原子力局

昭和37年度原子力平和利用研究委託費および
研究補助金の交付決定

 昭和37年度原子力平和利用研究委託費および研究費補助金については、交付対象・試験研究課題を昭和37年3月1日付科学技術庁告示第2号および第3号をもって申請公募の告示を行ない、4月30日に交付申請受付を締切った。研究委託費51件(研究費総額5億1,422万453円・委託費の交付申請額5億966万4,653円)・研究費補助金74件(研究費総額8億2,722万7,656円・補助金の交付申請額3億9,985万7,931円)、合計125件の申請があった。

 その後、書類審査・申請内容説明聴取・関係各省との意見交換・学術会議の推薦する学識経験者からの意見拝聴等の過程をへて、局原案を作成し、原子力委員会の了承をえたのち、現地調査を行ない、6月18日の科学技術庁庁議において決定(研究委託費29件、1億5,141万5,495円・研究費補助金39件、1億4,927万5,000円)をみたものである。

昭和37年度原子力平和利用研究委託費交付一覧表


昭和37年度原子力平和利用研究費補助金交付一覧表


昭和37年度原子力平和利用研究委託費の交付研究の概要

1.高温プラズマ発生装置の排気速度向上に関する試験研究

(株)日立製作所

委託費 5,892,830円

(目 的)

 34年度委託費により発生したサイクロトロン共鳴方式によるプラズマ発生装置の性能を改善し、この方式によるプラズマ加熱の可能性、不安定性について研究を進める。このため、大容量電子衝撃式ゲッターポンプを試作し、プラズマ発生装置の排気速度を向上さす。

(内容)

(1)大排気容量ゲッターポンプの試作と性能測定試作するダッターポンプは10-6mmHgにおいいて排気速度約6,000〜10,000l/secのものとする。ポンプの形式は電子線衝撃形とし10〜15kV、50〜150mAの電子線によりチタンモリブデン・パーマロイ等を連続的に加熱蒸発させて排気能力を持続させる。

(2)プラズマ高周波加熱の研究

 34年度委託費により製作した実験装置を用いてサイクロトロン周波数およびパラメトリック周波数によるイオン加熱実験を行なう。

2.分光線強度比による電子温度測定器の試作に関する試験研究

日本大学

委託費 5,330,800円

(目的)

 プラズマを乱すことなく10〜100eVの電子温度およびその時間変化を測定しうる装置を試作し、36年度委託費により試作したイオン温度測定器と組合わせてプラズマ中でのエネルギー輸送に関する実験資料を得る。

(内容)

(1)分光装置の試作

 高分散度を得るため、約2mのエバート型グレーティング分光器を製作する。

(2)光電子増倍装置の試作

 光電子増倍管に接続するプリアンプはカソード・ホロワー方式にして光量の瞬間的な時間変化の測定ができるようにし、2現象シンクロスコープでその変化を記録する。

(3)実験測定

 300kJのコンデンサーバンクにより、誘導放電を行なって作ったプラズマの発光を利用して、数十万度のプラズマの電子温度および不純物線の時間変化の測定を行なう。

3.大電流イオン源に関する試験研究

三菱原子力工業(株)

委託費1,856,242円

(目的)

 35年度委託研究をより成果あらしめ、将来の核融合の進展に資するため完全な集束状態において50mA程度のイオン源を試作し、総合試験を実施する。

(内容)

(1)イオン源試験装置の改造

 35年度委託費により試作した装置の一部を改造する。すなわち、(イ)イオン源槽(ロ)可変焦点減速レンズ系(ハ)排気装置(ニ)イオン源用電源の一部を改造あるいは補充し、35年度の研究の問題点を解決する。

(2)総合試験

 ガス流量、電磁石電流、アーク電流、引出電圧、アインツェルレンズ電圧、可変焦点減速レンズ電圧とビーム電流ならびに集束状態との関係を調べる。さらに、イオン・ビームの質量とエネルギー・スペクトル、その他核融合実験装置の入射用としての最適条件を検討する。

4.高温プラズマ現象の測定に関する試験研究

理化学研究所

委託費 5,645,928円

(目的)

 マイクロ波によるプラズマの電子温度、電子密度の測定およびスペクトル線によるイオン温度の測定および幅射による熱損失量を測定し、プラズマ現象の解析に必要な資料を得る。

(内容)

(1)マイクロ波による測定

 最大磁束密度約5,000ガウスをもつ室芯コイル中のプラズマの電子密度、電子温度をマイクロ波またはラングミュア探針で測定し、その結果を比較検討する。

(2)分光による測定

 エバート型単色分光計とFabry・Perotエタロン干渉計を組み合わせてイオンの熱運動によるドップラー幅を測り、イオン温度を算出する。

(3)輻射によるエネルギー損失

 プラズマからの栢射の絶対量の測定法を開発し、エネルギー損失の解析データを得る。

5.舶用原子炉プラントの制御方式に関する試験研究

(社)日本原子力船研究協会

委託費15,153,000円

(目的)

 舶用炉プラントを対象としたアナログ計算機を設計製作し、原子炉系、タービン系を含めた舶用プラント全体の動特性の解析を行ない、最適の制御方式を見出す。

(内容)

(1)アナログ計算機の設計製作

 軽水炉とくに加圧水型舶用炉プラントの動特性の解析を目的とするアナログ計算機を設計製作する。

(2)舶用炉プラントの動特性および事故時の解析

 上記の計算機を使用して、舶用プラントの動特性および事故時の解析を行ない、最適の制御方式を見出す。

6.原子力船の船体構造の設計に関する試験研究

(社)日本原子力船研究協会

委託費13,981,220円

(目的)

 舶用炉室防護構造としての甲板の耐撃性能、舶用炉プラントの破壊防止のための油槽爆発に関する問題および2次遮蔽高密度コンクリートの設計ならびに施工法に関する問題を模型実験により解明し、原子力船船体構造の安全設計に関する資料を得る。

(内容)

(1)船体構造の衝突時における強度試験

 外板・甲板の強度を相互的に変えた舷側構造模型、船首模型により衝撃試験および静的試験を行ない、破壊形状、吸収エネルギーの分担等を求める。

(2)爆発による舶用炉プラントの破壊防止の研究

 3種類の油槽模型中で火薬を爆発させて、衝撃波の伝播、隔壁の変形破壊、エネルギー吸収の状況を計測し、耐爆発構造の設計資料を得る。

(3)2次遮蔽高密度コンクリート構造の設計および施工法の研究

 2次遮蔽体模型を作り、(イ)コンクリート壁製作法(ロ)遮蔽効果(ハ)静的外力に対するコンクリート耐力(ニ)側板強度(ホ)振動および繰り返し外力に対するコンクリートの強度等について実験を行ない、2次遮蔽体の設計施工上の資料を得る。

7.原子力船の船内汚染防止のためのガスならびにダストの挙動に関する試験研究

(社)日本原子力船研究協会

委託費1,850,120円

(目的)

 原子力船内の放射線管理区域の気流の状況あるいは船内に集積するダストの実態を明らかにし、放射線管理区域の通風、換気系等の基礎設計データを得る。

(内容)

 太平洋を航行中の貨物船3隻を使用して次の項目について調査測定する。

(1)外気および船内空気の実態の調査

 外気および船内の各場所における空気中のダスト、ガスの種類およびその量を測定する。

(2)通風区画内の気流状態の調査

 居住区通路および室内の流れの変化を風速、風向、通風ダクトのダニパーの開閉をパラメーターとして測定する。また管理区域内の空気のデッドスペースと気流の状態との関係を調査する。

8.原子力船の遮蔽計算コードに関する試験研究

(社)日本原子力船研究協会

委託費 5,715,000円

(目的)

 原子力船の遮蔽設計計算および安全設計計算を迅速かつ容易ならしめる計算コードを開発し、放射線遮蔽に関する設計ならびに安全性の確保に資する。

(内容)

1)遮蔽常数

 混合物遮蔽体やその他実験値のない物質について、エネルギー依存断面積より速中性子実効陸去断面積ならびに放射線減衰計算式に使用される各種遮蔽定数を計算するサブルーティンを開発する。

2)散乱コード

 2次遮蔽体設計のためモンテカルロ法または多重散乱近似法によるγ線と中性子の散乱計算コードを作成する。

3)放射線減衰計算コード(1次遮蔽体設計コード)

 多数組分法により減衰計算を行なうコードを開発し、各種遼遠体の蔽速効果を多重層蔽速体の構成および厚さをパラメーターとして計算する。

9.高速回転体の強度に関する試験研究

東京芝浦電気(株)

委託費12,994,685円

(目的)

 遠心分離法によるウラン濃縮の開発に資するため高速回転体の作動中の挙動および破壊強度に関する実験を行ない、超高速遠心分離機の回転ドラムの設計に関する基礎資料を得る。

(内容)

 アルミニウム合金製または高張力鋼製回転胴(直径300〜400mm、長さ1,500mm、肉厚4〜9mm)を周速300〜400m/sまで高速回転せしめ、各速度における胴体の挙動すなわち振動、塑性変形、応力分布をストレンゲージ、キャパシトマイクロ等で測定し、塑性領域における変動、破壊機構を解明する。一部については破壊強度の限界を確かめる。なお速度制御は高周波誘導モーターの同波数によって行なう。

10.拡散コードの収敢加速に関する試験研究

(株)日立製作所

委託費10,238,441円

(目的)

 2次元拡散コードの収赦加速の問題を解決し、原子炉設計とくに制御棒効果、動特性の計算、臨界計算等の諸計算に要する時間を画期的に短縮するとともに、さきに作成した組常数、燃焼計算コードを組み合わせて、原子炉安全設計に資する。

(内容)

(1)数値実験による収斂加速法の研究

 Outer iteration に Wielandt 法を採用する。Inneriteration には Peaceman−Rachford 法を用いるのでMultiblock inversion が必要となる。この場合の加速因子のとり方をinner iteration を含めて数値実験し、最適加速因子を求める。また、修正Wielandt加速法を2次元形状炉心に適用した場合について、数値実験とその理論解析を行なう。

(2)拡散コードの作成

(1)により見い出された最適な方法を用いて、1、2次元少数組拡散コードを作成する。

11.放射線による放射線遮蔽窓ガラスの破損防止に関する試験研究

東京都

委託費 2,200,000円

(目的)

 遮蔽用窓ガラスの放射線による被損原因を物性的、とくに電気的な立場から究明し、破損を未然に防止し、安全な遮蔽用窓ガラス作成のための資料を得る。

(内容)

(1)ガラス内部の電荷の集積量ならびにその時間的変化について研究する。

(2)空気中で照射した場合の電場および透電率の深さに対する変化について研究する。

(3)放射線照射の場合、ガラスの温度上昇を研究する。

(4)遮蔽ガラスの破損原因として考えられている電場の影響、欠陥の影響をガンマ線照射により確める。

12.積分型輸送方程式による中性子束微細構造に関する試験研究

日本原子力事業(株)

委託費 4,102,894円

(目的)

 板状格子系について積分輸送理論による中性子束分布の計算コードを作成し、一般板状格子系の Disadvantage factorの標準となる値を計算し、さらに非等方散乱の効果、境界面での中性子流の非等方入射時の効果の諸特性を解析する。円柱格子系に対しても同様に計算コードを作成する。この結果はとくに軽水炉の設計に重要な効果をもたらす。

(内容)

(1)板状格子系について積分型輸送方程式による中性子束分布の計算コードをIBM7090用に作成する。

(2)稠密円柱燃料格子系に対する同様の計算コードを作成する。

(3)上の計算コードを用いて Disadvantage fctorの標準となる値を計算する。

13.原子炉配管系の耐震設計法に関する試験研究

(社)機械学会

委託費 4,176,250円

(目的)

 地震時における原子炉配管系の応答を推定し、その安全を期するための振動学的資料を得ることを目的とする。このため配管系の応答倍率の数表化とアナログ計算機による検定法の研究を学界、産業界の協力により行なう。

(内容)

(1)統計的計算による不規則振動に対する多質点系の応答

 統計的取扱による不規則振動に対する3質点系モデル(地盤−構造物−配管)の応答倍率を数値計算で求める。

(2)アナログ計算機による不規則応答の統計的解析

 アナログ計算機に組みこまれた上記の3質点系の地震波に対する応答を求め、相関関数を整理し、上記の統計的計算の裏付とする。

(3)数値計算による立体梁固有値の計算法の決定ならびにその試算と模型実験による立体梁固有値の決定。

 デジタル計算機を使用し、立体梁固有振動および立体梁の規準関数を求める。さらに模型実験を行ない、上記のデジタル計算機で得た結果と比較する。

14.ジルコニウム合金の水素吸収に関する試験研究

(株)神戸製鋼所

委託費 8,010,000円

(目的)

 主として被覆材として使用されるジルコニウム合金の高温水中における水素の吸収および分布状態を明らかにし、この水素吸収が機械的性質に及ぼす影響とその対策について研究し、軽水炉の安全審査上の重要な基礎資料を得る。

 なお本研究は関係機関の共同により行なうものである。

(内容)

(1)ジルコニウム合金に水素が入る経路および機構を検討する。

(2)温度勾配のあるジルコニウム合金中の水素分布の状態を明らかにし、分布の平担化に効果のある添加元素を求める。

(3)水素をあらかじめ吸収させたジルコニウム合金について水素含有量と引張、耐圧強度との関係を求める。

15.軽水型動力炉の安全性確保のための金属材料の耐食性試験に関する試験研究

(財)日本学術振興会

委託費 4,314,000円

(目的)

 軽水型動力炉に使用される金属材料の耐食性の試験方法を確立し、あわせて、原子炉安全審査のため必要な各種材料の腐食に関する基礎資料を得る。

 なお、本研究は関係機関の協力により行なわれるものである。

(内容)

 本年度は材料としては18−8系ステンレス鋼を、また腐食形態としては応力腐食をとりあげ、次の各項の研究を行なう。

1)試験用材料の確性試験

2)試験環境の影響の研究

3)材質の影響の研究

4)高温水腐食の機構の研究

16.原子炉材料で問題となる金属中の微量ガスの分析に関する試験研究

(社)日本分析学会

委託費 4,443,480円

(目的)

 原子炉材料の性能は、その中に含有される酸素・窒素等の微量ガスに影響されることが大きいので、従来に比較してより精度の高い分析法の開発を行ない、原子炉材料の性能向上をはかる。なお、本成果に基づき今後の原子炉用材料の分析技術の向上を期するため、各種研究機関の協力の下に、在来法の評価に資するための資料を得る。

(内容)

(1)原子炉材料として重要なジルコニウム、マグネシウムおよびその合金、不銹鋳鋼中の微量ガスを在来の方法では期待困難な高温度でもって分析する方法を確立する。

(2)上記成果を利用し、金属の標準試料による在来法との比較を行ない、分析、技術の検討をなす。

(3)化学的分離法を用いて、上記金属中から酸化物、窒化物を分離、分析する方法を検討する。

17.原子炉構造用鋼溶接部検査技術開発に関する試験研究

(社)日本溶接協会

委託費 9,540,497円

(目的)

 原子炉の安全性を確保するため、原子炉溶接構造物の検査技術を開発し、あわせて検査規準と判定基準を設定するための基礎資料を得ることを目的とする。

 なお関係機関の協力により行なわれるものである。

(内容)

 本年は原子炉用鋼材としてもっとも広く用いられている低マンガン鋼302Bを対象とし、溶接試験片を作成して非破壊検査を実施し、また応力X線によって溶接部まわりの残留応力を求める。

(1)試験片の作成にあたっては、意図する欠陥を試験片中に意図する数だけ作り、かつ材質的に大きな変化を与えないような溶接方法を検討する。

(2)非破壊検査については、放射線透過検査法、超音波探傷法、電磁気探傷法等によって欠陥の種類、形状を求める研究を行ない、標準検査法を確立する。

(3)応力X線を用いて溶接部まわりの残留応力を非破壊に求める標準作法を確立する。

18.放射性不活性気体の捕捉に関する試験研究

日本原子力事業(株)

委託費 4,072,120円

(目的)

 原子炉から生ずる放射性不活性気体はその捕捉がなかなか困難であるので、その捕捉法として包接化合物を利用する方法を開発する。

(内容)

 ヒドロキノンと溶媒分子から構成され、カゴ型構造を有する包接化合物をAr、Kr、Xe等の放射性不活性気体の捕捉剤として利用するため、温度、圧、濃度等種々の生成条件を検討し、さらに捕捉されたガスの漏洩、放射線化学的安全性等、ガスを捕捉した際に生ずる特種な物理化学的条件下にさらされた包接化合物の物性について研究する。

19.浅海底土に吸着された核種の分析法に関する試験研究

(社)分析化学研究所

委託費1,268,724円

(目的)

 海水に入った放射性物質が海底土によって吸着された状態において含有されている核種を迅速、かつ、正確に分析する方法を確立する。

(内容)

(1)海底土を採取し、その組成を化学分析し、また試料中に含まれる2、3の放射性核種につき、核種分析を行なう。

(2)海底土にアイソトープを吸着させ、土壌のイオン交換能、その他核種の吸着に影響する諸因子を明らかにし、界面活性剤、補集剤等を用いて浮遊分離法による核種の迅速濃縮分離方法を検討する。

20.海洋投棄用放射性廃棄物容器に関する試験研究

理化学研究所

委託費 5,226,288円

(目的)

 放射性廃棄物の海洋投棄に関して、投棄用容器が海底において長期間安全な状態にとどまるよう放射性廃棄物の容器の透水性、耐圧、耐食性につき基礎的実験を行なう。

(内容)

(1)室内実験において、最大250kg/cm2に耐える透水性の試験装置を設計試作し、容器用各種モルタル円板につき、連続加圧下における透水試験を行なう。

(2)室内実験と平行して、36年度にひきつづき約2,000mの海底における臨海実験を継続して投棄用容器の耐食、耐圧について試験研究を行なう。

21.核酸関連物質の放射線障害保護効果に関する試験研究

理化学研究所

委託費 2,860,924円

(目的)

 核酸を構成する有機塩基類およびヌクレオチド類の障害保護ないし回復作用を確認し、障害防止に有効な薬剤を開発するための基礎資料を得る。

(内容)

有機塩基のハロゲン誘導体、SH誘導体、ならびにその類似物質またはその他の核酸構成成分を購入または微生物から分離調整し、これらの化合物の放射線に対する保護効果を調べるため、微生物またはマウスに添加摂取させ、その致死率をみ、保護効果のいちじるしいものを探索する。

22.警報式小型積算線量計の試作に関する試験研究

理学電機(株)

委託費1,311,982円

(目的)

 小型軽量で積算量を表示し、あらかじめセットした危険線量に達した場合には、警報を発する積算型の線量計を試作する。

(内容)

 検出器としては、長期間連続使用に耐え、温度、湿度による影響の比較的少なく、取扱いの容易な GM管を使用し、電気回路および機械的な蓄積機構を組合わせて、これに線量を蓄積する方法を採用する。刻々の積算量は、簡単に読みとることができると同時に、あらかじめ適当な危険レベルを設定し、この値に達した場合には警報を発すや機構を設ける。線質による戟正は較正回路を設け、切換えスイッチによって行なう。

23.放射性降下物の物理的および化学的性質に関する試験研究

大阪府

委託費 4,050,000円

(目的)

 放射性降下物による汚染を正確に評価しで対策を構ずるため、降下物中の巨大粒子の物理的、化学的諸性質について基礎的研究を行なう。

(内容)

(1)放射性降下物粒子の fractionation effect と合有核種の関係をしらべるため、ポーラログラフィ法によって核種の分離濃縮を行ない、組成を決定する。

(2)乾板上の黒化と放射性粒子を対応させ、放射性降下物粒子の形状、大きさを決定する。

(3)大気放射性塵をイオン濃度計型静電集塵器を用いて集塵し、粒径の大きさに応じて試料を集め、放射能分析ならびに形態観察を行なう。

24.大気圏内の宇宙線中性子成分による人体線量の決定に関する試験研究

立教大学

委託費 4,056,585円

(目的)

 国連科学委員会で問題となっている宇宙線の中性子から受ける線量を調査するため、高空における宇宙線中性子成分による人体線量を測定し、地上における線量値推定の基礎とする。

(内容)

(1)有機シンチレーションカウンター400チャネル波高分析器等の中性子測定装置を飛行機に積み込み、高空における宇宙線中性子線量を測定し、高度変化に伴う測定値の変化から地表における線量を外挿法によって求める。

(2)なお正確な測定結果を得るために、中性子測定装置のエネルギー依存性を明確にし、中性子の入射方向による検出効率の差をしらべ各々の影響を除くため較正方法を検討する。

25.放射性降下物中の中半減期核種による外部被曝線量の測定に関する試験研究

(財)放射線影響協会

委託費1,006,100円

(目的)

 放射性降下物のうち、103Ru、95Zr等の数10日〜数年の半減期を有する核種による人体への被曝線量を算出し、放射能対策の有効な資料とする。

(内容)

1.全国各地の土壌を深さごとに分割採取し、レートメーターを用いて地表のγ線線量を測定する。採取した土壌試料はエネルギーの分析を行ない、同時に化学分析によって各核種の性質、量を決定する。

2.各土壌についての分析結果から、蓄積量、減衰、遮蔽効果等の影響を考慮に入れた上で人体の受ける被曝線量を算出する。

26.乳製品における放射能の除去に関する試験研究

(財)日本乳業技術協会

委託費 4,657,060円

(目的)

 ミルク中の放射性核種をもっとも効果的に除去しうる方法を開発し、安全かつ栄養価値の高い除染ミルクの調整法を研究する。

(内容)

(1)放射性核種を飼料中に添加し、山羊乳中における核種の存在状態、分布をしらべ、イオン交換、電気透析等種々の処理法を比較検討して、各核種に最適の除染法を選定する。

(2)除染処理をほどこしたミルクの栄養価、物理化学的性質の変化を分析し、これらの変質を復元する方法を検討する。

27.鋼滓類等による農作物の90Sr、137Csの吸収抑制に関する試験研究

(社)日本放射性同位元素協会

委託費 2,027,945円

(目的)

 溶鉱炉廃物からとれる鉱滓類または大谷石粉末等のカルシウム含有物を使って水稲に対する90Sr、137Csの吸収を抑制する方法を検討し、放射性降下物による影響を極力軽減せんとする。

(内容)

 前年度の研究によって鉱滓類および大谷石粉末は石灰石等に比し、はるかに抑制効果が大なることを認めたので、これを水稲に応用するため、土壌中での存在状態挙動をしらべ、基礎的な抑制機構を明らかにするとともに、ポット試験によって、鉱滓の選択、施用法、施用時期等の検討を行なう。

28.放射性降下物による体内汚染の吸収抑制に関する試験研究

第一化学薬品(株)

委託費 3,746,000円

(目的)

 消化器管からの放射性物質の吸収を阻止する薬剤を開発する。あわせて茶、柑橘類、果汁等の常用飲食物またはその構成成分ならびに関連物質の吸収抑制効果についても検討する。

(内容)

(1)放射性物質の吸収抑制効果を有するイオン交換体を合成し、有効な交換体について動物実験によって飼料中の放射性核種の吸収抑制効果を検討する。

(2)茶葉成分(タンニン、フラボノイド類)、柑橘類、果汁等の抑制効果を動物実験によって確認する。

(3)各種の吸収抑制有効物質の生体内における安定性等をトレーサーを使ってしらべ、薬物学的諸性質を検討する。

29.淡水魚類の放射性降下物に関する代謝と抑制に関する研究

(財)日本学術振興会

委託費1,686,380円

(目的)

 淡水魚類の核分裂生成物(Sr−90)の摂取代謝の機能を明らかにし、それによって効果的な抑制方法を確立する。

(内容)

 各種淡水魚を実験室内の水槽中に入れ、種々の濃度のカルシウム、ストロンチウムを含む水に飼養し、また餌料中の各元素の濃度や水温餌料の種類、授餌量等の環境条件を変えた場合に環境中に存在するSr−90、Ca−45等の放射性核種の魚による摂取量を測定し、これによって摂取の機能を明らかにし抑制の才能を検討する。