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京都大学研究用原子炉の設置変更について(答申)


42原委第55号
昭和42年3月9日

 内閣総理大臣 殿

原子力委員会委員長

京都大学研究用原子炉の設置変更について

 昭和42年2月25日付け42原第360号をもって諮問のあった標記の件については、下記のとおり答申する。

 京都大学長奥田東から昭和41年12月16日付けで提出のあった京都大学研究用原子炉設置に係る変更承認申請は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第24条第1項各号に規定する承認基準に適合するものと認める。

 なお、各号の基準の適用に関する意見は別紙のとおりである。

 〔別添〕

核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する
法律第24条第1項各号の承認基準の適用に関する意見


 本変更は、既設の実験孔に低温照射装置を設置するものである。

1 本変更は、第1号から第3号に規定する承認基準に適合しているものと認める。

2 本装置は、アルミニウム製の3重管によりその主要部を構成する炉内低温照射装置である。

 冷却は、ヘリウムを用い、圧力1.5kg/cm2g以下、温度8°K〜330°Kの範囲で装置内を回流し、カプセルに入った照射試料を冷却する。

 照射試料は、固体物理研究のための金属、半導体、有機化合物等であり、核燃料物質を使用する場合は、トリウム10gr以下あるいは、天然ウラン2gr以下に制限する。

 本装置の安全運転のため警報回路、緊急停止回路等の安全装置が設けられ、必要な箇所には、遮蔽を設ける。

 温射試料は、十分に遮蔽を施した移設容器に入れて運搬し、実験後カプセル等とともに廃棄物処理場に送る。

 本装置に発生すると想定される事故としては、(1)本装置に冷却材を流さない状態で原子炉を起動あるいは運転することによる配管部の異常温度上昇、(2)真空外管破断による大量空気流入に伴うオゾンの原発、(3)照射試料等の爆発的燃焼による圧力上昇を考える。

 (1)及び(2)については、本装置外に何ら影響を及ぼすことはないと認める。

 (3)については、配管先端部は破断するが、照射試料としての核燃料物質の量を制限しているので、放出される核分裂性物質の量は少なく、実験室内で許容濃度以下となる。

 さらに、原子炉本体の事故と本装置の事故が同時に発生する場合を想定しても、放出される核分裂性物質の濃度は、敷地周辺において許容濃度を十分下回り、一般公衆への影響は、無視できるものと認める。

 従って、本変更は、安全上支障ないものと認める。
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