ユーラトム(欧州原子力共同体)ヒルシュ総裁一行の来日について

 ユーラトムの委員会ヒルシュ総裁、クレケラー委員サッセン委員はスタデリーニ渉外局長ほか2名を伴い、政府の賓客として11月2日から8日まで来日し、池田総理、小坂外務大臣および三木国務大臣、原子力委員会はじめ原子力関係首脳者との会見および原子力関係施設等の視察を行なった。

 ユーラトムと日本との間の関係は昨年石川原子力委員がユーラトムを訪門し、相互の協力体制の確立の可能性の検討を行なったことに始まり、本年6月池田前原子力委員長がユーラトムを訪問し、協力関係の促進について懇談した。その際池田委員長からユーラトム委員会の招へいを行なったことにより今回の来日の決定を見たわけであるが、今回の一行の来日により、わが国とユーラトムの関係が一層緊密化されるものと期待される。

 なお、原子力委員会は一行の公式訪日日程終了の8日に下記のとおりの原子力委員会、ユーラトム委員会の共同発表を行なった。

共同発表

昭和36年11月8日

 欧州原子力共同体(ユーラトム)ヒルシュ総裁は、クレケラーおよびサッセン両委員とともに、日本政府の招待により、11月2日から同8日まで日本を公式に訪問した。

 総裁および両委員は日本国天皇に拝謁し、また、池田総理大臣および小坂外務大臣を訪問、会談した。

 ユーラトム総裁一行は、茨城県那珂郡東海村にある日本原子力研究所および原子燃料公社を訪ずれ原子力研究開発の実情を視察した。また、一行は日本原子力産業会議会長等幹部との懇談を行ない、原子力の工業的利用に関する諸問題について意見を交換した。これらの接触を通じて、一行は日本の代表的産業施設の若干を視察して得た日本の近代産業の発展についての印象を更に深いものとした。

 三木原子力委員長はユーラトム総裁一行に対し、日本における原子力の平和利用面における活動状況についての最近の情報を得るためあらゆる便宜を与えるとともに、日本原子力委員会とユーラトム総裁一行との合同会議に終日を費した。

 池田前原子力委員長のブラッセル非公式訪問、ならびにそれ以前の石川原子力委員の非公式訪問以来、日本とユーラトムは、原子力平和利用に関する研究開発、工業利用、保健安全問題に関する相互の活動および計画、ならびにそれぞれの機構上の組織権限等の問題を相互に通報してきた。

 三木委員長は日本とユーラトムとの間の原子力平和利用に関する協力のため出来れば協定を締結したいとの希望を表明した。ユーラトム総裁一行はこの発意を歓迎し、ユーラトム委員会はユーラトム条約の規定する手続に従い適当な措置をとるべき旨を明らかにした。

 ヒルシュ総裁は、ユーラトム委員会の名において、三木委員長および原子力委員に対し、欧州を訪ずれユーラトムの施設を視察するよう公式に招待した。三木委員長はこの招待に感謝しこれを受諾した。

 ユーラトム総裁一行の日本滞在中、欧州諸共同体に対する日本政府常駐代表の下田駐日大使が随行した。

 日本における公式日程を終えるにあたり、ヒルシュ総裁は、三木委員長に対し、日本政府ならびに国民から寄せられた温かい、かつ、心からなる歓迎に対し深い感謝の意を表明した。