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第4回中共核爆発実験後の環境放射能調査について



 昭和41年10月28日午前0時50分、北京放送は「中共政府は10月27日、誘導ミサイルによる核爆発実験に成功した」と報道したので、放射能対策本部は2回にわたり幹事会を開催し、その対策を協議した。

 核爆発実験の実施が伝えられ(10月28日朝)てから3日半経過した10月31日午後、先ず福岡で放射性粒子が発見され、以後全国各地から発見の報告が寄せられたが、その時期が西から東へ逐次移行する傾向を見せた。

 今回の放射性粒子については、従来(第1、第2、第3回中共核爆発実験)に比し、わが国に到達するまでの時間が長く、またその放射能は全般的に弱いという特徴があった。

 高空浮遊塵(高度1万メートル及び1万2千メートル)の放射能には目立った変化が認められず、また雨水中の放射能の降下量については、全国的に降雨が少なかったためか、11月5日に秋田で最高値1平方キロメートル当り42.3ミリキューリを検出した程度で、降下量としては今回の数値が最低であった。

 地表浮遊塵の放射能は、11月5日に東京において最高値1立方メートル当り、20.0マイクロマイクロキューリを検出した。これは第3回目よりも多く、第1回目および第2回目よりも下回る数値である。

 なお、第4回中共核爆発実験後の放射能対策本部の動き、および環境放射能の調査結果は次の通りである。

放射能対策日誌

10月28日 第50回放射能対策本部幹事会
 第4回中共核爆発実験に対処し、環境放射能調査体制の強化等について協議。

11月8日 第10回放射能対策本部長顧問会議
 第4回中共核爆発実験を含め、放射能対策全般について、本部長が対策本部長顧問諸氏の意見を聴取。

11月8日 第51回放射能対策本部幹事会
 関係省庁の放射能調査結果の報告およびその後の措置について協議。

(Ⅰ)雨水中の全β放射能降下量


(Ⅱ)地表浮遊塵の全β放射能


(Ⅲ)放射性粒子の核種分析結果
(1)機器分析
(a)大阪府立放射線中央研究所
 Zr95,Zr97,Mo99,Te132,Ba140-La140,Ce141,Ce143,Ce144,Nd147,Np239,U237等の核種を検出

(b)放射線医学総合研究所
 Zr95-Nb95,Nb97m,Nb97,Tc99m,Ba140-La140,Ce141,Ce143等の核種を検出

(2)化学分析(気象研究所)
 検出された核種及びその割合は下記の通りである。
核 種 放射能比(%)
Np-239 3.4
U-237 1.0
Mo-99
Te-132
Ru-103,106
3.8
Zr-95
Np-95
17.5
Sr-89,90
Ba-140
4.9
Rare Earths 69.5
 ただし、放射能比(%)は核爆発実験後16日目のβ放射能による値である。
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