昭和37年度原子力平和利用研究費補助金の
交付研究の概要

1.原子力用電子部品の照射時における雑音特性、温度特性に関する試験研究

松下電器産業(株)

補助金 4,527,000円

(目的)

 放射線雰囲気中での電子部品の雑音特性、温度特性の変化を調べ、放射線下で使用に耐える電子機器の設計資料を得る。

(内容)

(1)電子部品の特性試験

 36年度に行なった試験の線量範囲を、γ線については108〜109r、中性子線については1016〜1017nvtまで広げ、電子部品の特性変化を測定する。また放射線下における温度特性、雑音特性(雑音スペクトルは雑音レベル等)を測定する。

(2)電子機器の特性試験

 マイクロモジュール部品、および固体回路による小型電子機器(発振器、増幅器)の放射線雰囲気中ないしは放射線照射後の機能、特性の変化を試験する。

2.イオンドリフト現象を用いた半導体放射線検出器に関する試験研究

東京芝浦電気(株)

補助金 2,617,000円

(目的)

 β、γ線に対しても効率の高いLiイオンドリフト形のSi検出器を製作し、検出器の高性能小型化をはかる。

(内容)

(1)Liの拡散、イオンドリフト現象の基礎研究高純度Siウェフアに活性度の高いLiを拡散させ、Liの拡散係数を求める。次いでLi拡散P−N接合ロットについて種々の温度でLiイオンドリフト現象を解析し、Liイオンのモビリティを求める。

(2)放射線検出器の試作

 (1)で得た技術を基として、検出器を試作する。電極づけ、耐湿防護などの組立て技術を開発する。

(3)素子特性の劣化と再生の研究

 素子の真性領域の温度による変化および種々のバイアスによる再生現象を研究する。

(4)特性試験

 試作検出器の電気特性および放射線検出試験を実施する。

3.ガンマー線用GMカウンターの性能向上に関する試験研究

神戸工業(株)

補助金 3,240,000円

(目的)

 GM計数管の性能を改善向上させ、100μc以下の微弱線源を高感度に検出し簡便に取扱うことのできる放射線機器を開発する。

(内容)

(1)ハロゲンGM管の管壁材料の選択を検討し、管の構造は内面に凹凸をつけるなど特殊な形とし、また封入ガスの種類、ガス圧を変化させるなどの方法により、GM管のγ線検出感度を向上させる。

(2)上の研究で得たGM管を使って、これにトランジスタ化した計数回路を組み合せ、高感度の計数装置を試作する。

4.コンプトン電子による大線量測定法に関する試験研究

大阪府

補助金 2,260,000円

(目的)

 ガンマ線照射によりガラス等の散乱体内に生じたコンプトン電子を外部回路で検出する方法を利用し、大線量を測定する新しい方法を開発する。

(内容)

(1)ガラスまたはプラスチックスにγ線を照射すると成分元素との衝突によってコンプトン散乱によって電子を放出する。この放出電子を電極に捕え、その電気量を読取りγ線の照射量を測定するが、測定効率はガラス等の散乱体の材質、形状、厚み、密度等の諸定数によって影響されるのでそれらの影響をしらべ、最大の測定効率を得るための条件を決定する。

(2)外囲条件、とくに温度による影響をしらべγ線の検出感度と測定温度との関係を明らかにする。

5.放射線解析による混合核種の定量法に関する試験研究

理化学研究所

補助金 4,917,000円

(目的)

 物理的手段によって、廃棄物や放射性降下物対策に資するためこれらの中に含まれる混合各種の種類、数量を迅速、正確に定量する方法を開発する。

(内容)

(1)放射性物質から放出される放射線の性質を判定するため電離箱、計数管、シンチレーションスペクトルメーター等を用いて、放出される放射線の種類とエネルギーを測定する。

(2)混合核種の測定試料をスペクトルメーター等を使って先ず放射線をα線、β線、γ線等の種類およびエネルギーごとに分別し、次いで各測定装置を用いて数量を決定する。

(3)以上のデータをもとにして、もっとも迅速、正確かつ簡単な混合核種の分析定量を行なうことができる測定装置の組み合せ方法を考える。

6.応答係数法による臨界計算コードに関する試験研究

日本原子力事業(株)

補助金 2,361,000円

(目的)

 原子炉設計に資するため応答係数法による、2次元の形状をもつ炉の臨界計算コードを開発し、本成果をもって計算時間をいちじるしく短縮せんとする。

(内容)

(1)2次元コードの作成

 (イ)応答係数計算コードの作成

 無限直方柱の応答係数を、2組拡散近似のもとに計算するコードを作成する。

 (ロ)合成方式の研究

 組成の違った直方柱のいろいろな配置を有する炉心について、応答係数の合成方法、とくに繰り返し法を大型電子計算機を用いて研究する。

 (ハ)臨界計算コードの作成

(ロ)の研究成果にもとづき、応答係数の計算および合成を行なう2次元臨界計算コードを作成する。

 (ニ)試計算および検討

 作成されたコードと通常の拡散コードの計算時間、精度を比較する。

(2)半均質炉の反射体制御の研究

 (1)で作成したコードを2次元形状の半均炉の臨界計算に適用し、反射体制御の可能性を確める。

7.原子炉用有機冷却材の諸特性に関する試験研究

住友原子力工業(株)

補助金 3,800,000円

(目的)

 有機材循環系の高温における諸特性、とくに、物理的諸特性を解明するとともに、高温下における有機材の取扱技術を修得し、有機材減速冷却型原子炉の開発に資する。

(内容)

(1)有機材循環回路の製作

 高温度で有料材を循環させる回路を製作し、これを36年度補助金により製作した核特性試験用タンクに接続する。

(2)核特性試験用装置の温度分布均一化の研究

 上記の核特性試験用タンクに接続した有機材循環回路を使用して、有機材を折損させ試験用タンク内部の温度の均一化をはかる。

(3)中性子拡散実験

 試験用タンク内の高温度における有機材中の中性子束分布を測定し、中性子拡散距離の温度依存性を検討する。

8.時間分析法による軽水型原子炉の動的特性に関する試験研究

(株)日立製作所

補助金 5,231,000円

(目的)

 軽水型臨界集合体を使用して、原子炉の動的特性に関連すを炉心核物理量(β、lなど)を測定し、発電炉の設計および安全性検討の実験的資料を得る。

(内容)

(1)時間分析製置用付属装置およびクロックパルス選別装置を試作する。

(2)反応度発生装置(サイン状、ステップ状各1式)を試作する。

(3)臨界集合体炉心にサイン状(約0.01〜約50c/s)およびステップ状(立上り約10msec)の反応度変化を与え、その出力の過渡応答を時間分析法により測定し、β/lおよびρ/βを決宅する。

9.高温ガス冷却型原子炉用ガス圧送機の設計製作に関する試験研究

富士電気製造(株)

補助金 9,930,000円

(目的)

 原子炉設計に必要な工学的基礎資料を得るため、高温ガス冷却型原子炉用ガス圧送機を試作し、温度、圧力等将来開発を予想される高温ガス炉と同様、条件下におけるガス圧送機の性能特性、機械的性質を検討する。

(内容)

(1)実験装置の製作

 ガス温度800℃、ガス圧力20kg/cm2のガス圧送機および試験用高圧ガス循環回路を製作する。

(2)測定実験

 (イ)性能特性

 種々の圧力、温度レベルにおける風量と回転数の相関関係を求め、圧送機の圧力上昇、効率等の性能特性を決定する。

 (ロ)機械的性質

 とくに、高温に対してなされた特殊設計の効果を測定し、構造設計上の資料を得る。

10.原子炉圧力容器の上部ヘッドと胴部との結合の漏れ止めに関する試験研究

三菱造船(株)

補助金1,058,000円

(目的)

 原子炉圧力容器の上部ヘッドと胴部との結合用フランジについて、その締付加と耐漏洩性に関する工学的データを得るため、実物大の1/2、1/6模型の中空リングについて実験を行なう。

(内容)

 原子炉圧力容器の1/2、1/6模型につき、中空リングを用い常温にて水および空気を加圧して漏洩実験を実施し、フランジ寸法、接食面の加工法、締付力と漏洩量の関係を求める。

 また、1/6模型については、実用温度約300℃まで、容器を内部から加熱して、容器、締付ボルト間に温度差を生じせしめ、漏洩試験を行なう。内部流体の漏洩量測定は、空気については気泡採取法、水については真空計測法を採用する。

11.数値制御方式による研究炉の自動起電に関する試験研究

東京芝浦電気(株)

補助金 4,500,000円

(目的)

 研究炉の計測制御系、とくに、起動系の安全化、自動化をはかるため、中性子源レベルから出力レベルまでの起動制御を行ないうる数値式制御用計算機を試作し、さらにプログラム制御を行なう。

(内容)

(1)自動起動制御装置の設計試作

 感度の異るBF3計数管計測回路(3系統)、制御用計算器および制御棒駆動機構を製作し、原子炉シュミレーターを用いてその性能試験を行なう。計算機は、ランダムパルス信号の統計的処理を行ない、ピリオド信号の不安定性を除くとともに、コントロール信号、アラーム信号を備える。

(2)原子炉による自動起動実験

 前記装置を東芝訓練用原子炉にとりつけ、起動制御実験を行ない、自動起動の可能性を確めるとともに、統計的変化信号に対する最適制御の条件を見出す。

12.加圧水型舶用原子炉の浄化系統に関する試験研究

三菱日本重工(株)

補助金 7,475,000円

(目的)

 加圧水型舶用原子炉の浄化系統に使用する再生熱交換器を3種類試作し、高温高圧水循環ループにより、これらの性能試験を施行し、構造、工作方法、性能等に関する総合的な比較検討を行なう。

(内容)

(1)再生熱交換器の試作

 舶用再生熱交換器として、(イ)二重直管型、(ロ)二重管コイル型、(ハ)Uベントーシェル型、の3種類を試作し、加工法、漏洩防止構造の研究を行なう。

(2)高温高圧水循環ループによる特性試験

 高温高圧水ループを製作し、各試作熱交換器の伝熱性能、圧力損失、熱膨張の影響等について実験を行なう。

(3)総合的比較検討

 上記の(1)、(2)の結果に基づき、3種類の再生熱交換器の総合的な比較検討を行ない、舶用に最適な型式を求める。

13.原子炉用伸縮継手の構造設計と溶接施工に関する試験研究

(社)日本溶接協会

補助金 4,252,000円

(目的)

 原子炉用伸縮継手の国産化をはかるため、これに必要な構造設計および溶接施工について関係機関の協力の下に検討をすすめ、その結果に基ずき各種の伸縮継手モデルを試作してその強度試験を実施し、実用上の工学的諸資料を得んとする。

(内容)

(1)基礎的研究

 原子炉用各種伸縮継手を用いて、静的荷重試験を行ない、その応力集中状態、荷重と変位の関係を検討する。

(2)伸縮継手用材料の溶接施工の研究

 ステンレス鋼(SUS43、33)とCr−Mo鋼(STT42D)の溶接方法を検討する。

(3)伸縮継手試験機による構造強度の研究

 伸縮継手試験機(荷重20ton)を製作し、伸縮継手モデルを各材料につき20個製作し、これにより繰り返し試験を行ない、継手にかかる応力と耐用繰り返し数との関係を求める。

14.ウラン精製工程における新還元法に関する試験研究

古河電気工業(株)

補助金 4,525,000円

(目的)

 36年度の補助金研究では、ウラン鉱石を重炭酸塩および修酸塩水浴液で浸出処理し、さらにアミン系抽出剤を用いて不純物の少ないウラニル溶液を得たが、本年度はこの継続研究として上記ウラニル溶液について新しい精製還元方法を開発する。

(内容)

(1)36年度の研究で得られたウラニル溶液を弗化アンモンとギ酸共存のもとで、亜硫酸ガスを作用させることによって四弗化ウランと弗化アンモンの複塩を高収率で得る研究を、10リットルの規模で行ない、化学工学的な基礎データを得る。

(2)上記の研究で得られた複塩を不活性ガス中で加熱分解することによって純四弗化ウランを得る研究を0.5リットルの規模で行ない、化学工学的な基番データを得る。

(3)上記の研究と平行してウラニル溶液をヒドラジンと弗酸によって還元弗化を行ない、さらに加熱脱水を行なって純四弗化ウランを得る研究を実験室規模で行なう。

(4)上記(2)(3)項によって得られた四弗化ウランの化学的特性、とくに不純物についての検討を行なう。

15.高密度充填用二酸化ウラン単結晶粉末の製造に関する試験研究

三菱金属鉱業(株)

補助金 3,240,000円

(目的)

 UO2単結晶粉末を溶融塩電解法によって製造するための電気化学的諸条件を検討する。

(内容)

(1)弗化ウラニルと塩化ウラニルを用い溶融塩電解によってUO2単結晶紛末を得るための基礎的な電解条件、すなわち電流、電圧時などの諸条件を求める。

(2)1kg規模の溶融塩電解装置を用い、工業的な規模でUO2単結晶紛末を得る場合の諸条件を上記(1)の基礎データをもととして検討する。

(3)得られたUO2単結晶粉末の物理的、化学的な諸試験を行ない、燃料粗材としての適性を検討する。

(4)高密度充填に適したUO2粉末としての適性を研究する。

16.ふっ素を含有しない二酸化ウランの粉末の製法に関する試験研究

住友金属鉱山(株)

補助金 3,100,000円

(目的)

 在来の精製法では本質的にFを除去することが困難であったが、UF6の加水分解によって生じたF-をAl塩類を除去することによってAIF6-3等に錯化して取除く新しい精製法を開発し、この方法によって得られたUO2塩にNH3ガスを反応せしめ、仮焼、還元をへて高密度なUO2粉を製造する技術を確立する。

(内容)

(1)UF6を出発原料とし、これを加水分解して得られたUO2F2にAl塩類を添加してF-をAlF6-3等の錯イオンとして錯化して、UO2を完全に抽出し、Fおよび不純物を含有しない溶媒抽出の化学工業的条件を求める。

(2)上記の手法によって得られたUO2塩にNH3ガスを反応せしめ、仮焼、還元処理を行なって高密度充壌に適した球状UO2粉を得る基礎データを得ることを期する。

17.溶解法によるウラン・カーバイトの製造に関する試験研究

住友金属工業(株)

補助金1,700,000円

(目的)

 アーク溶解法によりウラン・カーバイトを製造する技術を開発し、近い将来開発が予想される動力炉用燃料材としてのウラン・カーバイトの性能の向上に資する。

(内容)

(1)ウラン・カーバイト製造条件の検討:均一なウラン・カーバイトを得るための溶解時間および回数その他の検討、タングステン電極と黒鉛電極を使用する場合の相異、不活性ガス雰囲気と真空溶解、電流・電圧、溶解素材の問題等、良質なウラン・カーバイトを製造する研究。

(2)種々の研削材を用いて鋳造されれウラン・カーバイトの整形加工法の検討。

(3)ウラン・カーバイトの諸性質に関する研究:ウラン・カーバイトの密度、X線検査、その他の物理的性質、耐熱サイクル性、耐衝撃性、その他の機械的性質(熱処理挙動、顕微鏡的性質等金属学的性質)、有機材、被覆材等との共存性、耐食性等核工学的性質に関して総合的に検討する。

18.炭化ウラン系半均質燃料の製造に関する試験研究

日本カーボン(株)

補助金1,702,000円

(目的)

 これまでの補助金研究、原研委託費研究によって得られた炭素を被覆したUC2およびUO2を用い、これをカーボン・マトリックス中に均一に分散せしめた炭化ウラン−黒鉛系の燃料体を装置し、高温動力炉用燃料体開発に資する。

(内容)

(1)炭素を被覆したUC2を黒鉛で希釈して、加圧成形、焼成してペレットを得、ペレットに至るまでの混合、成形等の諸条件を検討する。

(2)炭素を被覆したUO2を黒鉛と均一に混合し、圧縮成形としてペレットとなし、これを炭化して燃料体とする条件を求める。

(3)試作された炊料体の分散度、安定性を試験し、また高温で加熱して、高温度における特性を試験する。

19.振動充填法による湿式球状UO2燃料体の製造に関する試験研究

住友電気工業(株)

補助金 3,560,000円

(目的)

 湿式球状UO2粉末を用いて経済的な燃料体の製造技術を開発するため超音波を作動せしめる等の条件を加えて、これにもっとも適した振動充填法の開発を行なう。

(内容)

(1)高密度湿式球状UO2粉について粒形、粒度配合が充填性に及ぼす影響を検討し、高密度充墳に適したUO2粉の粒度調整を行なう。

(2)上記UO2粉を用い、振動の強さ、周波数、波形、被覆管の長さ等と充填密度との関係および超音波鼓打振動の導入方法を検討し、最密充填を得る条件を求める。

(3)この条件でステンレス管を使用したUO2燃料体について充填密度90%を目標に実寸法の燃料体の試作を行ない、この種燃料体の製造上の基礎条件を求める。

(4)試作された燃料体の各種物理試験を行なう。

20.球状溶射UO2の製造とそれを用いた振動充填法による燃料棒の製造に関する試験研究

東京芝浦電気(株)

補助金10,360,000円

(目的)

 化学的沈澱法にもとずく経済的な燃料体の製造技術を開発するため、UO2粗粉を原料としてプラズマフレーム溶射による高密度球状粉の調整を行ないこれにもっとも適した振動充填法の検討を行なう。

(内容)

(1)化学沈澱法によって得られたUO2粗粉をプラズマ・フレームで溶射して高密度な球状UO2紛を製造し、その最適製造条件を求める。

(2)ステンレス被覆管に粒度稠整を行なったUO2粉を振動充填によって高密度に充填し、UO2紛と振幅、振動数、波形等の振動条件ならびに充填管と振動盤との接続方法が充填密度に及ぼす影響を検討し、最密充填の条件を求める。なお上記の各条件を減圧下についても検討を行ない、常圧下との差異を求めて充填密度におよぼす影響を求める。

21.薄肉被覆セラミック燃料体のスエージ加工に関する試験研究

三菱原子力工業(株)

補助金1,199,000円

(目的)

 燃料ウランの濃縮度を低下させる等燃料棒単価の軽減をはかる一方法として薄肉パイプで被覆したスエージ燃料体の成型加工技術を確立する。

(内容)

(1)薄肉ステンレスパイプを被覆管としてスエージ加工を行なう場合は、充填物の密度のみならず、粉末の形状と大きさも考慮する必要があり、充填されるUO2粉末についての最適条件のものを求める。

(2)寸法精度を保ちながら、被覆管に欠陥を生ずることなく、高密度のスェージ燃料体を得る加工法を研究する。

(3)製造された燃料体の組織、密度および欠陥の有無を検査し、またオートクレーブでクーラント中における耐食性を試験する。

22.金属型原子燃料要素の熱伝達測定に関する試験研究

住友金属工業(株)

補助金 2,480,000円

(目的)

 燃料要素の実寸資料について実験を行ない、心材と被覆材との熱伝達測定法を確立し、接合法ならびに接合条件と熱伝達性能との関係を実験的に解明をもって燃料設計および接合技術の改善に資する。

(内容)

(1)熱放散を遮蔽することによって熱電対接触部の温度降下を補正する方法および試料から逃げる熱流に対する補正方法等を検討し、最適の温度測定法を研究する。

(2)抽伸被覆法、圧延被覆法、爆発圧着法、加圧圧着法、高温拡散金属結合法等種々の接合方法によって接合された燃料要素の熱伝達率を測り、接合部分の状態や欠陥が熱伝達に及ぼす影響を検討し、またフインの効果についても検討する。

23.溶融UO2燃料の振動充填法に関する試験研究

(株)日立製作所

補助金 9,945,000円

(目的)

 溶融UO2を原料とした経済的な燃料体の製造技術を開発するため、粉砕、粒度調整の検討を加え、白色波振動あるいは加熱等の諸条件を与えることにより、振動充填法に関しての徹底的究明を行なう。

(内容)

(1)溶融UO2粉を用い、最密充填に適したUO2粉の粒度分布を得るような粉砕方法の検討と粒度調整のための検討をする。

(2)正弦波、三角波、矩形波、鋸歯状波、パルス波、白色波等の振動波形が振動充填に及ぼす効果を検討する。

(3)被覆管の共振を持続することによる高密度充填の効果を検討する。

(4)加熱下における振動充填による高密度充填の効果を検討する。

24.安定な粒状ウランカーバイト系分散型燃料体の製造に関する試験研究

三菱原子力工業(株)

補助金 2,470,000円

(目的)

 36年度の補助金によりウランカーバイトを主体とした、安定な核燃料体として(U.Zr)C、(N.Nb)C、(U.N6)C固溶炭化物等安定な燃料体の製造研究を行なってきたが、本年はこの技術をもととして、将来の高温動力炉用燃料として期待される分散型燃料体の製造技術の開発を行なう。

(内容)

(1)UO2+C、UO2+C+ZrC(NbC)の混合物を真空中で加熱炭化し、造粒することにより高純度の粒状ウランカーバイトならびにダブルカーバイトを得る製造条件を検討する。

(2)粒状のウランカ一バイトおよびダブルカーバイトを黒鉛粉末に均質に分散せしめ、とくに両者の接触をさけるための条件をノミイログラフアイトを被覆したウランカーバイトとダブルカーバイトの均質分散と比較し、均一分散の基礎的条件を検討する。

(3)均質に分散されたものを成形・焼成して中空または円筒状の分散型燃料を得る製造条件を検討する。

(4)試作された燃料体の分散度、密度等を試験し、また燃料体を黒鉛鞘に入れて高温で加熱し、高温における特性を試験する。

25.プレッシヤーライジング法による核燃料被覆の金属結合に関する試験研究

古河電気工業(株)

補助金 3,072,000円

(目的)

 35年度補助金によりプレッシャーライジング法で金属ウラン燃料棒にアルミニウム被覆管を機械結合させる方法について研究を行なったが、本年度はその継続研究として同法により金属結合させる方法について研究し、金属ウラン燃料要素の被覆技術の改善に資する。

(内容)

(1)プレッシャーライジングの前処理としてウラン棒状にニッケルの薄層を鍍金し、鍍金の過程で吸蔵された水素の脱ガス処理を行ない被覆管中に真空封入する。

(2)上記の真空封入されたウラン棒を圧力容器中に装入し、高温高圧アルゴンガスにより被覆管を心材に圧着するとともに、アルミニウム−ニッケル鍍金層−ウランの各境界に合金層をつくる。この過程における健全で均一な金属結合を得るための最適条件を求める。

(3)ミクロ組織検査によって合金層の均一性と健全性を試験する。

26.スエージ濃縮二酸化ウラン燃料棒の炉中照射に関する試験研究

三菱原子力工業(株)

補助金10,061,000円

(目的)

 昭和35年度補助金により米国WTRにおいてスエージ酸化ウラン燃料体の被覆管を主体とした照射試験を行なったが、本年度は2.6%の濃縮二酸化ウランを使用したスエージ燃料体について照射試験を行ない、燃料体としての実用性を確認するとともに工学的基礎資料を得る。

(内容)

(1)BR−2(ベルギー)の反射体領域中(2.0×1014nv)で濃縮UO2燃料体を4原子炉周期照射を行ない、また天然UO2燃料体は2原子炉周期照射を行なったのちそれぞれ3週間冷却する。

(2)照射冷却後現地で解体し、寸法、重量、写真撮影、分裂生成ガス測定、切断後一部ステレオグラフおよびメタログラフ掃影燃焼度測定を行なう。

(3)切断後の一部試料を原研に送りかえしたのち再びステレオグラフおよびメタログラフ撮影ならびに電子顕微鏡撮影を行なう。

27.原子力用ニオブの製錬に関する試験研究

三井金属鉱業(株)

補助金 3,090,000円

(目的)

 原子炉燃料被覆材としてすぐれた性質をもつニオブの製錬について、純度の向上製錬費の軽減をはかるため、新しい還元法を開発する。

(内容)

(1)ナトリウムによる気体五塩化ニオブの還元

 ステンレスおよびインコネルを使用して作成した還元炉内に、気体五塩化ニオブと液体金属ナトリウムを連続的に装入して還元反応をおこさせる。反応温度は副生塩の熔融点以上ナトリウムの沸点以下の間に調節する。

(ア)中型炉による原料添加量と炉温変化の測定

(イ)副生塩の熔融点低下のための塩類添加試験

(ウ)連続的抜取方式の試験

(2)塩化ナトリウムを利用する五塩化ニオブの還元

 塩化ナトリウムの熔融塩電解浴中に五塩化ニオブを注入し、電解析軽金属ナトリウムにより五塩化ニオブを還元する。

(ア)電流量および五塩化ニオブ注入量と温度変化の測定

(イ)熔融塩の融点低下および析離ナトリウムの分散を促進するための塩類添加試験

28.パイロリティックグラファイトの製造に関する試験研究

日本カーボン(株)

補助金 3,081,000円

(目的)

 耐酸化性および機械強度にすぐれた不侵透黒鉛の一種であるパイログラファイトを経済的に製造する技術を確立し、高温動力炉に使用する核料体外套用黒鉛の開発に資する。

(内容)

(1)タンマン炉を用い、2,500℃以下で炭化水素ガスを熱分解せしめてパイログラファイトの製造実験を行ない、温度、ガス圧力、流量と黒鉛の沈積速度、沈積状態との関連を検討し、またこれに付随して、MoあるいはB等を含有する機械的強度のすぐれたパイロリティックグラファロイの試作を行なう。

(2)プラズマ・フレームを用い2,500℃以上の高温でパイログラファイトを得る実験を行ない、上記の諸元の関連を調べ、製造可能な黒鉛の厚さや形状を検討し、またこれに付随して、パイロリティツクグラファロイの試作を行なう。

(3)試作されたパイログラファイトの透過率、結晶構造、物理特性、耐酸化性等を測定する。

29.放射線によるナイロンへのグラフト重合に関する試験研究

日本レイヨン(株)

補助金1,385,000円

(目的)

 ナイロン繊維、フィルム等の放射線照射による改善を期待し、各種モノマーをグラフトせしめ、もって染色性等にすぐれたナイロン製品を得んとする。

(内容)

 主としてナイロン繊維、フィルムに酢酪ビニル、スチレン、アクリルニトリル等のモノマーをCo−60のγ線照射によりグラフトさせる反応につき、前照射法および共存照射法の試験を行ない、最適グラフト条件を求めるとともに、その生成物の均性を測定して、ナイロンの染色性、接着性、透明性等を改善する研究を促進する。

30.放射線によるブタジェン等のグラフト重合に関する試験研究

(財)日本放射線高分子研究協会

補助金1,548,000円

(目的)

 放射線化学において最も有利とされているグラフト重合を利用して、セルローズ繊維(木綿、レイヨン)にブタジェン等をグラフトせしめ、セルローズ繊維と合成繊維の両者の利点を生かした新繊維を創造し、タイヤマード等の新用途を開発せんとする。

(内容)

1.セルローズ繊維にブタジェン、スチレン、アクリルニトリル等のモノマーをCo−60γ線または電子線照射を行ない、混合モノマーの組織、グラフト条件の生成物に及ぼす影響を検討し、改質セルローズ繊維の製造試験を行なう。

2.ポリビニルアルコールに上記と同様のモノマー類をグラフトさせる場合の諸条件を検討し、グラフト率を大きくすることによって合成ゴム様の繊維を合成する研究を行なう。

31.低級オレフィンから三級アルコール等の放射線有機合成に関する試験研究

(財)日本放射線高分子研究協会

補助金 2,132,000円

(目的)

 放射線化学反応方式として液層および気層反応の開発に資するため、加速器の電子線照射下に液状アルコールと低級オレフィンから三級アルコールを合成する製造方法の確立をはかる。

(内容)

1.イソプロピルアルコール等の液状アルコールにオレフィンを吹き込みながら、電子線照射を行ない、高級アルコールを生成せしめる反応につき、その最適条件を検討する。

2.上記反応の機構を解明するため、電子線ビームをパルス化して照射し、生成ラジカルの寿命測定を行ない、収率向上のための資料を得る。

32.放射線グラフト重合によるプラスチックスの改質に関する試験研究

東京芝浦電気(株)

補助金 3,598,000円

(目的)

 放射線照射により各種電気材料、電気部分等の性能を改善し、新用途を開発するため高分子材料専材に各種モノマーを放射線でグラフトせしめ、とくに導電性(レコード、電気材料等の防塵、滞電防止)接着性(絶縁テープ等の改善)、耐透気性(真空材料としての利用面の拡大)等の性能向上を期待する。

(内容)

1.接着性を向上させるため、テフロン、マイラー、ポリエチレン等にエポキシ化合物等を放射線グラフト重合する試験を行なう。

2.導電性を向上させるため上記プラスチックスにビニル基を有する化合物等を放射線グラフト重合する試験を行なう。

3.数種のグラフトされたプラスチックスを重ね合せることにより難通気性のプラスチックスを製造する試験を行なう。

33.電子線の工業利用における均一大線量照射方法に関する試験研究

住友電気工業(株)

補助金 1,920,000円

(目的)

 放射線化学において加速器の工業的利用を図るため加速器から放出される電子線を、連続的にかつ均一に被照射物に照する方式を確立する。

(内容)

1.加速器から得られる微少電子電流を、オール効果を利用して測定する方法を検討する。

2.同じく電子電流を電離槽を通して測定する方法を試みる。

3.電子線を三角波発振器を用いて走査することにより、走査方向に均一に照射する装置を試作する。

4.照射ポリエチレンの温度による伸び率の変化から照射線量を測定する方法を検討する。

34.密封されたガンマー線源容器の試作に関する試験研究

(社)日本放射性同位元素協会

補助金 1,753,000円

(目的)

 密封線源用固型化材と容器の種々の特性について研究を行ない、医療用密封線源製作に必要な基礎資料を得る。

(内容)

1.高分子物質によるCs137の固型化に必要な諸条件を検討し、水銀との合金化法、ガラスによる固型化法の可能性を試験する。

2.線源の封入法として金属細管を使用した線引き法およびコルドウエルド法による金属容器の封入法について研究する。

35.トリチウム標識化合物の製造に関する試験研究

日本原子力事業(株)

補助金 4,095,000円

(目的)

 工業的意義を有する有機合成の研究に重要な標識化合物を得るため、低級脂肪酸のトリチウム標識化合物を合成する方法として放電法を基礎とした標識法を確立する。

(内容)

 酢酸、プロピオン酸等の工業用合成原料となる低級脂肪酸を対象としてトリチウム、標識化合物の合成を行なう。標識法として放電法を採用し、このうち無声放電、グロー放電、および極超短波放電の三種の放電方法を比較検討する。とくに従来研究されていない極超電短波放電(2,500〜3,000Mcycles/sec)法について放電管の形状、電圧、トリチウム圧等、詳細に研究を行ない、放射能が高く、かつ反応率のよい標識化合物を製造する。

36.核反跳反応による炭素標識生理活性物質の製造に関する試験研究

大阪府

補助金 4,494,000円

(目的)

 核反跳反応を利用して構造が非常に複雑で、かつ立体侍異性を有するアミノ酸カルカロイド、ビタミン等の生理作用物質の炭素標識法を研究する。

(内容)

(1)ビタミン、ホルモン、アルカロイド等の生理活性物質を原研JRR−2号炉を利用して中性子照射し、標識化合物の分離精製、収量をしらべ、光学活性に対する中性子照射の影響を検討する。

(2)生理構成物質の一つであるピリジン、ピリミジン等に中性子照射を行ない、標識位置の決定、生成ガスの分析、定量を行なう。

37.アイソトープ利用による肺結核と肺腫瘍の判別法に関する試験研究

(財)結核予防会

補助金 2,930,000円

(目的)

 肺結核と肺腫瘍の鑑別はX線診断によっては不可能なのでアイソトープによって両者を判別する方法を開発して、医学的診断技術の向上に資す。

(内容)

1.標識拡癌剤の両患部に対する親和性の差を利用して鑑別する方法を研究する。

2.核酸や燐のとりこみの差をミクロオートグラフ法によってしらべ両者の鑑別を行なう。

3.131I標識化合物の蓄積量をスキャンナにて追跡する。

4.ツベルクリンによる刺激療法を利用して結核病巣部に集積した標識ツベルクリンの量によって判別する。

38.アイソトープ利用によるセメント製造工程における迅速分析法に関する試験研究

宇部興産(株)

補助金 2,904,000円

(目的)

 アイソトープ利用によりAl、Si、Ca、Fe等の諸元素を迅速正確に分析する方法を開発し、セメント製造工程の品質管理に寄与せんとする。

(内容)

1.放射線を試料に照射し、発生する特性励起蛍光X線を測定、分析し、各元素の含有量を決定する。また他元素の共存効果の補正法を研究する。

2.RI等によるX線を試料に照射し透過する線量を測定して各元素による吸収量を求め、含有量を決定する。

39.アイソトープ利用による花卉球根類の芽状変異誘発に関する試験研究

富山県

補助金 2,764,000円

(目的)

 γ線による芽状変異誘発の理論およびその選抜法を確立して花卉採培技術の向上に資しあわせてチューリップ等の花卉球根類の遠かな新品種の創造をはかる。

(内容)

(1)チューリップ等の球根類の突然変異誘発機構を明らかにするとともに、新品種の効果的育成をはかるため立毛照射を行ない、照射と温湿度処理の相互関係を検討する。

(2)突然変異誘発に最も効果のある花粉形成直後の雌芯の立毛照射、花弁色素変化時(蕾の時期)の立毛照射、仔球の発育時期の照射効果につき検討する。

(3)チューリップ以外の水仙、アイリス等の球根類についても照射実験を行なう。