環境および食品等の放射能汚染

放射能対策本部昭和39年12月17日発表


 放射能対策本部の昭和39年12月17日の発表によれば、雨水の全放射能は、39年夏期には、かなり低い値となったが、10月16日の中共の核実験後、一時的に、増加し、その月間降下量は全国平均で前月の10倍程度となった。しかし、この値は放射能対策本部でとりきめた緊急事態の第1段階(2,500mc/km2以上)と比較してはるかに低い値である。また中共核実験以後における全放射能の降下状況の詳細は第1図に示すように、10月下旬には比較的高い値を示したが、その後は、ほぼ従前に戻っている。地表付近の浮遊塵、高空浮遊塵、空間線量もともに同様な傾向を示している。
 ストロンチウム−90の東京における月間降下量は、39年春期にもいわゆるスプリングマキシマムを示し、比較的増加したが、39年1月から7月までの降下積算量は38年の同期間の値と比較して、約半分となっている。なお39年7月までの総降下積算量は61mc/km2である。
 牛乳中のストロンチウム−90濃度は38年秋以降比較的高い値を示していたが39年夏期には減少し、9月における各地の値は数μμc/l となっている。
 日常食からのストロンチウム−90摂取量は39年春期現在やや増加の傾向を示し、38年秋期と比較して平均2割程度の増加となっている。水道水中のストロンチウム−90濃度は37年以降ほぼ横這いの状態にある。
これら各種食品および飲料水中のストロンチウム−90濃度は環境にあるストロンチウム−90の状況に応じてそれぞれ変化していると考えられるので、食品等の汚染の機構をさらに研究するとともに、環境および食品の汚染の推移を監視する必要があると考える。

I 環境

1.雨水の放射能

 全国13ヵ所の気象観測所で測定している雨水の全放射能について39年4月から10月までの月間降下量を示すと第1表のとおりである。


第1表 観測所別全放射能月間降下量


第1図 全放射能日別降下量(国内最高値)




 なお中共の核実験以後の雨水の放射能について、日別の全放射能降下量の推移を示すと第1図のとおりである。

2.ストロンチウム−90の月間降下量
 気象庁気象研究所が分析した38年1月から39年7月までの東京におけるストロンチウム−90の月間降下量の推移を示すと第2図のとおりである。

 第2図 ストロンチウム−90月間降下量の推移(東京)

3.空間線量
 理化学研究所が測定した39年1月から10月までの東京における1箇月間の積算空間線量の状況は、第3図に示すとおりである。

 第3図 東京における空間線量の推移

II 食品

1.日常食中のストロンチウム−90
 全国各地の地方衛生研究所で、39年5〜6月に集めた日常食中のストロンチウム−90について、分析化学研究所で分析を行なった結果によると、日常食からのストロンチウム−90摂取量は第2表のとおりである。

 第2表 日常食からのストロンチウム−90摂取量

2.飲料水中のストロンチウム−90

 水道水(原水)中のストロンチウム−90
 全国各地の地方衛生研究所で39年4月から6月までに採取した原水中のストロンチウム−90について分析化学研究所で分析した結果は第3表のとおりである。

 第3表 原水中のストロンチウム−90

3.牛乳中のストロンチウム−90

 農林省畜産試験場が、月寒、千葉、熊本の各地で搾乳した牛乳について行なっているストロンチウム−90の分析結果を39年4月から9月までについて示すと第4表のとおりである。

 第4表 各地の牛乳中のストロンチウム−90