昭和36年度第1種放射線取扱主任者試験合格者の決定 東京89名、大阪52名(試験地別) ◎放射線取扱主任者試験合格者、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号)第35条第2項に規定する放射線取扱主任者試験(昭和36年9月2日および3日施行)の合格者を次のとおり決定したので、公告する。 昭和36年10月23日 科学技術庁長官 三木 武夫 第1種放射線取扱主任者免状に係る試験合格者 試験地 東京 受験番号 氏 名 4 木下 真清 受験地 大阪 1001 加藤 幸雄
なおこれで第1種放射線取扱主任者免状を有する者は合計1,255名となった。(第2種免状所有者は197名) 第1種放射線取扱主任者試験問題 (注意)(イ)解答用紙には、問題の番号のみを記載して解答し、問題の全文を写し取る必要はない。 (ロ)1問題ごとに1枚の解答用紙を使用すること。 (ハ)解答用紙の下部の数字を印刷した部分については、その解答用紙に解答した問題の番号と同じ数字の部分のみを切り取ること。 法令 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」及びその関係法令につき解答せよ。 第1問 使用施設の位置、構造及び設備の技術上の基準は、特に作業室及び汚染検査室については、どのように規定されているか。 第2問 最大許容集積線量は、どのように規定されているか。 第3問 次の文章中正しいものには○印を、誤っているものには×印をつけ、誤っている場合にはその理由を簡単にしるせ。 (1)許可使用者は、放射性同位元素の使用の場所を一時的に変更しようとするときには、あらかじめ、その旨を科学技術庁長官に届け出なければならない。 (2)1キュリー以下の密封された放射性同位元素を使用する場合には、使用施設の主要構造部等を耐火構造とし、または不燃材料で造ることを要しない。 (3)使用施設に設けるしゃへい壁その他のしゃへい物は、使用施設内の人が常時立ち入る場所において人が被曝するおそれのある放射線の線量を3月間につき3レム以下とする能力を有するものでなければならない。 (4)放射性同位元素を使用しようとする者は、使用の許可の申請をした後であれば、当該申請に係る放射性同位元素を購入してもさしつかえない。 (5)使用者は、放射性同位元素又は放射線発生装置の使用を開始した日から30日以内に、放射線取扱主任者を選任しなければならない。 (6)科学技術庁長官は、放射線取扱主任者がこの法律の規定に違反したときは、使用者、販売業者又は廃棄業者に対し、放射線取扱主任者の解任を命ずることができる。 第4問 次の文章中の_のうちに入る適当な語句を番号とともにしるせ。 (1)使用施設等の主要構造部に関して耐火構造等の規定があるが、主要構造部とは、壁、柱、1、2、3又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁等を除くものである。 (2)排気設備には、4及び5に放射能標識を、6に放射能表示を付けなければならない。 (3)管理区域随時立入者の許容被曝放射線量は、7である。ただし、8のみに対する被曝については、9である。 (4)放射線施設に一時的に立ち入った者については、その者が10をこえて被曝するおそれのあるときには、被曝放射線量を測定しなければならない。 (5)使用者、販売業者及び廃棄業者は、放射線施設に立ち入る者に対し、11その他放射線障害の発生を防止するために必要な教育及び訓練を施さなければならない。 (6)検査又は検診は、皮ふ、末しょう血液中の白血球及び赤血球の数並びに12、13並びに14(15、アルファ線及び重陽子線による被曝のおそれのある場合に限る。)について行なう。 管理技術 第1問 管理区域について、次の文章中正しいものには○印を、誤っているものには×印をつけ、誤っている場合にはその理由を簡単に述べよ。 (1)管理区域外に、放射線の線量が1週間につき30ミリレムをこえる場所があってはならない。 (2)管理区域外に、空気中または水中の放射性同位元素の1週間についての平均濃度が科学技緒庁告示(昭和35年科学技術庁告示第22号)別表第1に示す濃度の3/10をこえる場所があってはならない。 (3)管理区域外に、放射性同位元素の表面密度が科学技術庁告示(昭和35年科学技術庁告示第22号)別表第4に示す密度の3/10以下の放射性同位元素によって汚染された物を持出してもよい。 (4)管理区域は、100ミリキュリー以下の密封された線源を使用する場合には設けなくてもよい。 (5)管理区域の境界には、さくその他の人がみだりに立ち入らないようにするための施設を設けなければならない。 (6)使用施設の内部は常に管理区域である。 第2問 ドラフト内で半減期2時間の放射性物質の化学処理を行なうとき、その物質1キュリーから1m離れた所で400mr/hr、10cmの厚さのコンクリート壁を途中におくとき100mr/hrの線量率を示した。ドラフトに近い隣室の壁はドラフトから3mの距離にあり、この隣室との壁は5cmの厚さのコンクリート壁となっている。最初に1キュリーのこの物質の化学処理に4時間を要し、週一回この処理を行なうとき、隣室の壁面での1週間あたりの照射線量の概算値を出せ。また、この隣室に対していかなる考慮をはらわなければならないかを述べよ。 第3問 排液の処理法として下記のうち適当と考えられるものに○印、不適と考えられるものに×印、適、不適の判断不能のもの*印をつけ、それぞれ簡単に理由を述べよ。 (1)キャリヤーフリーの22Na+を含む溶液に通常のNaClを加えた。 (2)微量の単体の放射性ヨウ素を含む溶液に通常のNalを加えて後Ag+を加えヨウ化銀を沈澱させた。 (3)核種不明のβ放射体を含む排液100mlを蒸発して5mgの乾固物を得た。これを5cm2にひろげ、窓なしの低バックグランドベータ線計数装置(14Cについての計数効率25%)で測定して4cpmの測定値を得たので、排液はきしゃくせずそのまま通常の下水に流した。 第4問 60Co線源により1回照射を受けた人に次のような症状が起きたとき、それぞれの場合の被曝線量は何レム以上かを推定せよ。 (1)指先の皮膚のみにかいようを生じた。 (2)血液1mm3中の白血球数が4,000以下になった。 (3)放射線宿酔(radiation sickness)が起きた。 (4)頭部に脱毛を生じた。 測定技術 第1問 次の式の中で空欄の個所について( )内には単位記号を、_上には数値を記入せよ。 照射線量が1rの場のなかの空気の吸収線量は
の式によって11. rad であることになる。 (ただし、その周囲はすべて少なくとも2次電子の飛程以上の厚さの空気で囲まれ、一様にX、γ線で照射されているものとする。)このとき、エネルギー吸収係数が空気のそれに対して2倍であるような物質で囲まれた微小空間中の照射線量が2rであるときには、その物質の吸収線量は12. rad になる。 第2問 60Coのγ線源がある。そのキュリー数を求めるために手持ちの端窓型G-M計数管で測定したところ、2mの距離で4,000cpsであった。この計数管は窓面積が4cm2あり、その分解時間は150μsecであることは知られているがγ線の計数効率がわかっていない。そこで、比重1.1のプラスチックスを使い壁厚が4mmで内容積が100ccの完全密閉型(1気圧の空気)の電離箱を作り、線源から2mのところの電離電流を測定したところ、1.5×10-13ampの電離電流が検出された。この60Co線源は何キュリーで、この計数管のγ線計数効率は何パーセントであるか。ただし、60Coγ線の比γ線放射率は1.30r/hr/c at 1mで、1クーロン=3x109esuとする。また、入射光子は計数管の窓に垂直に入射するものとし、計数に及ぼす他の側壁の影響や電離箱の形などは無視できるものと仮定する。第3問個人および実験室のモニタリングについて、何を測定しなければならないかを列挙し、かつ、それぞれの測定に用いられる測定器の名称を2つずつしるせ。 物理学 第1問 アルファ崩壊およびベータ崩壊に関して次の問に答えよ。 (1)もとの元素の原子番号をZ、質量数をAとするとき、新しく生成される元素の原子番号および質量数はどう変化するか。 (2)アルファ線およびベータ線は、どのようなエネルギースペクトルを持つか。 第2問 次の語句を簡単に説明せよ。 (1)ラド(rad) (2)消滅放射線(annihilation radiation) (3)制動放射(bremsstrahlung) (4)中性子捕獲(neutroncapture) (5)崩壊曲線(decay curve) (6)捕獲ガンマ線(capture gammaray) (7)誘導放射能(induced radioactivity) 第3問 63Ni、39Kおよび11cについて、それぞれβ−もしくはβ+放射能の有無を判定し、さらに、放射能があるときは、γ線を伴わないと仮定して、β線の最大エネルギーを推定せよ。 ただし、それぞれの原子の質量は、(単位amu) 6328Ni=62.94951 6329Cn=62.94944 3919K=38.97604 3918Ar=38.97664 3920Ca=38.98340 116C=11.01492 115B=11.01279 また、電子の静止質量=0.00054amu 1amu=931MeV とする。 化学 第1問 42%(Uとして)のウランを含有する鉱物がある。この鉱物中ではウランとその壊変生成物との間に永続平衡が成立している。鉱物10グラム中に含まれる235Uおよび225Raの量をグラムにて示せ。ただし、235Uおよび226Raの半減期はそれぞれ238U=4.5×109年および226Ra=1600年、天然ウラン中の238Uおよび235Uの同位体存在比はそれぞれ99.3%および0.7%とし、234Uの同位体存在比は考慮しないものとする。 第2問 次の各組の用語につき、2つの用語間の相違に重点をおいて、解説せよ。 (1)重水素(deuterium)と三重水素(tritium) (2)同位体(isotope)と核種(nuclide) (3)放射線化学(radiation chemistry)と放射化学(radiochemistry) (4)ネプツニウム系列と(4n+2)系列 第3問 担体をほとんど含まない137CsClと安息香酸−14Cとの混合物の水浴溶液がある。この水浴液中の137Csおよび14Cのそれぞれμc数を測定する方法を述べよ。ただし、μc数既知の標準溶液として、137CsClの水溶液と安息香酸−14Cの水溶液とを所有しているものとする。なお検液中の137Csの総量は約10μc、14Cの線量は約1/10μcとする。また、使用しうる放射線測定器はウエル型(井戸型)シンチレーションカウンターおよび窓なしガスフローG-Mカウンターのみとする。 生物学 第1問 次の放射線生物学的用語のうちから互に関連ある用語を3つ以上えらび、それらを用いて1つのまとまった放射線生物学的内容をもつ文章(100ないし400字程度)をつくれ。 限界線量(threshold) 集積効果(蓄積効果) 回復(放射線生物学的作用からの回復の意) LET(linearenergy transfer)或いは電離密度 RBE(relative biological effectiveness、生物学的効果比率)線量率 第2問 放射線障害の症状の主なるものを列挙すると次の(a)〜(t)に示すようなものがある。これらの症状には比較的早期に見られる早発性障害と、相当に期間がたってから見られる晩発性障害とがある。次表中の(1)〜(6)欄に相当するものを次の(a)〜(t)に示す症状からそれぞれ2つずつを選び(1)〜(6)の番号を付してしるせ。
第3問 次表は放射能汚染の場合に、体内摂取で問題となる131I、89Sr、90Sr、137Csの4つの核種について、これらの放射性同位元素の最大許容量を計算するのに必要な因子をあげたものである。 次表中の(1)〜(20)欄に相当する因子を最下欄の語句又は数値からえらび(1)〜(10)の番号を付してしるせ。
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