米国原子力潜水艦寄港に伴う放射能調査


 科学技術庁原子力局は9月1日の第2回各省連絡会において、米国原子力潜水艦寄港に伴う佐世保、横須賀両港湾における放射能調査計画について〔I〕のとおり決定した。
 また、これに基づく調査の実施状況および調査の結果は〔I〕〔II〕のとおりである。

   〔I〕港湾の放射能調査計画

 1.調査の概要

1.調査の種類はつぎのとおりとする。
(1)事前調査
 最初の入港が行なわれる前に行なうバックグラウント調査をいう。

(2)事後調査
 最初の入港以降に行なう下記のモニタリング調査をいう。

(イ)定期調査
 定期的および連続的に行なう調査をいう。

(ロ)臨時調査
 潜水艦の入出港前後および停泊中にその周辺にて行なう調査をいう。

2.事前調査の内容は、つぎのとおりとする。
(イ)現地において海水、海底土および海産生物の
 サンプルを採取し、これらのサンプルについて、放射能測定分析機関において機器分析および化学分析を行なう。
(ロ)現地の空間線量および海水中のγ線量を測定する。

3.事後調査のうち、定期調査の内容はつぎのとおりとする。
(イ)現地において海水、海底土および海産生物のサンプルを3ヵ月に1回ずつ採取し、これらのサンプルについて放射能測定分析機関において、機器分析および化学分析を行なう。
(ロ)現地にモニタリングポイントおよびモニタリングポストを設置し、モニタリングポイントではフィルムバッチおよびガラス線量計により約1ヵ月間ごとに積算線量を測定する。また、モニタリングポストには放射能レベルの異常を指示するための装置等を設置する。
(ハ)現地港湾内においてモニタリングボートは、所定のコース(第1図、第2図参照)を3ヵ月に1回航行し、航行中自記測定装置により、現地の空間線量および海水中のγ線量を自動的に測定記録する。

4.事後調査のうち、臨時調査の内容はつぎのとおりとする。
(イ)現地に常時待機しているモニタリングボートに設置された測定器により、現地の空間線量および海水中のγ線量を潜水艦入出港の前後および停泊中に測定する。
(ロ)モニタリングポストにより現地の空間線量および海水中のγ線量を潜水艦入出港の前後および停泊中に測定する。

5.モニタリングポイントの数は10(佐世保)および6(横須賀)とし、モニタリングポストの数は各々1とする。(設置場所については第1図、第2図参照)

6.モニタリングボートの数は、1港当り1隻とする。

第1図 モニタリングボート調査コース及び放射線監視装置配置図(佐世保港)


第2図 モニタリングボート調査コース及び放射線監視装置配置図(横須賀港)


 2.調査の分担

1.海水、海底土および海産生物のサンプル採取を担当する機関は、次のとおりとする。

(1)海水、海底土の採取・・・・・海上保安庁水路部
(2)海産生物の採取・・・・・・・・・西海区水研(佐世保)
                   東海区水研(横須賀)

2.海水、海底土および海産生物のサンプルの放射能測定分析を担当する機関は、次のとおりとする。

(1)海水、海底土、および海産生物のサンプルの全β測定は、これらのサンプルを採取した機関において行なう。
(2)海水、海底土および海産生物のサンプルの機器分析ならびに化学分析は、それぞれ公衆衛生院および分析研において行なう。

3.以上のほか、所要の調査の担当機関は、次のとおりとする。

(1)事前調査において
 現地の空間線量および海中γ線量の測定・・・・・公衆衛生院

(2)事後調査において

(イ)モニタリングボートの建造、管理および測定‥海上保安庁警準救難部
(ロ)モニタリングポイント・ポストの建設保守および測定‥佐世保市および横須賀市

  〔II〕調査の実施状況

 1.日程および調査員数

1.佐世保港第1回事前調査

(1)線量測定       9.25開始 9.28終了 調査員数3名
(2)海水、海底土採取   9.24〃  9.27〃     〃6名
(3)海産生物採取     9.26〃  10.1〃     〃3名

2.横須賀港第1回事前調査

(1)線量測定      10.4開始 10.6終了 調査員数3名
(2)海水、海底土採取  10.4〃  10.6〃     〃6名
(3)海産生物採取     9.30〃  10.6〃     〃4名

3.佐世保港第2回事前調査

(1)線量測定      10.13開始 10.16終了 調査員数2名
(2)海水、海底土採取  10.13〃  10.16〃     〃4名
(3)海産生物採取    10.10〃  10.17〃     〃3名

4.横須賀港第2回事前調査

(1)線量測定      10.23開始 10.25終了 調査員数3名
(2)海水、海底土採取  10.23〃  10.25〃     〃4名
(3)海産生物採取    10.19〃  10.25〃     〃4名

5.佐世保港追加事前調査

(1)海水、海底土採取  10.30開始 10.30終了 調査員数4名
(2)海産生物採取    10.30〃  10.30〃     〃4名

佐世保港臨時調査

(1)線量測定      11.11.   11.13,  11.14, 調査員数3名

佐世保港第1回事後調査

(1)線量測定      11.21開始 11.21終了 調査員数3名
(2)海水、海底土採取  11.19〃  11.31〃     〃3名
(3)海産生物採取    11.15〃  11.21〃     〃4名

  2.サンプル採取地点数およびサンプル数

1.佐世保港

(1)海水        8地点 29サンプル
(2)海底土       8地点  8サンプル
(3)海産生物      16地点 18サンプル

    他に28サンプルを漁業協同組合より購入

2.横須賀港

(1)海水        6地点 22サンプル
(2)海底土       6地点  6サンプル
(3)海産生物      4地点 16サンプル

    他に12サンプルを漁業協同組合から購入

 3.日本近海の海産生物放射能調査日程

第1回調査

北海道水研調査海域     10.15開始  10.18終了
東北〃           10.30〃   10.31〃
日本海区〃          9.20〃    9.22〃
東海区〃          10.15〃   10.18〃
南海区〃           9.22〃
西海区〃          10.1 〃    10.3〃

第2回調査

北海道水研調査海域     10.7開始   10.8終了
東北〃           11.12〃
日本海区〃         10.20〃
東海区〃          11.5〃    11.11〃
南海区〃          10.7〃
西海区〃          11月上旬

第3回調査

北海道水研調査海域     11.16開始  11.17終了
東北〃           11.12〃   11.16〃
日本海区〃         11.18〃
東海区〃
南海区〃          11.16〃
西海区〃          11.15〃   11.21〃


  〔III〕調査結果の発表

 1.事前調査の結果

 米国原子力潜水艦寄港に伴い入港前に実施した事前調査のうち、第1回事前調査で実施した空間線量測定海水中ガンマ線量測定ならびに海水、海底土および海産生物の全ベータ測定結果をとりまとめると次のとおりである。

1.調査担当機関

(1)空間線量測定        厚生省国立公衆衛生院
(2)海水中γ線量測定         同上
(3)海水、海低土の採取および全β測定
                   海士保安庁 水路部
(4)海産生物の採取および全β測定(横須賀港)
                   水産庁 東海区水産研究所
(5)        同上         (佐世保港)
                     〃  西海区  〃

 2.現地調査月日および調査員数

(1)佐世保港第1回事前調査

(イ)空間線量測定      9.25開始 9.28終了   調査員数3名
(ロ)海水中γ線量測定     9.25開始 9.28終了   調査員数3名
(ハ)海水海底土採取     9.24開始 9.27終了   調査員数6名
(ニ)海産生物採取      9.26〃  10. 1〃     〃  3〃

         

(2)横須賀港第1回事前調査

(イ)空間線量測定      10.4開始 10.1終了    調査員数3名
(ロ)海水中γ線量測定    10.4開始 10.1終了    調査員数3名
(ハ)海水海底土採取     10.4開始 10.6終了    調査員数6名
(ニ)海産生物採取      9.30〃  10.6〃      〃  4〃
         

(3)延人員、佐世保54人日、横須賀55人日、合計 109人日

3.測定結果



 全β測定結果については、最近における他の港湾、海洋における測定値とほぼ一致している。
 第2回調査で採取した試料の全β測定および第1回調査で採取した試料の核種分析は現在実施中である。


 *:現在測定中

注(1)海水   :K40(カリウム−40)を除いた値
  (2)海底土  :K40            を含む値
  (3)海産生物:K40            を含む値
    海産生物の種類は魚類(カレイ、タイ等)、貝類、ヒトデ類、ナマコ類、
    甲殻類、海草類、プランクトンである。
  (4)空間線量 宇宙線、自然放射能、装置固有汚染、フォールアウト等の放射能を含む。
  (5)海水中のγ線量               〃



 2.米国原子力潜水艦佐世保港

 寄港の際の放射能調査状況

1.放射能監視艇による放射線監視状況
 すでに佐世保海上保安部に配置してある放射能監視艇が入港直前、停泊中および出港直後に出動して放射線の測定を行なった。
 入港直前の測定については、11月11日午後、佐世保港内外港の所定のコースについて行なった結果、海水の測定値は5ないし6cpsであった。停泊中の測定については、11月13日午後原子力潜水艦の周囲を同心円状に5周し、測定した結果、海水の測定値は6ないし8cpsであり入港直前のバックグラウンドレベルと変化は認められなかった。
 出港直後の測定については、11月14日出港後直ちに測定を開始し、停泊位置の周囲を同心円状に3周し、ついで佐世保港内港の所定コースを運行し、再び停泊位置の周囲を同心円状に3周して、測定を行なった結果、いずれの場合も海水の測定値は5ないし6cpsであり、バックグラウンドレベルとの変化は認められなかった。

2.モニタリングポストによる放射線監視状況
 すでに佐世保市に設置してあるモニタリングポストの自動記録装置により海水中のガンマ線量が入港前より記録されているが、入港後、停泊中および出港後を通じてそのまま記録を継続している。
 これによればポスト運転開始後入港までの測定値900ないし1,500cpmであった。
 入港時(入港前および入港後)および停泊中のレベルは900ないし1,400cpmを示しており、従来のバックグラウンドレベルとの変化は認められなかった。
 出港時(出港前および出港後)のレベルについても900ないし1,000cpmでバックグラウンドレベルとの相異は認められなかった。

  [IV] 原子力潜水艦寄港に伴う放射能調査日誌