参与会

第 3 回

〔日時〕昭和37年4月12日(木)14:00〜16:00

〔場所〕総理大臣官邸

〔配布資料〕
1.昭和37年度原子力開発利用基本計画
2.原子力研究開発振興措置の概要
3.原子力基本法と原子力関係物質の輸出について
4.核燃料経済専門部会答申書
5.日本原子力研究所原子炉(JRR−4)の安全性について(答申)
6.原子力平和利用研究成果報告書
7.原子力災害補償制度の施行について
8.原子力損害の賠償に関する法律の施行期日を定める政令
9.原子力損害の賠償に関する法律施行令
10.原子力損害賠償補償契約に関する法律施行令
11.原子力損害の賠償に関する法律施行規則
12.原子力損害賠償契約約款
13.原子力委員会専門部会等の審議状況

〔出席者〕

(原子力委員会)
三木委員長、石川、西村、兼重、駒形各委員

(参 与)
稲生、大屋、岡野、菊池、倉田、嵯峨根、瀬藤高橋、塚本、成富、伏見、三島、三宅、安川、山県、吉沢、和田各参与

(関係者)
経済企画庁、大蔵省、通商産業省、運輸省、原研

(事務局)
山本政務次官、杠局長、森崎次長、井上次長、政策課長、調査課長、核燃料課長、アイソトープ課長、原子力開発機関監理官、その他担当者

〔議事概要〕
(1)原子力基本法と原子力関係物質の輸出について原子力局長から資料にもとづき説明があった。

倉田参与:精神はどういうことか。

石川委員:国内は勿論のこと外国の原子力利用に関係する場合にも基本法の精神は貫くべきである。ただ目的が平和利用かどうかはっきりしない場合が困る。

三木委員長:相手国政府の態度が不明確の場合にはこれを適用する。

 実際には、協定ということまでは考えず、相手国政府に使用目的を照会し、確かめる。この場合、相手国政府を信用することになる。原子力産業育成という見地からも考慮した。

三宅参与:軍事目的が明確な場合は押えるという意味か。

三木委員長:無論である。

石川委員:委員会としては政府と同じ考え方である。

稲生参与:注文を取り付けてから許可を受ける窓口はどこか。

石川委員:通産省である。

瀬藤参与:個々の部品別にみた場合いろいろと問題になると思われるが。

三木委員長:主要部品とみたい。

瀬藤参与:産業界は、どちらかと云えば規制されない方に賛成である。

三木委員長:英国は、インドが核所有国になることは歓迎しない。その意味でも、今度の件は平和目的がはっきりしている。

石川委員:メーカー側でも異論はないであろう。

大屋参与:原子炉を軍事目的に使用することはインドは考えないだろうし、英国もそんなことのために輸出しないだろうが、生じたプルトニウムを英国が買うとなると、それは軍事用になる。しかし、実際としては問題ないと思う。

伏見参与:双務協定のようなものはないか。

三木委員長:双務協定までは現在のところ考えていない。

(2)昭和37年度原子力開発利用基本計画について事務局から資料にもとづき説明があった。

杠 局長:新たに原子力局に放射能課が近く発足する。設置法改正は4月24日(参議院)科学技術特別委員会において成立する見込みである。今後は各省に分散している放射能関係業務の総合調整および原子力委員会の庶務を取り扱うことになろう。

高橋参与:放射性廃棄物の処理は公社でやるべしという議論が国会であったが、廃棄物処理を全部やることになるのか。

井上次長:再処理にともなう廃棄物処理は当然公社で行なわれる。

石川委員:投棄等の処理については、廃棄物処理専門部会で検討し結論が得られよう。

倉田参与:廃棄物等を一定期間溜めて置くという政策を当分取るのか。

大屋参与:廃棄物を一定期間溜めて置く場合どのような方法をとるのか。目的をプルトニウムを取り出すという所まで考えているのか。その場合プルトニウムはどうするのか。

石川委員:まだ、この問題に関しては先のことであるので検討しておく。

大屋参与:今後、発電炉や原研のJRR−3等、臨界に達する原子炉もふえるので、処理事業のウエートは大きな問題となる。

石川委員:それまでには考えたい。今からプルトニウム炉の研究を始めても、平和目的に使われる見込みは、10年か20年先か解らないものに、多額な資金を投資しなければならないことになるので現状では国の研究機関で研究するのが賢明であると思う。

大屋参与:プルトニウム炉の研究について米国から留学生受け入れの話があるようであるが、人選に当っては官民を問わず、最適任の人を留学させた方が良いと思う。しかし、現状では官界の者が多くなろうが、民間から留学させる場合にも国公立機関の身分という方法をとっていただいた方が、受け入れ国側としても、受け入れに容易だと思う。

嵯峨根参与:先程、高橋参与も云われたが、廃棄物処理については、政府の受入範囲ならびに民間の分担範囲をはっきり示していただきたい。

兼重委員:原子燃料公社法の条文の解釈については、委員会としても、まだ、研究不足なので後程、勉強して答えたい。

(3)原子力研究開発振興措置の概要

 井上次長から資料にもとづき説明があった。

稲生参与:資料(1)の37年度の基本計画は、長期計画にのっとり非常に良く作成されているが原子力発電、原子力船、材料試験炉等について本年度はどのような準備体制を取っているのかよく判らない。また、それらを本年度はどのように進めてゆくか等、根本的な方針を決め明示されたい。

 原子力発電についてみても、前期10年間に100万kW達成は現在の状態では、非常に困難と思われる。原価が高いので、10年間は準備期間であるから、将来に伸びて行く種が欲しい。

石川委員:船や材料試験炉は、専門部会の答申をまって考えたい。

 原子力発電については、電力会社の意見も聞き、検討したい。

倉田参与:私も稲生参与の意見に同感で、何をやるか具体的方針を示していただきたい。

石川委員:それらの点については検討を重ねたい。また原子力発電(株)の2号炉については資金の面では大丈夫である。3号炉が問題だ。

三宅参与:「原子力産業を育成する」というだけでは解らない。どういうことか。

 その方策を検討するといっているが、やるという大きな線を立てて、それにみんながついて行くのがよいのではないか。

兼重委員:今のような意見は長期計画を進める上に重要な点である。

 これらの点は、1、2ヵ月で結論が出せるものではない。原子力委員会としても鋭意検討を重ねているので少しの間、時間を与えていただきたい。

大屋参与:この問題が参与会としては一番重要な問題である。英国の例をみても、委員会の方で「こうやろうではないか」と方針を明示すれば産業界としても皆協力すると思う。立地や安全性だけを問題にしていては何もできない。いずれにしろ、この際具体的な意見を出していただきたい。今後経済成長が進むにつれ、1億キロリッター位の石油を諸外国に依存しなければならない将来を思うと、原子力発電のウエートがいかに重いかは論をまたない。また、エネルギー源の外国依存度が高いことは先般のスエズ動乱を顧りみてもいかに危険であるかを物語っている。

 委員会なり政府なりは、かような意味からも、もっと政策にあたり積極性が欲しい。委員会が大筋をうち立て、それにみんなが協調して行きたいというのがわれわれの考えだ。資金ができてからやるということでは仕事はできない。委員会がやるといえば、資金は集まる。

伏見参与:少し先になるとComparableになることは明らかである。それまでのつなぎである。原子力を発電に使うのは本来の使い方ではない。もっと原子力の特色を生かしたものを研究すべきである。原子力船についてみても、海洋科学研究、南極観測船等の平和利用の範囲で、企画され生かされるのではないか。

石川委員:原子力船については、専門部会において検討を重ねている。

大屋参与:石油等を外国に頼っている日本にとって、何年か経って良いものを作るというのは当らない。10年間に100万kWというのは必要なのである。発電は原子力を使用する一番よい方法でなくても、必要故にやるということと、本来の使用方法ということを2本立てにして進むのがよかろう。

嵯峨根参与:基本計画の研究部門は、細かく書かれているが、発電に対する具体案がないので生気がない。

 第1なにをやるのかも、これだけでは解らない。

 また原電2号炉についても進展をみていない。

石川委員:原電で早く具体案を出して欲しい。

嵯峨根参与:もっと方策を具体的にしていただければ2号炉もやりやすくなる。

三木委員長:長期計画をもっと具体的にすることは必要だと思っている。民間産業界の指針になる。

瀬藤参与:基礎計画を作成するに当り、積極的になっていても、書きにくいのでこうなっているのだと了解していた。あまり、書いてさしさわるというのであれば、このような表わし方でも結構だと思う。しかし、原子力産業の育成が2行では少なすぎる。

石川委員:書いて書けないことはなかった。また原子力船についても間もなく答申がでよう。

瀬藤参与:放射線化学の方は、どの程度進んでいるか。

三木委員長:場所が問題である。競争が激しい。問題を大きくしては、将来にしこりを残す。

瀬藤参与:利根川の川下の方で反対しているようだが、それならだめだと云ってしまってはどうか。

石川委員:反対の原因となるような放射性廃棄物が出るようでは困るのだが、それはあり得ない。

菊池参与:60Co施設等の設計については、原研で進めている。

瀬藤参与:英国のハーウェルなどは川上に有り、その水がロンドンに流れているが平気でなんなくやっておる。

 原子力発電(株)会社の2号炉問題の場合をみても、瀬戸内海、関西などで反対しているうちに北陸地方(福井県)などから誘致運動がかかった。誘致と反対では大変な違いだ。誘致があれば決めてよいのではないか。

岡野参与:決定を延ばしていることは、瀬藤参与の云うようなことにもなる。

伏見参与:放射線を安く作るということ、高エネルギーも大切だが、高カウントも大切である。

大屋参与:量を多くすることは、放射線化学には大切だ。

石川委員:どういうものが放射線化学でできるかということが判れば決まる。

大屋参与:両方作ればよいだろう。

石川委員:原研の方で研究して頂く。

石川委員:われわれとしては、いくらでも皆さんの意見を伺いたい。

岡野参与:にわとりと卵のようだが、ひとつの線を委員会で引いて欲しいというのがみんなの意見である。こういうことをやりたいから、こんなことをして欲しいということを云っていただきたい。

石川委員:次回は5月10日(木)とする。