原子力損害の民事責任に関する
国際会議決議に基づく常設委員会の設置


1.経緯
 陸上原子力施設及び核燃料物質の輸送に係る原子力損害につき規定している「原子力損害の民事責任に関するウイーン条約」は昭和38年5月19日に採択されたが、原子力損害賠償のための国際的保証基金の設立、政府間機関により運営される原子力施設に対する同条約適用に関する問題および裁判管轄権が2国以上の締約国にまたがる場合の管轄権の決定等については十分に検討を加える時間的余裕がなかったので、未解決のまま残された。このため、採択会議は、同日これらの問題について検討を加えるための常設委員会を設置すべき旨の決議を行なった。
 これに基づき、国際原子力機関事務局長は、9月18日から開催される同機関理事会に、同常設委員会の設置についての決議案の提案を行なうが、これに対する当庁の意見を外務省より求められたものである。

2.内容及び意見
 同決議実の内容およびこれに対する意見は、次のとおりである。

(1)設置
(イ)内容
 事務局長は、第1に同条約採択会議における常設委員会設置の決議に基づいて、前記の諸問題を検討するため同委員会を設置するように提案している。

(ロ)意見
 これらの諸問題について、検討を加えることは必要と思われるので、同委員会の設置には異議がない。

(2)構成国
(イ)内容
 常設委員会の構成国については、昭和36年以来同条約の作成に参与してきた政府間委員会に属していた*15ヵ国(わが国を含む)から成るものとするが、同採択会議に出席はしなかったが、批准または加入した国をオブザーバーとして招待し、また同採択会議に出席もせず、批准または加入もしない国でも、その国が出席を希望する場合には、オブザーバーとして招待するように提案している。

*アルゼンチン、ブラジル、カナダ、チェッコスロバキヤ、西ドイツ、フィンランド、フランス、インド、日本、ポーランド、スペイン、ソ連、アラブ連合、イギリス、アメリカ

(ロ)意見
 わが国は、政府間委員会の当時から、同条約の検討には積極的に参加してきたので、今回設置される常設委員会にも参加することが望ましいと思われる。

(3)開催時期
 (1)内容
 その開催を、きたる10月24日から11月2日まで行なわれる、「原子力船運航者の責任に関する条約」の常設委員会の開催以前に行なうように準備をすすめるよう提案している。
 (2)意見
 開催時期は、原子力船条約の常設委員会終了後の適当な時期とすることが望ましい。

(4)その他
 (1)内容
 常設委員会の成果について、時々同機関理事会に報告すること、常設委員会の構成国について適当な期間をおいて再検討すること等提案している。
 (2)意見
 異議はない。