3.3 技術的問題点

3.3.1 水性均質炉
 水性均質炉は現在までに商業用大型動力炉の運転実績こそないが、実験炉の運転ならびに多くの関連実験によって技術的問題点がかなり明らかにされている。現在の主要な技術的問題点としては放射線照射下での流体力学的なものと材料の物性に関するものでありむずかしい問題が多い。しかしながら技術的問題点が結局燃料要素の問題に帰着することは他の炉型式についても一般的にいえることであって、そうした観点からみると、水性均質炉の燃料はむしろよく研究されているほうであり、このためかえって問題点が他の炉型式のものに比して過大に評価されているといった面もないではない。次に水性均質炉についての現在における技術的問題点を述べるが、炉型式は主として硫酸ウラニル溶液炉心、スラリーブランケットの2領域炉を対象とする。

(1)燃料溶液の不安定性と腐食性
 現在溶液炉心の2領域炉(付表3-1参照)の燃料には高濃縮ウランを硫酸ウラニルの重水溶液の形で用いるのが普通である。通常これには燃料液の相律的安定性を増すために重硫酸と、放射線によって生ずる水の分解ガスを内部的に再結合させるための触媒としての硫酸第2鋼とを混入する。濃度は通常UO2SO4数gr/l、CuSO40.025mol、D2SO40.025mol程度で、酸素雰囲気の下で1,500〜2,000psig(100〜140kg/cm2)250〜300℃の高温、高圧下にある。動力炉の場合平均出力密度は数10kW/lで、中心付近では100kW/lに達する。

 溶液燃料であるから核分裂生成物が直接液中に出てくるのが特徴で、このため水の放射線分解が起こって重水素と酸素とを生ずるが、これは硫酸銅触媒により高圧系では完全に再結合を行なうことができる。低圧系では若干ガスの発生をみるが、これは外部触媒による再結合器で処理している。不溶性の核分裂生成物と腐食生成物とはハイドロクロンによって連続的に除去され、可溶性のものがかなりこれに付着してくるが、ハイドロクロンの効率は現在までのところかなり低いようである。クリプトンは除けないが、キセノンは先行核であるヨードが低圧系にあるSilver-Bedで効率よく除かれている。またガス状の分裂生成物の多くも重水蒸気に伴って液から出、凝縮器で量水と分離された上、コールドトラップをへて Charcoal Adsorber Bedによって処理される。こうしたことのためにレットダウン系と低圧系とが高圧1次系に付随するほか、燃料溶液の出入れとその濃度調節のための系統がつくので装置は相当複雑となる。しかしこれらの諸系統の動作はHRE-1、HRE-2の経験を通じてだいたい問題ないことがわかっている。炉心液系についての現在の技術的問題点を述べると次のようである。

(1)硫酸ウラニルの不安定性
 HRE-1においては問題なく動作した硫酸ウラニル水溶液がHRE-2においては高出力運転に移ったところ重大な問題に遭遇した。それは高温において硫酸ウラニルが不安定となり、ウランが溶液から失なわれる現象である。ウラン消失の原因としては加水分解による沈殿、蒸発乾固なども考えられるが、最も大きな問題となるのは限界温度以上で相律的平衡が破れて2相分離が起こり、高濃度相が沈殿する現象である。このとき高濃度相中では核分裂密度が増加して濃度が上がり重水が蒸発して分解を起こしウランは酸化物の形となるものと考えられる。HRE-2 ではウランの炉心タンクへの沈着に始まる局所加熱が自己触媒的に働いて部分的に2相分離を惹起し、これに伴う高熱流束がタンクの損傷をもたらしたものと考えられている。運転圧力を下げると不安定の起こる出力限界が上がるので、これと相平衡の研究から硫酸ウラニルの濃度が炉心溶液の平均濃度の6〜8倍程度になったところで限界温度に極小を生ずることがわかり、硫酸を過剰に加えてやることによってこの極小限界温度(350℃)を上げようとする研究が進められている。

 しかしながら運転に伴う一時的ウラン消失とともに半永久的ウラン消失が併存し、ウラン投入量の20%近くの消失が起こっている。この消失したウランは腐食生成物に付着しているか炉心タンクや配管中に沈着しているとみられている。HRE-2では高出力運転時にしばしば出力逸走を経験しているが、これは一時的に消失しているウランの一部が急にインポータンスの高い領域に戻ったり、その逆がおきたりしをて系の反応度に急激な変化を与え、出力変動起こすものと考えられている。HRE-2では定常出力値の数百%に及ぶような大きな逸走も経験されており、その頻度、大きさともにだいたい出力に伴って増減している。ただしこの炉では制御棒なしのままでも自己制御性のみで逸走を抑制しえて、安全性の面からは問題は起きていない。

 HRE-2 で実際に見い出された固相のウランとしてはCuO3UO3の形のものがあったのみであるが、すべてのウラン消失がこれによるものとは思われない。

 またHRE-2で炉心液中に挿入されていた熱電対のチタン製ホルダーが消失する事故があり、流れの場からみてウランの沈着は予想しがたいので、核分裂生成物の付着による局所加熱とそれに引き続く相変化による高温で焼失したものとの説もある。

 こうした事故にかんがみHRE-2では炉心液を下向流としてウランや核分裂生成物が炉心タンク内にたまらぬようにすべく改造中であり、こうした流体力学的改善によって事故が好転するものと倍ぜられている。

(2)炉心液による腐食
 水性均質炉では炉心タンク材料に中性子吸収の少ない物質としてジルカロイを用いるが、燃料溶液による腐食が問題である。ジルカロイの腐食率は温度や出力密度を上げると急激に増大する。これはジルカロイの表面にできる酸化被膜が核分裂によってけずりとられて保護膜となりえないためであって、いわゆる放射線腐食と称する困難な問題である。また放射線による水素が過剰となり、還元性の雰囲気を作って腐食を促進するという疑いもある。さらにジルカロイの表面にウランや核分裂生成物が沈着すれば局所的加熱を起こして腐食は促進され、遂には穴をあけてしまう。そのために必要なウランの沈着量はわずかなものである。ジルカロイの腐食率は同一の温度および出力密度の下ではウラゾと過剰酸の濃度を増したほうが下がるが、これは炉心外の1次系の材料であるステンレス鋼の腐食を増加せしめる。

 現在ジルカロイの運転条件下における腐食率は最大30mpy程度と見積られているが、炉心タンクの長寿命を期待することはむずかしく、プラントの設計においては炉心タンクの取替え作業が可能なように考慮を払わねばならない。ジルカロイにニオブを浸入して耐食性を増す研究もなされているが、ニオブを含んだ合金は加工性が悪くなる。また硫酸ウラニルに硫酸リチウムや硫酸ベリリウムを混合して腐食性を下げるという考えもあり、これは同時に蒸気圧の低下をもたらすので好都合であるが、中性子経済を悪くするので燃焼炉にはともかく、増殖炉にはもちいられない。

 現在HRE-2では炉心タンク以外の1次系はオーステナイト系ステンレス鋼を使用しているが、溶液の酸度に対する耐食性の関係がジルカロイと逆なので面倒である。過大な腐食を避けるためには溶液の流速をある限界以下に抑える必要があり、運転温度の下では15ft/sec(5m/sec)が限度である。この限界流速は温度を上げるともっと下げねばならない。最も腐食の激しく起こるのはポンプのインペラーで、これをチタン製として耐腐食性を増すようにしていたが、HRE-2でポンプのインペラーに使用したチタンが焼損する事故があってからステンレス鋼に切り換えている。またバルブシートにもジルカロイを使用しているが漏洩の問題があり、HRE-2 でもしばしばバルブ交換作業を行なっている。

(3)出力の限界
 一つの原子炉で発生されうる全出力は核的な考察、熱伝達、腐食や機械的な考慮によって制限される。溶液炉心炉では炉心タンク近傍で約50kW/lという出力密度が限度と考えられているが、これはタンク材料のジルコニウム合金の腐食が溶液温度と出力密度の上昇につれて増加するためである。この出力密度の限界と高い増殖率をうるためには小さい炉心のほうが望ましいことと相まって溶液炉心1基で発生しうる全出力は55MWt止りであると考えられている。現在低圧力の飽和蒸気用に製作しうる最大の発電機の容量は約300MWeである。したがって二つ以上の炉が最大の発電機1台に蒸気を供給するのに要求されることになる。

 一方スラリー炉心の場合は、現在でははっきりした推定はされていないが炉心タンクの冷却能力あるいは大きい炉心タンクを製作する能力によって全出力に限度があるが、それは1,000MWt以上と考えられるので、最大の発電機に要求される蒸気を1台の炉で発生するのに十分であろう。

(2)スラリー技術の未発達
 現在ブランケットに用いられる予定の物質は数ミクロン程度の粒径を有する酸化トリウムを1kg/l程度の濃度の重水中に懸濁させたスラリーであり、通常0.02mol程度の酸化をモリブデンを放射線分解ガスの再結合触媒として混入する。ブランケット液の動作温度は250℃程度で、重水を用いた加圧器が圧力調節弁を通じて炉心加圧器と連結し、圧力差を制限する。ブランケット系においても濃度調節スラリーの出入れ、核分裂生成物、腐食生成物の除去のため等の低圧系が付属しているが、高圧系との間には連続的循環はないのが普通である。スラリーについての技術的問題点は次のとおりである。

i 原子炉での使用実績がないこと
 スラリーの炉外での性質は相当よく研究されているが、種々の問題が個々に解決されても、多くの問題が相互関連性をもって重畳して起こりまたこれまでに運転実績がないので実際の炉での動作を予想することは困難である。炉内試験もやっとオークリッジで始められたばかりでまだデータは出ていない。低温、低圧下でのスラリーの流動伝熱特性は高温高圧下では相当変ってくることが予想され、ことに放射下ではどのような変化が起るかがわからず不安な点が多い。

ii 酸化トリウムの沈降
 酸化トリウム粒子を重水中に一様に懸濁させておくことは相当むずかしく、その沈降特性は粒子寸法や濃度を一定に抑えても酸化トリウムの製造のバッチによって非常に異なる。沈降速度が遅く、濃度が大きいと事実上沈降しない酸化トリウムが得られることもあるが、現在では望みの特性のスラリーを自由に製造する技術は確立されていない。適当な分散剤を用いて一様な分散を保とうという考えもあるが、中性子経済との兼ね合いもあり、まだ満足すべき結果を得ていない。また、たとえばモックアップ試験等によって理想的な流れを実現しえたとしても高温、高圧、放射線下にあっては性質がどう変化するかわからず不安が残るといわねばならない。

iii 循環に伴う変化
 流動特性の良いスラリーが作られたとしても、これを長期間保ち続けることはむずかしい。炉外での試験においても循環に伴うビンガム塑性の増大、粒子の細化現象、ケーキ生成などが経験され、熱伝達特性等もしたがって変化するので非常な問題である。これらは相互に関連した問題であるらしく、当初数ミクロンの粒径をもっていたものがさらに微細結晶にこわれ、相互の付着力が増大してくるためと考えられている。酸化トリウムを1,600℃以上で焼成すれば微細結晶が大きくでき、ケーキを作らないという報告もあるがこれを否定する向きもあり確信を持てない。

iv 腐食、侵食
 スラリーの流量は冷却の見地からよりも酸化トリウムの沈降を防ぎ、その混合を良くすることの要求からきまる場合が多いが、流速が増すと腐食性が激しくなるのでその両立が困難である。現在のところ最良と思われるスラリーでも運転条件の下では沈降速度が1〜3cm/sec程度と考えられ、均一混合を得るためには配管中で最少2〜4ft/sec(60〜120cm/sec)の流速と完全な乱流とを実現する必要がある。ブランケット系の材料としては、ブランケットタンクはステンレス鋼被覆の炭素鋼で熱交換器、配管等はステンレス鋼であるがだいたい3〜4mpyの腐食を受けている。金属の表面にできる酸化物の保護被膜がトリウム粒子によってけずりとられて腐食の進行が助長されるのである。スラリーによる腐食率は酸化トリウムの粒子の寸法、固さ、その相互の付着具合などによって非常に違ってくる。

 最も問題であるポンプのインペラ一にはジルカロイがよいとされているが、ポンプ、バルブ等の寿命が短い恐れがあり、それらの保守が面倒であると考えられる。

v 炉心タンク冷却の問題
 動力炉として典型的な設計では、ブランケットでの熱出力は全熱出力の15%程度で、平均出力密度は3kW/l程度である。これに対し流量は15,000gpm程度であるが、炉心タンクに近接した部分で大半の熱が発生するのと炉心タンクのガンマ線吸収による発熱が著しいので、ジルカロイ製のバッフルを炉心タンクの外側に設け、下部から流入するスラリーが最初タンクとバッフル間を流れて冷却し、次いで外側に回ってふたたび下部から流出するような設計をとることが多い。

 この場合バッフルの腐食や中性子経済との妥協が問題となる。また炉心タンクの内側にウランの沈着などが起こって局所的発熱が起こるような場合は炉心タンクの冷却は重要で、高熱流束の下でのスラリーの沸騰熱伝達の研究が重要となる。

(3)各種機器改良の必要性
 水性均質炉の各種機器は

i 核分裂生成物を含んだ溶液が各種機器の中を流れるため、炉を停止した後に放射能が残り、保守がむずかしく、高度の漏洩防止が要求される。

ii 内蔵する液が腐食性および侵食性であるために事故を起こす可能性が比較的多い。

iii 水の蒸気圧が高いために機器をすべて耐圧構造にしなければならない。

 等の理由により高度の信頼性が要求される。これらの機器の開発は、HRE-2およびPARを中心にして行なわれており、その結果溶液系に関してはジルカロイ炉心タンクを除き他の部分は一応の成果を得ている。スラリー系についてはスラリーの沈降、非完全流体的な性質、侵食、ケーキング等のために開発が相当おくれておりまだあまり成果が得られていない。

i 一次系機器
循環ポンプ
 水性均質炉で要求される循環ポンプは圧力2,000psi(140kg/cm2)、温度250〜300℃の条件で使用され、100psi(7kg/cm2)程度の水頭が要求される。またこれらのポンプは完全漏洩防止と長耐用年数の2点を満足するものでなければならない。現在これらの要求を満たすポンプとして考えられているものは、密封渦巻ポンプのみでオークリッジでもこの型を用いているが、耐用年数の点でまだ問題が残されているようである。

i 炉心系循環ポンプ
 炉心系の循環ポンプの耐用年数は現在までの経験によると約2年とされている。そのおもな問題はHydraulic Partsとベアリングの材料である。すなわちインペラー、拡流器等のHydraulic Partsの材料としては腐食、侵食の点からみてチタンが一番よいと考えられていたが、HRE-2の炉心液系循環ポンンプのチタンインペラーが発火して燃えた事故からチタンは酸素濃度の比較的高いところでは使用できないことが判明し、現在ではステンレス鋼が暫定的に用いられている。ベアリング材料としては従来までの常識では Stellite-Graphite系が最も良いと考えられていたが、これは硫酸ウラニル系で摩耗がひどく、現在では酸化アルミニウムが一番良いとされている。

ii スラリー系循環ポンプ
 スラリー系のポンプは溶液系のポンプに比してHydraulic Parts の侵食およびベアリングの摩耗がはげしいため相当問題になる点が多く開発も溶液系に比してずっとおくれている。

熱交換器
 溶液系の熱交換器はHRE-2でも満足に働いているように、その動作の点では大きな問題はないが、1次側と2次側での漏洩が起こった場合にもそれを検出するための漏洩検出器が開発されていないことが今後の課題である。スラリー系の熱交換器にはスラリー沈着およびケーキングによる管の“つまり”の問題が考えられ、これらの問題の研究が行なわれている。沈着による“つまり”は管内流速を1.8ft/sec(0.5m/sec)以上にすることによって防ぎ、ケーキングは1,600℃以上で焼成を行なった酸化ナトリウムを用いることによって解決できるものと考えられている。

加圧器

i 溶液系加圧器
 溶液系の加圧器で一番問題になるのは加熱部の腐食である。HRE-2ではこれを解決するために、加圧器に常に重水を少量ずつ流し込み、加熱部は重水のみに接触するようにして、ある程度成功をおさめている。

また最近では加熱部の材料にチタンを用いることが計画されている。チタンは腐食率がステンレス鋼に比べて非常に低く加熱部で1mpy程度である。

ii スラリー系加圧器
 スラリー系の加圧器は溶液系に比して腐食の点では非常に有利であるがケーキング沈着の問題が加わる。スラリー系の加圧器は炉心溶液系に比べると開発がおくれている。

ii 補助機器
フィードポンプ
 水性均質炉を運転するためには低圧系から高圧系へ溶液を押し込むための高水頭、低容量のポンプが必要であり、液圧作動ダイヤフラムポンプが用いられている。

i 溶液系のダイヤフラムポンプ
 溶液系のダイヤフラムポンプで一番問題になるのはダイヤフラムの破損である。現在ダイラフラムの耐久試験が行なわれており、その結果によれば材料としてはステンレス鋼が最も良く、19,000時間程度の使用に耐えうるようになっている。

ii スラリー系のダイヤフラムポンプ
 スラリー系ダイヤフラムポンプは最近種々の試験が始まったばかりである。問題はやはりダイヤフラムの破損にある。最近の試験によれば1,600℃で焼成された酸化トリウムを用いた0.5〜1kg/lのスラリーで6,200時間運転した実績がある。スラリーの場合はさらにチェックバルブの侵食の問題が加わる。現在のところスラリー系のチェックバルブにはジルカロイ-2が最良とされている。

バルブ
 制御棒を有しない水性均質炉では反応度の制御は燃料液の濃度を変えるバルブで行なわれることになる。また出力の調節は熱交換器から蒸気を取り出すバルブを調節することによって行なわれる。このように、この型の炉はすべてバルブにより操作されているといって過言でなく、したがってバルブは水性均質炉のKey Componentの一つと考えられて信頼度の高い耐久性のあるバルブが開発されなければならない。バルブの中では特に重要なところはベローシールとトリムの部分である。

ガス再結合器
 水性均質炉では核燃料が直接水または重水に接触しているため水の分解によるガスの発生が他の炉に比べて非常に多く、発生するガスを処理する必要がある。

 現在考えられている処理の方法は内部再結合方式と外部再結合方式の2通りで、HRE-1では外部再結合方式、HRE-2では両者を併用している。

i 内部再結合方式
 燃料液にCuSO2を溶かし込みCuを触媒として水素と酸素を再結合させる方式である。

 HRE-2ではUO2SO40.025molに対してCuSO40.0127mol程度を加えている。CuSO4の再結合能力は当初予期していたものよりも良いらしく、実際HRE-2の高圧系でのボイド発生はないとみられている。

ii 外部再結合方式
 外部再結合方式として現在考えられていることは、触媒再結合器と燃焼再結合器の2種であり、前者はHRE-2、後者はHRE-1で実際に用いられている。外部再結合器の問題は、その動作の不安定さにある。HRE-2においても、この再結合器の不安定性によりOffGas系にあるカーボンベットが燃焼した事故があった。また、起動時の再結合率の不安定さにも問題が残されている。燃焼再結合器は水素と酸素を直接燃焼させて水にさせるものであるが、この方法では爆発防止対策やスパークプラグ等の複雑な部分が必要なので好ましくない。

ハイドロクロン
 水性均質炉の燃料処理系には固型腐食生成物、固型核分裂生成物を除去する目的でハイドロクロンが設けてある。しかし現在のところその効率があまり良くない。

 すなわち腐食生成物を例にとればHRE-2でその生成率が1.6gr/hrであるのに対し、平均除去率が1.1gr/hr程度であり、0.5gr/hrの割合で固型腐食生成物が炉内にたかまっていくことになっている。これらの腐食生成物はおそらく配管の内壁に沈着するか、流れのよどみに定着しており種々の事故の原因となると考えられる。したがって、HRE-2では、この除去率を上げるために現在使用しているものと同じハイドロクロンを多数並列につないだ多数ハイドロクロンを試作し、試験を行なったが、その結果は予測したほどでもないようである。

各種計装
 現在問題になっている点として、まず炉心液濃度、スラリー濃度、酸度、不純物濃度等の測定法に関する問題があげられる。HRE-2ではサンプリングのみによりこれらを決定しているが、この方法は測定、に非常に時間がかかり、かつサンプリングのときに放射能をまきちらす恐れのある点で好ましくない。

 次に流量および液位測定の問題があげられる。流、量測定には普通オリフィス、ベンチュリー管、電磁流量計、ローターメーター等が用いられているが、炉、心系またはスラリー系で十分信精して用いられるような計器はまだ開発されていないように思われる。HRE-2 においては炉心系、ブランケット系ともに流量計がついておらず、ポンプインペラー破損および誤配線による流量低下等の事故の検出に困難をきたした。また、低圧計の各種タンクの液位計は特にスラリーの場合に相当の困難が予測される。

(4)保守の複雑性
 ある型の炉が動力炉として受け入れられるかどうかを決定する最も重要な要素の一つに保守の問題がある。一般的にいって水性均質炉の保守は非均質炉に比べて複雑である。非均質炉で放射能をもつ物質を一つの容器の中にとじこめておく事ができるのに対し、水性均質炉の場合は核分裂生成物が炉全体およびその冷却系にも入っていくため、炉全体の放射能が高くなるとともに保守中に放射能を外部へまき散らす恐れがある。さらに炉心溶液等が非常に腐食性、侵食性であり各種機器が破損する率が多くなるため、一般的にみて水性均質炉の保守費は非均質炉に比して高くなる。

 現在考えられている保守の方式は次の3方式に大別される。

i  湿式法  HRE-1
ii  乾式法  HRE-2、PAR
iii  乾湿配合法  Task Force Committe Referlence Reactor

 HRE-2 では湿式法を用いて非常に成功しているが、動力炉に湿式法を採用することは困難であると考えられている。その理由は次のとおりである。

i 水中での溶接は非常に困難となり管接手はすべてフランジ方式を採用しなければならない。フランジ方式を応用することはその漏洩検出機構を勘案した場合非常に複雑になる。

ii 湿式法で行なえばプラントの停止時間が非常に長くなる。

 一方均質炉に対しては短時間で放射能を除去する方式が開発される可能性が大きく、このために薄い遮蔽体で保守が可能となり、現在開発されつつある遠隔操作機器とあいまってプラントの大部分の保守を乾式で行ないうる可能性がある。したがって現在の考え方としては水性均質炉の大部分は乾式法で保守を行ない水の遮蔽体としての特質を十分生かしうるような部分には湿式法を併用する。乾湿配合法が最も水性均質炉の保守方式に適していると考えられる。しかしこれはあくまで推定であって大型の水性均質炉保守の経験のない現在において最も適した保守方式はまだ決定されていない。

 またHRE-2の経験では保守の可能性すなわちどのような保守方式でこのような事ができるかという点に関してはかなりの知識が得られたが、保守の問題を推定するために必要な各種機器の耐用年数は、現在までの各種機器が開発段階にあることおよびHRE-2の運転時間がまだ耐用年数を推定しうるに十分な時間運転されていない等の理由によりあまりはっきりしていない。

3.3.2. 溶融塩炉
 溶融塩炉は液体燃料炉の中では最も技術的可能性が大きいといわれ、在来の動力炉よりも高温で働く航空機用の試験炉が稼働した実績がある。

 技術的に他の液体燃料炉に比して問題の少ない理由は主として燃料体にスラリーを用いないことおよび炉容器材料として燃料体との両立性の良いINOR-8という合金が開発されていることによる。現在における問題点としては燃料体と黒鉛との共存性、燃料および黒鉛の長期間における安定性があげられ、まだ未経験ながら重要な問題となると思われるものとして保守の困難性と再処理の複雑性がある。またこの炉を増殖炉として効果良く働かせるには内部冷却方式を実現せねばならないが、それは非常に困難な問題である。

(1)予熱および冷却
 燃料体の融点が520℃程度で、動作温度は580℃〜660℃程度となる。このため起動に際しては予熱、停止の場合は冷却が必要となる。加熱は不活性ガスの雰囲気の下で行なわねばならず、高温のヘリウムにより加熱を行なうが、ヘリウムは著しく高価である。1領域炉の場合INOR-8製の炉心容器の外に低クローム鋼のタンクがあり、この間を75psig(5kg/cm2)のヘリウムが流れて加熱、冷却する。また各種容器、配管、計器等にすべてジャケットをかぶせて2重構造とせねばならず熱交換器や1次補助系の各機器なども非常に複雑となる。さらに予熱は数日を要するので頻繁な起動、停止を行なうことができない。また温度変化が大きいので配管系統の設計にあたっては熱膨張による応力を減少させるよう十分な可撓性のある設計をせねばならないが、その詳細な解析はまだなされていない。ことに炉と配管との結合方法に問題があり、温度勾配ができるだけ少なくなるよう考えるとともに可撓性のあるマウティングを実現せねばならない。

(2)燃料
 燃料の初期組成は黒鉛減速の燃焼炉では

UF4  20mol%(濃縮度1.3%)
BeF2  10〃
LiF  70〃

 で融点は500℃、炉心内における体積比は燃料体15%、黒鉛84%である。黒鉛減連の転換炉および増殖炉では

UF4  0.3mol%
ThF4  13〃
BeF2  16〃
LiF  707〃

 で融点は524℃である。このときブランケットにはウランを除いた同一組成の溶液を用いる。

 均質型増殖炉の場合は

UF4   0.6mol%
ThF4  7〃
BeF2  34.7〃
LiF  58.7〃

 の組成となる。これらの燃料は水性均質炉や液体金属燃料炉に比して安全性が良いと考えられているが、次のような問題点がある。

i 酸素および水からの隔離
 酸素および水は、ウランの沈殿を惹起するので、その漏洩、混入は絶対避けねばならない。このためウランを含まぬ弗化物溶融塩を2次冷却材として使う必要がある。もしも大量の酸素が系にはいるとUO2の多量の沈殿を起こし反応度に大きな変動をもたらし危険である。

ii 沈殿物による燃焼度制限
 燃料溶液から生ずる恐れのある沈殿は上記の酸素および水との反応によるUO2、UO2F2のほか次のようなものがある。
(イ) 温度が下ることによって生成されるLiFThF4またはLiFUF4
(ロ) 稀土類、ウラン、プルトニウムの合計が溶解度を越えてできる沈殿
(ハ) 腐食生成物と燃料との混合沈殿
(ニ) 3弗化物の共沈
(ホ) 核分裂生成物としてのRu、Mo、Nbの金属沈殿
 このうち(ホ)が最も問題で、燃焼が進むとこれらの沈殿が熱交換器の管につまる恐れがあり、なんらかの除去設備がないと燃焼度がこれによって制限される恐れがある。

iii 核分裂に伴う弗素のバランス
 ウラン原子核が1個分裂すると、核分裂生成物として二つの核種が生れ、これが溶液中に止まるには弗素と結びつかねばならない。もしも核分裂生成物のうち、稀ガス、I、Br、Ru、Mo、Nb等が弗素と結びつかずに溶液から析出し、稀土類は3弗化物以外のものはすべて4弗化物となれば弗素のバランスがとれるが、そうでない場合には揮発性かつ腐食性のUF6を生じたり核分裂生成物の沈殿を生ずることになる。

(3)黒鉛

i 前処理の必要性
 燃料を最初に注入する際、黒鉛中に酸素や湿気が残存しているとUF4と反応してUO2F2またはUO2を作るから黒鉛に前処理を施して空気と湿気を完全に除いておかねばならぬが、この前処理技術はまだ確立されていない。

ii 燃料液との関連問題
 炉心容器と燃料液との間の熱伝達はよくわかっているが、黒鉛と溶液間の熱伝達については十分知られていない。また燃料液は直接黒鉛に接して流れるが、燃料液に対し完全に不浸透性の黒鉛を作ることは困難で浸透後長時間照射を受けた際の変化に関する炉内試験も十分でない。燃料液を炉から抜いたときに黒鉛の表面および内部に燃料液が残る場合の冷却が問題である。また高速中性子の照射によって黒鉛の伝導率が下がるが運転温度付近での実験値が不足している。

iii 耐久性
 黒鉛を主減速材として使う場合、燃焼炉では12′φ×12′H(3.6mφ×3.6mH)、1領域増殖炉では20′φ×20′H(6mφx6mH)程度の大型の構造となるが、こうした黒鉛が高温かつ温度勾配のあるところで燃料液の浸透と放射線の照射を受けながら耐久性があるかという問題がある。2領域黒鉛型のときは炉心は4〜5′φ×4〜5′H(1.2〜1.5mφ×1.2〜1.5mH)の大きさであるが、ブランケットの仕切りは2"(6cm)厚の黒鉛容器を用いねばならず技術的にいっそうの困難がある。

(4)燃料の化学処理
 核分裂生成物の除去ができないと増殖炉としては問題であるが、現在考えられている燃料液の一部を膨張タンクに入れてガス状の核分裂生成物を除く方式はガスの燃料への溶解度、ことにハロゲンの動作がよくわかっていないので中性子経済の面で不安がある。また最も経済的な再処理法は弗化物揮発法によるウランの回収と考えられているが高温で行なうため腐食や材料の取扱いなどに困難が多い。その後ガス状のUF6を固相のUF4に還元する過程も作業員の接近性と保守の面での困難が多い。このほか232Th、7Liを回収するためには大規模なThorex設備をこれに付加する必要がある。

(5)その他

i 内部冷却
 溶融塩炉で水性均質炉なみの倍加時間を達成しようとすればインベントリーの低下のため内部冷却を実現せねばならないが、その具休的方法はまだ考えられておらず、技術的にも著しい困難が予想される。

ii 2次冷却系
 燃料溶液に酸素や水分が混入するとウランの沈殿を惹超するので、蒸気系との間に2次冷却系を挿入せねばならずこのため冷却系および蒸気系が複雑となり資本費を増加せしめる。2次冷却材には燃料との両立性を考慮してLiF65mol%、BeF235mol%の混合溶融塩を用いるが、これでうまくいかぬときは、Naはやはりウランの沈殿を起こさせるのでLiとRuの塩化物共融塩を用いねばならず、このときはINOR-8の塩素による腐食が問題となる

iii シム制御棒の必要性
 この炉は反応度の負の温度係数が水性均質炉の1/100程度であり、燃料体の濃度調節も簡単にはできないから、中性子吸収物質によるシム制御棒が必要であり、中性子経済との両立が問題である。また235U、238U燃料の場合は239Puの蓄積に伴う反応度上昇を抑えるために可燃毒物が必要と考えられるが、燃料液に可溶なもので適当な物質はまだわかっていない。大型プラントでの制御は反応度の負の温度係数を主要な制御要素とし、流量調整、蒸気の調整との組合せによって行なうが、制御棒も調整用に必要であるのではないかと思われる。

iv 保守の困難性
INOR-8は腐食および質量移行の観点からみて非常に優秀な材料で腐食は1mpy以下とみられ、表面に保護被覆ができて腐食が防がれる方式でないので照射下でもあまり変化しない長所がある。しかし一旦故障したときを考えると、配管全体と各装置に気密な外面がついているので保守は複雑かつ困難なものとなる。また予熱系や不活性ガス雰囲気を保つ設備などの大がかりな計装の保守も問題である。

3.3.3.液体金属燃料炉
(1)燃料
 溶液燃料に比べスラリー燃料では問題が多い。スラリーの製造法、物理的特性、物理的化学的安定性、放射線下の安定性ならびに流動状態の性質等について現在までのところ明らかでない点が多い。

(2)黒鉛減速材
 黒鉛構造体が高中性子束の下で、しかも温度勾配があり、かつ高温点の存在するようなところでの耐久性が確認されていない。しかし構造の堅固さおよび安定性は多分に設計製作の改良によって解決されるであろう。黒鉛中へのビスマスの滲透に伴って核燃料もまた黒鉛中へ侵入するが、溶融塩炉の場合と比較してその侵入に伴う問題の困難さは少ないと考えられる。しかし照射の影響については、長時間の炉内試験によって明らかにされなければならない。

(3)構造材料とその溶接
 工業上多くの使用経験があり、かつ廉価な低クロム鋼を構造材料として使用することができる。しかし、これらの材料の溶接部の腐食や質量移行がかなり激しく現われることが示されている。

(4)燃料再処理
 溶液燃料の再処理に関する化学的研究はブルックへブンにおいて詳細に行なわれた。スラリー燃料の再処理については現在研究室の規模で各種の研究がすすめられている。また、放射性物質の取扱い、各種部品、計測器等については今後の開発にまたねばならぬ点が多い。

(5)原子炉主要機器
 高度に放射化された燃料が流動するので、他の液体燃料炉と同様に各種の機器および部品の遠隔操作が必要である。ポンプ、バルブ、計測機器等についても未開発の分野が多く、複雑な高価なものになるにしても技術的に可能であると考えられる。特にスラリーの場合には開発の初期の段階にあると考えられる。これらは設計製作上のくふうに待つところが大きい。

(6)保安用機器
 使用する各種機器、計測器等の寿命、保守すべき場所の汚染の程度、プラントの配置等によって各種遠隔操作による保守用機器が必要となる。液体金属燃料炉のみならず液体燃料炉では、各種機器等が遠隔操作によって取り替えられることができないかぎり、これらの原子炉は実現可能性がないと考えられている。

(7)危険性
 多量の放射性物質を含んだ燃料が原子炉から熱交換器を通って循環するために事故による危険の可能性がある。しかし事故の原因として考えられる燃料による核的または化学的不安定性、燃料温度の急変、黒鉛構造体の破壊、質量移行に伴う循環系の故障等の点からみて、他の型式の液体燃料炉と比べて安全であると考えられる。

(8)内部冷却
 外部冷却型、内部冷却型いずれにしても原子炉の熱除去系に関してはほとんど差はない。したがって、内部冷却型液体金属燃料炉におけるおもな問題は炉心設計に帰せられる。さらに、前述の液体金属燃料炉における問題に加えて、高度不滲透性黒鉛またはベリリウムの隔壁または管を開発する必要がある。また高温に耐える漏洩のない黒鉛と金属の接合法も研究せねばならない。

(9)その他
 運転の容易さ、その信頼度、始動または停止に伴う問題、さらには燃料中の核燃料の濃度の変化による制御性能等について研究せねばならない。

 3.3.4 半均質炉
 高温化によって熱効率の向上をはかるとともに中性子経済もまた改善するという半均質炉開発の主要な問題点は、燃料要素についての研究および構造材料の選択もしくは開発に帰せられる。以下に述べられる点については、モックアップ試験、インパイル試験または実験原子炉等によって明らかにされることが多いと考えられる。

(1)燃料
 高温下で黒鉛とセラミック燃料を混合して成型された燃料が高温下で長時間にわたって使用される場合に反跳分裂生成物や強放射線による物理的化学的性質の変化は現在明らかでない点が多い。ガス状核分裂生成物が燃料の構成材料、燃料の構造、燃料の使用温度によって燃料から漏出する割合、また漏出する速度の研究等が行なわれている。

 燃料は適当に配列しなければならないが、燃料を炉心内に堅固に保持することならびにその安定性は設計および製作の改良によって解決される。液体燃料炉で内部冷却を採用する場合には、燃料流体と冷却流体との混合をさけることが設計製作上の大きな問題であった。しかしながら同じ内部冷却という点からみて半均質炉では問題はない。

(2)燃料の再処理
 物理的分離法、硝酸溶解法、溶融塩抽出法等が考えられ、これらのうち、単独の再処理方法で十分なのか、組合せによる簡単なプロセスで十分なのか研究しなければならない。再処理法の簡易化は経済性に寄与するばかりでなく核燃料の利用という意味においてSHRが熱中性子増殖炉としての評価を決する大きな要素の一つであろう。

(3)ビスマス冷却のときの構造材料とその溶接
 ブルックへブンを中心とする多くの研究によって工業上多くの使用経験があり、かつ廉価な低クロム鋼を構造材料として使用できることが示されている。しかし、これらの材料の溶接部で腐食や質量移行がかなりはげしく現われることが示されている。

(4)ガス冷却のときの黒鉛と構造材料
 冷却用ガスとしてヘリウムは最もすぐれているが、米国においても経済性が問題になっており、将来のガス冷却炉では炭酸ガスを使用することが低電力コスト達成の目標の一つに含まれている。炭酸ガスを使用する場合には黒鉛はすべてコーティングをほどこして質量移行を防がねばならない。また窒素を冷却材として使用するときは耐窒化鋼の開発または窒化の防止法について研究しなければならない。

(5)原子炉主要機器
 これらはビスマス冷却の場合にはブルックへプノおよびバブコックアンドウィルコックス社において開発された技術、またガス冷却の場合にはコールダー型原子炉で開発された技術等を基盤にすることができる。未経験の点があるとしても技術的に可能であると考えられ、主として設計製作上の改良に待つところが大きい。

(6)その他
 冷却材の放射化または核分裂生成物の冷却材中への漏出が考えられるが、液体燃料炉で核燃料および核分裂生成物それ自体が流動するのに比べて放射能ははるかに低い。したがって保守用機器および危険性の点について液体燃料炉におけるほどの問題はなく、液体燃料炉で開発された技術またはその経験が十分に活用できると考えられる。原子炉の運転の容易さ、信頼性、始動または停止に伴う問題、制御性能等については実験炉における経験によって確かめられるであろう。