国際理論物理学センターの設立について

 昨年秋ウイーンで開かれたIAEAの第4回総会においてパキスタンなどの10ヵ国から、「国際理論物理学センターの設立に関する問題点を検討し、かつその結果をできるだけ早く理事会に報告するよう事務局長に要求する」という趣旨の決議が提出され、採択された。

 日本もこの共同提案国となった。

 IAEAの事務局では、この決議に従って直ちに検討を開始し、本年3月21、22日の両日ウイーンでこのためのパネルを開催した。日本からはこれに名古屋大学の早川教授が出席した。パネルではセンターの目的、事業、規模、立地、管理等について検討し、原案をつくって事務局長に報告し、6月の理事会にかけられることとなった。

 しかしながらこの原案は、当初各国が予想していたよりかなり大規模なものとなり、経費も相当かかる上に、優秀な学者を海外へ出したくないという米、英、加等の先進国の意向もあって、理事会の空気はセンター設立に対して批判的なものとなり、また5月の5、6の両日開かれたIAEAの科学諮問委員会(Scientific Advisery Committee)でも、センターのアイデアには賛成するが、パネルの構想が果たしてこのアイデア実現にきわめて効果的であるか否かは疑問であるという意見も出された。

 このためIAEA事務局では、なお今後とも本件に関する検討は続けるが、一応本件を6月理事会の議題とすることはとりやめることとした。