原子力局

昭和36年度原子力平和利用研究費
補助金および研究委託費の交付決定

 昭和36年度原子力平和利用研究費補助金および研究委託費については、交付対象、研究課題を3月6日付科学技術庁告示第3号、第2号で申請公募の告示を行ない、4月4日に交付申請受付を締切った。補助金102件(研究費総額15億7601万2000円、補助金額7億8740万2000円)、委託費28件(研究総額3億9001万5000円委託費の額3億8871万5000円)、合計130件の申請があった。その後、書類審査、申請内容説明聴取、関係各省との意見交換、学術会議の推薦する学識経験者からの意見拝聴等の過程をへて、局原案を作成し、原子力委員会の了承を得て、後現地調査を行ない、7月6日の科学技術庁々議において決定(補助金43件1億8389万9000円、委託費21件1億2608万1000円)をみたものである。

昭和36年度原子力平和利用研究委託費交付一覧表

昭和36年度原子力平和利用研究費補助金交付一覧表

昭和36年度原子力平和利用研究費補助金の交付研究の概要

(1)原子炉雑音周波数分析装置の試作に関する試験研究

(株)日立製作所補助金額5,362千円

〔目的〕
 原子炉の出力雑音を測定することにより、炉の周波数応答炉雑音の解析、即発中性子平均寿命の測定等を行なう原子炉雑音周波数分析装置を試作し、原子炉計測に関する資料を得る。

〔内容〕
1.イオンチェンバによる検出部、テープレコーダ、再生装置、増幅器等の選択増幅部ならびに波高分析装置、メモスコープ等の読み取り部からなる原子炉雑音周波数分析装置を試作する。

2.テープ再生装置の高速度化を研究し、0.01c/secの低周波を選択増巾可能にするとともに1kc/secまで記録できるようテープレコーダについて検討する。

3.試作した同装置を用い日立教育訓練用原子炉の雑音周波数を分析し、原子炉周波数応答、即発中性子平均寿命等の特性を測定解析する。

(2)高性能中性子回折装置の試作に関する試験研究

三菱電機補助金額11,109千円

〔目的〕
 小型実験用原子炉を線源として各種中性子実験、物性研究等を行なう場合、高密度の中性子ビームを取り出し能率よく行ない得るよう、原子炉遮蔽体内に組み込む方法による中性子回折装置を開発する。

〔内容〕
1.炉心からできるだけ多くの中性子ビームを引きだすために、コリメータは孔炉心に近接させる。したがって、その材質を検討する。また、コリメータは、中性子ビーム強さおよび単色化に影響するので、その開角、位置および寸法等を検討する。

2.遮蔽体内設置のモノクロメータ単結晶方位の外部からの調整方法、モノクロメータの遮蔽体内出し入れのためのプラグ引出し機構との関連を研究する。

3.中性子ビームの高能率単色化のために、単結晶によるビームの集中速度撰択器等を検討する。

4.単結晶ゴニオメータをモノクロメータにできるだけ接近させ小型化する。

 以上を総合して従来より1桁以上の密度の得られる中性子回折装置を試作する。

(3)電子部品および電子機器に対する放射線の影響に関する試験研究

松下電器産業(株) 補助金額 1,908千円

〔目的〕
 高い放射線レベルの中で動作状態にある電子部品の特性変化、さらに構成された電子機器の性能変化を調べ、信頼性のある電子部品の選択および回路機構についての基礎的な資料を得る。

〔内容〕
1.Co60各種加速器および原研原子炉を線源として中性子線10"n/cm2sec,γ線106r/hrを照射する。

2.電子部品としては、各種抵抗、コンデンサ、インダクタンス部品、真空管、トランジスタおよびダイオード等を選び、動作状態での放射線照射による特性変化をしらべる。

3.上記で得た結果に基づき、これら部品により構成された電子機器の放射線照射による機能変化を調べる。

以上により電子機器としての信頼性を検討し、設計上の対策を求める。

(4)半導体放射線検出器に関する試験研究

東京芝浦電気(株) 補助金額 2,914千円

〔目的〕
 半導体を用いた放射線検出器は、従来の検出器に比較して、小型低電圧、高検出効率等多くの優れた性能を有することが予想される。本研究ではα線および中性子線を対象とする半導体検出器の開発を行なう。

〔内容〕
1.比抵抗の高い高純度Si単結晶の加工技術について次の研究を行なう。

(イ)表面に1μ前後の拡散層をつけるための拡散技術を研究する。
(ロ)漏洩電流を1μA以下にする検討を行なう。
(ハ)p-n接合境界面(1μ内外の拡散層表面)を大気から気密保護するための技術を研究する。

2.上記により得た技術によって1kΩ/cm以上および5kΩ/cm以上のSi単結晶を用い、それぞれ有効直径2mmおよび12.5mmの2種を試作し、10MeV程度のαエネルギー検出のための特性を検討する。

(5)モンテカルロ法による中性子共鳴吸収に関する試験研究

日本原子力事業(株) 補助金額 2,858千円

〔目的〕
 原子炉の臨界量、温度係数、燃焼度等を計算するには炉内中性子の共鳴吸収について正確な理論を確立する必要がある。このためモンテカルロ法による計算を行ない理論計算と比較して計算方法の確立を図る。

〔内容〕
 モンテカルロ法を用い、計算機にはUCTを使用して次の計算コードを開発する。

1.Fuel Escapeの確率のモンテカルロ計算コード
 共鳴吸収方程式を立てるため、燃料中の1点を出発した中性子が燃料内で衝突せず外に逃れ出る確率を求める。

 この結果を近似計算と比較し良い近似法を得る。

2.格子系の共鳴吸収を逃れる確率のモンテカルロ計算コード
 軽水−ウラン格子を対象とし、共鳴吸収ピークを個個のレベルに分けて扱い、各レベルについて、1点を出発した中性子がレベルを通過して他方に落ちる確率を求める。一方理論計算方法を検討し、上記モンテカルロ計算と比較して、理論を確定する。

(6)原子炉用有機冷却材の諸特性に関する試験研究

住友原子力工業(株) 補助金額10,551千円

〔目的〕
 原子炉冷却材として有機材を使用する場合、沸点が高く低い圧力下で高温が得られる利点があるが、技術的に未解決の問題が多いので、有機材の熱特性、核特性等の諸特性を求め、臨界実験装置のための資料を得る。

〔内容〕
1.有機材の熱的特性の研究
 使用する有機材(サントワックスR)は常温で固体であるので、試験用タンクを用い誘導加熱により約150℃に加熱しし、さらに加熱器により約420〜450℃に加熱て、その熱的特性を圧力、温度、時間の関係で求める。

2.有機材の精製の研究

(イ)有機材を長時間加熱しLBR、HBRの発生状況をしらべる。
(ロ)温度上昇に伴いHBR、LBRが発生するので、これの除去方法を研究する。

3.有機材の核特性の研究
 タンク内炉心部担当部に中性子源をおき、有機材中における拡散の状況を温度変化に対して測定する。

4.放射線の影響の研究
 ヴァンデグラフ加速器アイソトープを用い有機材に対する放射線の影響をしらべる。また出来得れば高温での実験も行なう。

(7)未臨界実験装置による高温ガス冷却型原子炉核特性に関する試験研究

富士電機製造(株) 補助金額  11,400千円

〔目的〕
 経済性で有利とされる高温ガス冷却型原子炉について黒鉛減速型未臨界実験装置を製作し燃料要素の格子間隔および燃料要素中のウランと黒鉛の比を考慮して炉心物理量を測定し、計算から得た結果と比較して核計算方式を検討する。

〔内容〕
 UO2と黒鉛を混合したペレットと黒鉛ペレットを適当比に積み重ね、正方形、6角形組替可能な格子性状とした未臨界実験装置を製作し、燃料要素間の格子間隔および格子形状を変えるとともに、燃料要素を構成しているUO2と黒鉛ペレットの比を変えて炉心物理量(バックリング、中性子束分布、カドミ比、制御棒効果、反射体効果等)を測定する。

 この結果得られた値と計算結果との比較を行なうとともに、高温ガス冷却型炉心構造と燃料要素の形状および配置を検討する。

(8)沸騰に伴う熱伝達に関する試験研究

三菱原子力工業(株) 補助金額 9,557千円

〔目的〕
 閉ループを用いて、炉心熱伝達における沸騰を生ずる場合の流れおよび熱伝達特性を明白にし、軽水型原子炉の炉心における熱設計の改善に資するとともに、沸騰伝達のダイナミックスを解明する。

〔内容〕
 循環ポンプ、予熱器、テスト・セクション、冷却器をもった閉ループを製作し、テスト・セクション部においてはステンレス管を直接発熱体とした環状路を形成せしめ、圧力、流速、熱負荷、水力学的等価直径等をパラメーターとして、熱伝達係数、圧力損失、気泡体積率等を測定する。
 パラメーターの範囲は、圧力10〜90kg/cm2、流速0.5〜10m/sec、熱負荷としては最大5×106kcal/m2hrをとる。

(9)原子力用渦巻式多層圧力容器の試作に関する試験研究

三菱造船(株) 補助金額 11,359千円

〔目的〕
 渦巻式多層圧力容器は、単層式のものに比べて、コストも安く、工作も容易で原子炉用として有望であると思われるので、本方式により小型圧力容器を試作し、水圧破壊試験を実施して、強度限界を明らかにすることにより同容器の設計および工作法を確立する。

〔内容〕
 小型容器の巻きつけ工作法について種々検討し、つぎに、これによって得られた最良の工作法にしたがって、予備試験用ならびに本試験用各供試容器を製作し、その水圧破壊試験を実施し、変形状況、応力状況、降状圧力、破壊圧力、破壊状況等を測定し、渦巻型多層圧力容器設計製作上の資料とする。

(10)原子炉用蒸気発生器のチューブとチューブシートの内部溶接方法に関する試験研究

三菱造船(株) 補助金額 1,845千円

〔目的〕
 熱交換器においてしばしば問題となるチューブとチューブシートとのCrevice(割れ目)Corrosionを避けるため、チューブシートから削り出した管状突起部とチューブとを内面から突合溶接し、Creviceのない接合を行なう新しい溶接方法を開発する。

〔内容〕
1.溶接装置の設計製作
 溶接電源、冶具本体、駆動装置、制御製置および溶接トーチからなるTIG全自動溶接装置の設計製作を行なう。容接トーチには、ミクロトーチを新たに研究試作して使用する。

2.溶接試験
 試験片には、チューブシートとして厚さ200mmのステンレス板およびステンレス・クラッド板、チューブには19mmΦ、2mm肉厚のステンレス・チューブを用い、特殊ミクロトーチにより、内面から突合溶接を行なう。また溶接部についての各種材質試験を行ない、適正な開先形状と溶接条件との関連を求める。

(11)超低炭素18-8ステンレス鋼による原子炉用大型弁の製造に関する基礎的研究

日本金属工業(株)補助金額 2,988千円

〔目的〕
 原子炉用ステンレス大型弁の鋳造に当り、使用すべき鋳型材料、押湯形状等、鋳造のための基礎条件について検討を行ない、内部欠陥のない鋳造品の製造法を確立する。

〔内容〕
1.鋳型材料の研究
 厚内鋳鋼品用として適当と思われる塩基性鋳型材料について、主として高温鋳物砂試験機を用いて、急熱膨張、高温度形能、高温強度および熱伝導度を測定し、適性な鋳型材料を決定する。

2.鋳造方案の研究
 大型弁のボンネット、フランジ部およびシート部を縮少寸法で低炭素ステンレス鋼で鋳造する際の押湯の容量、位置、形状、および鋳型材料等について研究し、適正な押湯形状を検討する。ついで超炭素、ステンレス鋼につき確性試験を行なう。

3.組織および機械的性質
 18-8ステンレスについて、鋳造、焼鈍、冷却条件と組織との関係、常温および高温での機械的諸性質を研究する。

(12)重炭酸塩および修酸塩水溶液浸出法による国産ウラン鉱石の製錬に関する試験研究

古河電気工業(株) 補助金額 4,497千円

〔目的〕
 一般にウラン製錬で採用されている硫酸浸出法はウラン以外の種々の不純物を溶解混入し、その後のウラン精製操作を複雑にする。本研究は重炭酸塩および修酸混合溶液浸出法を開発し、より経済的なウラン製錬法の基礎技術を開発する。

〔内容〕
(1)ウラン浸出に関する研究
 低品位鉱である各種の国産二次ウラン鉱およびスライムから重炭酸塩および修酸塩水溶液による高ウラン濃度でかつ他の不純物の含有量が少ない浸出液を製するための資料を得る研究を行なう。

(2)浴媒抽出に関する研究
 上記浸出液から選択的にウランが濃縮された精製溶液を製するための資料を得るため脈動塔を使用して溶媒抽出法の研究を行なう。

(13)金属ウラン燃料体の高周波熱処理に関する試験研究

古河電気工業(株) 補助金額 4,032千円

〔目的〕
 本研究は金属ウラン素材を高周波焼入法によって、B焼入処理を行ない、この方法による焼入条件と焼入組織との関係を検討して最適の焼入条件を追求し、金属ウラン燃料体の熱処理法を確立することを目的とする。

〔内容〕
 金属ウランの高周波焼入に適する焼入装置を設置し金属ウランの鋳造材、熱間加工材について、高周波周波数、材料への入力、材料の移送速度、高周波コイルの形状、冷却水噴射方式、噴射量との諸因子を変えて焼入実験を行ない、結晶粉が微細でかつ結晶方位が不規則であるような金属ウラン燃料体を得るための焼入条件を追求する。また、これとともにソルトバス加熱焼入の結果と比較検討する。

(14)分散型ならびにサーメット型燃料用二酸化ウラン粉末の製造に関する試験研究

三菱金属鉱業(株) 補助金額 2,397千円

〔目的〕
 湿式沈澱法による球状二酸化ウランの製造法、およびその表面への金属の被覆法について検討を行ない、分散型あるいはサーメット型燃料に適する球状二酸化ウラン粉末の製造条件を確立する。

〔内容〕
 35年度補助金により被覆二酸化ウラン粉末の製造を研究しているが、本年度はこれを一歩進めて分散型、サーメット型燃料に最適な被覆二酸化ウラン原料粉末を製造する基礎条件を求めるため、次の二点について研究を行なう。

  1.湿式沈澱法による球状二酸化ウラン粉末製造試験
  2.球状二酸化ウラン粉末へ金属の被覆試験

(15)半均質炉用炭化トリウム質燃料素子の製造加工に関する試験研究

昭和電工(株) 補助金額 2,902千円

〔目的〕
 半均質炉用炭化トリウム質燃料体の早急な実用化をはかるため、その製造条件を確立するとともにその諸性質を究明し、半均質炉開発のための設計資料を得ることを目的とする。

〔内容〕
 34年度の補助研究に引続き本年度は1000℃で物理的・化学的に安定で、ガス状核分裂生成物の素子外への拡散の良好な炭化トリウム−黒鉛質円筒型燃料素子の製造条件の確立と高温の物性を解明するため次の研究を行う。

  1.炭化トリウム−黒鉛質燃料素子の試作研究
  2.炭化トリウム質燃料素子の防湿コーティング
  3.燃料素子の高温における特性の検討

(16)炭素で被覆せる粒状炭化物核燃料の製造に関する試験研究

日本カーボン(株) 補助金額 1,700千円

〔目的〕
 酸化ウランにジビニルベンゼン等を連合させながら被覆し、これを炭化焼成して酸化ウランまたはトリケムに炭素被膜を施したものを高温処理によりカーバイト化して、すぐれた安定な炭化物核燃料の製造条件を確立する。

〔内容〕
 35年度補助研究で開発した炭素で被覆した酸化ウラン粒を種々の条件のもとで高温(1000℃〜2200℃)処理し炭化ウランに変化せしめることにより、炭素で被覆された粒状の安定な炭化ウラン核燃料体を試作し、化学的および熱的安定性、炭素の被覆状態をしらべ、これにより製造条件と品質との関連を把握する。

(17)ウランカーバイドを主体とした安定な核燃料体の製造に関する基礎的研究

三菱原子力工業(株) 補助金額 4,159千円

〔目的〕
 安定なウランカーバイド系、核燃料体を得るためにZrC、NbC等を混合した焼結体の製造技術を開発する

〔内容〕
 UCおよびUC2はその製造方法によって、組成、粒度、形状を異にし、この粉末の性質の相異およびこれらとZrC、NbC黒鉛粉末との混合割合ならびに加熱温度などにより反応性は大きく影響されるので、焼結燃料体の性質に与えるこれら要因の影響を検討し、さらに得られた成品の高温特性を検討するため、次の項目について研究を行なう。

1.UO2とCの粉末を混合圧縮後真空中で炭化する場合の粉末条件、炭化条件および生成UCの性質検討
2.UC-ZrC、UC-NbC複炭化物の炭化条件および性質の検討
3.UC、UC-ZrC、UC−NbC等の粉末を真空中でホットプレスにより成形した焼結体を得る研究
4.20〜30mmφ×20〜60mmlの焼結体の2,000℃までの高温特性の検討

(18)真空ホットプレスによるBeO-UO2系焼結体の成型加工に関する試験研究

日本碍子(株)  補助金額 8,075千円

〔目的〕
 UO2燃料体の熱伝導性を改善するための1方法としてBeO-UO2系の開発を行ない、高温動力炉用燃料の開発に資する。

〔内容〕
 熱伝導度0.1cal/cm.sec℃以上、強度1,000kg/cm2以上、密度8.5%以上で、25Φ×20mmのUO2-BeO成形物を得るため下記の研究を行なう。

  1.BeO原料の調整法の研究
  2.BeOとUO2の均一混合の研究
  3.真空ホットプレス法による混合成形法の研究
  4.焼結体の諸特性および分析試験

(19)爆轟圧着による核燃料要素の被覆に関する試験研究

住友金属工業(株) 補助金額 4,516千円

〔目的〕
 近時開発されてきた爆轟成形法を核燃料要素の成形に応用し、その適合性を検討するための基礎的資料を得ることを目的とする。

〔内容〕
 核燃料と被覆を開放またはオートクレーブ中で爆薬の爆発により発生する瞬間的高圧力により接着させる爆轟圧着法について研究を行なう。種々の被覆材質と核燃料の組合せ、表面条件、爆薬、火薬の種類、量等の条件と接着部の結合状況の調査を系統的に行ない、爆轟圧着の機構を解明し、さらに現行諸法との比較検討を行なう。

(20)中空型二酸化ウラン燃料要素の製造に関する試験研究

三菱原子力工業(株) 補助金額 8,005千円

〔目的〕
 中空円筒状のUO2燃料要素を製造するために、芯金を使用してスエージング加工を行なうことにより成形する技術を確立する。

〔内容〕
 次の各項について研究を行なう。
  1.中空燃料体製造に適した原料UO2粉末の検討
  2.充填法の試験
  3.溶接密閉法の試験
  4.芯金材料の検討
  5.加工法の試験
  6.UO2の密度の測定
  7.寸法および欠陥検査
  8.オートクレーブによる耐蝕性試験

(21)SAPの試作および特性に関する試験研究

住友電気工業(株) 補助金額 4,082千円

〔目的〕
 燃料被覆材としてのSAPの製造に関する基礎的な研究と試作材の物理的、機械的特性を調査して、燃料被覆材として有望なSAPの製造技術を開発する。

〔内容〕
 押出し法による棒状SAPの製造法の研究、およびその特性の測定について以下の研究を行なう。

  (1)原料粉末の調製検討
  (2)熱間加圧による圧粉体の製作検討
  (3)熱間押出による棒材の試作
     (2)で得た圧粉体を使用して棒状に押し出す研究を行なう。
  (4)SAPの物理的、機械的特性の測定

 高温クリープ試験、高温引張試験、熱伝導度等の測定を行なう。

(22)原子炉用金属ニオブの製造に関する試験研究

東洋ジルコニウム(株) 補助金額 5,438千円

〔目的〕
 燃料被覆材、構造材料等に用いられる金属ニオブについて中間的規模の製造研究を行ない、その製造技術を確立する。

〔内容〕
 金属ハフニウムの製錬技術の経験にもとづき原鉱石コロンバイトから金属ニオブを製錬する工程を一次塩化、抽出、二次塩化、還元の各工程に分け、中間的規模において、その各々について検討する。

 各工程をバッチシステムで行ない、それぞれの条件、収率、品質等について検討する。

(23)気相熱分解による不浸透黒鉛の製造に関する試験研究

日本カーボン(株) 補助金額 2,028千円

〔目的〕
 高温ガス冷却型原子炉の核燃料体外套として、黒鉛の気孔を炭化水素等の熱分解により充填し、さらに表面に熱分解黒鉛を沈積させることにより1200℃以上の温度に耐え、炭酸ガス等の酸化性クーラントに対し安定で、しかも核分裂生成物およびクーラントに対して不浸透な黒鉛の製造法を開発する。

〔内容〕
 試験研究は次の項目別に実施する。

(1)気相熱分解による黒鉛の不浸透化
  ベンゼン、トルエン等の炭化水素を窒素、水素等をキャリヤーとして黒鉛の気孔内に熱分解沈積せしめ、温度、ガスの分圧と不浸透度の関係を見出す。

(2)気相熱分解による熱分解黒鉛のコーティング
  プロパン等の炭化水素を水素をキャリヤーとして黒鉛表面に熱分解沈積させ、温度、ガス分圧、沈積速度の関係を見出す。

(3)熱分解黒鉛の諸特性測定

(24)水冷却型燃料被覆管の動的腐食に関する試験研究

東京芝浦電気(株) 補助金額 3,508千円

〔目的〕
 燃料被覆材としてのジルコニウム合金管の溶接組立を施行した被覆管の動的腐蝕試験を行ない、実使用条件での腐蝕の挙動を把握し、溶接施工条件と耐蝕性の関連を求める。

〔内容〕
 不活性ガスアーク溶接法および電子ビーム溶接法により溶接した燃料要素被覆管を複数個連結したものを用い、溶接施行条件と、圧力、温度、蒸気混合割合、冷却水の純度などを関数とする動的腐蝕条件との関連性を既設の管路内沸騰現象実験装置を改造したものを用いて検討する。

(25)原子炉用厚板高張力鋼の溶接に関する試験研究

(社)日本溶接協会 補助金額 9,106千円

〔目的〕
 35年度研究成果を基にして板厚100mmの原板高張力鋼についてその溶接施工法を確立する。

〔内容〕
 高張力鋼板としてHT60焼準鋼4種、HT70調質鋼2種を選び、以下の試験研究を行なう。

1.溶接材料としては被覆アーク溶接棒、電極鋼線およびブラックスを開発する。
2.溶接施工法としては、サブマージドアーク溶接法のほかエレクトロスラグ溶接法および炭酸ガスアーク溶接法の施工法を確立する。
3.溶接部および母材の性能としては、高温性能を重視して試験を実施する。

(26)原子炉構造材溶接部の腐食に関する試験研究

三菱日本重工業(株) 補助金額 1,494千円

〔目的〕
 原子炉構成材料であるステンレス鋼の応力腐蝕現象は、安全設計の観点から重要な問題であるが、とくに原子力船においては、冷却水の交互浸漬により、腐食割れが促進されるおそれがあるので、本研究は応力状態のとくに複雑な溶接部について、乾湿交互浸漬を主体とする腐蝕試験を実施し、腐蝕機構の解明とその対策を見出す。

〔内容〕
 耐圧350kg/m2のオート・クレーブを用い、340℃170kg/cm2の飽和蒸気温度で、各種ステンレス鋼試験片を、原子炉運転条件に相当する純水、およびその蒸気中に間歇的に交互浸漬する。試験片には予め応力を与えておき、腐蝕に対し下記条件の影響を検討し、安全限界を決定する。

  (1)乾湿交互浸漬と連続浸漬が亀裂発生に及ぼす影響の相違
  (2)ステンレス鋼材質の影響
  (3)溶接後の焼鈍条件の影響
  (4)応力の影響
  (5)水質の影響

(27)押出法によるベリリウムの被覆に関する基礎的研究

日本碍子(株) 補助金額 5,453千円

〔目的〕
 ビスマス耐蝕材として良好な金属ベリリウムを軟鋼ステンレス鋼等に被覆する被覆技術を開発する。

〔内容〕
 試験研究は以下の項目について実施する。

  1.押出し機等設備に関する研究
    特にダイス、コンテナー、ラム等の材質および形状に関する研究。
  2.押出しビレッドの製造研究
    ベリリウム粉末、フレイク、粉末焼結体から押出しに適したビレットの製造研究
  3.ビレットの加熱方法の研究
    酸化防止ビレッド加熱方法
  4.押出し方法の研究
    潤滑剤、押出し温度、押出しスピード
  5.押出し材の試験
    押出し材の機械的および物理的性質測定

(28)ボロン鋼の溶接に関する試験研究

(社)日本溶接協会 補助金額 2,148千円

〔目的〕
 原子炉の制御材および遮蔽材としてのボロン鋼の溶接性を解明するとともに適当な溶接棒を試作試験し、適正な溶接法を確立する。

〔内容〕
 試験研究は以下の項目について実施する。

  1.手溶接、自動溶接の施工試験
  2.炭素鋼およびステンレス鋼との異材溶接法の試験
  3.溶接棒の試作研究
  4.溶接性の研究(たとえば熱間ワレ、熱影響部ワレ、変態特性など)
  5.継手性能試験
  6.溶接部の機械的性質の測定
  7.溶接部の耐食性の測定
  8.ボロン鋼の冶金学的研究(溶接性に関連して)
  9.ボロン鋼の金属組織学的研究(溶接性に関連して)

(29)制御材ハフニウムに関する試験研究

三菱原子力工業(株) 補助金額 2,080千円

〔目的〕
 軽水型動力炉用制御材料として、機械的性質、耐蝕性、吸収特性等にすぐれたハフニウム加工材の製造、加工上の資料を得る。

〔内容〕
 試験研究は以下の項目について実施する。

  (1)原子炉級ハフニウムの鋳塊製造
    アーク炉溶解および電子衝撃溶解について比較検討する。
  (2)加工および熱処理条件の検討
    加工条件、加工硬化および焼鈍条件の検討
  (3)機械的性質の測定
    引張り試験、高温硬度測定等の機械的諸性質の測定
  (4)耐蝕性試験
    主として高温純水によるオートクレーブ試験
  (5)金相的検査
    顕微鏡組織検査およびX繰回析を行なう。
  (6)溶接性試験
    TIG溶接性についてジルカロイ−2との溶接について検討する。
  (7)ハフニウムの評価
    総合的観点からハフニウムと銀−インジウム−カドミウム合金と比較検討する。

(30)α、β、γ熱および速中子線に対し高感度な銀活性リン酸ガラスおよび測定に関する試験研究

東京芝浦電気(株) 補助金額 2,520千円

〔目的〕
 線量計用ガラスの製造研究と測定器の改良研究を実施してフィルムバッジに代るような微弱線量の測定可能なものを試作する。

〔内容〕
 35年度研究によってγ線に対して30mr熱中性子に対しては10m remまで測定可能の見通しを得たが、本年度においては、α線、β線、γ線、熱および速中性子線を含む各種放射線用としてのガラス線量計につきこれらのガラスの性能の向上を計り、γ線−5mr、β線−20mr熱中性子−3mrem速中性子−80〜100mremを目標とする。このためガラス中の不燃物の影響およびガラスからの特定波長の紫外線の増幅用の機器の性能の向上を計るため、特殊の電子管製造および特殊回路の研究を行なう。

(31)密封された放射線源に関する試験研究

(社)日本放射性同位元素協会 補助金額 1,576千円

〔目的〕
 現在輸入されている各種密封線源は、そのカプセルの物理的、化学的の強度、特性が不明のため、これらの線源カプセルの安全性を検討する。このため各種特性試験を行ない今後の使用の便に供するとともに一方カプセルの規準等を確立する。

〔内容〕
 現在輸入されている密封線源は、カプセルの製作法等が不明である上に、国内においての検査も十分行なわれていないため各種装置に挿入したり、そのまま使用する際に思わぬ災害の原因ともなりかねない。

 本研究においてはα線、β線、γ線の密封線源のうち特に現在わが国において比較的多量に利用されている数種の核種(Sr90、Cs137、Co60、ラジウム、ベリリウム等)の密封線源のカプセルについてこれら線源の安全性をみるため、耐熱性、耐圧性、耐水性、耐腐蝕性等につき各種の物理的、化学的試験を実施してその特性を究明してその安全性に関する基準を作成する。

(32)放射性廃棄物の簡易処理に関する試験研究

大阪府 補助金額 1,320千円

〔目的〕
 放射性廃水の有効な処理としてのフロキューレーション法について、各種高分子凝集剤を使用して、その凝集メカニズムの究明と同時に除染係数を測定して、有効薬剤の検索を行なう。

〔内容〕
 現在一般に利用されている無機質系の凝集剤に代えて、有機高分子物の凝集剤(C.M.C、アルギン酸等)を利用してコロイド化学的な立場からこれらのジータ電位等を測定し、凝集効果との相関関係を研究する。一方これら凝集剤の凝集効果を測定するため35年度に製作したブロキューレーション装置を使用して実際条件下に準じた条件でそれら凝集剤の除染係数を測定する。

(33)放射性廃棄物濃縮用簡易蒸発装置の試作研究

(株)荏原製作所 補助金額 1,509千円

〔目的〕
 現在、中程度(10-2〜10-5μc/me)の液状の廃棄物の処理に関連して経済的に有利な処理方法を確立するため各事業所ごとに蒸発濃縮することが望ましく、この場合の濃縮装置が問題となる。このため本研究は、この濃縮釜設計のための化学工学的検討を行ない、その設計資料を得ることを目的とする。

〔内容〕
 液状廃棄物の蒸発濃縮に使用する蒸発釜は従来の蒸発釜とはその構造を抜本的に変える必要がある。

 これは蒸発工程における液面からの沸騰にともなってのミストが気体中に混入されてくる可能性があり、かつ、この除去は汚染防止上からも絶対に必要である。これの防禦法としては蒸溜塔の充填法の概念を導入することにより解決されるが、これの段数の決定等は設計にぜひ必要なデータであるが、現在のところその資料は皆無である。本研究においては試験設備を設計してミストの気体中への混入比およびそれを防ぐに必要な段数の決定および型等について、化学工学的な立場から研究を進める。

(34)低級オレフィンからケトン、アルコール等の放射線合成に関する試験研究

(財)日本放射線高分子研究協会 補助金額 2,560千円

〔目的〕
 アセトアルデヒドと不飽和低級炭化水素から放射線によってケトン、ブチレン、高級アルコールを作る目的で、その反応速度、温度、放射線量を検討し、反応初期過程の初期生成物の物理的、化学的性質および反応系のG値の改善を研究する。

〔内容〕
 現在へキスト法の登場によりアセトアルデヒドの原価が非常に安く得られる。一方不飽和炭化水素(オレフイン)も工業用原料として安価に多量に利用できるので、両者を原料として放射線の付加反応によりアルコール、またはケトン等容易に合成できるようになってきた。本研究においてはこの反応のG値の向上を図るため反応温度、線量等化学的な諸条件を検討すると同時に反応に影響を及ぼす初期過程の究明のため質量分析器を利用してその機構の究明を行なう。

 またCo60のγ線、バンデグラフの電子線、原子炉の中性子線を用い、いずれが最も効果的であるかを究明する。