原子力第1船について


 日本原子力船開発事業団は、40年3月初め造船大手7社に対し指名競争入札を行なったが不調に終わった。その後、原子力委員会、科学技術庁および運輸省了解の下に、日本造船工業会のあっせんで、同事業団は石川島播磨重工業(株)(原子炉の製作は三菱原子力工業(株))を契約折衝の相手先として決定し、随意契約方式によって具体的な条件につき折衝を重ねた結果、7月26日に最終的な船価は約60億円(原子炉部の価格的31億円、その他の部分の価格約29億円)であると報告し、予算化の要請を行なってきたが、原子力船専門部会等の議をへて予算化された第1船建造費36億円とははなはだしくかけ離れており、かつ、その内容には少なからず不確定な要素が含まれているので、当委員会は7月29日に次の決定と委員長談話を発表した。

原子力第1船建造について

(昭和40年7月29日原子力委員会)

 原子力第1船の建造については、昭和38年7月31日当委員会が決定し、これにもとづいて同年10月11日内閣総理大臣および運輸大臣が定めた原子力第1船開発基本計画の線にそって、日本原子力船開発事業団が本年1月基本設計を完了、造船業者および原子炉製造業者と契約交渉を行なってきた。しかしながら、今般、事業団から提示された船価見積額は約60億円であって、原子力船専門部会等の議をへて予算化された第1船建造費36億円とはなはだしくかけ離れており、かつ、その内容には少なからず不確定な要素が含まれているので、当委員会は、この際原子力第1船の建造着手を若干延期し、前記開発基本計画の実施上の問題点について検討を加えることとする。

委員長談話

 原子力第1船建造問題について、本日原子力委員会は、ただ今発表のとおり決定を行なった。
 このように第1船の建造を延期せざるを得なくなったことは誠に遺憾とするところであるが、原子力第1船の建造は、わが国の原子力開発にとって極めて大きな役割を果たすものであり、かつ、海運、造船ならびに原子力産業の将来の発展のために重要な意義を有するものであることにかんがみ、関係業界、学界等の積極的な協力を得て早急に再検討を行ない、第1船の建造を出来るかぎり早く軌道にのせる所存である。