日米研究協力について


 日米研究協力については、去る昭和36年6月、米国からその促進方につき非公式提案があって以来、原子力局において、検討が重ねられてきたが、最近に至り、漸く実施の運びとなった。本件の今日に至るまでの経緯等は次のとおりである。

1.経緯

(1)昭和36年6月、当時訪日中の米国AEC原子炉開発部次長バンダー・ワイデン氏は、原子力局に対し、日米間の研究協力を非公式に提案し、次のテーマを候補として挙げた。1)半均質炉、2)軽水炉の核計算コード、3)ウラン・カーバイト燃料、4)酸化ウラン燃料、5)プルトニウム・リサイクル、6)材料試験炉、7)ガスタービン、8)安全性

(2)前記の提案をうけて、原子力局においては、協力を実施するにあたっての問題点につき、数次にわたり検討を重ねるとともに、36年10月には、原研、公社、原産および民間産業各グループと打合わせ会を開催し、意見の交換を行なった。

 その結果、米国側提案は、これを受け入れることが望ましいが、なお解明すべき点が多々あるものと考えられたので、外務省に対し、米国AECへの当方意向の非公式伝達方、米国AECの本件に関する意向の非公式打診方および問題点の調査方を依頼した。

(3)昭和37年3月、前記照会事項に対し、米国AEC国際部長ウエルズ氏から、研究協力の対象テーマ、実施方法等に関し書簡により次のとおりの提案があった。

1)研究協力は、ニューズレター、報告書の交換等による情報交換、サンプルの交換、照射試験の実施、研究者の交流等の方法により行なう。

2)研究協力の対象テーマは、酸化物系および炭化物系燃料に関する研究(内容略)とする。

3)研究協力の事務の促進を図るため、日米両国にそれぞれ1名の研究協力官をおく。

 なお、同書簡には、情報交換の原則、照射試験計画を含む共同作業計画および特許問題の取扱いの原則に関する米側意向が、それぞれ付録A、BおよびCとして添付された。また、本研究協力の米側研究協力官として、米国AECの燃料材料開発課長シモンズ氏を指名してきた。

(4)前記の書簡による米側提案に関し、種々検討の結果、昭和37年4月、1)研究テーマおよび協力方法は、おおむね米国側提案どおりにすること、2)この研究テーマに関する当方の研究協力官を指命すること、3)研究協力の推進のための国内連絡機関として、原子力局、原研、公社、原産および民間産業各グループをもって構成する研究協力連絡会を設置すること等を審議決定するとともに、同年7月、外務省を通じ、1)ウエルズ氏提案の協力方法に、原則的に賛成すること、2)協力テーマは、同氏提案どおりとしたいこと、3)当方の研究協力官は、核燃料課長伊原義徳とすること、4)付録AおよびBについては異議はないが、特許問題点に関する付録Cについては、なお検討を要するので、後日当方の意向を表明したいこと等を米国AECへ通報した。

(5)その後、昭和37年中に、計5回にわたり研究協力連絡会を開催、研究協力の進め方、特許問題の取り扱い方法等につき討議したほか、11月には、米国側研究協力官の来日があり、種々意見の交換を行なった結果、研究協力は、さし当り実施可能な部分から実行に移すことが望ましいとの結論を得た。これら結論に沿って諸般の準備が進められている。 なお、この間、照射試験の実施方法費用の分担方式等につき、米国AECとの間に数回、文書の往復があった。

2.研究協力の対象、研究実施方法等

(1)研究協力の対象、研究分野は次のとおりである。

1)酸化物および炭化物核燃料に関する研究であって、次に掲げるもの

i)基本的な化学的および冶金学的性質

ii)サンプルの製造方法および加工技術

iii)他物質との共存性

iv)燃料粉末の特性賦与

2)金属マトリックス物質中へのウランおよびトリウムの酸化物ならびに黒鉛中へのウランおよびトリウムの炭化物の分散に関する研究であって次に掲げるもの

前記(i)〜(iv)に同じ

(2)また研究協力は、具体的には、次の方法による情報の交換等により行なわれている。

1)ニューズレターおよび報告書の交換ならびに専門家会議の開催等

2)サンプルの交換

3)照射試験および照合試験の実施

4)長期または短期の研究者の交流

 このうち、ニューズレターは年3〜4回発行されることとなる予定である。

(3)以上を主たる内容とする研究協力は、「研究協力実施要領」に基づき実施されることとなっている。実施要領では、研究協力の目的、日米両国間の相互主義の原則、対象研究分野、研究協力の実施方法、情報交換の原則、サンプルの交換、照射実験の実施等の原則、研究者交流の原則、国内参加者、参加者の便宜および義務、参加者の提供する情報の秘密の保持等に関する事項が規定されることとなっている。本実施要領は近く成案を見る予定である。

(4)特許問題については、日米両国の特許制度の相違から、未だ結論を得ていない。しかし、特許問題は研究協力を推進するにあたっての重要課題の一つであるので、早急結論を得るために目下、討論が重ねられている。

(5)しかし、研究協力は、できるだけ早く実施に移した方が得策と考えられるので、差しあたりは、特許に関係のない部分から実施に移すこととし、昭和38年2月に第1回のニューズレターの交換を、また、同年5月頃第1回専門家会議の日本における開催を予定しており、現在準備が進められている。

(6)核燃料に関する本研究協力は、原子力分野における日米協力のテストケースとして行なわれるもので、その成果いかんによっては、将来、安全性、プルトリウム・リサイクル等の研究分野にも発展することが予想される。