原子力局 「原子力損害の民事責任に関する 1 陸上原子力施設および核燃料物質の輸送に係る原子力損害賠償に関する制度の国際的基準を設けようとする作業は、国際原子力機関(IAEA)を中心として進められており、昭和34年専門家会議が開かれ、次いて昭和36年5月には、わが国を含む14ヵ国の参加のもとに第1回政府間委員会が開かれて、一応の草案が作成された。 この草案について、このたび本年10月22日から6日間開催された第2回政府間委員会において検討が加えられたが、さらに昭和38年4月29日から開催される外交会議において正式に採択される運びとなっている。 2 このたび開催された条約草案に関する政府間委員会における主要な問題点の概要は、次のとおりである。 (1)原子力損害に従業員損害を含めることについて 原子力損害に、原子力事業者の従業員の業務上受けた損害を含ましめることについては、問題なく決定した。 (2)核燃料物質の輸送における責任の所在について この問題については、(イ)原則として契約によって決定する考え方と、(ロ)“Take in charge”の段階によってきめる考え方と2つの考え方があったが、審議の結果、文書による契約によってきめられるべきであるという考え方に決定した。 (3)運営者の責任限度額について この問題については、大別して(イ)事故単位またはサイト単位に基づいて、施設国が運営者の責任の最高限度(ただし、金額については問題がある。)を定めることができるとする考え方(多数説)と、(ロ)責任限度額を画一的に定めることなく、施設の規模、種類等によって段階的に設けるべきだとする考え方(少数説)とがあったが、審議の結果、事故単位によって一定金額(金額の高低については意見がまとまらず、空欄となった。)の責任限度額を設けうるとイうことに決まった。 (4)損害賠償措置および国の補償について 運営者は、賠償支払いのために施設国の定める態様、金額に従った損害賠償措置を維持しなければならず、施設国は損害賠償措置からの支払いが不十分である範囲において、運営者の責任限度額まで必要な資金を提供することによって補償するということに決まった。 (5)求償権の制限について この問題については、大別して(イ)損害発生につき故意ある者の作為、不作為によって事故が発生した場合と、契約で明示的に引き受けられた場合とにのみ求償権を認める考え方(多数説)と、(ロ)過失あるすべての者に対して求償権を認める考え方(少数説)との2つの考え方があったが、審議の結果、(イ)の考え方に決まった。 (6)その他、国際法上の問題、条約手続上の問題等幾つかの問題があった。 |