IAEA、ユネスコ共催アイソトープ利用国際会議の開催 コペンハーゲンにおいて本年9月6日から17日まで開催された国際アイトープ会議はIAEA(国際原子力機関)とユネスコとの共催で、デンマーク政府後援のもとに開かれた。このアイソトープ会議は、正確には「物理学および産業におけるアイソトープ利用国際会議」であって、3年前にユネスコ主催でパリーにおいて開催された国際アイソトープ会議を継承したもので、今回は前回の物理学、工学、医学および生物農業を含んだ全般の利用会議に比し、理工学分野のみが取り上げられた。したがって、明年は生物学分野の会議が開催されることになっている。 この会議にわが国から提出された論文は23編であって、そのうち3編が口頭発表された。提出論文は次のとおりである。 提 出 論 文 課 題
開会式は9月6日午前9時45分からコペンハーゲン市のOdd Fellow Palaisで開かれ、IAEA事務総長スターリングコール氏の挨拶で議事が進められた。 日本代表としては、木村健二郎博士(日本原子力研究所理事)が出席したが、その他政府代表として、出席したのは木村氏のほか次の7名である。
第1日目(9月6日)の午後から開始された論文発表は、最初に地球物理関係へのアイソトープの応用であり、第2日目は金属学と固体物理への応用が取り上げられた。第3日目から3日間はアイソトープの工業利用に関する発表であり、船舟自のディーゼルエンジンへの wear
test、金属の鋳造技術への応用、砂糖工場での工程解析への利用、クリプトン85、トリチウムによる漏洩試験、石油資源の調査および石油精製の分析に利用する等の報告がなされ、産業への経済的貢献の大きいことが確認された。また人文科学の関係では、ある古代貨幣の放射化分析や古代建築物の非破壊検査にも有効である等の報告があった。第2週からは分析化学、有機化学、物理化学への利用、アイソトープの製造、標識化合物の製造について活発な発表討論があった。 今回の参加国は42ヵ国で、出席者約530名、論文発表国は21ヵ国、発表論文数148であった。主要参加国、出席者数および発表論文数は表のとおりである。 なお、アジア諸国からはフィリッピン、インド、タイ等の各国からも参加したが、日本以外は論文発表がなかった。会議の出席者の内訳をみると、試験研究機関から212名、大学から123名、会社関係から76名、行政機関から53名、その他の各種団体は68名であった。しかしこの参加者を各国別にみると、後進国と思われる国からはわずかに行政官の出席のみがみられ、やや進歩した国は大学、研究機関、行政機関からの参加者のパランスがとれており、先進国においては、さらに民間会社からの参加者も多く見受けられた。このことは、アイソトープ利用が前段階においては行政方面の啓蒙普及に始まり、次いで大学、研究機関に広まり、さらに産業利用に拡大していく姿を物語っている。日本の場合は第2段階から第3段階に進む過程にあると考えられ、今後工業利用をいっそう進展せしめなければならない。 |