わが国の原子力の利用開発に伴い原子力関係施設から生ずる放射性廃棄物の量は年々増加し、各施設ごとにそれを合理的に処理するには技術的あるいは経済的にみて困難な場合も多いので、各施設から生ずる廃棄物を一括して処理する中央処理機関の設立が強く要望された。このため原子力局においてはRIの使用により放出される放射性廃棄物のうち自己処理困難なものの一括処理を図るため、日本放射性同位元素協会が行なう放射性廃棄物処理事業に対し昭和34年度以降補助金を交付しその事業の助成を行なってきているが、増加の一途をたどる廃棄物の量あるいは燃料再処理開始の問題等新たな事態の発生に対処して、今後、増大が予想される放射性廃棄物の合理的な処理方策を確立する必要が生じた。
このため原子力委員会では10月19日開催の第41回定例会議において、下記のとおり廃棄物処理懇談会を設けることに決定し、放射性廃棄物の合理的な処理方策について検討を行なうこととなった。
I 目的
原子力の平和利用開発に伴い、今後増大すると予想される放射性廃棄物を合理的に処理するための方策を検討する。
II 審議事項
(1)放射性廃棄物の処理(Treatment)ならびに処分(Disposal)について安全、経済、技術等を総合した見地からの基本方針
(2)廃棄物排出量の推定
(3)廃棄物の処理方式(Treatment system, Disposal system)
(4)IAEA海洋投棄パネル勧告等の検討
(5)海洋投棄の方式(投棄条件、モニタリング等)。
(6)廃棄物処理に関する調査研究の方針
III 委員の構成
田島 英三 |
立教大教授 |
大山 義年 |
東工大教授 |
西堀栄三郎 |
原研理事 |
左合 正雄 |
都立大教授 |
坂本 猛 |
燃料公社企画室長 |
吉岡 俊男 |
原電(株)技術部長 |
角谷 省三 |
(株)荏原製作所原子力室長 |
森 八蔵 |
千代田化工(株)第2部長 |
佐々木秋生 |
RI協会常務理事 |
斎藤 信房 |
東大教授 |
吉田 耕造 |
東大助教授 |
三宅 泰雄 |
教育大教授 |
檜山 義夫 |
東大教授 |
相川 広秋 |
水産庁調査研究部長 |
〔日時〕昭和35年10月17日(月)
〔配布資料〕
1.放射性廃棄物処理の現状および将来
2.IAEA放射性廃棄物の海洋投棄に関するパネル報告
議事概要
木原原子力委員挨拶のあと、放射線安全課長から懇談会設置に至る経過報告を行ない、次いでわが国における放射性廃棄物の処理の現状について担当官から説明を行なった。その後自由討論に入りまず懇談会の運営について討論を行なった結果、懇談会の委員長には斎藤東大教授を委嘱し、さらに下部機構として、treatmentおよび disposalに関する二つのworkig
groupを設け、前者では左合都立大教授を、後者では三宅都立大教授をそれぞれ長として、さしあたり下記事項の検討に関し実質的な作業を行なうこととし、そのworking
groupの構成を決めた。なおこのほか、次のことが議論され意見の一致をみた。
1.国民遺伝線量に対する放射性廃棄物の影響の程度に関する問題については、放射線審議会において審議するのが妥当と考えられる事項である。
ただし当懇談会としても考え方をまとめることが望ましい。
2.放射性廃棄物の投棄は必要最小限度は認めるという主旨で検討すること。
3.公衆衛生問題の検討のため厚生省公衆衛生局から委員を委嘱すること。
Treatmentに関する検討事項
(1)放射性廃棄物の排出量の推定
(2)放射性廃棄物の処理方式の検討
(3)廃棄量の推定
Disposalに関する検討事項
(1)IAEA海洋投棄パネル報告等の検討
(2)モニタリングの方法の検討
(注)原子力委員会の定例会議は9月21日開催の第40回以降、定数不足のため成立をみなかったので原子力委員の定例打合会において事務的に懇談会設置の了承を得、原子力委員会の正式決定(10月19日開催第41回)に先き立ち第1回の懇談会を開催したものである。
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