7.7 耐アルカリ試験
 標識板を5%カ性ソーダに24時間浸漬したのち取り出し、基板と透明板の間に液が浸入したり、標識板の表面に変化がないかどうかを調べる。

8 検査

8.1 外観検査
 目視により外観を検査し、4の規定を満足しなければならない。

8.2 輝度検査
 7.1により輝度を検査し6の規定を満足しなければならない。

8.3 放射線検査
 7.2(1)により試験し、α線またはγ線の放射を認めず、かつ7.2(2)のフキトリ試験によって試験し、表面密度が10-4μc/cm2以下でなくてはならない。

8.4 耐衝撃試験
 7.3により試験し、標識板に、ひび、われ、はがれを生じてはならない。

8.5 耐水検査
 7.4により試験し、標識板の基板と透明板の間に水が浸入してはならない。

8.6 耐塩水検査
 7.5により試験し、標識板の基板と透明板の間に、塩水が、浸入してはならない。

8.7 耐酸検査
 7.6により試験し、標識板の基板と透明板の間に液が浸入したり、表面に変化があってはならない。

8.8 耐アルカリ検査
 7.7により試験し、標識板の基板と透明板の間に液が浸入したり、表面に変化があってはならない。

9. 製品の呼び方 標識板の呼び方はつぎの例のとおりとする。
 例:方向標識(自発光) 2種180×300

10. 表示
 標識板またはその包装には、適当な箇所につぎの事項を表示しなければならない。
 (1)製品の呼び方
 (2)製造年月日
 (3)製造業者名またはその略号
 (4)自発光材料の種類
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