原子力局

国際原子力機関(IAEA)第9回総会の報告


 国際原子力機関(IAEA)の第9回総会は、昭和40年9月21日から東京プリンスホテルで開催され、9月28日に8日間にわたる会期を終了した。
 以下国際原子力機関第9回総会の概要を報告する。

1.各国および国際機関等参加数

 加盟国            73
 国際連合およびその専門機関  4
 その他の国際機関       4
 非政府機関          4

2.参加人員

 加盟国代表         315名
 国際連合およびその専門機関  5名
 その他の国際機関       7名
 非政府機関          14名
  計            341名
 この他IAEA事務局員     133名

3.日本代表団

  代表
  朝海浩一郎  外務省顧問
  代表代理
  法眼 晋作  在オーストリア大使
  星  文七  外務省国際連合局長
  村田  浩  科学技術庁原子力局長
  松井佐七郎  外務省国際連合局参事官
  小木曽本雄  在オーストリア日本国大使館参事官
  向坊  隆  東京大学工学部教授
  式田  敬  科学技術庁原子力局次長
  顧問
  中曽根康弘  衆議院議員
  前田 正雄  衆議院議員
  菅野和太郎  衆議院議員
  岡  良一  衆議院議員
  秋山 長造  参議院議員
  内海  清  衆議院議員
  江藤  智  参議院議員
  有沢 広巳  原子力委員会委員
  西村 熊雄  原子力委員会委員
  駒形 作次  原子力委員会委員
  丹羽 周夫  日本原子力研究所理事長
  一本松珠き  日本原子力発電(株)取締役社長
  嵯峨根遼吉  外務省参与
  関  義長  三菱原子力工業(株)取締役会長
  随員
  大塚博比古  外務省国際連合局科学課長
  萩野谷 徹  科学技術庁原子力局核燃料課長
  中山  昭  科学技術庁原子力局国際協力課長
  林  知彦  外務省大臣官房付
  井出 喜夫  科学技術庁原子力局国際協力課
  野口 晏男  外務省国際連合局科学課

4.会議概観

 第9回総回は、9月21日(火)午前11時45分、東京プリンスホテルにおいて開会され、総会議長にわが国の朝海代表が選出された。続いてIAEA事務局長、総会議長および国連代表の演説があり、一般討論に入った。一般討論においてわが国代表は、近年における核兵器拡散防止に対する世界の世論に応えるべしとして、各国による保障措置制度の受入れをうったえたあと、国際原子力機関に対して、すべての核物質の国際的移転を通報又は登録する制度を検討するよう提案した。またIAEAの事業活動に関しては、機関が、その憲章に定められている核物質提供者としての任務を忠実に実行するよううったえるとともに、IAEAの地域活動については、各地域の実情に即した配慮の下に、その事業を強力に推進するよう要請し、わが国としてもIAEAのかかる活動に協力を惜しむものではないことを表明した。
 一般討論のあと、総会は、事業計画予算の決定、事業報告の承認、理事国の選出等通常の議題の外、今次総会においては新保障措置制度の審議、新事務局長の選出が行なわれた。
 その他、一般討論において、ソ連代表は核兵器使用禁止に関する決議案を提出したが、これに対して各国はその趣旨には必ずしも反対ではないが、IAEAはそれを討議する場ではないとの意見が強く、9月27日インド代表が提案した「この問題の審議を無期限に延期する」との決議案が承認され本件については正式議題としてはとりあつかわないことになった。

総会議題

(1)開会

(2)議長選拳
 朝海浩一郎日本政府代表が総会議長に選ばれた。

(3)信任状委員会
 オーストラリア、コロンビア、イタリア、ポーランド、タイ、ソ連、米国、ウルグアイの9ヵ国がメンバーに選出された。

(4)副議長選挙
 ブラジル、フランス、インド、イラン、ルーマニア、ソ連、米国、コンゴーの8ヵ国代表が選ばれた。
 なお、これにさきだち、第1委員会(事業計画、予算に関する事案の審議を担当する。)の委員長にはアルゼンチン代表キヒラルト氏が、第2委員会(行政、法律に関する事案の審議を担当する。)の委員長にはノルウェー代表ランダース氏がそれぞれ選出された。

(5)一般委員会の任命
 議長、8名の副議長、2つの委員会の委員長等15名の委員を選び日程、議事等について審議した。

(6)新加盟申請
 理事会が勧告したヨルダンおよびジャマイカ2ヵ国の加盟申請が承認された。両国の批准書の寄託されたあかつきには、IAEAの加盟国数は95ヵ国に増加することとなった。

(7)事務局長演説
 エクランド事務局長がIAEAの事業活動について報告を行なった。

(8)議題および議事割当
 一般委員会の報告に基づき議題を承認し、日程を定めた。

(9)閉会日の決定
 9月28日と決定された。

(10)一般討論および1964〜65年度理事会報告

(11)第10回総会の開会日
 9月20日と決定された。

(12)理事国選拳
 任期満了の7ヵ国について改選が行なわれ、オーストリア、コロンビア、ガーナ、韓国、パキスタン、チュニジア、ユーゴスラビアが選出された。新しい理事国構成は付表に示すとおりとなった。

(13)1965年度予算
 65年度予算7,737,500ドルは第8回総会で承認されているが、さらに、10万ドルを限度として借入れることが承認された。

(14)1966年度予算
 経常予算8,744,000ドルおよび事業予算2,478,000ドルを承認した。

(15)1966年度分担率
 わが国の分担率は2.5%と決定された。

(16)保障措置
 新保障措置規則が理事会から提出され、総会はこれを了知した。新保障措置規則は9月28日開催の理事会において正式に採択された。

(17)1964年度決算報告

(18)憲章第6条A2の改正
 本件は、理事会の構成についての憲章改訂案で、その内容の重要性からして、十分な検討なしに、見解を出すことは時期尚早である、との理事会の報告を了承、総会においては審議されなかった。

(19)放射線事故の際の緊急援助
 理事会案がまとまらなかったので審議されなかった。

(20)国際原子力機関と政府間機関との関係
 第10回総会への参加を招請する政府間機関については理事会に一任することとなった。

(21)事務局長の選出、エクランド氏が再選された。

(22)機関の事業活動に関する年次報告

(23)年金委員会委員選挙

(24)1966年度一般基金に対する任意拠出
 わが国は、50,000ドル拠出することとなった。

(25)閉会

5.総会中の各種行事等

(1)東海村原子力施設見学旅行
 9月25日、原子力委員会の招待により各国代表140名が東海村を訪問した。一行は5台のバスに分乗して8時10分東京プリンスホテル発、東海クラブで昼食の後、原研東海研究所、原燃東海製錬所および原電東海発電所を視察し、20時30分ホテルに帰った。

(2)日本政府主催歓迎レセプション
 9月21日(火)、外務大臣、原子力委員長共催による歓迎レセプションが開かれ、内外の原子力関係者約700名が出席した。

(3)講演会
 9月20日(月)、東京文化会館において、日本原子力産業会議により次の6氏による講演会が主催された。米国原子力委員会シーボーグ委員長、英国原子力公社ペニー総裁、ソ連原子力利用国家委員会ペトロシャンツ委員長、フランス原子力庁ペラン高級委員、カナダ原子力公社グレー総裁、インド原子力庁バーバ長官(代理)

(4)原子力関係者の会見
 わが国の原子力関係者は、次の海外原子力指導者と会見し、国際親善および相互理解を深める一方、今後の原子力における国際協力について懇談した。

 9月13日(月)

Sir Philip Baxter
Chairman,
Australian Atomic Energy Commission

9月14日(火)

Mr.Macknight
Deputy Director General,
IAEA

9月15日(水)

Mr.Wells
Deputy Director General,
IAEA

9月16日(木)

Dr.Eklund
Director General,
IAEA

9月20日(月)

Mr.Stewart
British AEA

9月23日(木)

Prof.Salvetti
Vice−president,
Nuclear Energy Committee,Italy
Dr.Seaborg
Chairman,
U.S.Atomic Energy Commission

9月27日(月)

Dr.Otero
Chairman,
Atomic Energy Commission,Spain
Mr.Neuman
Chairman,
Atomic Energy Commission,
Czechoslovak Socialist Republic

6.成果
 第9回総会の東京開催により、各国代表が平和利用に徹して進めつつあるわが国の原子力開発研究に深い感銘と認識をもったこと、各国代表とわが国原子力関係者との会談を通じて広く国際協力の道が開けたこと等が、今次総会の成果であったと考えられる。

〔付表〕IAEA理事国

1.理事会選出(13ヵ国、任期1年)

(1)技術的先進国(5ヵ国)
 米、加、英、仏、ソ

(2)(1)以外の技術的先進国(5ヵ国)

1.北アメリカ        −

2.ラテン・アメリカ    ブラジル

3.西ヨーロッパ       −

4.東ヨーロッパ       −

5.アフリカおよび中東   南アフリカ

6.南アジア        インド

7.東南アジアおよび太平洋 オーストラリア

8.極東          日本

(3)原料物質生産国(2ヵ国)

 チェコスロバキア、ポルトガル

(4)技術援助提供国(1ヵ国)

 スウェーデン

2.総会選出(12ヵ国、任期2年)

             第8総会選出  第9総会選出

1.ラテン・アメリカ  アルゼンチン   コロンビア
           チリ

2.西ヨーロッパ    オランダ     オーストリア

3.東ヨーロッパ      −      ユーゴ

4.アフリカおよび中東 アラブ連合    ガーナ
                    
チュニジア

5.南アジア      パキスタン

6.東南アジア     タイ

7.極東                 韓国

(理事会役員)

 議 長  法眼晋作(在オーストリア日本大使)

 副議長  De.Tulio A.Marulanda (コロンビア)

        Prof.Ferdinand Hercik(チェコスロバキア)