JRR-2の出力上昇試験について

1.臨界試験後の経過
 原研第2号炉、JRR-2(20%濃縮ウラン、重水減速、定格出力10MW)は、昭和35年10月1日に臨界に到達したが、その後今年2月末まで、低出力時における炉特性測定試験を行ない、3月6日から出力上昇試験を実施し、3月22日に、今回の出力上昇の目標1MWにはじめて到達した。

2.特性測定試験
 原子炉の出力運転を行なうためには、各種の原子炉特性を先ず確認しなければならならない。JRR-2で実施した特性測定のうち、主なものを上げれば次のようである。

1)制御棒の制御効果
2)燃料要素の反応度
3)上部重水反射体の影響
4)実験孔の(等価)反応度
5)中性子束分布および出力計較正(低出力範囲)
6)温度の反応度係数

 測定結果から判断すると、燃料要素1本当りの反応度は約1.4パーセントで、燃料要素を、この原子炉の最大装荷量の24本装荷した場合の超過反応度は約14パーセントである。クセノンやサマリウムなどの核分裂生成物の毒作用、温度上昇による反応度の減少、燃料の燃焼にともなう消耗などに必要な反応度は約8.7パーセントと見込まれるので実験に利用出来る反応度は約3〜6パーセントである。

 また、制御棒の制御効果など、原子炉の安全運転に重要な特性については、満足すべき結果が得られている。

3.出力上昇試験
 出力上昇試験にあたって最も大きな問題となったのは、燃料要素のウランアルミ合金中にウラン、またはウランカーバイトと思われる密度の大きい小さな介在物が存在することが、燃料要素のX線写真によって推定された点である。原研および原子力局では、この介在物によって、燃料要素の被覆が破損し、問題となるほどの核分裂生成物が重水中またはヘリウム中に放出するかどうかについて、十分な検討を行なった。

 この結果1MW程度の出力運転は十分安全に行ないうるという結論に達したが、さらに慎重を期するため、破損燃料検出を目的とした、感度の高い各種の測定装置を重水系およびヘリウム系に増設し、また、米国のアルゴンヌ国立研究所においてJRR-2の原型ともいうべきCP-5型原子炉の設計、建設および運転等に十分な経験を有するハーバート・チャールス・スチブンス氏を出力上昇試験のコソサルタントとして招へいすることになった。

 出力上昇試験は、今回の出力上昇目標である1MWをいくつかの出力段階に分け、各出力段階を約1週間で実施するという方針をたてて、3月6日から開始した。上記の通り、3月22日JRR-2の出力は1MWにはじめて到達し、この出力で約1時間の運転を行なった。原子力局では、出力上昇試験のはじめより常時検査員を試験に立合わせ、各出力段階毎に十分な検討を行ない、安全運転に万全を期した。出力上昇の経過を記すと次の通りである。

試験月日  到達最高出力  最高出力運転時問
 
3月6日
10kW
2時間
3月7日
100kW
30分間
3月8日
200kW
2時間
3月14日
500kW
1時間
3月15日
750kW
30分間
3月22日
1MW
1時間

 出力上昇運転中の試験項目としては、破損燃料検出に関連を持つ次のようなものについて主として注意が払われたが、その結果については特に問題とすべきものは認められなかった。

1)周辺の放射線レベルの測定
2)重水系およびヘリウム系モニターの常時監視
3)重水中のウランの微量分析
4)出力計の戟正(高出力範囲)

4.今後の予定
 原研では、3月27日から約3週間、500kW〜1MWの出力レベルで、JRR-2の運転訓練を行なっている。この訓練運転の終了後約5日間、1MWの連続運転を実施するので、この連続運転期間中に、原子力局では原子炉規制法に基づく性能検査を実施するが、これに合格した場合には、JRR-2をその後、原研所内の実験に使用する予定である。