JRR-2の変更に関する委員会の答申

 原子力委員会では、昭和36年8月29日付で諮問を受けた日本原子力研究所JRR-2原子炉施設の変更の安全性について審議を行なっていたが、結論をえたので次のとおり11月8日付で内閣総理大臣あて答申を行なった。

36原委第92号

昭年36年11月8日

内閣総理大臣殿

原子力委員会委員長

JRR-2原子炉施設変更の安全性について(答申)

 昭和36年8月29日付36原第1903号をもって諮問のあった標記の件については下記のとおり答申する。


 日本原子力研究所JRR-2原子炉施設の変更の安全性については、日本原子力研究所の提出した「安全審査のための書類」(昭和36年6月10日付)に基づき審査した結果、別添の原子炉安全専門審査会の安全性に関する報告書のとおり、安全上支障がないものと認める。

別添

昭和36年10月24日

原子力委員会委員長

   三木 武夫 殿

原子炉安全専門審査会会長

矢木 栄

日本原子力研究所JRR-2原子炉施設の変更の安全性について

 当専門審査会は、昭和36年8月31日付36原委第64号をもって審査の結果を求められた標記の件について結論を得たので報告します。

I 審査結果

 日本原子力研究所東海研究所は濃縮ウラン重水減速型原子炉(JRR-2熱出力10MW)の変更に関して、昭和36年6月10日「原子炉の安全性に関する審査のための書類」を提出した。当専門審査会は上記書類に基づき、とくに90%濃縮ウラン燃料の使用および放射性アルゴンガス放出の安全性につき審査した結果、この原子炉の安全性は変更後も十分確保し得るものと認める。

II 審査内容

1.燃料要素

 JRR-2の燃料としては、従来20%濃縮ウランのウラン・アルミニウム合金を用いていたが、今回、の申請では90%濃縮ウランの同種の合金を使用し、最外側凸状燃料板を一枚減らし、アルミニウム製のものと代替することになっているほかは変更前と同様の形状、および寸法のMTR型の燃料要素を使用することになっており、また、燃料要素1本あたりのウラン235の量は174gで、20%濃縮ウランの場合と比較して5g程度相違するにすぎない。

 したがって20%濃縮ウラン燃料を90%のものに変えてもウランを含む燃料板が一枚減るのみで、他にその構造上とくに変更はなく、この点については問題はないと考えられ、また、金属学的にはウラン・アルミニウム合金を作る場合、20%濃縮ウラン燃料では、アルミニウムの量に対するウランの量の関係から、均一な合金を得ることがむずかしく、中間生成物の発生など種々の問題を生じやすいが、90%濃縮ウラン燃料では、アルミニウムの量に対するウランの量が、20%濃縮ウラン燃料の場合に比して小で、かつ、燃料要素の製造経験および使用実績も多いこと等の諸点より、われわれはこの燃料の方が信頼度が高いものと考える。

2.原子炉の特性

 当初の計算によれば、20%濃縮ウラン燃料要素12本を用いたときの超過反応度は約19%と推定されていたが、特性試験の結果によれば、燃料要素19本を挿入した時の超過反応度は約7%であり、この場合追加燃料要素1本あたりの超過反応度は-1.36%であった。

 これより、この炉の最大装荷量である24本の燃料要素を挿入した場合の超過反応度を推算すると、20%濃縮ウラン燃料の場合には約14%、90%濃縮ウラン燃料の場合には約19%になるものと推定される。

 これに対し、この炉の反応度抑制効果は特性試験の結果によれば19本炉心の場合には、制御棒によるものおよび重水のダンプ効果によるものを合せて30%以上となり、24本炉心の場合には、さらにこの値より抑制効果が大きくなるものと予想される。したがって90%濃縮ウラン燃料の場合にも十分な停止余裕を持つものと考える。

 熱除去の問題について述べれば、現在の20%濃縮ウラン燃料要素24本を使用し、11.5MWの熱出力の下での運転時において、燃料板ホットスポットにおいてさえ沸騰を起さないための最低必要流量は約0.32m3/sec(5,000gpm)であり、その際の表面最高温度は109.5℃である。

 これに対して90%濃縮ウラン燃料の場合には、燃料板が一枚減るためWater gapあたりの熱負荷は約3%増加するが、重水ポンプの特性から19本装填時には約0.36m3/sec(5,700)、24本装填時には約0.38m3/sec(6,000gpm)流すことができるので、新燃料で10MW運転を行なう場合にも必要な熱除去効果を有するものと考える。

 これらの諸点より、20%濃縮ウラン燃料を90%のものに変えた場合にも、炉の安全性は、十分に確保しうるものと考える。

3.障害対策

 20%濃縮ウラン燃料を90%のものに変更してもそれに伴なう障害対策の変更はないものと考えるただ今までの1MW運転の実績から見てはA41の放出量は当初の予想の3.2倍と推定されたので、この点について10MW運転の場合の再検討を行なったが次の結論を得たので支障がないと考える。

a)きわめて悪い気象条件のもとでA41の空中濃度を計算した結果においても、周辺における濃度は一般公衆に対する許容濃度より低い。

b)静穏時については過去の気象の統計を考慮して、かつA41が全く拡散されないという条件で計算した。年間に受ける放射線量は、敷地内の最高となる煙突直下でも400m rem以下である。

なお、構内および構外のA41の濃度については、モニタリングステーションによって常に監視し、人の通常立ち入るいかなる場所においても1週間の平均濃度が許容値の1/10(4×10-8μc/cm3)を越えないよう原子炉の運転がされることになっっている。

III 審査経過