(35)放射線化学的付加反応によるアクリル酸およびその誘導体の合成に関する試験研究

(財)日本放射線高分子研究協会 補助金額9,133千円

〔目的〕
 従来、メタン、アンモニア、アセチレン等から4段の工程を経て得られているアクリル酸の製造工程に代えるに塩化ビニルとトリクロロメタンまたは、トリクロロブロムメタン等から放射線によるアクリル酸の合成が考えられる。本研究においては、この重合反応の機構究明のため、低温重合および放射線による生成物の化学的性質の究明を行なう。

〔内容〕
 塩化ビニルとトリクロロメタン、トリクロロブロムメタン、四塩化炭素の放射線付加反応で得られるアクリル酸およびその誘導体について原料の混合比、圧力、反応温度および溶剤効果等と放射線量率との関係について研究を行なう。この場合、反応条件と生成物質との関係を追跡するため質量分析およびガスクロマトグラフにより分析し反応の解析を行なう。一方これに平行して低温重合におけるモノマーの固相状態の重合に及ぼす効果の究明のためX線分析法を利用してその究明に当たる。

(36)ガンマ線によるパラフィンの脂肪酸合成についての基礎的研究

理化学研究所 補助金額 1,971千円

〔目的〕
 脂肪酸の新しい製造法として、パラフィンからγ線照射により脂肪酸を合成する方法が考えられる。これに関する基礎的データを得るための研究を行なう。

〔内容〕
 従来の魚油等を原料とする脂肪酸の合成法に代わる新しい製造法として、石油系のパラフィンからγ線照射による合成法がある。この場合、炭素数が20前後のものをγ線で酸化する方法が有望と考えられているが、これに関する報告は現在定性的な結果しか報告されていない。本研究はとりあえず炭素数の8程度までの炭化水素を精製分離して、γ線を照射し、どのような分裂反応が起きるか解析し、パラフィンから脂肪酸合成の条件を決定するための基礎研究を行なう。

(37)核反跳反応による炭素標識化合物の製造に関する試験研究

大阪府  補助金額 3,199千円

〔目的〕
 原子炉による反跳反応を利用して炭素を標識化する方法がある。しかし、この方法は高濃度に標識化できるが、分離製精が困難であるので、まず簡単な化合物につき分離製精、分子内の標識状態を検討し、生化学、有機化学等に重要な数種の複雑な有機標識化合物の製造を試みる。

〔内容〕

1.すでに原子炉で標識化したメタノール、エタノール、ナフタリン、フェナンスレン、アントラセンの5化合物につき、ガスクロマトグラフイ、ろ紙電気泳動、再結晶等の方法により、分離精製法の検討、標識部位、標識割合の決定を行なう。

2.有機化学、生化学、医学等の研究に重要な有機標識化合物の製造研究として、トリプトフアン、エフェドリン、ピリミジン、ピレスロイドの4化合物につき原子炉を用いて、標識の研究を行なう。


(38)ロッド型製品の迅速非破壊検査に関する試験研究

宇部興産(株) 補助金額 1,429千円

〔目的〕
 ナイロン、合成樹脂等の非常に密度の小さいロッド型製品の内部に発生した欠陥(巣)の位置、大きさをアイソトープを用い迅速に、かつ、移動しながら検出する方法を検討する。

〔内容〕
 ナイロンロット(160mmΦ×1,250mmおよび220mmΦ×1250mm)内の巣の測定、検出は従来、ラジオグラフイ法等によって行なわれたが、測定時間が長く、検出精度もよくないので、この研究ではγ線の透過法を採用し、その欠陥検出限界、測定速度を引き上げるため、特にその測定方法としてパルス計数方式、直流方式につき検討を行ない、線源量の増大、計数の高速化をはかる方法につき研究する。

(39)ラジオアイソトープの軌道交通への応用に関する試験研究

東京急行電鉄(株) 補助金額  2,457千円

〔目的〕
 車両の高速化にともない、電磁誘導障害が少なく、塵埃、小石、雪雨等により支障の少ないγ線を用いた放射線継電器の改良、ならびにその信号への応用開発をはかる。

〔内容〕
 アイソトープのγ線を利用して放射線継電器の実用化をめざし目蒲線の全車両に1mCの60Co線源を装備し、次の諸点につき検討を加える。

  1.列車の振動の及ぼす作動の影響
  2.野外温度変化、雨雪等による影響
  3.その他実用的条件下での動作の確実性、耐持続性の検討

(40)放射性物質の数量および純度の測定に関する試験研究

理化学研究所  補助金額 1,985千円

〔目的〕
 日本で使用されるRIの数量および純度についての要求に応じて用いうる測定方法を確立しRIの研究利用にそなえる。

〔内容〕
 RIの数量および純度を正確、迅速に測定するため、次の2項目について研究を行なう。

(1)電離箱、計数管、シンチレーションスペクトロメーター、β線スペクトロメーター等を適当に組合せて一定の放射線の測定方式を確立する。

(2)未知不純物核種の存在の有無、性質、数量を確実にとらえるため(1)で得たデータをもとに一定核種の測定に最適の測定方式を確立する。

(41)放射線による植物育種の基礎的研究

(財)木原生物学研究所 補助金額 1,319千円

〔目的〕
 キク、ストックを材料とし、放射線により突然変異を誘起させ、特に花、葉の形質の変異を作出してこれの利用をはかるとともに、高等植物における斑入性につき検討する。

〔内容〕

1.キクの挿穂に2kr〜6krのγ線を照射し、生長点の障害状況、再生状況を解剖組織学的に観察し、生理的障害および突然変異の発生率から最も適当な照射条件を見出す。

2.ストック苗の各生育時期にγ線処理を行ない、ウイルスによる斑入と放射線処理による斑入を遺伝学的および植物病学的に比較検討する。

(42)放射性同位元素利用による結核の予防診断治療に関する試験研究

(財)結核予防会  補助金額 3,200千円

〔目的〕
 ツベルクリン、BCGの助剤、INHなどを標識し、客観性あるツベルクリン判定基準の確立、ツベルクリンの脱感作機序の解明、BCG助剤の意義の解明、INH大量投与の際の副作用の防止を目的とする。

〔内容〕

1.ツベルクリンに関する研究
  ツベルクリンの皮膚反応は結核の診断および予防接種に不可欠のものとなっており、この判定に客観性を与えるために標識ツベルクリンを用いて研究する。

このため、

(1)ツベルクリンの標識化を行ない、従来の硬結または発赤反応を比較研究する。

2.BCG乾燥ワクチンの助剤としてのl-グルタミン酸ソーダの意義につき形態学的に研究する。

3.14C-INHを大量に投与し各時期の14C-INHの分析状況とadenoma発生との関係、その肺癌への移行の有無につき副作用を検討する。

(43)細菌放射線耐性獲得の分子生物学的解析に関する試験研究

大阪市衛生研究所 補助金額 2,250千円

〔目的〕
 細菌のもつ放射線耐性の獲得機構を明らかにし、生体の放射線障害防止の基礎資料とする。

〔内容〕

1.放射線耐性と密接な関係の認められるマイトマイシン耐性菌を選択し、γ線を照射し、薬剤耐性と放射線耐性との相関関係を調べ、放射線耐性支配遺伝子が単一独立的なものであるか、あるいは染色体上の全情報因子が関与しているのかを検討する。

2.放射線耐性、薬剤耐性の構造、機能の相異を標識化合物(14C-アミノ酸、3H-チシジン、35Sアミノ酸)を用いたトレーサー実験により研究する。

昭和36年度原子力平和利用研究委託費の
交付研究の概要

1.高温プラズマ現象の測定に関する試験研究

理化学研究所  委託費  6,261,430円

〔目的〕
 高温プラズマの諸現象の測定にはμ波ならびにスペクトル線解析による密度、温度の測定は特に重要である。このため前年に引き続き本年は定常なプラズマをつくり、測定に必要な資料を得る。

〔内容〕

1.測定用の定常な高温高密度プラズマを得るため、400V、250Aの直流電源を用い、電子温度約10万度電子密度約1013/cm3の高エネルギーアーク放電装置を製作する。磁場は約50V、2,400A直流電源により約4000ガウスを用いる。

2.4ミリ波帯μ波を用い電波暗室内で正確な測定を行なう。

3.スペクトル線の写真撮影を行ない、XYコンパレーターにより波長を正しく測定する。

以上によりプラズマ測定のための資料を得る。

2.核融合器壁材料のプラズマによる損傷に関する試験研究

理化学研究所  委託費  1,249,223円

〔目的〕
 核融合反応装置の器壁材料の損傷としては蒸発、スパッタリングおよび電弧形成による損傷等があるが、これらの破片のプラズマ内混入による反応効率の低下を防ぐため、最も重要と考えられるスパッタリングにつき昨年に引き続き研究を行ない、器壁材として優れた材料を究明する。

〔内容〕

1.スパッタリング率の測定精度を向上させるためスパッタリング後の試料の酸化をさける方法等について検討する。

2.イオン射角による影響を調査するとともに、イオソ源ガスを種々変えてその影響を調査検討する。

3.Mg、Al、Fe、Ca、Zr等純金属のスパッタリング率を4〜10keVで行ない、また、Al、Cu等合金についての測定も行なう。

 以上によりスパッタリング特性を明らかにし、各種材料を比較検討して最適材料を得る。

3.核融合を目的とした超高温プラズマに関する試験研究

三菱原子力工業(株) 委託費 1,018,928円

〔目的〕
 核融合を目的とした超高温プラズマを得るため、環状放電装置を用い、加熱電源にスイッチングイグナイトロンを使用し、安定化に反転安定磁界方式を採用した適性につき前年に引き続き、さらに充実した研究を行ない、本方式の可能性を検討する。

〔内容〕
 プラズマの安定化の向上のため、安定磁界および高周波予備電離コイルを1部改造し、同装置により次の研究を行なう。

1.加熱スイッチングイグナイトロンを用いる場合の問題点として陰極輝点の消滅、転移およびそれに伴う異状電圧ならびに電流上昇率の限界等について改良二重格子イグナイトロンで研究を行なう。

2.環状プラズマにおけるマグネティックコンプレッションおよび安定磁界反転の方法および効果を分光器を用いて実験解析する。

4.トーラス型高温プラズマ現象の測定に関する試験研究

東京芝浦電気(株) 委託費  2,374,350円

〔目的〕
 トーラス型高温プラズマ発生装置を用い、干渉分光式温度測定器およびμ波測定器によりプラズマの温度、密度を測定する。また電源にイグナイトロンを併用し、プラズマ加熱および閉じ込め方法を検討し将来の核融合反応装置の具体化を推進する。

〔内容〕

1.プラズマ加熱のためのギャップ放電に新たにクローバーイグナイトロンを併用して放電回路の振動を防止する。

2.上記により改善したオーミックヒーティングにより得たプラズマを干渉分光器により測定し、温度、密度等に与える物理的効果を検討する。

5.高温プラズマ測定用2ミリ波測定器の試作研究

沖電気工業(株) 委託費  2,722,295円

〔目的〕
 核融合反応を目的とした超高温プラズマ発生装置に使用し、プラズマの温度、密度を正確に測定することの可能な2ミリ波帯マイクロ波測定装置を開発し、将来の核融合装置の開発に資する。

〔内容〕

1.70V1Oクライストロンを用い逓倍して2mm波帯を発生させる技術および同立体回路素子の研究開発を行なう。また、プラズマと電波の干渉についての研究も行なう。

2.これらの各性能試験を行なうとともに、前年製作したPIG放電装置により高温プラズマ測定のための予備測定を行なう。

6.高温プラズマの分光線幅の時間的追跡装置の試作研究

日本大学  委託費  5,995,522円

〔目的〕
 核融合反応を目的とする超高温プラズマの観測を分光学的に行なう場合プラズマの発光線幅からイオン温度および密度を推定するが、分光写真による場合フイルム感度の制限などで時間的追跡が比較的困難である。したがって分光器からのスペクトル線を高速度回転鏡で時間的に追跡し光電子増倍管、オッシロスコープを用いて観測する装置を研究し開発する。

〔内容〕

1.高速度カメラはフイルムのおかれる部分が円弧になっているが、これを楕円の弧にして、その楕円面上にそって平面鏡をならべ、楕円の一方の焦点に高速度回転鏡(5,000〜10,000γ/sec)を置き、他の焦点に片側スリットをそなえた光電子増倍管からなる受光部をおき分光器または干渉フィルターにより分光したファブリベロー干渉計を通し1μsec以下で1個の平面鏡を光束がはしる装置を試作する。

2.光電子増倍管、増巾器、微分回路、オッシロスコープ等からなる受光部およびタービン制御装置を製作する。

 以上を組み合わせ高温プラズマ発生装置により総合的試験を行なう。

7.加圧水型船用原子炉を中心とした原子力船の設計研究

(社)原子力船協会  委託費  16,248,020円

〔目的〕
 原子力船について試設計を行ない、実際に設計建造するに際しての問題点を把握し、原子力第一船建造のため、今後指向すべき研究の重点について具体的指針を得る。

〔内容〕
 下記要目について船用原子炉を中心とした原子力船の設計を行なう。

 加圧水型原子炉を塔載する原子力船
   総トン数約5,000トン、馬力約10,000SHP
   船用炉型式、加圧水型、

1.基本計画概案を策定し計画要目等を決定して、計画方針説明書および主要図面を製作する。

2.基本計画概案完了後、船体部、機関部、原子炉部、電気部等の詳細設計を行なう。

8.沸騰水型船用原子炉を中心とした原子力船の設計研究

(社)原子力船協会  委託費  16,248,020円

〔目的〕
 原子力船について試設計を行ない、実際に設計建造するに際しての問題点を把握し、原子力第一船建造のため、今後指向すべき研究の重点について具体的指針を得る。

〔内容〕
 下記要目について船用原子炉を中心とした原子力船の設計を行なう。

 沸騰水型原子炉を塔載する原子力船
   載貨重量約45,000トン、馬力約20,000SHP
   船用炉型式直サイクル沸騰水型

1.基本計画概案を策定し計画要目等を決定して、計画方針説明書および主要図面を製作する。

2.基本計画概案完了後、船体部、機関部、原子炉部、電気部等の詳細設計を行なう。

9.原子力船における外力の原子炉に及ぼす影響に関する試験研究

(社)原子力船協会  委託費  3,324,720円

〔目的〕
 原子船が航行中に受ける外力によって生ずる動揺、振動の実態を把握するため、実船について動揺、振動の諸元すなわち頻度、振巾、加速度の大いさ、分布などを計測する。

 また、実船の試運転時等を利用して、起振機を利用して船体の振動特性を求める。

 その外船体振動の主要な起振源として、プロペラの回転による周期的水圧変動が考えられるので、諸国の船型について起振力に関する船設計のための基礎資料を求める。

〔内容〕

1.実船航海試験
 47,000積貨重量比の大型油槽船により、主として大平洋、印度洋、南支邦海において振動、動揺にもとずく加速度、船体応力、動揺角度および周期を計測する。

2.系統的実船振動試験
 油槽船1隻、鉱石船1隻、貨物船1隻について試験運転時を利用して振動諸元を実船計測するほか、停泊時、試運転時に起振機により振動実験を行なう

10.原子力船の衝突または座礁時における外力の影響およびその対策に関する試験研究

(社)原子力船協会  委託費  3,286,260円

〔目的〕
 原子力船の衝突または座礁時に、外力が原子炉周辺構造にいかに作用するかを実験的に究明し、これら緊急時に最も安全な周辺構造を設計するための基礎資料を得る。

〔内容〕

1.衝突外力に対する原子炉窒側壁の防護に関する試験研究
 原子炉側壁の構造単位として寸法構造の異なる帯板および縦横補強板模型を製作し、衝撃試験機により破断にいたらしめ、その時の衝撃力、模型中央の変位および変位速度、衝撃時間等を測定する。同時にアムスラー万能試験機およびジャッキにより、静荷重試験を実施して衝撃試験の結果に比較し、衝撃の機構を解明する。

2.座礁時における船底の強度に関する試験研究
 35年度の実験に引続き、格子状に防護された模型(二重底の助板桁板を模型化したもの)4個を周辺弾性支持の状態で、崩壊にいたるまで、中央部に油圧により集中荷重を加え、荷重、歪、全体の撓みおよび凹みを静的動的に計測する。

11.遠心分離法によるウラン濃縮に関する試験研究

理化学研究所  委託費  6,232,834円

〔目的〕
 既設のウラン濃縮用遠心分離機およびその附属施設を一部改造整備し、アルゴン等の同位元素の分離実験を行ない、遠心分離法の特性を考究し、遠心分離法によるウラン濃縮プラントの設計および操作に対する諸元を得ることを目的とする。

〔内容〕

1.ウラン濃縮用遠心分離機の改造
 34年度の委託費で作成した遠心分離機について高速度回転円筒およびガス体導入、導出系の気密保持のため、軸封部分、潤滑系等の改造を行なう。

2.同位体の分離実験
 改造した遠心分離機を使用して、各改造箇所の機械的試験を行なったのち、アルゴン等を使用して分離実験を行なう。分離実験としては、ガス処理量と分離係数との関係、温度および温度差の分離係数への影響等について検討する。

12.六弗化ウランの製造に関する試験研究

大阪金属工業(株)  委託費  4,140,708円

〔目的〕
 品質の均一なUF6の製造法を確立しガス拡散法、遠心分離法等によるウラン濃縮の研究開発に寄与することを目的とする。

〔内 容〕
 いままでの研究成果を基として、本年度は、UF6を製造する工程について次のような研究を行なう。

(1)UF4の供給
 竪型反応炉への供給を、スクリューフィダーで行なうときは、スクリューの焼き付け等の危険があるため、一種のテーブルフィダーに替えた場合について研究を行なう。またさらに、反応に及ぼすUF4の分散の効果についても検討を加える。

(2)UF6の捕集
 反応炉からのUF6ガス中には、UF4または、UF5等の未反応弗化ウランの粉末があって、バルブ等のつまりの原因となる。そこで粉じん除去法についての検討を加える。またUF6の冷却捕集についても検討を行なう。

13.ウラン濃縮を目的とするウラン化合物に関する試験研究

理化学研究所  委託費  2,496,062円

〔目的〕
 各種ウラン化合物について、分子蒸溜法による分離係数を求め、この方法による濃縮ウラン製造の可能性を検討することを目的とする。

〔内容〕
 硝酸ウラニルを原料として、無水四第化ウランを経て、ウランペンタエトオキサイドおよびウランヘキサエトオキサイドを合成する。これらの化合物を真空蒸溜で精製したのち、既設のステンレス製分子蒸溜装置を使用して、分子蒸溜を行ない、各溜分中のウラン同位体存比を測定し分離係数を求め、本方法によるウラン濃縮の可能性を検討する。

14.国産1号炉用燃料要素の放射線照射に関する試験研究

(株)日立製作所  委託費  23,578,657円

〔目的〕
 本研究は今までに確立した技術により試作した国産1号炉用天然ウランアルミニウム被覆燃料要素を海外設備を利用して照射試験を行ない、特に被覆法の相違によって使用時の性能がいかに変化するかを調べ、国産1号炉用燃料要素の製造技術の開発に資することを目的とする。

〔内容〕
 実寸短尺国産1号炉用燃料要素3本を米国GE社に送付し、GETRを使用して照射試験を行なう。照射は最高700MWD/Tまで行なうが、途中約350MWD/Tなる照射を行なった時、一旦炉よりとり出し、外観観察、寸法測定を行なう。次に700MWD/Tの照射を終えたのち、外観視察、寸法測定を行なう。また燃料要素を数個に分割し、断面の写真撮影、燃焼度の測定等を行なう。

 以上のような諸測定を通じて、主として次のような諸項目について検討する。

(1)燃料要素の使用時における寸法変化
(2)ウラン心材とアルミニウム被覆との結合状態の燃料使用時における変化
(3)被覆の破壊に導く原因となる局部的応力集中とそれによる被覆の変形

15.原子炉事故の際放出される放射性核種の迅速判定法の基礎的研究

立教大学  委託費  6,898,920円

〔目的〕
 原子炉事故時の対策の一つとして、広範囲の汚染による放射線(主としてγ線)の線量および核種を迅速かつ適確に判定する方法を確立する。

〔内容〕
 測定器としては、NaIおよびプラスチック・シンチレーターに、ポータブル・マルティチャネル・パルスハイト・アナライザーを組み合わせた移動用測定器を使用する。

 地上に放射性物質を配置し放出される放射線およびバックグラウンドのスペクトル、線量を種々の気象条件下で、線源からの距離を変えて測定する。

 さらに計算値と実測値とを比較し、測定精度や測定可能な線量の限界を求める。

16.燃料被覆管の耐圧に関する試験研究

三菱原子力工業(株)  委託費  12,606,560円

〔目的〕
 軽水型原子炉を対象として、冷却材喪失事故の際の衝撃的圧力に対する燃料被覆管の強度限界を不銹鋼およびジルカロイ−2の被覆管について明らかにし、さらに材料試験、静的破壊試験の結果も検討して、燃料被覆管の安全設計基準作成に資する。

〔内容〕
 PWR、BVRの冷却材喪失事故を、ヤンキー、ドレスデン炉をモデルとして解析し、外圧、内圧、温度ならびにこれらの変化速度などの試験条件を決定し、それに基づき次の研究を行なう。

(1)高速引張試験
 通常の引張試験の外に、高速で引張荷重を加え、動的試験の加圧速度と破壊強度との関係を求める基礎資料とする。

(2)高温破壊試験
 通常の加圧機による破壊試験であって次項の動的耐圧試験との比較を行ない、さらにその実験装置では機能上不可能な高温状態での試験を行なってその結果を補足し併せて静的圧力と動的圧力との相関々係を求める。

(3)動的耐圧試験
 実際の原子炉で、定常状態から冷却材喪失事故と同一の過度現象を模擬出来るようとくに設計された試験装置により、被覆管の破壊にいたる限界圧力、そのときの圧力降下速度などを測定する。

17.原子力施設の遮蔽計算(コード化)に関する試験研究

(社)原子力船協会  委託費  3,030,000円

〔目的〕
 原子力施設の遮蔽構造は安全にして、かつ、正確な設計計算の出来ることが望まれる。この種の計算を電子計算機を用いて行なうに当って必要な計算コードを作成し、遮蔽計算を迅速かつ容易ならしめる。

〔内容〕
 2次遮蔽および安全計算に重点をおき次の各項目のコード化を図る。

1.冷却材中の放射線強度の計算
 長期運転後燃料体内に蓄積される核分裂生成物の蓄積放射能を求める。

3.コンテナーからの放射線被曝量の計算
 コンテナー内に放射性物質が充満するような事故の場合、施設周辺地区への放射線被曝量を推定するための安全計算

4.遮蔽体貫通孔からの漏洩放射線の計算
 実験孔、冷却管、燃料取換孔等の貫通孔からの放射線の洩れの効果を単純モデルにより算出する。

18.放射線障害防止用薬剤に関する試験研究

南方薬品工業(株)  委託費額  1,209,000円

〔目的〕
 クロロフィルのポルフィリン核の中心に各種金属を錯結合せしめた金属錯塩を主体とする薬剤を作成し、放射線障害防止薬として効果の認められる薬剤を検索する。

〔内容〕

1.クロロフィルのポルフィリン核の中心に各種金属(Fe、Co、Zn、Mn、Au、Pt等)を錯結合せしめた金属錯塩を作成する。

2.上記で作成した金属錯塩中、6配位以上の金属(Fe、Co)等に対しては有機官能基を有するアミノ酸ビタミン類を結合せしめたものを作成する。

3.作成された薬剤については化学構造、純度などについて検討する。

4.化学的性状の確実なものにつき、放射線障害防止用薬剤としての基礎実験を行なう。

19.放射線障害(特に造血臓器官の障害)の治療薬剤に関する試験研究

平井 師  委託費  1,097,000円

〔目的〕
 白金コロイド等の白金製剤の放射線障害治療薬剤としての効果の判定

〔内容〕
 昭和35年度補助金においてγ線により減少した白血球の回復に効果のあると認められた白金コロイド単独製剤ダルタミン酸白金+フーバーエキス複合剤を用いて、

(1)過多投与による毒性有無検査を行なう。

(2)γ線照射を行なった動物に薬剤を投与し遊走速度貪喰作用などの観測を行なって、白血球機能の回復を判定する。

(3)γ線の照射線量率を変化させて、薬効果の比較を行なう。

(4)放射性白金を用いて薬剤の生体内における代謝を研究する。

20.海底土の放射化学分析法に関する研究

(社)分析化学研究所  委託費  1,013,840円

〔目的〕
 海底土の放射性物質の放射化学分析法を研究し、放射性物質の現状を把握するとともに将来の海洋投棄の基礎資料とする。

〔内容〕
 海水中のラジオアイソトープが海底に吸着されるので、その吸着量を知るため以下の研究を行なう。

1.東海村沖、東京湾の海底土を採取する。採取方法も併せて検討する。

2.海底土の化学組成の決定
 試料たる海底土の組成を明らかにし、特に吸着と関連が深い粘土鉱物の種類と量とを明白にする。

3.海底土中のラジオアイソトープの定量を行なう。
 当面は長寿命の核種(Sr、Cs、Ce)について行なう。現在の水準は極微量と考えられるので分析法を検討する。

21.放射性廃棄物容器と海洋条件との関連性に関する基礎的研究

理化学研究所  委託費  5,049,044円

〔目的〕
 放射性廃棄物の海洋投棄に関して投棄容器が長期間、安全な状態でとどまり、放射性廃棄物の海洋投棄が十分安全なものとなるようにする。

〔内容〕
 海洋投棄用容器は金属とコンクリートよりなるので本年度は研究の主体を臨海実験におき腐蝕、透水性、耐圧性につき研究を行なう。

1.実験室において、長期にわたる金属の腐蝕について試験研究する。
 特殊な試験片吊下げ装置を試作し、長期にわたる現場(深度2,000m)研究を実施し、コンクリート片の透水性、耐圧性、腐蝕性を研究する。