WHO,IAEA共催放射線防護に関する国際コースについて

 1959年来原子力局において関係国際機関と接衝をかさね、計画を進めていた「放射線防護に関する国際コース」は、来る10月24日から放医研で開催の運びとなった。この機会に現在までの経過の概要、開催計画、コースの内容等について紹介する。

I.経過

 WHO主催の放射線防護、放射線公衆衛生、または保健物理に関する訓練コースは、1955年にスエーデンで開催されたのを初めとし、その後、フランス、ベルギー、アメリカ、イギリス、インドの各地で過去数回にわたって開催されてきた。WHOでは、この種のコースを世界の各地域で順次開催してゆく計画で、つぎに極東方面で開催したい意向があった。

 たまたま、1959年6月当時ジュネーブで開催されていたILO総会に出席中の原子力局亘理放射線安全課長は、同じく会議に参加していたWHOのDr.R.LowryDobson(Chief Medical Office,Radiation and Isotopes Health Protection and Promotion Division)からHealth Pbysics Training Courseの日本での開催を推進されたい旨要請を受けた。同課長は帰国後、原子力局に報告し、原子力局では直ちに放医研と協議の上、この要請を受ける事に決定、開催に必要な経費を昭和35年度予算として大蔵省に要求した。その結果、原子力局の一般行政に必要な経費のうちに「WHO主催保健物理講習会費」として432千円が計上された。

 その後、Dr.Dobsonとアイソトープ課長の間に打合せの交信が続き、WHOから2〜3名の外人講師、数名のFellowshipの費用、日本側から施設、日本人講師、日本人研修生の費用、付帯経費を提供し、開催時期は1961年3月25日から4月21日とすることに決定を見た。60年6月のDr.Dobsonの来信は、IAEAとの非公式の話し合いから、同機関もこのコースに関心をもっており、IAEAから援助を受けられる可能性があるが、それを望ましいと考えるか否かとのことであった。これに対し、アイソトープ課長からIAEAからの援助は歓迎する旨回答しておいたところ、ついで8月にはIAEAから公信があり、IAEAはWHOと共同で本コースに技術援助を提供したい意向であるので10〜12名のFellowship提供を含めた技術援助の要請を正式に行うようにとのことであり、ただちに手続をとった。これに対しては、本年2月外務省からの公信で、IAEAは正式にコースに参加してWHOと同額を分担する基準で1万ドルまで援助することを決定した旨連絡があった。一方、WHOからも6月に公文があり、正式の決定を見た。

 この間60年末にIAEA側から当初本年3月に予定されていた開催時期を本年9月か10月に延期してほしい旨申入れがあった。延期の場合、年度内予算を放棄せねばならないので、関係方面との打合せ会においても相当論議されたが、IAEAの援助を受けた方が得策であるとの意見に大勢が傾き、IAEAが確実にスポンサーすることおよびWHOの承認を条件に延期に同意した。この結果、開催時期は10月24日から11月21日まで、また、開催に必要な経費は放医研の養成訓練部の予算でまかなうことになった。その後、4月には外人講師の人選も決定し、6月30日付でWHO、IAEA合同事務局から西太平洋および東南アジア地域の14ヵ国、オーストラリア、ビルマ、カンポジア、セイロン、台湾、インド、インドネシア、日本、韓国、ニュージーランド、パキスタン、フィリッピン、タイ、ヴェトナムに招へい状が発送された。Fellowsbipの申請は9月1日締切をもって受付けられ、今月中旬に選考が行なわれる予定になっている。一方、日本側においても、8月中旬放医研から日本人研修生の募集が行なわれ、今月中には決定を見る予定である。

II.開催計画

1.目 的  原子力施設内外における放射線防護に関する広い分野の一般的知識
 および技術を与えることを目的とする。

2.主 催  WHO、IAEAおよび日本政府(科学技術庁原子力局)

3.場 所 放射線医学総合研究所(千葉市黒砂町)

4.期 間 昭和36年10月24日から11月21日まで

5.研修生  外 人15名
 日本人5名

6.講 師  Dr.J.N.Stannard(ロチェスクー大学教授)
 Dr.G.Caserett(  〃  )
 Dr.H.Mermagen(  〃  )
 Dr.H.Hilleboe(ニューヨーク州 Health Commissioner)
 日本人講師 若干名

7.参加予定国 西太平洋および東南アジア各国

8.使用語コースはすべて英語で行なう。

9.費用の分担  a)WHO、IAEA側−4名の外人講師および15名の研修生の渡航費
  および滞在費
 b)日本側一日本人講師および研修生の費用、研修施設の提供
  および付帯経費

III.コース内容

 講義および実習の内容については、すでにCourse directerのProf.Stannardと放医研伊沢養成訓練部長の間で打合せが進んでおり、大体、下記のとおり決定しているが、最終的に参加研修生が決定したのち、研修生の程度、backgroundによっては多少の変更はある見込である。

IV.参考事項

1.視察旅行11月24日の講義終了後4泊5日程度で、関西方面の原子力施設の視察旅行を行なう予定で、目下必要経費について国際機関と打合せ中である。

2.宿舎 外人講師および研修生の宿舎については開催地が千葉のため、交通事情、開講時間等の関係で当初相当難航したが、さいわい、8月千葉市内に千葉京成会館が新築され、その6階のホテルが利用できることになった。

3.その他外人研修生の出迎え、見送り、宿舎あっせんなど研修生の生活面については、アジア協会の協力を得ることになった。

Tentative Schedule