1.5 むすび

 SGRは炉概念としては多くの興味ある特長を有しており、はなはだ有望とみなされているが、工学技術的に十分その特長を生かし切れないというのが現在の姿であろう。最大の問題はおそらく、高温、高熱流束の下で安定な燃料の開発である。これにはUC燃料がまず対象とされ、相当な開発努力が傾けられている。この開発によって燃料費はもとより資本費においても大幅なコスト低下が実現されよう。次いで減速材集合体および内蔵型中間熱交換器型式のカランドリヤ・オーバーフロー型炉心構造の開発が挙げられ、当初に問題とされたNa技術は現在でもなお多くの問題を残してはいるがその解決の見通しが得られている。材料その他にも特殊なものはなく安定性も十分とみなされ、国産化も無理はないと考えられる。ただ現在の実績はSRE1基にとどまり、またこれと改良型との差が大きいだけに、改良型の実績を検討した上で実用化の計画に着手すべきもので、その間所要の基礎研究を着実に進めておく必要があると考えられる。このようにその実用化の時期はごく近い将来とはいえないが、注目を怠ってはならぬものと思われる。

 〔注I]
 (注1) 下表のごとくNaは融点が低く、熱伝導率は著しく大きい。単位体積あたりの比熱はやや小さいが、密度が小さいためポンプ動力は少なくてすむ。熱中性子マクロ吸収断面積もまた軽水の0.022cm-1より小さく、腐食性も最も少ない。

 (注2) 重水はそのすぐれた核的性能から炉設計に弾力性を付与する利点を有しているが、高温に対する制限とこれが炉心にNaと共存して万一の場合著しい事故となる欠点を有する。アラスカ、アンカレジにSDRとして建設計画が進められたが、現在は中止になっている。Beは米国Sea Wolf号のSIR(中速中性子炉)の減速材に採用され、またGE社の設計研究である Moddule 型のNa冷却炉に黒鉛と併用されているが、まだ必ずしも実用的とは思われない。
 (注3) この型の蒸気発生器ほシェルアンドチューブ型で、シェル側をNaが、管内を水および蒸気が通る。管は2重管としその微小な環状間隙に他の液体(多く水銀を用いる)を入れる。水系の圧力は数10気圧以上、Na系は数気圧で大きな差があるので、水銀系の圧力をその中間に選んでおけば、その圧力の上昇、低下によってそれぞれ水側との境をなす管かNa側の管の破損かがわかるという原理である。
 (注4) コールドトラップはタンク内にステンレス鋼のウール、Raschig Ring等をつめた一種のフィルタで外部から適当に冷却しながらNaを通す。Naの冷却に伴って酸素の飽和溶解量が低くなるから過剰の酸化物は析出した充填物の広い表面積の上に推積除去できる。
 (注5) プラッキングメータは上記と同じ原理による酸素濃度検出装置である。主回路に分岐回路を設け、この中に小孔を適当数あけたオリフィス板を設けさらにその前に冷却器を備える。一定圧力でNaを流し徐冷していくと、ある温度で酸素が酸化物となって析出し、オリフィスの小孔を閉塞する。これによって流量が急激に低下するから、そのときの温度を知って二既知の飽和溶解量曲線から最初の濃度を求める。
 (注6) ホットトラップはNa中の酸素をこれと反応しやすい金属を用いて捕集分離するものである。こSREではタンク中にZrの箔をつめ外部から主回路中の最高温度よりも高くなるよう加熱する。ここへ Naを分岐させて流し表面に吸着分離させる。
 (注7) 改良型SGRの燃料冷却通路管は直接黒鉛に接触していない。黒鉛減速材にはZrのDrip Tubeがあり、その中に冷却通路管が入れられてあって両者間に微小な間隙が残されている。


付図1−1 SGR炉心構造の概念図


付図1−2 中間熱交換器配置方式

付図1−3 各種燃料の熱伝導率


付図1−4 SGR燃料の表面熱流速と中心温度との関係

付表1−1 SGR要目



付表1−2 SGR建設費 (単位106円)



付表1−3 SGR建設費 (単位103円/kW)



付表1−4 SGR燃料費 (単位106円/core)負荷率80%



付表1−5 SGR燃料費 (単位103円/kg・UO2)負荷率80%



付表1−6 SGR燃料費 (単位円/kWh)負荷率80%



付表1−7 SGR発電コスト 負荷率80%



付表1−8 U,UO2,UC 燃料の比較 (NAA-SR 8850による)





付表1−9 UC の性質 (NDA-2140-2による)





付表1−10 UC燃料照射試験の結果



付表1−11 U化合物およびサーメットの物理的性質



付表1−12 Na中の毒作用を有する不純物の制限値(単位ppm)−個別に存在する場合



付表1−13 Na中の照射により長い半減期の同位元素を生じる不純物の制限値
(単位ppm)−個別に存在する場合



付表1−14 国際原子炉用Na中の不純物(単位ppm)