放射線医学総合研究所病院の開設

 千葉県黒砂町の放射線医学総合研究所病院は、5月13日開院、15日から病院業務を開始した。

 開院披露は5月13日に行なわれ、当日午前10時から12時まで病院内部、研究所が開放され、参観者の見学を受けた。正午から披露会場で塚本所長の挨拶、次いで科学技術庁篠原事務次官、石川原子力委員、衆議院科学技術特別委員会の中曽根委員等の祝辞、挨拶があり、招待された関係者約300名が会場に集まった。

 この病院は放射線に関するあらゆる近代的な施設を備えた日本で最初の放射線医学総合病院だということができる。ここでは、原子力平和利用の進展と不可分な放射線障害の問題を深く掘り下げ、その臨床方面の診断や治療にあたるほか、癌などの放射線による診断と治療、その他アイソトープの医学的応用に関する調査研究や、これに必要な技術者の養成訓練を目的としている。

 病院部は延べ面積4,613平方米で、地下1階、地上4階の南面したT字型で、南側2、3、4階が病室となり、中央から北側の胴部は地下1階、地上2階で診療棟となっている。

 総工費約2億2千万円で現在Co60 2,000キュリー、50キュリー、Cs137 2,000キュリー、50キュリー等が設備され、目下別棟にはベータートロン、ヒューマンカウンター等のわが国最初の機器が付設中であり、明年には医療用リニヤアクセレレーターも設置されることになっている。これらを加えると3億5千万円となる。

 ベッドは100床あるが、これはアルゴンヌ原子力病院(54)、ブルックヘブン国立研究所病院(48)、オークリッジ原子力研究所病院(33)よりも多い。以上のようにこの病院は、その設置目的からいって、組織や機構から見ても多くの特色が見られるので、その運営についてもその特色として次のように運営することになっている。

 第1に、患者としては、他の病院、診療所等の医師からの紹介患者を主とし、この病院での診断や治療にふさわしい患者を診療することである。また外来患者についても、できるだけ来院の日時を打合わせ、待たずに十分な診療がうけられるようアポイントメントシステムの実施が考えられている。

 第2に、診療会議が開催され、病院部の医師、臨床研究部の医師が集まり、内科、外科、婦人科、放射線科をはじめ、外科の専門医が意見を交換して協力して診療にあたり、必要に応じ外部から顧問医師の指導協力を受けるようになっている。

 第3に、研究所には臨床関係以外の多くの研究部があるので、これらの研究部からの意見や協力が得られ、放射線装置の操作や放射線の安全管理についても技術部が協力することになっている。