原子力災害補償制度の実施について

 昭和36年6月8日第38国会において成立した原子力災害補償二法、すなわち、「原子力損害の賠償に関する法律」及び「原子力損害賠償補償契約に関する法律」は、同年6月17日にそれぞれ昭和36年法律第147号及び昭和36年法律第148号として公布されたのであるが、これらの法律は、公布の日から起算して9月をこえない範囲内において政令で定める日から施行されることとなっていた(賠償法附則第1条)。すなわち、政令等の関係法令の整備をまって、本年3月16日までに施行することとされていた。

 原子力局においては、昭和36年9月までに、上記二法の施行政令案をまとめ、原子力委員会の了承を得て翌10月から関係各省等と折衝に入った。これらの政令案の主要な点は、賠償法施行政令における損害賠償措置の金額に関する点と、契約法施行令における補償契約の補償料率との二点であり、なかんずく、後者の料率が財政当局との間で論議された。原子力局は技術的資料に基づいて一年当たり万分の五を算出し、この料率で各方面と交渉を行なったのであるが、本年2月に至り、ようやくその線で料率はまとまり、その他の点も調整が終ったので、賠償法の施行日を昭和37年3月15日とする「原子力損害の賠償に関する法律の施行期日を定める政令」、「原子力損害の賠償に関する法律施行令」及び「原子力損害賠償補償契約に関する法律施行令」の三政令案を3月2日の閣議に提出した。これらは、同日閣議で決定され、3月6日、昭和37年政令第43号、同第44号及び同第45号として公布された。そこで、原子力局においては、3月15日の施行期日にそなえて、賠償法施行規則及び原子力損害賠償補償契約約款の作業を進め、前者は3月5日、後者は3月12日の庁議決定を得た。前者は、「原子力損害の賠償に関する法律施行規則」として昭和37年総理府令第5号をもって公布された。かくして、関係法令等の整備は完了し、二法律、二政令、一府令及び一約款よりなる原子力災害補償制度は、昭和37年3月15日をもって施行された。世界においては、アメリカ、イギリス、西ドイツ、スイス及びスエーデンに次いで、第六番目の施行国である。制度の施行の日に、直ちに、日立製作所から、川崎市における原子炉の運転に係る原子力損害賠償契約の締結の申込みがあり、翌16日には、核燃料物質の運搬、加工及び使用に係る4件の補償契約の締結の申込みがあった。政府はそれぞれその申込みの日において締結に応じた。そこで、日立製作所は、これらの5件の補償契約及びすでに締結済みの責任保険契約をって、3月16日、科学技術庁長官に対し、損害賠償措置の承認の申請を行ない、科学技術庁長官は同日これを承認した。昭和36年度中における補償契約の締結は以上の5件で、これにより、25,067円の補償料の納付があった。すでに原子炉の運転等を行なっている日本原子力研究所、近畿大学、立教大学及び東芝については、賠償法附則で認められている施行後3箇月間の経過期間中に、本制度に基づく措置が要求されている。

 以上の関係法令は、以下のとおりであるが、それらの主な内容を記せば次のとおりである。

(1)賠償法施行令
 制度を適用する核燃料物質の加工及び使用は、濃縮ウランに限るものとし、かつ、濃縮度5%未満のものについては2,000グラム以上のもの、同5%以上のものについては800グラム以上のもの、加工及び使用に限ることとした。

 損害賠償措置の金額は、規制法による暫定措置における金額を受けついだが、熱出力1キロワット以下の原子炉の運転、加工及び使用については1千万円とし、また、核燃料物質の運搬については1億円又は1千万円とした。

(2)契約法施行令
 前述のように、補償料率を万分の五と定めたが、その他の事項として、次のことを規定した。

① 正常運転の定義を規定した。
② 法律に定めるもの以外の補償損失として、保険契約の通知義務違反及び津波に基づく原子力損害をあげた。
③ 補償契約における通知すべき事項を定めた。
④ 補償料の納付期日を、契約締結日及びその後毎年応当日とした。
⑤ 原則として政府は30日以内に補償金を支払うこととした。
⑥ 補償金の返還は、1年以内にさせるものとした。
⑦ 過怠金は、補償金の10分の1又は10万円とした。

(3)賠償法施行規則
 科学技術庁長官に損害賠償措置の承認を申請する際の記載事項及び添附書類、損害賠償措置として供託できる有価証券の種類等を定めた。

(4)補償契約約款
 契約法、同施行令等の内容をそのまま盛り込んで規定したが、そのほかの事項としては、契約の変更、補償料の納付方法、納付金の延滞利息、裁判管轄等について規定した。

政令第44号

原子力損害の賠償に関する法律施行令

 内閣は、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)第2条第1項及び第7条第1項の規定に基づき、この政令を制定する。

(加工)

第1条 原子力損害の賠償に関する法律(以下「法」という。)第2条第1項第2号に規定する加工であって政令で定めるものは、次のとおりとする。

一 ウラン235及びウラン238に対するウラン235の比率が天然の比率をこえ100分の5に達しないウラン及びその化合物並びにこれらの物質の1又は2以上を含む物質であってウラン235の量が2,000グラム以上のものの加工二ウラン235及びウラン238に対するウラン235の比率が100分の5以下のウラン及びその化合物並びにこれらの物質の1又は2以上を含む物質であってウラン235の量が800グラム以上のものの加工

(核燃料物質の使用)

第2条 法第2条第1項第4号に規定する核燃料物質の使用であって政令で定めるものは、次のとおりとする。

一 ウラン235及びウラン238に対するウラン235の比率が天然の比率をこえ100分の5に達しないウラン及びその化合物並びにこれらの物質の1又は2以上を含む物質であってウラン235の量が2,000グラム以上のものの使用(前条第1号に掲げるものを除く。)

二 ウラン235及びウラン238に対するウラン235の比率が100分の5以上のウラン及びその化合物並びにこれらの物質、1又は2以上を含む物質であってウラン235の量が800グラム以上のものの使用(前条第2号に掲げるものを除く。)

(賠償措置額)

第3条 法第7条第1項に規定する政令で定める原子炉の運転等及び当該原子炉の運転等について同項に規定する政令で定める金額は、次の表の上欄に掲げる原子炉の運転等及び当該原子炉の運転等について

 それぞれ同表の下欄に掲げる金額とする。ただし、同一の工場又は事業所(原子炉を船舶に設置する場合にあっては、その船舶)に係る原子炉の運転等が同表の上欄の第1号から第6号までの各号のうちの2以上の号に該当する場合においては、当該原子炉の運転等についての金額は、それぞれ当該該当する号に対応する同表の下欄に掲げる金額のうち最も大きい金額とする。


附則

1 この政令は、法の施行の日(昭和37年3月15日)から施行する。

2 科学技術庁組織令(昭和31年政令第142号)の1部を次のように改正する。

  第9条第6号を同条第7号とし、同条第5号の次に次の1号を加える。

  六 原子力損害の賠償に関すること。

3 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律施行令(昭和32年政令第324号)の1部を次のように改正する。

  第5条の2及び第5条の3を削る。

  第7条第1項第9号を削り、同条第2項中「、第8号又は第9号」を「又は第8号」

  第11条の表の下欄中

「6 損害賠償措置の状況(原子炉設置者に限る)
七 原子炉施設の損傷状況(原子炉の運転に重大な支障を及ぼすおそれがある場合に限る。)」を「六 原子炉施設の損傷状況(原子炉の運転に重大な支障を及ぼすおそれがある場合に限る。)」

政令第45号

原子力損害賠償契約に関する法律施行令

 内閣は、原子力損害賠償補償契約に関する法律(昭和36年法律第148号)の規定に基づき、この政令を制定する。

(補償損失)

第1条 原子力損害賠償契約に関する法律(以下「法」という。)第3条第2号に規定する政令で定める状態とは、次の各号に掲げる要件を備える状態をいう。

一 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関る法律(昭和32年法律第166号)第22条第4項、第35条、第37条第4項、第57条、第58条)第66条第2項において準用する場合を含む。)、第59条(第66条第2項において準用する場合を含む。)又は第60条(第66条第2項において準用する場合を含む。)の規定の違反で原子力損害の発生の原因となるものがないこと。

二 原子炉の運転等の用に供する施設の損傷で原子力損害の発生の原因となるものがないこと。

三 天災地変又は第3者の行為で原子力損害の発生の原因となるものがないこと。

第2条 法第3条第4号に規定する原子力損害であって政令で定めるものは、次の各号に掲げる原子力損害とする。

一 津波によって生じた原子力損害

二 補償契約の締結が含まれる損害賠償措置に係る責任保険契約に基づき原子力事業者が当該責任保険契約の締結後保険者に通知すべき事実を通知せず、又は当該通知すべき事実について虚偽の通知をした場合における当該通知せず、又は虚偽の通知をした事実に基づく原子力損害

(補償料率)

第3条 法第6条に規定する政令で定める料率(以下「補償料率」という。)は万分の5(大学又は高等専門学校における原子炉の運転等に係る補償契約については、万分の(2.5)とする。

2 補償料の納付の期日において当該補償契約により原子力損害の賠償に充てることができる金額が当該補償契約の補償契約金額に満たない場合においては当該補償契約の補償料率は、前項の規定にかかわらず、同項に規定する料率に、当該充てることができる金額を当該補償契約の補償契約金額で除して得た数を乗じて得た料率とする。

(通知)

第4条 原子力事業者は、法第9条の規定により、次の各号に掲げる事項を政府に対し通知しなければならない。

  一 原子炉の運転に係る補償契約については、次に掲げる事項

イ 原子炉の使用の目的
ロ 原子炉の型式、熱出力及び基数
ハ 原子炉を設置する工場又は事業所(原子炉を船舶に設置する場合にあっては、その船舶を建造する造船業者の工場又は事業所)の名称及び所在地
ニ 原子炉施設の位置、構造及び設備
ホ 原子炉の運転(これに附随してする核燃料物質の貯蔵又は廃棄を含む。)の開始時期及び予定終了時期
ヘ 原子炉に燃料として使用する核燃料物質の種類及びその年間予定使用量
ト 使用済燃料の処分の方法
チ 責任保険契約に関する事項

  二 加工に係る補償契約については、次に掲げる事項

イ 加工施設を設置する工場又は事業所の名称及び所在地
ロ 加工施設の位置、構造及び設備並びに加工の方法
ハ 加工(これに附随してする核燃料物質の貯蔵又は廃棄を含む。)の開始時期及び予定終了時期
ニ 加工する核燃料物質の種類及びその年間予定加工量
ホ 責任保険契約に関する事項

  三 枝燃料物質の使用に係る補償契約については、次に掲げる事項

イ 使用の目的及び方法
ロ 使用の場所
ハ 使用施設、貯蔵施設又は廃棄施設の位置、構造及び設備
ニ 使用(これに付随してする核燃料物質の貯蔵又は廃棄を含む。)の開始時期及び終了時期
ホ 使用する核燃料物質の種類及びその年間予定使用量
ヘ 使用済燃料の処分の方法
ト 責任保険契約に関する事項

  四 核燃料物質の運搬に係る補償契約については、次に掲げる事項

イ 運搬の経路及び方法(運搬に附随して保管する場合にあっては、保管の場所及び方法を含む。)
ロ 運搬の開始時期及び予定終了時期
ハ 運放する核燃料物質の種類及び数量
ニ 責任保険契約に関する事項

(補償料の納付)

第5条 原子力事業者は、補償契約の締結の日及びその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合は、その前日)までに、それぞれの日から始まる1年間(それぞれの日からの補償契約の期間が1年間に満たない場合は、その期間)に応ずる補償料を国庫に納付しなければならない。

(補償金の支払)

第6条 科学技術庁長官は、原子力事業者から補償金の支払の請求があった場合は、当該請求があった日から30日以内に補償金を支払わなければならない。ただし、やむをえない理由がある場合は、この限りではない。

(補償金の返還)

第7条 科学技術庁長官は、法第13条の規定により、補償金を支払った日から1年以内に、当該補償金の額に相当する金額を返還させるものとする。

2 科学技術庁長官は、前項の期間内に返還することが著しく困難であると認められる金額について、原子力事業者の申請により、担保を提供させ、その期間経過後5年以内の年賦均等返還をさせることができる。

第8条 法第13条第1号に規定する法第3条第4号に掲げる原子力損害のうち政令で定めるものは、第2条第2号に規定する原子力損害とする。

 (補償契約の解除)

第9条 法第15条第1項第5号に規定する政令で定める事項は、原子力損害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、原子力損害の防止又は軽減のために必要な措置を講ずることとする。

(過怠金)

第10条 法第16条に規定する政令で定める事項は、次の各号に掲げるものとする。

一 原子力損害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、原子力損害の防止又は軽減のために必要な措置を講ずること。

二 損害賠償の責任の全部又は一部を承認しようとする場合において、あらかじめ、科学技術庁長官の承認を受けること。

三 原子力損害が発生した場合において、直ちにその発生の日時、場所及び損害の状況を科学技術庁長官に通知すること。

四 損害賠償の責任に関する訴訟を提起し、又は提起された場合において、直ちにその旨を科学技術庁長官に通知すること。

第11条 科学技術庁長官は、法第16条の規定により、原子力事業者が補償金の支払を受けた日以後において、次の各号に掲げる金額を限度として過怠金を徴収することができる。

一 補償契約の条項で前条第1号又は第2号に掲げるものに該当するものの違反にあっては、補償金の額の十分の1に相当する金額

二 補償契約の条項で前条第3号又は第4号に掲げるものに該当するものの違反にあっては、10万円

附則

 この政令は、法の施行の日(昭和37年3月15日)から施行する。

政令第43号

原子力損害の賠償に関する法律の施行期日を定める政令

 内閣は、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)附則第1条の規定に基づき、この政令を制定する。

 原子力損害の賠償に関する法律の施行期日は、昭和37年3月15日とする。

  総理府令第5号

 原子力損害の賠償に関する法律第12条の規定に基づき、及び同法の規定を実施するため、原子力損害の賠償に関する法律施行規則を次のように定める。

原子力損害の賠償に関する法律施行規則

(損害賠償措置の承認の申請)

第1条 原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号。以下「法」という。

 第7条第1項の承認を受けようとする原子力事業者は、次に掲げる事項を記載した申請書4通(正本1通及び副本3通)を科学技術庁長官に提出しなければならない。

一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名

二 原子炉の運転等の種類

三 原子炉の運転等に係る工場又は事業所(原子炉を船舶に設置する場合にあっては、その船舶)の名称及び所在地(船舶にあっては船籍港)

四 原子炉の運転にあっては、原子炉の熱出力

五 加工にあっては、加工する核燃料物質の種類及び数量

六 核燃料物質の使用にあっては、使用する核燃料物質の種類及び数量

七 核燃料物質の運搬にあっては、運搬する核燃物料質の種類及び数量

八 原子炉の運転等の開始時期及び予定終了時期

九 責任保険契約及び補償契約の締結を含む損害賠償措置を講じようとする場合においては、保険者の名称、住所及び代表者の氏名、責任保険契約によりうめることができる原子力損害の範囲及び原子力損害の賠償に充てることができる金額、保険期間、保険料の額及びその納付の状況、補償契杓によりうめることができる原子力損害の範囲及び原子力損害の賠償に充てることができる金額、補償契約の期間並びに補償料の額及びその納付の状況

十 供託を含む損害賠償措置を講じようとする場合においては、法務局又は地方法務局の名称及び所在地並びに金銭の供託にあってはその金額、有価証券の供託にあってはその名称、総額面、券面額回記号、番号、枚数及び附属利賦札

十一 責任保険契約及び補償契約の締結又は供託以外の措置を含む損害賠償措置を講じようとする場合においては、当該措置の概要

2 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。

一 原子炉の運転等に係る工場又は事業所の区域を明示する実測図

二 前項第9号の場合にあっては、責任保険契約及び補償契約の締結を証する書類

三 前項第10号の場合にあっては、供託の受理を証する書類

四 前項第11号の場合にあっては、当該措置の効力を証する書類

(供託することができる有価証券)

第2条 法第12条の総理府令で定める有価証券は、次のとおりとする。

一 国 債

二 地方債

三 特別の法律により設立された法人で国及び地方公共団体以外の者の出資のないものの発行する債券

四 銀行、農林中央金庫又は商工組合中央金庫の発行する債券

五 担保付社債信託法(明治38年法律第52号)による担保付社債

(供託物の取りもどし)

第3条 法第14条第1項の承認を受けようとする原子力事業者は、次に掲げる事項を記載した申請書4通(正本1通及び副本3通)を科学技術庁長官に提出しなければならない。

一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあってはその代表者の氏名

二 当該原子炉の運転等について現に存する供託物が金銭の場合にあってはその金額、有価証券の場合あってはその名称、総額面、券面額、回記号番号、枚数及び附属利賦札

三 取りもどそうとする供託物が金銭の場合にあってはその金額、有価証券の場合にあってはその名称、総額面、券面額、回記号、番号、枚数及び附民利賦札

四 取りもどそうとする理由

2 前項の申請書には、原子力損害を賠償したこと、供託に代えて他の損害賠償措置を講じたこと又は原子炉の運転等をやめたことを証する書類を添付しなければならない。

(身分を示す証明書)

第4条 法第21条第2項の身分を示す証明書は、別記様式によるものとする。

(別記)様式
表 面
裏 面

附則

1 この府令は、法の施行の日(昭和37年3月15日)から施行する。

2 原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和32年総理府令第83号)の一部を次のように改正する。

  第1条の2第1項第6号を削る。

  第2条第1項第1号中「、法第23条第2項第9号の損害賠償措置の変更に係る場合にあっては、その種類及び額を」を削る。

  第15条の3第1項第5号を削る。

  第28条第6項を削り、同条第7項中「並びに前項の書類」を削り、同条同項を同条第6項とする。

原子力損害賠償補償契約約款

   第1章 総  則

(この約款の内容)

第1条 この約款は、原子力損害賠償補償契約に関する法律(昭和36年法律第148号。以下「法」という。)の規定に基づく原子力損害賠償補償契約の約款とする。

(補償損失の補償)

第2条 科学技術庁長官(以下「甲」という。)は、この約款の定めるところに従い、この契約証書記載の原子力事業者(以下「乙」という。)がこの契約証書記載の原子炉の運転等により与えた原子力損害であって次の各号に掲げるものを賠償することにより生ずる損失(損害賠償の責任に関する訴訟につき乙が負担した経費を含まないものとする。以下「補償損失」という。)を補償する。

一 地震、噴火又は津波によって生じた原子力損害

二 正常運転によって生じた原子力損害

三 その発生の原因となった事実に関する限り責任保険契約によってうめることができる原子力損害であって当該事実があった日から10年を経過する日までの間に被害者から賠償の請求が行なわれなかったもの(当該期間内に生じた原子力損害については、被害者が当該期間内に賠償の請求を行なわなかったことについてやむをえない理由がある場合に限る。)

四 この契約の締結が含まれる損害賠償措置に係る責任保険契約に基づき乙が当該責任保険契約の締結後保険者に通知すべき事実を通知せず、又は当該通知すべき事実について虚偽の通知をした場合における当該通知せず、又は虚偽の通知をした事実に基づく原子力損害

(補償する金額の限度)

第3条 甲がこの契約により補償する金額は、乙がこの契約の期間内におけるこの契約証書記載の原子炉の運転等により与えた原子力損害に係る補償損失についてこの契約証書記載の補償契約金額までとする。

(期間)

第4条 この契約の期間は、この契約の締結の時から乙がこの契約証書記載のすべての原子炉の運転等をやめる時までとする。

   第3章 契約の変更

(契約の変更)第5条 乙は、この契約の締結後において、この契約の変更を甲に対し申請することができるものとし、甲は、当該変更を適当と認めるときは、これを承認するものとする。

2 乙は、前項の申請をしようとするときは、甲が定める原子力損害賠償契約変更承認申請書を甲に対し提出するものとする。

   第4章 補償料

(補償料の納付)

第6条 乙は、この契約の締結の日及びその後毎年その日に応当する日(応当する日がない場合は、その前日。以下「補償料納付期日」という。)までに、それぞれの日から始まる1年間(それぞれの日からこの契約証書記載の補償契約予定終了期日までの期間が1年間に満たない場合は、その期間)に応ずる補償料を、歳入徴収官が行なう納入の告知に基づき納付しなければならない。

2 乙は、この契約証書記載の補償契約予定終了期日の翌日以後において第4条の規定によるこの契約の期間の終了があった場合においては、当該終了があった日の翌日に、当該補償契約予定終了期日の翌日から当該終了があった日までの期間に応ずる補償料を、歳入徴収官が行なう納入の告知に基づき納付しなければならない。

3 乙は、前2項の規定により納付すべき補償料の全部又は1部を当該納付すべき期日までに納付しなかったときは、当該未納付金額に、当該納付すべき期日の翌日からその納付を完了する日までその経過した期間に応じ、当該未納付金額に100円につき1日3銭の割合を乗じて得た金額を加算して納付しなければならない。

(補償料の返還)

第7条 甲は、この契約証書記載の補償契約予定終了期日の前日以前において第4条の規定によるこの契約の期間の終了があった場合、又は第14条1第項若しくは第2項又は第15条第1項の規定によりこの契約が解除された場合においては、既収補償料のうち当該終了があった日の翌日又は当該解除の日の翌日(第15条第1項の規定による解除の場合にあっては、当該解除の効力が生ずる日)から始まる期間に応ずる補償料を、乙に対し返還するものとする。

2 乙は、前項の規定により補償料の返還を請求しようとするときは、甲が定める補償料返還請求書を提出するものとする。

   第5章 原子力事業者の義務

(契約に関する通知)

第8条 乙は、この契約の締結又は第5条の規定によるこの契約の変更に際し、次の各号に掲げる事項を、書面により、甲に対し通知しなければならない。通知した事項に変更が生じたときも同様とする。

  一 原子炉の運転に係る補償契約については、次に掲げる事項

イ 原子炉の使用の目的
ロ 原子炉の型式、熱出力及び基数
ハ 原子炉を設置する工場又は事業所の名称及び所在地
ニ 原子炉施設の位置、構造及び設備
ホ 原子炉の運転(これに附随してする核燃料物質の貯蔵又は廃棄を含む。)の開始時期及び予定終了時期
ヘ 原子炉に燃料として使用する核燃料物質の種類及びその年間予定使用量
ト 使用済燃料の処分の方法
チ 責任保険契約に関する事項

  二 加工に係る補償契約については、次に掲げる事項

イ 加工施設を設置する工場又は事業所の名称及び所在地
ロ 加工施設の位置、構造及び設備並びに加工の方法
ハ 加工(これに附随してする核燃料物質の貯蔵又は廃棄を含む。)の開始時期及び予定終了時期
ニ 加工する核燃料物質の種類及びその年間予定加工量
ホ 責任保険契約に関する事項

  三 核燃料物質の使用に係る補償契約については、次に掲げる事項

イ 使用の目的及び方法
ロ 使用の場所
ハ 使用施設、貯蔵施設又は廃棄施設の位置、構造及び設備
ニ 使用(これに附随してする核燃料物質の貯蔵又は廃棄を含む。)の開始時期及び予定終了時期
ホ 使用する核燃料物質の種類及びその年間予定使用量
ヘ 使用済燃料の処分の方法
ト 責任保険契約に関する事項

  四 核燃料物質の運搬に係る補償契約については、次に掲げる事項

イ 運搬の経路及び方法(運搬に附随して保管する場合にあっては、保管の場所及び方法を含む。)
ロ 運搬の開始時期及び予定終了時期
ハ 運搬する核燃料物質の種類及び数量
ニ 責任保険契約に関する事項

(原子力損害の防止)

第9条 乙は、原子力損害が発生し、又は発生するおそれがある場合においては、原子力損害の防止又は軽減のために甲が指示するところに従い措置するほかその他必要な一切の措置を講じなければならない。

(損害発生の通知)

第10条 乙は、原子力損害が発生した場合においては、直ちにその発生の日時、場所及び損害の状況を甲に対し通知しなければならない。

(賠償責任の承認)

第11条 乙は、原子力損害に係る損害賠償の責任の全部又は1部を承認しようとする場合においては、あらかじめ、甲の承認を受けなければならない。

(訴訟の通知)

第12条 乙は、原子力損害に係る損害賠償の責任に関する訴訟を提起し、又は提起された場合においては、直ちにその旨を甲に通知しなければならない。

(調査に応ずる義務)

第13条 乙は、甲がこの契約に関し、調査、報告若しくは資料の提出を求めた場合、又はこの契約に関する事務を取り扱う科学技術庁の職員がこの契約に関する帳簿書類その他の物件を調査しようとした場合は、これに応じなければならない。

   第6章 契約の解除

(契約の解除)

第14条 乙は、この契約の締結を含む損害賠償措置以外の損害賠償措置を講じた場合においては、甲が定める原子力損害賠償補償契約解除申込書を提出して、甲に対しこの契約の解除を申し込むことができるものとし、甲は当該申込みに応ずることができるものとする。

2 前項の場合においては、甲はこの契約を解除することができる。

3 前2項の規定によるこの契約の解除は、将来に向ってその効力を生ずる。

第15条 甲は、乙が次の各号の1に該当するときは、この契約を解除することができる。

一 この契約証書記載の原子炉の運転等につき損害賠償措置を講ずることを怠ったとき。

二 補償料の納付を怠ったとき。

三 第10条の規定による通知を怠り、又は虚偽の通知をしたとき。

四 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)第35条の規定により講ずべき保安のために必要な措置を講ずることを怠ったとき。

五 第9条の規定による原子力損害の防止又は軽減のための措置を講ずることを怠ったとき。

2 前項の規定によるこの契約の解除は、乙が当該解除の通知を受けた日から起算して90日の後に、将来に向ってその効力を生ずる。

   第7章 補償金の支払

(補償金の支払の請求)

第16条 乙は、この契約により補償を受けることとなった場合は、甲が定める補償金支払請求書を提出して、甲に対し補償金の請求を行なうものとする。

2 乙は、被害者に対する損害賠償額について、自己が支払った限度又は被害者の承諾があった限度においてのみ、前項の請求を行なうことができるものとする。

3 甲は、第1項の請求があった場合においては、当該提出があった日から30日以内に補償金を支払うものとする。ただし、やむをえない理由がある場合は、この限りではない。

(求償権の行使があった場合の免責)

第17条 甲は、この契約により補償する場合において、乙がこの契約に係る補償損失について、第3者に対する求償権の行使により支払を受けた金額があるときは、当該支払を受けた金額の限度で、補償の義務を免れる。

(代位)

第18条 甲は、この契約により補償した場合において、乙がこの契約に係る補償損失について第3者に対して求償権を有するときは、補償した金額を限度として当該権利を取得する。

2 乙は、補償金の支払を受けた場合においては、甲が前項の権利を行使するために必要な一切の書類を甲に交付しなければならない。

(他の補償契約との関係)

第19条 甲がこの契約により補償する補償損失についてこの契約以外の原子力損害賠償補償契約(以下「他の契約」という。)によってうめられる金額がある場合において、この契約及び他の契約のそれぞれによりそれぞれ別の契約がないものとした場合に支払われる補償金の額の合計額が当該償補損失の金額をこえるときは、甲は他の契約がないものとした場合にこの契約により支払われる補償金の額の当該合計額に対する割合において、乙に対し補償する。

(責任保険契約との関係)

第20条 甲がこの契約により又はこの契約及び他の契約により補償する場合において、当該補償に係る原子力損害と同一の原因によって発生した原子力損害について責任保険契約によってうめられる金額があるときは、甲は、当該原子力損害に係る補償損失についてこの契約により又はこの契約及び他の契約により支払う補償金の額の合計額がなこの契約の締結が含まれる損害賠償措置の賠償措置額に相当する金額(当該損害賠償措置に責任保険契約及び補償契約の締結以外の措置が含まれる場合においては当該措置により原子力損害の賠償に充てることができる金額を控除した金額)から当該責任保険契約によってうめられる金額を控除した金額をこえない限度において、乙に対し補償する。

   第8章 補償金の返還

(補償金の返還)

第21条 乙は、次の各号に掲げる原子力損害に係る補償損失について補償金の支払を受けたときは、当該支払があった日から1年以内で甲が指定する期日までに、当該補償金の額に相当する金額を、歳入徴収官が行なう納入の告知に基づき返還しなければならない。

一 第2条第4号に掲げる原子力損害

二 乙が第8条の規定による通知を怠り、又は虚偽の通知をした場合において、その通知を怠り、又は虚偽の通知をした事実に基づく原子力損害

三 甲が第15条の規定によりこの契約を解除した場合において、乙がその解除の通知を受けた日から解除の効力が生ずる目の前日までの間におけるこの契約証書記載の原子炉の運転等により与えた原子力損害

2 乙は、前項の規定により返還すべき金額の全部又は1部を当該返還すべき期日までに返還しなかったときは、当該未返還金額に、当該返還すべき期日の翌日からその返還が完了する日までその経過した期間に応じ、当該未返還金額に100円につき1日3銭の割合を乗じて得た金額を加算して納付しなければならない。

   第9章 過 怠 金

(過怠金の徴収)

第22条 甲は、この契約により補償金を支払った場合において、乙が次の各号の1に該当するときは、乙に対し、過怠金の納付を求めることができる。

一 当額補償金の支払に係る原子力損害について、第9条の規定による原子力損害の防止又は軽減のために必要な措置を講ずることを怠ったとき。

二 当該補償金の支払に係る損害賠償の責任について、第11条の規定による甲の承認を求めなかったとき。

三 当該補償金の支払に係る原子力損害について、第10条の規定による通知を怠ったとき。

四 当該補償金の支払に係る損害賠償の責任について、第12条の規定による通知を怠ったとき。

2 前項の規定による過怠金の額の限度は、同項第1号又は第2号に係るものにあっては、当該支払のあった補償金の額の10分の1に相当する金額、同項第3号又は第4号に係るものにあっては、10万円とする。

(過怠金の納付)

第23条 乙は、前条の規定による過怠金を、乙が補償金の支払を受けた日以後で甲が指定する期日までに、歳入徴収官が行なう納入の告知に基づき納付するものとする。

2 乙は、前条の規定により納付すべき過怠金の全部又は1部を当該納付すべき期日までに納付しなかったときは、当該未納付金額に、当該納付すべき期日の翌日からその納付が完了する日までその経過した期間に応じ、当該未納付金額に100円につき1日3銭の割合を乗じて得た金額を加算して納付しなければならない。

   第10章 雑  則

(譲渡の禁止等)

第24条 乙は、この契約により補償金の支払を受ける権利を譲渡し、又は担保に供してはならない。

(裁判官轄)

第25条 この契約に関する訴訟は、東京都を管轄する裁判所を管轄裁判所とする。

(経費の負担)

第26条 甲は、この契約証書の作成その他この契約の保全及び実行に関する経費の全部又は1部を乙に負担させることができる。

(円位未満の端数)

第27条 この契約により算出された補償料、補償金その他の金額に円位未満の端数を生じたときは、国等の債権、債務等の金額の端数計算に関する法律(昭和25年法律第61号)の定めるところによる。

(適用法令)

第28条 この約款に定めていない事項については、法及びこれに基づく命令の定めるところによる。

(法等の変更)

第29条 法又はこれに基づく命令が改正された場合においては、この契約の内容は、その改正が効力を生ずる日以後は、その改正されたところに従い変更されたものとみなす。